虐殺
ついに完全復帰したアリステル。
そこに帝国の襲撃を伝える報が!
「奴隷狩り?」
「おそらくアマチアス帝国の獣人狩りの事でしょう」
アマチアス帝国…人族至上主義の帝国とか言っていたな。
「アマチアス帝国はこの獣人の村を襲っては奴隷として若者達を攫っていくと聞いてます」
プオオオオオ!プオオオオオ!!!
その時、ラッパの音が鳴り響く。
外を見るとゲオパルド王が馬に乗り城壁の外に向かって駆け出して行くところだった。
「王様が単騎で飛び出して行ったぞ!?」
普通は軍単位、もしくは小隊単位で動くもんだろ?
ラッパの音を聞きつけたのだろう。街の酒場や風俗店らしき所からも武装した獣人達が各個飛び出し、国王の後を続く。
隊列もクソもあったもんじゃない。
謁見の間に行くと宰相のシシドが出遅れた騎士達に指示を出していた。
「準備できたのものから二の村に向かえ!!」
アバウトな軍事行動に開いた口が塞がらん。
「この国は軍隊行動と言う考えはありません。王に続け!!のみです」
姫の説明に唖然とする…
なんつー脳筋国家!
戦略も作戦もなし。
アホ国家や…
「姫…付き合う国は考えた方が良いんじゃない?」
動きが速いの良いけど…暴走しちゃってるじゃん…
「アルフレア姫、これはお見苦しいところをお見せしました」
俺たちに気づいたのだろうシシドが頭を下げてきた。
「帝国が攻めてきたのですか?」
「はい、昨日の試合で手薄になったところを突かれたようです」
俺と国王の試合を観るために、国境警備がお留守になっていたらしい。
よくこんな国が今まで滅びずにいたな…
「どうします?私としては同盟国の危機。ゲオパルド国王に貸しを作れるチャンスなので、アリスさまの力をお貸し頂きたいのですが…」
うーーん、そうだな。
帝国の戦力も見たいし、直った縮退炉エンジンの慣らしにもちょうど良いだろう。
「うしゃ、帝国相手にちょっと暴れてみるか」
「ありがとございます!!」
「アリステル殿、戦場に向かわれるのでしたらぜひ、私も同行させて頂きたいのですが」
シシドが同行を頼んでくる。
「そこは馬車が通れるのか?」
「えぇ、二の村までの道は整備されています」
ならラン○ルで行けるな。
「わかった。一緒に行こう」
こうして俺とネレイ。ドロシーと姫とレイチェル。そしてシシドの6人で向かう事になった。
◇◇◇◇
ゲオパルド視点
「おのれぇぇ!!」
「ひ、ヒィィィ!!」
若いネコ属の女の死体を凌辱していた帝国兵の一人を一刀のもと切り裂く。
二の村のあまりの惨状に視界が真っ赤になる。
村の木々には、縛り首になった村人が吊るされている。
またある者は、柱に縛り付けられ弓のマトにされたのだろう…
体に無数の矢が刺さっていた。
生きたまま燃やされた者。
村の地面に残された帝国兵の足跡や、50センチを超える未知の動物の足跡。
その未知の動物に踏み潰されような死体も多数ある。
家々は破壊され、金目の物は奪われ、女や子供達は連れ去られたようだ。
「なんじゃ、こりゃあ!!!」
遅れて来た、我が兵達も村の惨状に騒ぎだす。
途中、乱取りしていた帝国兵を何人か見つけ、殺す。
「王よ!あっちの方から奴等の臭いがする」
犬族の部下達を先頭に地面に残された臭いと足跡をたどる。
「奴ら…でかい獣を連れているみたいだ…」
森の中を馬で進むと広場に出る。
そこには檻に閉じ込められた女達とそれを取り囲む帝国兵がいた。
怒りで視界が赤く染まる。
「突撃!!!」
「うおおおおおお!!!」
200名の配下と共に帝国兵に向かって我は突撃した!!
一斉に逃げ出す帝国兵。
逃げ遅れた帝国兵何人かの首を馬上から切り落とす。
パオオオオオン!!
聞いたことのない咆哮。
ドッドッドッ!!
地響きと共に森の中から木々を薙ぎ倒し、突進してくる巨大な獣達!!
その数10!
ヒヒーン!!
その獣に驚き暴れる馬。
「うわぁぁ!!」
我を含め多数の者が落馬する。
グチャグチャグチャ。
倒れた馬や部下達を踏み潰し、迫る巨大な獣。
「ぐわはははは!!我が名はバルク!巨象部隊隊長であーる!!」
「く!!」
投げ槍をその巨象に向かって放つが…
パシッ!!
器用にその長い鼻?で受け止める獣。
ドドドド!!
我の軍勢の上を一直線に駆け抜ける巨象部隊。
ただそれだけで100名近い我が戦士達が圧殺された!!
向きを変え、さらに突撃してくる巨象!!
その長い鼻を振り回し、我が戦士達を薙ぎ倒し踏み殺していく巨象。
「くそ!!」
我は盾を構えファルシオンを抜く。
バシッ!!
