帝国皇帝ラインハルト
アリステルは帝国の白いワイバーンの騎士と邂逅する。
その騎士はアリステルのストーンバレットを全弾躱す凄腕の騎士だった…
帝国皇帝ラインハルト視点
「そうか…分かった。この件は失敗だな」
俺の手には複数の報告書があった。
「巨象部隊は全滅。生き残った象はカラバとランバード王国に鹵獲された…か…」
大金と時間をかけて育てあげた象を丸々鹵獲された挙句、逆に王国と獣人国に戦力を提供する形になってしまった…
頭痛を堪え、二枚目の報告書に目を通す。
諜報部が入手してきた、巨象部隊を壊滅させた人物の詳細が書かれた報告書だ。
「ふむ…」
名前 アリステル・レステル
種族 バニーガール族。
年齢 9歳
身長 125cm
体重 25kg
冒険者ランク B級
金髪碧眼のバニーガール族の少女。
主な使用武器は両手剣(ドラゴン殺し)で
その材質は アダマンタイト鋼とオリハルコンの複合合金で作られており、重量は320kgを超える。
さらに特筆すべきは、その魔法の才能であり
アリステルの放つストーンバレットは毎分3000発以上の射撃速度を誇り、有効射程距離は2000メートルに及ぶ。
アリステルの経歴
アリステルは冒険者デビューから2週間後に単騎でミノタウロスを生け捕りにしC級に昇格。
その活躍により第三王女アルフレアの食客となる。
その後、魔力渦から現れた3000の魔物と恐竜を討伐
その強さに感服した前国王ランバードの命により、王国騎士団総団長であるカイエン将軍との御前試合をし、圧勝する。
さらに第一王子率いる騎士団2000人を全滅させた火竜をこれもまた単騎で討伐。
この功績により救国の英雄となる。
と書かれた報告書を持ってきた諜報大臣を「お前、頭大丈夫か?」という目で見る。
「ま、間違いありません。報告書に記載された通りの人物でございます」
冷や汗を流しながらそう答える大臣。
英雄とは古来より誇張されるものだが…
誇張されすぎだろう!!
さらにアリステル・レステルの姿写し紙を見る。
バニーガール族特有の長いうさ耳に水色のエプロンドレス姿の幼女が写っていた。
背中には飾りのつもりなんだろうか巨大な両手剣を背負っている。
その姿写し紙の中でアリステルは、小さな舌をペロっと出し、両手の人差し指と中指をV字にして決めポーズを取っていた。
盗撮失敗してねーか?これ?
「い、いえ…決して盗撮に失敗した訳ではありません。冒険者ギルドで発足したアリスファンクラブ会員特典で購入できるブロマイドと言うものです」
救国の英雄となれば、人気の踊り子や劇団員のように姿写し紙が売りに出されても不思議はないか。
「で、この娘が私の巨象部隊を壊滅させたという事か」
「はい、象に乗っているアリステルを多数の者が見ております」
何故、アリステルがカラバに居たのかは不明だが…
「カラバ獣人国を襲った報復にアリステルが北砦を破壊した訳か…」
巨象が敵対国の手に渡り、カラバ獣人国との防壁である北砦が破壊され、兵士100名が負傷。
手痛い被害だ。
しかし、幸い虎の子のワイバーン部隊は健在。
ワイバーン部隊が実戦活動を始めれば、この損失は簡単に補えるだろう。
「陛下!!一大事でございます!!!」
慌ただしく入室してくる戦略大臣と我が娘エターシャ
「悪い予感しかしないが…なんだ?」
「申し訳ございません。ワイバーン4匹が殺害されました!!」
「へっ?」
その報告に、威厳をへったくれもない声が思わず出た。
「昨夜、魔法による長距離攻撃で一瞬で4匹を殺されてしまいました…」
片膝を付き、頭を下げたままエターシャが報告する
あ、悪夢だ…発案から10年…莫大な予算と人的損害を出し、ようやく軌道に乗ったワイバーン計画が…
「襲撃者は女性三人組で一人は女騎士。もう二人は魔法使いのようです」
「エターシャよ。襲撃者の顔を見たのか?」
「はい、幸い私の騎乗するワイバーンは被害を免れ、即座に追撃に出ました」
「そいつらは殺せたのか?」
「…かなりな魔法の使い手で…接近する事も出来ず…」
「な、なんと…」
エターシャのワイバーン騎士として腕前を持ってしても倒せないとは…
「いったい…どんな魔法使いなんだ?」
「ハッ、闇夜ゆえハッキリと見えた訳ではありませんが…」
エターシャに先を促す。
その魔法使いは危険だ。帝国の為にも早目に片付けなければなるまい。
「曲者は両手剣を背中に背負ったバニーガール族のエプロンドレス姿の少女でした」
む!!その人物…どこかで聞いたような…
「そして剣士のようでありながら、1000発以上のストーンバレットで応戦してきたのです!!」
私の手のひらからアリステルのブロマイドが滑り落ち、エターシャの前に落ちる。
「こ、この者です!!」
アリステルのブロマイドを見たエターシャが叫んだ
◇◇◇◇◇
アリステル視点
「ちっ!逃げられちまったぜ…」
この俺が!
ワイバーンを無傷で逃してしまった。
こんな事は初めてだ。
「悔しい…」
ショットダウン率100%を誇っていた経歴に傷が付き落ち込むアルフレア姫。
しかし…俺の唯一の対空兵装であるストーンバレットを全弾躱すとは…敵ながらあっぱれだ。
「さて、姫様。どうする?」
ヤツは俺と姫様の顔を見たはずだ。
「顔を見られてしまいましたし…消しましょう」
「おーけー」
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