カレーパンとサラ
カレーライスを振る舞い、ストームブリガー達と一夜を明かすアリステル
ストームブリンガー サラ視点
シャァァァァァ…
雨?
アリスちゃんと合流した翌朝早朝、水の音で目を覚ます。
天候は快晴。気持ちのいい青空が広がっている。
水源の音を辿ると、アリスちゃんのトレーラーハウス?と言う天幕の方から音が聞こえてくる。
ときおり、ジャーゴボゴボと言う何かを流すような音も聞こえる。
「サラ、花摘みに行こう」
ラビィに誘われ、二人で茂みに入っていく。
交互に野生動物の襲撃に警戒しながら用を足す。
その後、生活魔法で水を生成し、割れ目とお尻の汚れを綺麗に流す。
「私もお願い」
「はいはい」
ラビィの臀部に向かって水を放出する。
「はぁ…気持ち良い、この魔法だけでも覚えられないかな?」
「無理ね、魔力がないとどうにもならないわね」
この世界には魔力を体内に取り込める人間と取り込めない人間がいる。
後者はどうやっても魔法使いにはなれない。
ラビィは後者だ。
キャンプ地に戻るとアリスちゃんと女騎士のレイチェルさんが剣の稽古をしていた。
ネレイさんとドロシーさんはテーブルを用意していてくれた。
「おーい、アリスちゃん達がメシ奢ってくれるってよ」
早速、アリスちゃんに貰ったヒャクエンライターで火を起こしパーコレーターでお湯を沸かすロイ。
「こりゃ便利だ!!」
「一瞬で付きますね!」
どんなベテランでも魔法なしで着火するのに5分はかかる。
それを1秒足らずで着火なんて…
「アリスちゃん、これ一個でどれぐらい火がつけられるの?」
百炎ライターと言うぐらいだから100回ぐらいかしら?
「うーーん、1000回ぐらい」
「おおおお!」
歓喜するロイ。
「…千炎ライターじゃない…」
アリスちゃんが用意した朝食も凄かった…
透明な袋に入ったパン!
「な、何これ…」
一つつまみ、天にかざしてみる。
透き通る袋。
そして見事な造形のパン
むしろこの透明な袋だけで一財産になる!!
百炎ライターと良い、こんな貴重な物を無造作に出すアリスちゃんて…一体何者なの!?
私はアリスと言う少女にすごく興味が沸いた。
「ま、さっさと食べようぜ」
白湯で天使に献杯する
ピッと透明の袋を破くアリスちゃん達。
みんな食べなれてるようだ。
「サラにはこれがオススメだ」
茶色いパンを渡される。
「ど、どんな味なのかしら…」
袋を破き、一口齧る…
柔らかい!こんな柔らかいパンは生まれて初めてだ!
そして、香辛料たっぷりの黄色いドロ?が舌の上で蕩ける…
「美味しいいいい!」
カレーパンだ!!
「これ、アリスちゃんが作ったの!?」
もし、これをアリスちゃんが作ったのなら、私は
魔法使いを辞めて、アリスちゃんに弟子入りしてパン職人になる!!!
「残念、これは俺が作ったんじゃない」
がっかりする。
「作り方は知っているが…あ、味は再現可能だけど固めのカレーパンならできる…か」
「弟子にして下さい!!!」
アリスちゃんの両手をガシッと握る。
ネレイさんの眉がピクリと跳ね上がったのが見えたが気にしない。
いま、私の人生の転機が来ている!
