決着
難攻不落の天使の前に手も足も出ないアリス
「くそっ…たれっ!!」
天使は翼を失い、俺はドラゴン殺しを失った。
ガンッ!!
剣を振る天使の腕を掴み、そのままヤツの顔面を裏拳で殴る。
取っ組み合いの喧嘩状態だ。
ダメージ0
顔面を殴られたにもかかわらず、瞬きすらしない天使
それに比べて俺は…
[ナノマシンの損耗率35% 重力バリア消失]
身体に少々ガタがきている。
[再生に30時間が必要です]
天使本体は弱い。
しかし攻撃を無効化する鎧になんでもぶった斬る剣、
特に鎧が厄介だ。
この鎧のせいで1000日手になってしまっている。
クソ…どうする?
はっちゃけ、はっちゃけぇ…
はっ!!
閃いた!!
矛盾だ!
姫と矛盾の話をしたではないか!
シュ!
俺の頭目掛けて振り落とされる天使の剣。
パシッ!!
その剣を両手で挟む。
必殺!真剣白刃取り!!!
「…」
天使がどんなに力を入れてもビクともしない。
そのまま天使の胴体にヤクザキックをお見舞いして蹴り飛ばす!!
天使の剣を奪取する事に成功!
「アリスさま!!」
「センセ!!」
「ご主人さま!!」
歓喜の声をあげる姫様達。
矛盾。
なんでも斬りさく天使の剣とどんな攻撃も無効化する天使の鎧。
どっちが勝つか試してやる!!
「往生せいやぁぁぁぁ!!」
地面に倒れた天使に向かって剣を突き立てた!
サクッ!
だが…その剣は、天使ではなく俺の腹に刺さる。
なん…だと…
いつの間にか俺の手から剣が消え、そして天使の手に中に戻っていた。
「ぐっ!」
天使を殴り飛ばす!!
[ナノマシン損耗率47% ]
ヤバイ…ナノマシンの損耗率が51%に達すると機体構成が維持できなくなり緊急モードになってしまう!
くそ!どうすれば!?
その時!
「アリスさま!受け取ってください!!」
姫さまの声!
振り向くと、ネレイの結界バリアに護られたブリキの兵士が走ってきた。
◇◇◇◇◇
王女アルフレア視点
「カ、カイエン将軍!!」
瓦礫に半分埋まっていたカイエンの元に駆けつける。
「お願い!彼を助けるの手伝って!!」
ブリキの兵隊達が慎重にカイエン将軍を押しつぶす瓦礫を取り除く。
「しっかりしてください!」
ネレイさんのヒールで意識を取り戻す将軍。
「ヒ、姫さま…も、申し訳…ありません。か、火竜に手も足も出ず…このザマ…」
ネレイさんのヒールでなんとか動けるようぐらいに回復している。
「か、火竜は…?」
「火竜はアリステル様が討伐しました」
目を剥くカイエン将軍。
「で…では、王都は…守られたのですか!?」
「いえ…まだ分かりません。もしかするともっと最悪な事になるかも知れません…」
「そ、それは…ど、どう言う事でしょうか?」
「天使が復活しました」
カッと目を見開く将軍。
「まさか…魔力渦がまた…」
彼は天使が魔力渦を発生させていると知っている。
私が教えたからだ。
カイエン将軍は数少ない私の信頼できる家臣の一人。
いずれ天使の骸を壊すのに彼の力が必要になると思っての事だ。
「それを調べるためにアリステル様が向かいました」
ズドォォォン!!!
激しい爆発音と衝撃波が私達を襲う!!
振り向いた私が見たものは…
爆発の衝撃で吹き飛ぶアリスさまのボロボロな姿だった!!
「せ、センセー!!!」
絶叫するネレイさん。
どうやら天使は敵だったらしい。
あのアリスさまが苦戦している!?
信じられなかった…
今まで間近でアリスさまの力を見てきた私には到底信じられない光景だった。
空飛ぶ天使に向かってストーンバレットを放つアリスさま。
軍隊を数分で壊滅させる破壊力を秘めた、そのストーンバレットを全身に浴びても、天使は避けるそぶりさえ見せず無表情のまま飛び続ける。
「アリス様!!天使様の鎧はいかなる攻撃も通用しません!!」
伝承には、天使の身体はどんな攻撃でも傷つかない!と伝えられている。
「ドロシー!結界を張ってろ!!コイツはヤベーぞ!」
アリスさまの口から信じられないセリフが出てくる!
あのアリスさまからヤベーと評価された天使は一体どんな強さを秘めているの!?
「ひいいいっ!」
その言葉に悲鳴をあげ結界を張るドロシー。
アリスさまのヤベー奴宣言に悲鳴をあげるドロシー
このまま、ここから撤退すべきか?
ううん、たぶん天使からは逃げ切れない。
「センセー!!」
ネレイさんの絶叫が上がる!
天使と共に50メートルの高さから落下するアリスさま
結界の外に飛び出そうとするネレイさん。
結界の外に出たら死ぬ。
私はネレイさんを押さえつける。
地面に落ちた天使は翼を失い、アリスさまは武器を失った。
取っ組み合いの喧嘩が始まる。
一見、アリスさまが優勢にみえる…
けど…天使の鎧がアリスさまの攻撃を無効化している
「往生せいやぁぁぁぁ!!」
天使の剣を奪い取ったアリスさま!
