復活のドラゴン殺し
巨象部隊を倒したアリスは二の村に戻る
「センセ…そ、それは象…ですか?」
「お、大きい…」
「わぁ、象さんだー!」
「……」
象で二の村に帰った俺たちに目を剥く姫たち。
「帝国の奴らから奪ってきた。」
エル子の洗脳は完璧に終わり、今では完全に俺に懐いている。
「そっちは?」
「生き残りは五人だけです」
汲み取り式の便槽中に隠された子供二人と帝国兵にまわされていた少女三人だけだったらしい。
「ぐ、うう…」
怒りを露わにするゲオパルド王。
ウンコまみれの子供二人は、川でドロシーのブリキの兵士達に洗われている。
「この者達の処遇はいかがなさいます?」
レイチェルの足元に転がるボロボロの四人の帝国兵。
帝国兵の着ている鎧に目を向ける。
中々、見た目も良いし造りも堅牢。
姫様の国より技術レベルは高そうだ。
「カラバで獅子の餌にしてくれるわ!!」
縛られ動けない帝国兵を蹴り飛ばすゲオパルド王。
「ご主人様ぁ!シャンプー使っていい?」
子供の匂いを嗅ぐドロシー。
まだウンコ臭いようだ。
「あぁ、完全に臭いが取れるまで洗ってくれ」
ドロシーにシャンプーとボディーソープを10本渡す。
まわされていた少女の治療はネレイがした。
心以外は完治したらしい。
「なぁ…アリステル殿…女王になる気はないか?」
と突然、突拍子の無い事を言い出すゲオパルド王。
「ア、アリステルさまは私の食客です。勧誘はやめてください」
その王の提案に驚く姫。
「見ての通り。我が軍は軍隊の体をなしていない」
そりゃ「王に続け!」が唯一の作戦らしいからな。
「今回の襲撃は軍の規律のなさが原因だ。」
「ならシシドを王にすれば良いだろう?」
シシドは獣人にしてはかなり知性派だ。
彼なら良い軍師になれる。
「シシドなら賢明な判断をできるだろう。しかし…非力だ。それではこの国の者は言う事を聞かない」
「そう思うならゲオパルド王がシシドの操り人形になれば済むんじゃ無いか?」
「我とて国民を黙らせるほどの力はない。無理に規律を作り守らせようとしても、反発する者が大勢現れ、内紛になるだけだ」
「俺でも同じ結果だろ?」
「いや、アリステル殿ほどの力があれば有無を言わさず従わせる事ができる!!」
うーん。確かに反発する者全てを力で黙らせる事は可能だろう。
俺のスカートをギュッと掴む姫。
「だが、お断りだぜ!」
即答で拒否る。
正直、この脳筋国家をまともな国家に作り直すのは至難の業だ。
例えるならガンプラのビ◯ザムをガ◯ダムに作り直すぐらい大変だろう。
そんな苦労するぐらいなら最初からガ◯ダムを買った方が良い。
「むむ…残念だ」
ため息をつくゲオパルド王と落胆するシシド。
「ところで、この象を譲ってもらえないだろうか?」
「私の国にも譲って欲しいです」
全部、俺のペットにしたいところだが…根無し草の俺にペットを飼う資格はない…
姫たちに売りつけて現金化する。
姫のランバード王国に6頭。残りはカラバ王国に。
さっそく象の脳をイジり、それぞれの国の動物兵器として従順化させた。
「おおお!!これはイイ!!!」
象の背に乗り回すゲオパルド王。
◇◇◇◇
一度カラバ城に戻り、象の代金を受け取る。
「よし、目的も果たしたし帰ろう」
縮退炉エンジンも直ったし、もうこの国に用はない。
「ま、待ってくれ!礼もしたい!もう一週間ほど滞在してくれないか!?」
ゲオパルド王に引き止められるが…
「あまり国を留守にする訳にも行きませんので…」
やんわりと断る姫。
本当はすぐにでもトレーラーハウスでお風呂に入りたいのだろう。
「ム、そうか…それなら仕方がないか…」
残念な表情を見せるゲオパルド王。
潔く諦めてくれるのは好感度高いぞ!
