獅子王
オリハルコンを求めてついにカラバに到着するアリス一行であった。
「ここが獣人国カラバか…」
大森林を抜け、小高い崖の上からカラバを一望する。
「ここカラバはランバード王国の同盟国であり、共に人族至上主義のアマチアス帝国と敵対しております」
と姫が説明してくれる。
ま、その辺の政治背景はどうでも良い。
問題はどうやってオリハルコンを手に入れるかだ。
ざっと眺めた感じ、王国に比べて文明レベルは一段低くいようだ。
森に囲まれた街で木造の簡素な作りの建物が多く、ほとんどが平屋だ。
王城らしきものが見えるが、どちらかと言うと要塞のような作りで気品はない。
そして一番目を引くのが…
その要塞の中央にそびえ立つ巨大な樹だ。
幹の直径が100メートルを超え、高さは300メートルに達する。
「あれが…世界樹…」
手を合わせ感動に震えるネレイ。
「世界樹…なんか葉っぱにすごい力があって、使うと人が生き返るとかするのか?」
「いえ、ただ信仰の対象と言うだけで世界樹自体はそれほど価値はありませんが…その下に眠るオリハルコンを帝国が狙っています」
オリハルコンは一粒で城が建つと言われるほどの鉱石で国宝級の宝石扱いらしい。
「世界樹は獣人達の守り神で、余所者は近づけない。当然、オリハルコンも手に入らないと言う訳か」
頷く姫。
「過去、何度かカラバは我が国と同盟を組んで帝国と共に戦った事がありますし、こちらの王とはなにかとよしみにしてもらってます。その辺の伝手を頼ってお願いしてみましょう」
姫の伝手を期待してカラバを目指す。
カラバの城門で一悶着があったが無事入国できた。
城からも宰相が迎えが来た。
「お久しぶりですね。アルフレア王女」
優雅に一礼をする犬耳の宰相
「えぇ、シシドもお変わりないようで」
シシドが乗ってきた馬車に乗り換える俺と姫。他のメンバーは別の馬車に乗っている。
「あの…こちらのレディはアルフレア様の妹様でしょうか?」
「いえ、こちらは私の食客で騎士のアリステル様です」
「き、騎士!?…い、いえ、失礼しました。」
まぁ見た目、4歳の女児だからな…
俺が騎士に見えるなら眼科か精神科に行くべきだろう。
移動する馬車の中から街並みを見る。
獣人と言っても、宰相のように限りなく人に近い容姿の者もいれば、獣が二足歩行しているような奴もいる。バリエーションが豊富だ。
要塞のような王城に入ると、犬耳メイドさんに案内されて客間に通される俺達。
犬耳メイド…悪くない。
メイドさんに接待されていると
「よぉ、アルフレア!久しぶりだな!!」
ライオン顔の大男と宰相が入ってきた!
「これはゲオパルド国王陛下!お久しぶりです!」
カーテシーで挨拶する姫。
サッとひざまづくレイチェル。
それに習い俺も姫の顔を立ててひざまづく。
ネレイ達も続く。
「よいよい、楽にするがよい」
気さくと言うか豪放と言うか悪くない王だ。
王に促され席に着く俺たち。
「聞けば、このお嬢さんがオリハルコンを必要としていると聞いたが…」
「はい、彼女は我が国を火竜から救って頂いた英雄。
その英雄の願いを叶えるのは王族として当然の事。」
「火竜!…まさか。ランバードに火竜が現れたというのか!?」
「はい、ちょうど火竜の死骸もあります。お見せしましょうか?」
頷く王。
王城に隣接された兵士訓練所に移動する。
その広場に火竜の死骸を出す。
「な、なんと!!」
30メートルの火竜の死骸に驚愕する宰相に護衛の兵士達。
「つ、作り物…ではないな…」
火竜の瞼をめくる王。
「もし宜しければ、後日この火竜を剥製にして贈り物とさせて頂きますので、オリハルコンを10キロほどお譲り頂けないでしょうか?」
交渉を持ちかける姫。
チラチラと物欲しそうに火竜を見る獅子王。
意外とイケそうか?
「シシドよ、オリハルコンは産出されておるか?」
「いえ、まだ世界樹の御身元に埋まったままです」
「うーむ」
悩む王。
「1メートルほど掘らせて頂ければ採掘できるかと思います」
「ではダメだな」
良し!力尽くで奪い取ろう!!
「だが!火竜を倒した貴殿の力に興味がある!!」
お!?
「我と決闘し、勝ったらオリハルコン20キロ譲ろう…そのかわり負けたらその命はないぞ?」
ミッションコンプリート!!
王をボコるだけでオリハルコンが手に入るなんて、なんて簡単なお仕事なんだ!
「お受けします」
俺の返事にちょっと驚くゲオパルド王。
「ガハハハ!決まりだな!!では後日、我が国が誇るコロセウムでやるとするか!」
シシドに指示を出す王。
「やりましたね。アリス様」
微笑む姫。
「問題が片付いたし、カラバ観光と洒落込むか」
「「「はい」」」
◇◇◇◇◇
この国は力が全てらしい。
まぁ王からして脳筋ぽいから仕方がないのかも知れん
揉め事は力で解決。実に俺好みの法律だ。
本気で移住を考えても良い。
「あ、アリス様!も、もし移住する時は事前に私に教えてくださいまし!!」
俺の手を握り、懇願する姫。
街行くネコ耳娘のしなやかな身体に、うさ耳のバニーガール…
バニーガール!?
エナメルのハイレグレオタードに黒の網タイツ。そしてハイヒール!!
マジモンのバニーガールだ!!!
[100%バニーガールです]
アイのお墨付きだ!