巨象の鼻で、盾ごと弾き飛ばされ大地を転がる。
「ゲオパルド国王!!その首、貰い…踏み潰す!!!」
バルクが騎乗する巨象が後ろ足で立ち上がる。
「くっ!!」
ここまでか!!!
◇◇◇◇
帝国軍巨象部隊隊長バルク視点
「がはははは!!奪え!!犯せ!!!殺せ!!!」
獣人の村を蹂躙する我が部隊。
帝国が新たに手に入れたエレファントと呼ばれる10頭の獣。
8メートルの巨体に6トンの体重。
そして3メートルを超える牙!
帝王が手に入れたこの10頭の獣を3年かけ調教し、今回が初の実戦投入となった。
事前情報では、獣人国カラバで祭があるらしく、国境の砦の警備は手薄で警備兵が少ないらしい。
エレファントの試験運用に丁度いいらしい。
しかし…エレファントを使うまでもなく、1時間もかからずに砦を制圧してしまった。
これではエレファントの実戦訓練にはならない。
そのまま国境を突破し北上する。
その先にある二の村と呼ばれる獣人の村を襲撃する事にした。
この村は猫族が多い。
こいつらは見た目が美しく価値が高い。
我が皇帝も猫族の女を買い集めては拷問して楽しんでいる。
せっかくだ。極上の猫娘を皇帝に献上でもしよう。
故に価値のない老人や男達は皆殺し。
弱い女は生け捕りにし、強い女は見た目が粗暴で悪いから殺す。
エレファントで村を蹂躙した後は、金目の物と美猫娘を奪い撤収する。
帝国に続く森道を進んでいると
「報告!敵国国王と配下の兵、約150から200!こちらを追ってきてます!!」
「ふむ…」
エレファントの足跡を追ってきているのだろう。
「ここで迎撃する!!」
森の開けた広場に女達が入った檻を設置する。
もちろん囮としてだ。
そして10頭のエレファントを森の深い茂みの中に隠れさせる。
そこそこ注意深い人間なら森の中に隠れている象に気がつくだろう。
しかしあいつらは猪突猛進しか能がない。
問題ないだろう。
案の定…
「突撃!!!」
真っ正面から罠に飛び込んできた。
丁度いい。
エレファントの実戦訓練の役に立ってもらおう。
パオオオオオン!!!
密集隊形で飛び込んできた獣人達にエレファントの咆哮を浴びせる。
ヒヒーン!!
その咆哮に驚き獣人達の馬が暴れ落馬する者が多数出る。
その落馬して者達目掛けて10頭のエレファントを突進させる。
エレファントの牙で串刺しになる者や踏みつけられて無残な死体を晒す者が出る。
それだけで半壊する獣人の軍。
我が軍は無敵ではないか!!
一撃離脱戦法で駆け抜けた俺は再度、突撃する為にエレファントの踵を返す。
あれは…
落馬した者の中にゲオパルド王がいた!
俺はゲオパルド王に向かい突撃する!
「ゲオパルド国王!!その首、貰い…踏み潰す!!!」
本当は首を貰い受けたかったが、エレファントでそんな器用な事は出来ない事を口上の途中で気がついた。
帝王にグチャグチャになったゲオパルド王の首を献上する事になるが…致し方あるまい。
「潰れてしまうがいい!!!」
体重6トンのエレファントのスタンピング攻撃!!
ズシィィィン!!
振り落とした前足が大地を揺るがす。
バサバサバサ!!
その音に驚き飛び立つ鳥達。
◇◇◇◇
アリス視点
「ネレイ、運転頼む」
俺はラン○ルの助手席に座る。
エンジンをかけるネレイ。
「こ、これは…」
中央席に座ったシシドが驚きの声を上げる。
「天使の馬車です」
手短に説明するアルフレア姫。
「おおおおおお!!」
スムースに走り出すラン○ルに感嘆の声を上げる
「それより二の村までの道案内頼む」
「あ、あぁそうでした」
あとは…
運転をネレイに任せ、俺はアイテムボックスからオリハルコンの残りを取り出す。
元に戻った体に金棒が合わなくなったから新しいオリハルコン製の武器を作る事にしたのだ。
こねこねこね…
「オ、オリハルコンを粘土のように!?」
絶句するシシド。
こねてるように見えるが、このオリハルコンのこの強度では流石の俺でもこねるのは無理だ。
実際はオリハルコンの分子構造を切断したり結合したりして変形させてるに過ぎない。
「よし…できた…」
新しくできたニューウェッポンをエプロンドレスのポケットにしまう。
しばらく走ると二の村に着いた。
「なんだこれは?」
そこは廃村だった。
めちゃくちゃに壊れた家屋。
木に吊るされた死体死体死体。
弓のマトにされた死体死体死体。
さらにグチャグチャに潰れた死体死体死体。
「て、帝国の奴らめ…」
唇から血を流すシシド。
パオオオオオン!!!
象の咆哮!?
[南東1200メートル 獅子王が戦闘中です]
「先に行っている!!ネレイ達は生存者の救出を」
「はい!!」
俺は時速145キロで駆け出した。
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