地対空
アリスの前に現れた器械天使ルディアル
無敵対無敵の戦いが始まる…
「姫…どうやら天使さまがお目覚めになられたようだぜ」
「!!」
驚く姫さま達。
[天使は城を出て貴族街を移動しています]
俺は火竜をアイテムボックスにしまう。
30メートルの巨体が一瞬で消えた事に驚く王子達。
わざわざ傷を付けないように倒した火竜だ。
天使と戦闘になって傷を付けてしまっては悔やんでも悔やみきれなくなる。
そうなる前に、天使さまにご挨拶に行くか…
「姫とネレイ達は王の確保に向かってくれ」
「分かりました。アリス様は?」
「俺は天使様におはようの挨拶をしてくる」
◇◇◇◇
ネレイ達と別れ、貴族街に着くと十数人の老若男女の貴族達が天使を中心にして祈りを捧げていた。
「おおお…天使さま」
「天使さまがドラゴンを倒してくださった…」
「天使さま!ありがとう!!」
幼いご令嬢が感涙の涙を流す。
俺の手柄が横取りされた!!
火竜の襲撃に怯え隠れていた貴族やその子供達、護衛の騎士にメイド達がどんどん天使の元に集まる
100人近いやんごとなき身分の人がひざまづき祈りを捧げる。
美しさ純白の翼を広げ、宙に浮く天使
「おおおお…」
翼から暖かな光が溢れて、人々を包む…
[魔力の高まりを感知]
俺は咄嗟に背後に大きく飛び下がる!
天使を中心にまばゆい光が輝く。
光が消えた時…そこにいた人達、全員が消えていた。血煙だけを残して…
唖然とする俺。
「おい、そこのクソ天使。感謝している人間をなぜ殺した?」
ゆっくりとこちらに向き直る天使。
天使と10メートルの距離で相対する。
じっくりと観察する…
想像していた天使とはかけ離れたイメージ…
どちらかと言うと天使をかたどった陶器だな。
無表情の美しい顔。
陶器で出来たスラリとした身体。
球体関節。
さらに全身から操り人形のような光る糸が天に伸びている。
身に纏う純白の鎧の形状(胸部装甲がGカップサイズのお胸様で盛り上がっている)で女の天使だと分かる。
これで背中に天使の翼がなかったら1/1スケールの西洋ビスクドールかと勘違いするところだ。
「火竜を倒したのは貴女ですか?」
感情のない無機質な声で問いただす天使。
「そうだと言ったら?」
「貴女の行いで5万人の命が救われました…感謝します」
天使の右手が光る。
ん?あれは…剣?
白磁に金のレリーフが入った片手剣が出てきた。
「故に…5万人殺します」
[推奨 撤退]
アイがいきなりの撤退を進言してきた!?
ヒュン!!
天使の剣が、光の軌跡を描きながら俺に襲いかかる!
遅い!!
カイエン将軍のパンチの方がよっぽど速い!
余裕を持って紙一重で交わし、カウンターで天使のドテ腹にドラゴン殺しをフルスイングで叩き込む!!
ガンッ!!
ドラゴン殺しを腹に受け、吹っ飛ぶ天使。
そのまま背後の建物に突っ込む!
ビシッ!
ドラゴン殺しが刃こぼれした!!
「あ、あぁっ!?ウソん!!」
1センチほど欠けてる!!これ直るのか!?
もしかして鍛刀し直し!?
[来ます]
ブゥドドドドド!!!
聞き慣れた音!
俺のストーンバレットと同じ音。
崩れた建物中から銃弾がばら撒かれた。
咄嗟に横に飛び、それを回避する。
弾け削れ抉れていく大地。
天使の左手がガトリングガンになっていた。
「なんで現代兵器を!!??」
[不明]
ガトリングガンで撃たれたら、さすがの俺でも破損する。
[重力バリア 展開します]
俺から半径20センチの空間の重力を100Gに変動させ、重力の歪みを作る。
歪みの影響を受け弾速と威力、命中精度が大幅に落ちる。
重力バリアにより無力化した弾丸を正面から浴びながら天使に肉薄する。
「こっの…野郎!!!」
溜め強斬り!
左手のガトリングガンを瞬時に小盾に変形させ、ドラゴン殺しを受け止める天使。
ガンッ!!
だが、軽量の天使では受け止める事は出来なかったようだ。
盾ごと殴り飛ばす!!
まるでド◯ゴ◯ボールの戦闘シーンのように建物を突き破り羽根を撒き散らし吹っ飛ぶ天使。
その無数に舞い散る天使の抜け羽根の中を突っ切り追撃をかける!
チッ!
何かが肌に接触する。
「機雷!?」
無数の天使の羽根が機雷に変化していた!
ズドッズドッズドーーン!!
連鎖反応で次々と爆発する機雷群。
「ぐえっ、げへっ、ぶへっ!ぶおっ!!」
効く!!重力バリアを纏っていても、身体が爆発の威力でシェイクされる!
シュパッ!
俺の首を狙って白刃が迫る!!
「くおっ!!?」
キィィンッ!
ギリギリでドラゴン殺しで天使の片手剣をパリィする。
「のっ野郎!!」
パリィと同時に天使の懐に踏み込みショートフックを天使の鳩尾にかます!
よろける天使。
そのままドラゴン殺しを握った手でアッパーカット!
バックに小宇宙を浮かべて吹っ飛ぶペガサス戦士のようにかっ飛ぶ天使。
ズザズザザザ…地面を50メートルほど転がる天使。
むくりと起き上がる。
[敵生命体の損傷率0% ]
あれだけやってノーダメージかよ。
バサッ!