「おい!本気か!?」
「こんな美味しいパンが作れるなら、私は魔法使いを辞めてパン職人になる!!」
「まぁ、待て待て…これから帝国に行かなきゃならんし」
「私も行く!」
唖然とするストブリのみんな。
「アル…どうする?」
「アリス様のお好きなように」
金髪の少女に確認を取るアリスちゃん。
「ロイは良いのか?」
「サラとはアリスちゃんと合流するまでの期間限定でパーティを組んでいたんだ。ここからはサラの自由だよ」
「分かった分かった、とりあえず帝国で材料調達してそれで作ってみよう。それを食べてから弟子入りするか決めような?」
私は頷く。
「ま、ま、食べようぜ!」
私のせいで中断していた朝食を再開する。
「サラが食べたのはこれか…魔法使いを辞める程のパン…」
ゴクリと喉を鳴らすストブリ達。
「!!!」
「美味い!!!」
「こんな美味しいパン、毎日食べられるなら弟子入りするのも分かるよ!!」
「サラにはこのまま正式メンバーになって欲しいかったけど…こんなに美味しいパンなら仕方がないな」
「サラ!パン職人になったら毎日買いに行くよ!!」
「うん、ラビィ!私頑張るわ!!」
◇◇◇◇◇◇
アリステル 視点。
「ふー、よく寝たぁ!」
トレーラーハウスのベッドは格別だ。
俺の左右で全裸で寝ているネレイとドロシー。
ドロシーに至っては全裸で大の字で寝ている。
とりあえずシャワー。
俺の身体は汚れても自浄作用で常にクリーンに保たれるが、やっぱり朝のシャワーは外せない。
ガチャ、ちょうどトイレから出てきたレイチェルと鉢合わせする。
「アリステル様、今日も鍛錬お願いします」
レイチェルも変わったな。
最初は俺を敵視していたのに、今では師匠扱いされている。
とはいえ、俺は剣技を教える事は出来ない。
だからレイチェルと鍛錬と言う名の実戦で剣を交える。
まぁ、腕の一本や二本斬り落としてもすぐ治せるから問題ない。
「お願いします」
木剣を構える。
シュッ!
「くぁ!!」
レイチェルの背中を蹴り飛ばす。
「すぐ立ち上がれ!遅い遅い遅い!!」
地面を転がり、俺の剣を交わすレイチェル。
「なんでそこで地面の砂を俺に投げつけない!!」
「砂で…目、目潰しなんて…そんな
「卑怯もクソもあるか!やれ!!やるんだ!!」
騎士として幼い頃から育て上げられたレイチェル。
「甘い」
レイチェルの剣を弾き飛ばす。
「ぐうぅ…」
一度も剣を振る事も出来ず、一本取られてしまうレイチェル。
「朝飯にしよう」
「はい」
◇◇◇◇◇
事件はカレーパンを食べたレイチェルが発端だった。
「これ、アリスちゃんが作ったの!?」
カレーライスが好きならこれも好きだろうと思って差し出したカレーパンが、どうやらサラの琴線に触れたようだ。
もちろん俺が作った訳じゃない。
これはパン工場で作られたパンだ。
何万人と言うライン工員達が精神を削りながら作り出した逸品だ。
(アイ、このパン作れるか?)
(再現率90%。固めのカレーパンなら可能です)
「作り方は知っているが…あ、味は再現可能だけど固めのカレーパンならできる…か」
「弟子にして下さい!!!」
とサラが突然、弟子になると言いだしたのだ。
◇◇◇◇◇
サラ視点
王国に戻るロイ達と別れて、私はアリスちゃん達の帝国を目指すことになった。
「何…これ…」
アリスちゃんの馬なし馬車。
乗り心地がまるで雲に座っているみたいにふかふかで柔らかかった。
それでいて馬より速い!
「ラン○ルって言うんだ。あとで運転の仕方教える」
私は頷く。
道中、サ○ダーと言うブリキの缶に入った飲み水を貰った。
「こうやって開けるのですよ」
プシュッ!
「アルちゃん、ありがとう」
幼い金髪の少女に開け方を教えて貰った。
「あ、その子…内緒にしてたけど、王国の王女様だから」
「王女様って…アルフレア姫の事かしら?」
「そそ」
「へー、お姫様なんだ…………うそ!?」
冷や汗が流れる…
一国の王女様が私の隣に座っている!!
ひざまづきたいが、ラン○ルの中では無理!!
「こ、これは知らぬ事とは言え、ご無礼を!!!」
「いえ、王国の中以外ではアルとして接してください」
「は、はひぃ!!」
こうして仲間を失い、ソロ冒険者だった私の前途多難なそれでいて希望に満ちた新たな冒険が始まった。
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