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園児とカップラーメン

天使ルディアルとの戦闘で大破したアリステルは緊急モードが発動し深い眠りについた。

[緊急モード発動]


辛くも天使を撃破した俺だが、機体が想像以上に損傷していた。


[全てのシステムを停止。機体の再構成を始めます]

意識を失い、その場に倒れる。



◇◇◇◇◇

[アリステル・レステル 再構築終了。再起動します]

見慣れた天井。

王城の離宮だ。


「せ、センセ〜!!」

お姫様ベッドの上で寝ている俺に抱きつくネレイ。


「良かったぁぁ」

ドロシーもいた。


「どのぐらい寝てた?」

「丸2日です」


なら身体の修復は終わっただろう。

ベッドから身を起こす。


「なんかベッド大きくなってない?それに天井も前より高くなってる…」


気のせいか、周りの物が全て1.25倍ぐらいになっているような気がする。


[間違いではありません]

「ん?」


ベッドから降りる。

そばに立つネレイもドロシーも1.25倍になっていた。


「センセ…可愛い」

「ほんと、お人形さんにしたいぐらい可愛い!」


自分のスペックを確認する。


全長 100cm (うさ耳型レーダーを除く)

重量 16kg (反重力装置制御不可)

ナノマシンによる遠距離攻撃不可

縮退炉エンジン最大出力30%


「な、なんで緊急モードのままなんだ!?」


緊急モード…それはアリステルがなんらかの要因で中破以上のダメージ、もしくは戦闘不可能状態になった時に発動するモードである。


身体を幼稚園児(四歳児)並みのサイズにしナノマシンを節約。と同時に外敵などに幼さをアピールし見逃して貰う、または善良な大人達に保護して貰う屈辱的な救援要請モードである。


保護モードのせいで、無意識にネレイのスカートの裾に顔を寄せ隠れてしまう俺。


「センセ〜、もう大丈夫ですよ〜」

ネレイに頭を撫でて貰う。

こくんと頷く俺。


「ちっがぁうぅぅ!!」

(アイ、ナノマシンが不足なのか?)


[否。天使との戦闘により縮退炉エンジンの一部が損傷。復旧する為の特殊鋼材が不足しています]


「核パスタか…」

縮退炉(ブラックホール)を囲むフレームに使用した金属だ。

地球上に10kgしかないUR金属だ。


「あぁ…よかったアリスさま。目を覚まされたのですね」

姫がレイチェルを伴ってやってきた。


「うん…」

ギュ。

姫に抱きつく俺。


「うん、よしよし」

姫様に頭を撫でて貰う。


「ちっがーーう!!」

またもや無意識に身体が行動してしまう。

これはマズイ。早く直さなければ!!


「姫さま、この世界で一番硬い金属はなんだ?」

「うーーん、天使の鎧…は消えてしまいましたね。あとは将軍のガントレットでしょうか?」


[どちらも不向きです]


「材質で言えば…オリハルコンでしょうか…」

ネレイが答える。さすが俺の弟子。


「オリハルコンの現物あるか?」


「宝物庫に一欠片ほどにあったと思います」


◇◇◇◇◇◇


宝物庫に向かいながら、俺が寝ていた間の出来事を聞いた。


王は天使に殺されたらしい。

そして王位を継承したのは第一王子のカインで姫は辞退したらしい。


天使がいなくなったので姫は別に王になる必要はなくなったとの事。


第二王子クロードは、今回の件で負い目を感じ王位を退いた。


騒ぎにならないように現在、王は行方不明で代わりにカイン王子が代理で王を務めているとしているそうだ。


姫に案内されて王城の最上階にある宝物庫に入る。

煌びやかな物が色々ひしめき合っているが、興味はない。


「これです」

ベルベットで包まれた小さな宝石箱に入った、小さな金色の金属。


(アイ、使えそうか?)

「はい、代用可能です。しかし量が4.5kg分不足しています)


「姫、これをあと5キロほど手に入らないか?」

「必要でしたら獣人国を滅ぼしてでも手に入れましょう」


「いやいや、普通に取引してくれよ」


物騒な事を言う姫に変わってレイチェルが説明してくれる。

「これは獣人国でしか取れない鉱物。…しかも門外不出。お金で手に入れるのはまず不可能でしょう」


なんと…

「そしてこのカケラは、遥か昔に獣人国を救った天使さまへの感謝の気持ちとして贈られた物らしいです」


国を救ってこれっぽっちしかくれないとは獣人はかなりケチな種族みたいだな。


「仕方がない。ならちょっと獣人国に行って貰ってくるぜ。ネレイ、場所は分かるか?」

頷くネレイ。


「ボクも行ったことあるから分かるよ!」

ドロシーは行った事あるのか、ならドロシーのジークに乗って三人で向かうとするか…


「私も同行します」

姫が無茶を言い出した。


「私は獣人国の王と多少の面識があります」

そう言う事なら同行して貰おうかな。


獣人国は東の大森林を超えた所にあるらしい。

馬車で約1ヶ月。ジークなら一週間で行けるだろう。


姫たちと旅支度の準備をしていると…

[アリス。天使ルディアルからメールが送信されています]


「件名は?」

[ありがとう とあります]


「開いてくれ」

[内容は 壊れた私を破壊してくれて本当にありがとう。お礼に私が愛用したアイテム売買スキルを差し上げます とあり、添付ファイルがあります]


アイテム売買スキル?

なかなか魅力的な名前だ。


[スキャンした所、怪しい所はありませんでした。

インストールしますか?]


うーーーん、やってくれ。


[アイテム売買スキルがインストールされました]

ARでウィンドウが開く…


「…って!コレ…A○az○nじゃねーか!!」

コイン投入口もあった。


地球にいた頃に愛飲していたドクペを試しに買ってみる。


ぼとっ

ベッドの上に落ちる350mlのドクペの缶…


「「「!!!」」」

突然落ちてきた缶に驚く姫たち。


プシュ…

プルタブを開け、俺はゆっくり一口飲む…


「効くぅ……」

懐かしい味に涙が浮かぶ。


「センセ…それは?」


俺はみんなの分を買い、それぞれに渡す。


「綺麗な容器…」

「ブリキ?かな?」

「冷えてる!?」

「コレは…面妖な…」


プシュ!

俺の見よう見まねでプルタブを開ける姫たち


一口飲み、口元に手を目を見開く姫。

「お、美味しい…」


コクコク頷くネレイ。


「うぐ!?」

一瞬固まるドロシー。そしてゴクゴクと飲み始める。


「くぅぅ!」

炭酸の刺激に目を閉じ耐えるレイチェル。


初めての味に夢中になるみんな。


さらに日本の味に飢えていた俺はカップラーメンやポテチ、ジュースを目に付いた物全てを片っ端から買い漁る。


急遽、異世界にて日本のジャンクフード試食会が始まった。


お湯を入れるだけで簡単に作れるカップラーメンに興味を示す姫。


最初は上品に音を立てないように麺を食べる姫だったが、俺はスープと一緒に啜って食べるように進める

そうしないと美味しくないし食べづらい。


王宮のテーブルマナーで音を立てて食べるの下品。

王族として禁忌として躾けられてきた姫だが…


ズズズッ!

意を決して勢い良く音を立てて啜る姫。

「!!」

啜ることにより、麺にスープが絡み味に深みが出る。

「美味しい…」


姫が啜って食べたのでみんなもラーメンを啜りながら食べ始める。


その味に感動するみんな。


その日、俺は倒してしまった天使の冥福とステキな贈り物に深く感謝した。

良いねありがとうございます。

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