「ア、アリスさま!!バニーガールがお好きなら王国でもバニーガールのメイドを雇います!だから移住はまだしないでください!!!」
バニーガールについて行こうとする俺を押し留める姫。
◇◇◇◇◇
王城の客室に泊まる俺達。
「正直、ご主人様のトレーラーハウスの方が遥かに快適だよ〜」
王族を迎える為の一等客室なんだろうけど…トイレは汲み取り式だし、シャワーもない。
魔法で空調は効いているが…ベッドもソファーも固い
「トレーラーハウスより良い部屋は王宮にもありませんよ」
獣メイドさん達がお茶菓子を用意してくれるが…
うーーーん。仕方がないとは言え、アイテム売買スキルで買った日本のお菓子と比べると、味は数段落ちる。
それに何故か俺の前には様々な人参料理が並べられる。
人参を食べて栄養をつけろって事だろうか?
「どうやらアリスさまの食べ物に慣れ過ぎてしまったようです」
姫の言葉にみんな頷く。
しかし、おもてなしの気持ちを無下にはできない。
全部頂く。
そうこうしているうちに決闘の日が決まった。
◇◇◇◇◇◇
3日後…
世界樹の根元にあるコロセウムに案内される俺たち。
「ルールを説明させていただきます。」
コロセウム選手控え室で、宰相シシドからルール説明を受ける。
「まずアリステル様の力量を確かめさせて貰う為、2頭の獅子と戦って頂きます。敗北した場合はそのまま獅子の餌となって頂きます」
ゲオパルド王は獅子三頭を倒す事が出来るらしい。
「獅子に勝った暁には、ゲオパルド王と戦って貰います。この試合にルールはなく相手の死、もしくは降参で決まります」
ふむふむ。殺してもオッケーか。
「なお、アリステルさまが降参した場合は王の妾になって頂きます」
ぶっ!!
吹き出す俺。
おいおい、この国の王はあんななりしてロリかよ!!
ま、俺の美貌なら仕方がないか。
「了解。いつでも行けるぜ」
金棒を担ぎ、
ビッ!と宰相に向かってサムズアップする俺。
「センセー応援してますーー!!」
「ご主人様!瞬殺しちゃえ!!」
(アリスさま、相手はただの達人です。殺さないようにお願いします)
ゲオパルド王はなかなかの好人物だ。
姫の申し出に頷く俺。
兵士達に案内されコロセウムに出る。
うおおおおおおおおおお!!!!
熱狂的歓声で出迎えられる俺。
「あんな子供がライオンの餌かよ!!」
「うひぃぃ!!興奮してきた!!!」
俺の死に様を期待する獣人どもの声が聞こえる。
俺はコロセウムの舞台下に控える姫の元に戻る。
「お嬢ちゃんビビッたのかい?」
「もう遅いぞ!ライオンに食われちまえ!!」
観客の野次がうるさい。
(瞬殺した方が良い?それとも盛り上げるように戦う?)
(ここは力を見せつける為にも瞬殺でしょう)
(おっけ!)
コロセウムの中央に立つ。
檻に入れられた2匹の体長5メートルを超えるライオンが俺の前に用意される
コロセウムの中央の特等席からゲオパルド王が宣言する。
「オリハルコンを求めて我に挑むは幼き騎士アリステル嬢だ!!皆の者!この幼き騎士の健闘を祈ろうじゃないか!!」
ワァァァァァ!!!
「死ね!死ね!死ね!!死ね!!」
俺に観衆から盛大な声援が飛ぶ。
「始め!!!」
二人の奴隷がそれぞれのライオンが入った檻を開ける。
ガウッ!
一人の奴隷が逃げ遅れ、一瞬で頭を齧られ即死する。
2匹のライオンがその奴隷を食べ始める。
俺はライオンの食事が終わるのを待つ。
「ビビって動けないのかい?バニーのお嬢ちゃん!!」
野次が飛んでくるが無視。
食事を終えたライオンがこちらを向く。
ガルルルッ!
俺を餌のおかわりと認識したのだろう。
狩りの体制に入る2匹のライオン。
左右から別れて飛びかかってくるライオン。
シュ!シュ!!
金棒をふた振り。
グシャ!グチャ!
顔面が潰れて脳症を撒き散らし吹っ飛ぶ2匹のライオン。
1匹は野次を飛ばしていた観客席の男に突っ込む。
もう1匹は特等席にいる王の横に飛ばす。
俺からの挨拶だ。
静まり返るコロセウム。
「…………お…おぉ…おおおおおおお!!!!」
スタンディングオペレーション。
「シール・ギール(獅子殺し)ア・リ・ス!!シール・ギール(獅子殺し)ア・リ・ス!!」
金棒を振り回して、その声援に応じる。
◇◇◇◇◇◇
カラバ国国王ゲオパルド視点
「な、なんと!?」
2匹のライオンを瞬殺したアリステルに驚愕する!
我の横に倒れる頭を潰された獅子の死体。
「シシドよ…オリハルコン20キロ。用意しておけ」
「ハッ!」
我とて、過去に獅子を三頭倒した事がある。
しかし…獅子は本来、一撃で倒せるようなものではない。
三頭の獅子を相手した時は、盾で逃げながら隙を見つけて手傷を負わせ、弱った奴から各個撃破した。
二頭とは言え、あんな真っ正面から戦うなぞ自殺行為でしかない。
それをあの幼い赤子と変わらない少女がやり遂げだ。
「火竜を倒したと言うのは嘘ではないようだ」
「我が目で見ても信じられません!」
シシドも信じられないようだ。
「もし、我が死ぬような事があってもあの少女を罪に問うてはならぬぞ」
「ハッ!」
我は愛用のハルバードを掴むと、最強の相手が待つコロセウムに飛び降りた。
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