国王達に見送られ、俺たちはラ◯クルに乗り込む
象さんにはドロシーのブリキの兵士達を乗せ操らせる。
◇◇◇◇◇
「ふぅ…やっぱ風呂は最高だ」
久しぶりのトレーラーハウスに久しぶりのお風呂。
グェグェグェグェ!
窓の外からは風流な虫の鳴き声。
とこんな感じで夜はお風呂にエッな事を楽しみ、
昼は象の背中に乗ってドライブ。
そんなこんなで一週間かけて王国に帰った。
王国に戻った俺とドロシーは職人街のギムリの工房に向かう。
ネレイは試したい魔法理論があると、魔法省に向かった。
姫とレイチェルは象の引き渡しとカラバ王国の現状報告をしに王城に行った。
◇◇◇◇
「ギムリの旦那。居るか?」
ギムリの武器鍛冶屋に入る。
「お、アリス嬢ちゃんか。新しいドラゴン殺しか?」
「アダマンタイトはまだあるかい?」
「もちろんじゃ」
アダマンタイトを出してもらう。
今回はこれにオリハルコンを混ぜ合わせて新しい合成素材を作り出すつもりだ。
「オ、オリハルコンか!?」
俺の出した、黄金色に輝くオリハルコンに驚くギムリ
「今回はアダマンタイトとオリハルコンを混ぜ合わせてドラゴン殺しを作ってみるつもりだ」
「な、なんと!そんな事が出来るのか?」
「あぁ、多分な」
縮退炉エンジンで無重力空間を作り、そこでオリハルコンとアダマンタイトを混合する。
重力下だと、どんなに素早く攪拌しても冷える一瞬の時間で重いアダマンタイトが下に沈殿し分離してしまう。
しかし無重力空間で行えば、重力の影響を受けず均等に混じり合う。
無重力空間でしか作れない金属が完成する…はず。
一度城に戻った俺は、ドロシーに聖なる教会を発動させてもらう。
失敗しても外に影響がないようにする為だ。
[重力磁場反転 空間相違点発生 無重力空間ができました]
その中に縮退炉エンジンで圧縮溶解させたアダマンタイトとオリハルコンを流し込む。
それを素早く攪拌!電子スパークが発生する!!
「うおおおおおおお!!!」
粒子加速させる!!
アダマンタイトとオリハルコンが新たな元素組織に変化する。
スドーーーン!!!
ブラックホールになりかけたアダマンタイトとオリハルコンの合成化合物が出現する!!
できた!!新素材…名前はない。
うーーん、俺の名前から取ってレステル鋼でいいか!
さっそくギムリの工房でレステル鋼を打ち直す!
「すごい金属じゃ…硬く、それでいてしなやか…魔素に反応する…まさに神鉄じゃ」
「できたぜ!!」
ギムリ指導の元…3時間。
この俺の腕力をもってしても3時間かけて叩き出した刃…新生ドラゴン殺しが完成した…
「流石にエッジングは出来んのぉ」
2代目ドラゴン殺しのように、血を吸うと紅い薔薇が浮かぶギミックは付けられなかった。
まぁ、まずは試し斬りだ!
工房の試し斬り場に三体の人形を並べる。
ブン!
軽くスイング。
ブォン!!!
鋼鉄の鎧を紙のように切り裂くドラゴン殺し。
ツゥゥゥ…ズシーーン!!
「ヤベェ!」
試し斬りの人形と一緒に壁まで斬ってしまった!
レステル鋼のあまりの斬れ味で空気が切断、その衝撃波が壁を斬ってしまった!!
あんぐりと口を開けるギムリ達工房メンバー。
「メンゴ!」
サイズは前のドラゴン殺しと同じだ。
背負いベルトはそのまま使える。
「これ技術料と工房料と壁の弁償だ」
「いや、工房料と壁代だけで良い」
ギムリはそれ以外の料金を頑として受け取らなかった。
俺はドラゴン殺しを担ぎ、久しぶりの離宮に帰る
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