帝国の白い悪魔
帝国に無事入国できたアリス達はそこでワイバーンを見る
「今度は無事、入国できましたね」
ニコニコ顔の姫さま。
ソーサレスのサラをメンバーに加えた俺たちは、帝国の西門から無事入国する事が出来た。
と言うか、前回のように敵対国と隣接する砦から入ろうとしたら警備が厳しいくなるのは当然だろう。
今回は帝国の同盟国側の砦から入国したため、入国待ちの行列に並び警備兵に絡まれる事なく、無事入国できた。
最初からこうすれば良かった。
「ほう…活気があるな」
帝国は悪の帝王が圧で民を苦しめていると言うイメージがあったが、メインストリート沿いに商店が並び、街行く人々は血色がよく元気そうだ。
「えぇ、帝国国民は国から手厚い保護を受けてます。それにより貧困の差は少なく国内は安定しています」
帝国の実情を教えてくれる姫。
「なかなか裕福で良さそうな国じゃないか」
帝国国民はみな幸せそうに見える。
「それは…属国や獣人達を奴隷化し酷使して富を巻き上げているからです」
前言撤回。やっぱ帝国だわ。
自分たちさえ良ければ他はどうでも良いを地で行く国らしい。
とは言え、俺には直接関係ない。
とりあえず今夜の宿を取る。
帝国国営の立派なホテルにする。
費用は姫さま持ちだ。
「これからどうするのですか?」
帝国軍を偵察したい姫と帝国軍の鎧が欲しい俺。
「ふふ、これで軍部を偵察する」
「小鳥…の作り物?」
これは俺がナノマシンで作った小鳥型ドローンだ。
「はい、センセ」
ネレイからタブレットを受け取る。
「こ、これは!?」
小鳥から見た映像がタブレットの画面に映し出されている。
「遠見の魔法?」
その映像に驚くサラ。
俺は小鳥を窓から放つ。
「すごいすごい!」
タブレットに映し出された映像を見て興奮するドロシー。
「こ、こんな物を使われたら敵に内情が筒抜けになりますね」
軍人としてその有用性に驚愕するレイチェル。
帝国の城の上空を旋回させる。
「空を飛ぶとこんな感じなのね」
サラもタブレットを覗き込んでいる。
「この場所を拡大できますか?」
タブレットを指差す姫。
俺は小鳥をホバリングさせ、指定された場所をズームする。
城の一部に連接された、かなり大きなレンガ造りの倉庫だ…
象の飼育小屋なのだろうか。
「中は見えませんか?」
小鳥のような動作でドローンをレンガの建物の窓に止まらせる。
「「「「!!!!」」」」
その建物の中には小型飛行竜ワイバーンが5頭ほどいた。
大きさは馬の二倍ほどか?
5匹の内、1匹だけ真っ白い体で残りは緑色の体をしていた。
まだ完全に飼いならさられていないのだろう。
クエェェェ!!
けたたましく騒ぐワイバーン。
奴隷の獣人がワイバーンのエサなのか生肉が入ったバケツを持っている。
そしておっかなびっくり、緑のワイバーンにバケツを差し出す!!
バクッ!
バケツを差し出した獣人が頭から丸呑みされてしまった。
バリッバキッと頭を噛み砕かれ絶命する奴隷。
「て、帝国はこんな魔物まで軍事利用する気なの??」
その映像に驚く姫。
たしかに凄い。
帝国は革新的戦術を開発している。
巨象とイイ、帝国は生物兵器に手を出したようだ。
この調子で開発が進めば、いずれ帝国が大陸を制覇するだろう。
タブレットの中のワイバーンを凝視するアルフレア姫。
「アリス様、PSG-1を私用で使わせて貰っても良いでしょか?」
「ターゲットはワイバーンか?」
頷く姫。
意外だ。てっきり俺にワイバーン討伐を依頼してくるかと思った。
「アリス様なら簡単にワイバーンを仕留められるでしょう…ですが…帝国にアリス様の顔を知られるのは時間の問題。」
俺は一応、ランバード王国王女アルフレアの食客だ。
その王女の食客のである俺が他国の軍事機密であるワイバーンを始末したとなれば外交問題に発展するだろう。
「私なら帝国に気づかれず、秘密裏にワイバーンを片付けられます」
「オーケー、一応失敗した場合の脱出ルートの確保は任せておけ!」
その後、タブレットを借りた姫は小鳥型ドローンを操り、スナイプポイントを吟味する。
◇◇◇◇◇
次の日の深夜…
ワイバーンの寝床である倉庫から1700メートル程離れた小高い丘にある草薮に身を潜めているレイチェルと俺。
ネレイ達は、丘の下に停めたラン○ル内で待機している。
そして地べたに毛布を敷いて伏せ撃ちの姿勢をとっている姫。
「4匹しかスナイプスポットに入らないですね…」
5匹中、白い個体だけが射線の死角に入ってしまっている。
小鳥型ドローンに爆薬を仕掛けて自爆させる事もできるが…俺の人型兵器史上主義が許さないので却下だ。
「4匹だけでも殺せれば御の字だろう」
「そうですね…できれば白い個体を殺りたかったですけど…それでも帝国にとってかなりの痛手になるでしょう」
パシュッ!パシュッ!パシュッ!パシュッ!
迷う事なく引き金に指を添える姫。
ひゅぅ!
思わず口笛を吹いてしまった。
脳漿を撒き散らし崩れ落ちる4匹のワイバーン。
ワイバーンと言えど、空を飛んでいなければ少し大きい馬と大差はない。
撤収準備を始める俺たち。
騒がしくなる城内。
狙撃から2分後。
撃ち漏らした白いワイバーンが建物から飛び出してくる
「良い反応だ!こっちに向かって飛んでくるぞ」
まっすぐこちらに飛翔する白いワイバーン。
その背には…女性が乗っている。
「落とします」
パシュッ!
姫の鬼エイム!
バサッ!
その直撃弾を躱す白いワイバーン。
「!?」
驚く姫。
パシュッ!
次弾発射。
バサッ!
さらにバレルロールで回避する白いワイバーン。
凄い!!音速の、しかも小指ほどの小さな弾丸を回避…いや、撃たれる前に回避行動をしている。
間違いない…ヤツはニュータイプだ!
帝国の白い悪魔だ!!
回避と同時に深呼吸し、回避が終わると同時にこちらに向かってファイアーブレスを吐く白いワイバーン。
実践慣れしてやがる!このパイロット!!
俺はとっさに姫とレイチェルを抱き抱え、ファイアーブレスの範囲から離脱する。
「あ!!」
「ぐっ!!」
強烈な移動Gで視界がブラックアウトする姫たち。
さらに上昇ループからの急降下ダイブでこちらに突進してくる白いワイバーン。
アリステルの近接防御火器システムが発動する。
ブゥドドドドド!!!!
急旋回、急ブレーキ、急上昇、急降下で弾幕回避行動をとる白いワイバーン!
「これを躱すか!!??」
毎分1000発以上のストーンバレットを放つ俺の魔法を交わす白いワイバーン。
アイが敵の予想進路上に弾幕を張るが、それを巧みに回避していく白いワイバーン。
「センセー!!」
聖なる教会を張ったラン○ルで駆けつけるネレイ達。
姫達をラン○ルに押し込む。
ラン○ルに向かってブレスを放つ白いワイバーン。
ボウッ!
ドロシーの聖なる教会がブレスを弾く。
ラン○ルの上空を飛び去る白いワイバーン。
その時、白いワイバーンのパイロットの女性と目があう。
そのパイロットは白いロングヘアーの美少女だった。
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