接近戦は不利だと悟ったのか空を飛び始める天使。
重力ダイブするか?いや、一直線に空に向かって落ちるだけの重力ダイブは良い標的でしかない。
「アイ、飛行ユニット作れるか?」
[製作に1ヶ月かかります]
くそ手詰まりか!
天使が純白の翼を広げる。
また機雷をバラ撒くつもりか!?
シュパッシュパッシュパッ!!
「い!!?」
翼から舞い落ちた羽根が小型ミサイルに変化する。
「うおおおお!!」
ストーンバレットでミサイルを迎撃する。
ズドォォォン!!ズズウゥン!!!
何発か撃破するが…
「くぅ!!」
変態軌道で回避飛行し、俺に肉薄するミサイル群。
チチチチッ!
近接信管!!
直撃しなくてもターゲットのそばで爆発するミサイルだ!!
ズドォォォン!!!
「ぐぁぁぁぁぁ!!」
爆風と破片で吹っ飛ばされる
外装アーマーであるエプロンドレスがボロボロになってしまった。
「せ、センセーー!!」
ネレイの叫び声。
いつのまにか王城になだれ込んでしまったようだ
空飛ぶ天使にストーンバレットで応戦するが全弾弾かれてしまう。
「アリス様!!天使様の鎧はいかなる攻撃も通用しません!!」
アルフレア王女から助言が飛ぶ。
うん、ありがとう。なんとなくそんな気がしてた。
「ドロシー!結界を張ってろ!!コイツはヤベーぞ!」
「ひいっ!!」
悲鳴をあげ、結界を張るドロシー。
結界の中に、姫達とネレイ、そして何故がいる半死半生のカイエン将軍と…あれは…クロード王子…か?
「絶対こっちくるな!」
正直、天使からアイツらを守れ切れる自信がない。
情けないがドロシーの結界が頼りだ。
ガガガガガンッ!
ミサイルの奔流を交わす。そこに天使のガトリングガンのコンボを、ドラゴン殺しを斜めにし傾斜装甲状態で弾く。
ヒビだらけになるドラゴン殺し。
そろそろ壊れる…
空飛ぶ天使に対する有効打がない…このままだとジリ貧だ…
仕方がない!一か八か…
壊れかけのドラゴン殺しを天使に向かって投げつける!!
さっと交わす天使。
外れたドラゴン殺しは王城の壁を崩し城内に飛び込んだ。
「取った!!」
空飛ぶ天使の背中に張り付く事に成功する。
驚く天使!
俺は、天使に向かって投げつけたドラゴン殺しの影にに隠れるようにしてジャンプした。
ドラゴン殺しで出来た死角に入り、天使に肉薄する。
そして背中にしがみつく!
「落ちろ!!」
ベキキキッ!!
天使の両翼を無理矢理曲がらない方向に折り曲げへし折る!!
バシュバシュバシュ!!!
千切れた翼から無数のミサイルが射出される。
0距離で全弾被弾。
激しい衝撃で視界がホワイトアウトする。
[各種センサーシステムダウン。レーダー破損。コンデション レッド]
ズドォォォン!!
50メートルの高さから落下する俺。
きりもみ状態で墜落する天使。
[光学センサー回復]
くぅぅ…この身体になって初めて感じる激痛…
「センセー逃げてぇ!!!」
結界から飛び出そうとするネレイを押さえつける王女。
さすが王女!今どうすべきか分かっている。
ムクリと立ち上がる天使。
翼が折れた以外ダメージはなさそうだ。
くそっ子供が考えた最強の敵じゃねーかコレ!
◇◇◇◇◇◇
ネレイ視点
センセーと別れた私は姫様達と共に王城を目指す。
王を捕まえるためだ。
「こっちです!!」
王座の後ろに隠し階段があった。
姫に案内されてそこから地下深くに続く階段を降りる。
「ライト」
私は魔法を唱える。
パッとあたり一面を照らす。
「す、すごい…こんなに明るいなんて…」
センセーに教わった可視光線の波長の仕組みとライトの魔法のミックスだ。さらにレンズ効果で強化してある。
狭い室内だとドロシーさんの聖なる教会は使えない。
私は防御魔法を展開する。
これもセンセーから貰った本で学んだハニカム構造を利用して強化した防御結界だ。
「ここが天使の間です」
複雑なレリーフが彫り込まれた両開きの扉。
剣を構えるレイチェルさん。
私も悪行の棒杖を構える。
ドロシーさんも数体のブリキの兵隊を召喚する。
「ネレイさん、開幕ぶっぱお願いします」
センセー得意の開幕ぶっぱ。
姫様から開幕ぶっぱの指示が出た。
一気に扉をあげる姫様。
そして中にフラッシュブラスターを叩き込む。
これもセンセーに教わった閃光爆弾を元に作ったオリジナル魔法だ。
すごい光で相手の視界を奪う魔法だ。
光が収まったタイミングでレイチェルさんを先頭に天使の間に飛び込む!
…誰もいない?
「お、兄様?」
漆黒の鎧を着た男性が一人倒れていた。
「クロード様のようです。生きておられますが…トドメを刺しますか?」
物騒な事を言うレイチェルさん。
「父の行方が分かりません。あとで尋問します確保してください」
ドロシーさんのブリキの兵隊達に担がれるクロード王子様。
「とりあえず外に戻りましょう」
そして地上に戻ると瓦礫の下に埋もれた騎士様を見つけた。
「カイエン将軍!!」
姫様がその騎士様の元に駆けつける。
「ネレイさん、回復魔法を!!」
「はい!」
「う、ぐっうう…」
「良かった生きている…」
安堵する姫。
ズドォォォン!!!
耳をつんざく激しい爆発音!!
「ぐぁぁぁぁぁ!!」
その時、私は信じられないものを見た…
ボロボロになったセンセーの姿。
「せ、センセーーー!!」
私は悲鳴をあげた。
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