入国失敗
帝国の警備兵の心無い一言に、アリステルの怒りが有頂天になる!
「ククク…まぁ、人にはそれぞれ好みがある。
それぐらいは分かっているさ。」
ロリっ娘が好きな奴がいれば、老婆趣味の奴もいる。
どんな美少女(俺)でも万人受けは不可能だ。
「ま、待ってくれ!!いやお待ちください!!!
私の目が腐ってました!あなた様は天使です。天使のように美しいです!!!」
「今さら遅せぇ…」
バンッ!!
100人の警備兵の最後の一人をドラゴン殺しの腹で叩いて気絶させる。
よし、これで邪魔な門番はいなくなった
さっさと入ってしまおう。
「貴様!何をした!!!」
100人斬りを達成し、帝国領内に入ろうとする俺たちの前に立ち塞がる二人の騎士。
おお!!
カッコ良い鎧だ!!
十字軍を彷彿させるバケツヘルメットがイカす!!
立派なバケツヘルメットに隙の無い鎧姿の二人。
鮮やかな紅のマントを着ている方がコイツら警備兵の親玉だろう。
「お前はこの事を本部に連絡しろ」
「ハッ!」
部下を逃すバケツ騎士。
この惨状を見て逃げ出さないとは、なかなか気合が入ったバケツ騎士だ。
「なるほど…全員フライパンの底で叩かれたよう跡があるな」
ドラゴン殺しの腹で叩かれ鎧の一部は平らに潰れている。
「その大剣の腹で殴ったんだな?」
俺が持つドラゴン殺しを見る親玉。
「しかも…死者はいない。この人数相手に手加減する余裕があるとは…お前…人間じゃないな?」
短時間でここまで詳しく観察できるか…
「もう一つ聞きたい…」
「なんだ?」
「一人で帝国と戦争しに来たのか?」
「いや、この国の鎧はカッコ良かったからな。それを手に入れたくて来た。」
「そうか…私もこの鎧に憧れて騎士になったようなもんだよ」
ガチャ…兜を脱ぐ親玉。
そして、それを俺の足元に投げつける。
「それをやるから帰ってくれないか?」
俺はバケツヘルメットを拾い、アイテムボックスに収納する。
「悪いが全身欲しいんだ」
「そうか…流石にそれは無理だな」
バスタードソードを構える騎士。
俺はドラゴン殺しを肩に担ぎ、左手で手招きをする。
◇◇◇◇
国境警備隊隊長コモーノ視点
全身から冷や汗が流れる…
子供にしか見えない少女。
しかし少女の足元には100人の警備兵が倒れている。
コイツはとんでもない手練れだ。
ヘルメット一つで帰ってくれればと思ったが…
「悪いが全身欲しいんだ」
「そうか…流石にそれは無理だな」
この高価な鎧を渡すわけにはいかない。
私は剣を抜く。
しかし…少女の持つあの大剣…
あんな馬鹿でかい剣…おもちゃの模造刀としか思えないが…少女の足元に倒れる警備兵の姿がそれを否定している。
ラージシールドを突き出し、慎重に間合いを詰める。
鍔迫り合いになれば、私の細い剣など簡単に折られてしまうだろう。
どうイメージしても勝ちスジが見えない。
輪切りにされる。真っ二つにされる。叩き潰される。
騎士になるまでそれなりの修羅場をくぐり抜けて来た。
すたすたすた…
防御も何もなくただ歩いて間合いを詰めてくる少女。
「なぁ、お嬢ちゃん…名前教えてくれないか?」
こんな凄い奴だ。さぞかし名のある武人だろう。
「アリステル・レステル…いずれ伝説になる名だ。覚えておけ!」
「ふふ、そんな感じがするよ」
彼女は歴史に名を残す。
そんな予感と共に、未来の英雄に向かって俺は剣を振りかざす。
ピンッ!
私の斬撃を、信じられない事にアリステルは指先一つで弾いた!!!
「くっ!!」
アリステルの反撃に備えてラージシールドを正面に構える。
ドカッ!!
構えたラージシールドを蹴るアリステル。
「なっ!?」
とてつもなく重い…重い蹴りだった。
重いラージシールドを持ち、金属製のフルプレートアーマーを着た私の体重は100kgを軽く超える。
その身体が蹴り一つで宙に浮いた!
ドササッ!!
身を転がし距離を取り起き上がろうとした私の背中に足を乗せるアリステル。
「ぐっ、動かない!!」
信じられない圧力で地面に押さえ付けられてしまった。
「アリステル、お前…体重何キロあるんだ!?」
どう見ても20kg以下のように見えるが…
「淑女に体重聞くなよ。さぁ、その鎧寄越しな!」
「くそ!!」
俺は観念する!
「隊長ォォォォ!!!」
そこに帝国正規兵である我が騎士団50騎が馬で駆けつけてくる!
「やれやれ」
五十人の騎士に向かい剣を構えるアリステル。
「アリスさま!!帝国と事を構えるのはやめてください!!」
アリステルに駆け寄る金髪の少女。
「しょーがねぇ…諦めて帰るか」
俺はホッとした。
「足止め代わりにこの砦崩しておくわ」
砦の外に退避する少女達。
「あばよ!」
ブンッ!!!
砦に向かってドラゴン殺しを振るアリステル。
それだけで、衝撃波が巻き上がり、高さ10メートルの砦を広範囲で破壊した!!
轟音を立て崩れ落ちる砦。
舞い上がる埃と瓦礫。
それが収まった時にはアリステル達の姿はなかった
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