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腕相撲

「我が家にようこそ、大したもてなしはできませんがどうか旅の疲れを癒して下さい」

リタ父に案内されて家に入る。


部屋の奥ではリタと抱き合う母親の姿が見えた。


母娘の感動の再会をじろじろ見るのも悪いので、室内を見回す。


丸太で作られた小屋だ。ふむ、異世界転生モノで良く見かける作りの家だな。


そのあと、リタに村の中を案内して貰った。

人口100人ほどの小規模集落らしい。


ぐるりと一回りしてリタの家に戻る。

テーブルの上にウサギの炙り焼きなどが並べられ、俺をもてなしてくれた


ちなみに俺は食事を必要とはしない。

しかしこの体が破損した場合、それを修復する為の材料となるナノマシンが必要になる。


このナノマシンは下腹部、人間で言う子宮部分に搭載された3Dプリンターでタンパク質を利用して作り出す。


なのでタンパク質補給の為、遠慮なくウサギを頂く。


「ごちそうさまでした」

この小さな体でウサギ丸々一羽を食べきった俺に驚くリタ親子。


風呂はないようだ。

近くの川で洗うらしい。

リタとリタの母親、そして俺で川に入る。


近くてリタの父親が覗かれないように見張りをしている。


うさ耳センサーで、対岸の茂みにいる男達の熱源を感知する。

まぁ、覗くぐらいなら許してやるか。


トイレは共同トイレで、排泄物は堆肥として使うらしい。


5個あるトイレのうち一つに入る。

タンパク質に変換できなかった排泄物を排泄する為だ


つうか…これ出来の悪い和式便所だな…嗅覚にフィルターをかけ臭いを嗅がないようにする。


[アリステル、囲まれました]

AIが警告を発する。


便所の四方の壁の向こうに耳を押し当てる人物が四人。サーモグラフィーで表示される…


美少女の排泄音を聞こうと言う訳か…

はぁ…男ってやつは…まぁ、こんな娯楽の少なそうなところだ。


「あっ」とか「んっ」とか少し色っぽい声を出してサービスしてやる。感謝しろよ!


その夜、ベットの上で色々この世界の事をリタに教えて貰う。

この世界には魔法がある。ここから徒歩で3日ぐらいのところに街があり、さらに1ヶ月ほど進むと王都がある。


ゴブリンやオーガ、オークといったファンタジー定番の魔物が棲んでいるなどなど基本的な事を教えてもらった。


「独り立ちするなら、隣町にある冒険者ギルドに入るとか?」

なるほど、リタのアドバイスに従うことにしよう


次の日

「じゃ、お世話になりました。」

「ほ、本当に一人で大丈夫なの?」

隣町にあるギルドを目指す事にした俺を心配するリタ。


「私の強さ、知ってるでしょ」

「う、うん。そうねアリスさま強いものね」


「アリスさま、少ないですがこれをお持ち下さい」

渡された袋には干し肉やら日持ちするようにした硬いパンが入っていた。


「わぁ!ありがとう!!」

「本当はこの村の自警団に入ってほしいけど」

「おじさんごめんなさい」


俺は、俺の研究成果であるこのアリステル・レステルの性能を思いきり発揮できる強敵がほしいのだ。

こんな村では強敵に出会えそうにない。


俺を見送るリタ親子に手を振りながら別れを告げる。


村を出ると俺が捕まえた盗賊達の生首が晒されていた

あらら…随分、命が安い世界だ。



「ふんふんふふん。」

と、まぁこんな感じで村を後にした俺は、小枝を振りながら旅を楽しむ。


こうやって外を歩くのは久しぶりだ。

今までは、研究室に篭りきりだったからな。


みどり豊かなあぜ道をテクテクと歩く。

別に急ぐ旅でもない。

「ドラゴンでもかかってこないかなー」

と散歩気分で街を目指していると…


「お、お嬢ちゃん!!一人なのかい!?」

と馬車に乗った商人らしきおじいちゃんに声をかけられた。


「うん、冒険者になりに街に行くの!」

「ぼ、冒険者!?お嬢ちゃんがかい!?」


なんだなんだと荷台からプレートメイルを着た男とレザーアーマーを着た女剣士と僧侶らしき男が顔を出す。


◇◇◇◇◇

「あははは!!こりゃいいわ!!」

大笑いする鎧男。

商人達も街に向かっていたようだ。

一緒に行かないかと誘われたので同乗させてもらった。


ちなみに体重825キロの俺が乗ると馬車が壊れかねない。

なので反重量装置を起動して、体重を25キロまで軽減している。


鎧男達は商人に護衛として雇われた冒険者らしい。

「俺たちはストームブリンガーと言うチームだ。」

街では結構有名なチームらしい。等級はCランク。

中堅チームと言ったところだ。


「お嬢ちゃん、そんな体で武器振り回せるのかい?」

「私、力持ちだよ!」

「おー、じゃ俺と腕相撲するかい?」

グッと力こぶを見せつける鎧男。


「ロイ!やめなよ!子供相手にみっともない」

褐色肌の気の強そうなお姉さんがロイと呼ばれた男を止める。


「はは、ラビィ。冗談だよ」


「お兄さん!勝負!!」

俺はジャガイモが入った木箱の上に腕を乗せる。


「やれやれ」

大きな手が俺の手を包む。

「ロイ!怪我させないでよね!!」

「分かってるって」


「レディーごーーー」


シーーン。

「な!?なにぃぃ!!!」

どんなに押してもピクリともしない俺の細腕。


「ロ、ロイ?」

歯を食いしばりコメカミに血管が浮くほど力を入れるロイに驚くラビィ。


「両手使っていいよー」

俺は笑顔で挑発する


「クソォォォ!!」

意地でも片手で押し返そうするロイだが…

1ミリたりとも動かない。


俺は少しずつロイの腕を倒す。


「ウギギギ!!」

バタン。

ロイの腕が木箱の上に倒れる。


「嘘だろぉぉぉ!お嬢ちゃん本当に人間かい?」

「ロ、ロイ!今の本気だった?」

「全力だよ!本気出したのに、全く動かなかったぞ!」


ガッツポーズする俺。


「な、なぁ…アリステルちゃんだったかな?冒険者になるなら俺たちがギルドに推薦するよ」

「ほんと!!ありがとう!!!」


Cランクの冒険者が推薦してくれるなら、幼女の俺でもすんなり加入できるだろう。


「それで、もし良かったら俺たちのチームに入ってくれよ」

「アリステルちゃんが入ってくれるなら私も嬉しい!エトもそうでしょう!」


エトと呼ばれた僧侶?のような優男が頷く。

「えぇ、見たところ魔族ではないようですし…その力に興味があります」


うーーん、悪い人間ではなさそうだが…こいつらは足手まといにしかならないだろう。

しかし…いくら俺が強いと言っても…この世界の知識も地理感をない。



便利なガイドを雇ったと思ってお試しで入っても良いか…

「うん、じゃ仮入団って事でいい?」

「本当かい!絶対後悔させないよ!」

「アリステルちゃんありがとう!」

「アリステルに祝福あれ!」


こうして、とりあえず俺の居場所はできた。

いいね、ブックマありがとございます。

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