奪い取った剣で天使のお腹を刺す!!
「!?」
アリスさまの手から魔法のように剣が消え、
次の瞬間には天使の手に戻っていた。
その剣がアリスさまのお腹に深々と刺さっている…
よろけるアリスさま。
蒼ざめる私達。
その時、カイエン将軍の弱々しい声が聞こえた。
「ひ、姫様…こ、コレを…アリス殿に…」
カイエン将軍がまだ冒険者だった頃に手に入れたと言う聖遺物のガントレット。
ガントレットを受け取る私。
(あのガントレットでもう片方のガントレットを殴ったらどうなるんだろうね?)
その時、アリスさまの言葉を思い出す!
「矛盾!!」
どんな鎧も壊すガントレット。
どんな攻撃も無効化する天使の鎧。
「ドロシー!コレをアリスさまの元に届けて!!」
頷くドロシー。
ブリキの兵士にガントレットを持たせる。
「アリスさま!受け取ってください!!」
◇◇◇◇
アリス視点
ブリキの兵士が持っていたのはガントレットだった。
「コレはカイエン将軍の?」
それは俺の初代ドラゴン殺しを破壊したガントレットだった。
唯一、俺に黒歴史を与えた武器!!
姫さまは、俺にその武器を使えってか!?
(両手に付けたガントレットは古代アーティファクトでどんな鎧も貫き、どんな攻撃も防ぐと言われてます)
その時、カイエン将軍との模擬戦で言われた姫さまの言葉を思い出す…
なるほど…コイツならイケるかも知れない。
俺の手には大きすぎるガントレットを嵌める。
シュ!
使用者の手に合わせてアジャストするガントレット!
すげぇ!!
いったいどんな仕組み!?
いや、それより今は目の前のクソ天使だ。
天使と向き合う。
俺はボクシングスタイルで構える。
天使は小盾を前に出し、防御スタイルをとる。
相対距離2メートル。
絶対壊すマン 対 絶対壊れないマン。
絶対同士のぶつかり合い。
「チッ!!」
裂帛の気合いで天使の剣の間合いに入る。
天使は剣を降ってこない。
さらに半歩踏み出す。
シュ!
天使のシールドバッシュ!
そのシールドバッシュに向かって鉄拳を放つ!!
「姫!よく見とけ!!なんでも貫く矛と、どんな矛も防ぐ盾!…勝つのは使い手の…」
バキン!!!
「技量と!」
粉々に砕け散る天使の小盾!!!
初めて驚愕の表情を見せる天使。
「腕力で決まる!!」
天使の腹部に強烈なボディブローを叩き込む。
無数のヒビが入る天使の鎧。
パリン!!
天使の鎧が無数の破片となり砕け散る。
そのまま天使の陶器のような肌を撃ち抜く!
俺の拳が天使の背中に突き抜ける。
ふっ…
消える天使の剣。
天使の身体から天に向かって無数に伸びていた光の糸が1本、また1本と切れ大地に落ちてくる。
そして…
ゆっくり俺にもたれ掛かるように崩れ落ちる天使
…ありがとう。
そう天使が囁いたような気がした。
だんだん姿が薄くなり…光の粒子に変わる天使。
勝った…
「うっ!」
[ナノマシン損耗率52% 緊急モード発動します]
視界がホワイトアウトする。
◇◇◇◇◇
…夢を見た。
光の粒子になった天使が空に昇る夢だ。
その天使は陶器の姿ではなく肉感的なむっちりボディで、エロい純白のミニスカウェディングドレスのような鎧姿だった。
これが多分、生前の姿だったのだろう。
天使が進む先に少女達が姿を現わす。
「ルディ…遅いわよ!」
金髪の女剣士。
「ルディ、待ちくたびれました…」
貧乳ロリっ子の魔法使いの少女。
「ルディ、逢いたかった」
犬耳の女神官。
「お姉様!!お待ち申しておりました!!」
アルフレアにそっくりなお姫様。
「ルディアルさま、またお会いできて…嬉しいです」
涙を流す両手剣を背負ったメイドさん。
「ルディアルさま、またお逢いできましたね」
レイチェルに似た女騎士。
「でゅふふ、天使さまぁ!やっと、やっと逢えました!!」
目の下にクマを作った聖女。
それからも、次々と現れる美少女達。
そんな少女達に暖かく迎い入れられ、天使は微笑みを浮かべ、そして…消えていった。
この天使…生前は美少女ハーレム作っていやがったのか!?
なんつーー女誑しだ!!
そう憤慨した瞬間!
ブツッ!
スイッチを切ったブラウン管テレビのように俺の意識はそこでぷっつりと消えた。
いいねありがとうございます!
なお、アリスが戦った天使ルディアルは、
私の前作である
異世界に転生して天使にTSしたけど俺弱すぎません?
https://ncode.syosetu.com/n5469hw/
の主人公です。
本作と違いコメディ百合ハーレム物で、もし気になるようでしたら是非ご笑覧くださいませ^_^




