アリスvsヘビモス
ドラゴン殺しの素材を求めアリスは雪山に向かう
「ま、待ってくれ!!お、落ちる!!落ちる!!」
「ひっ!ひぃぃっ!!」
今、俺は背中にドワーフの鍛冶屋ギムを背負い、さらにお姫様抱っこでネレイを担いで全力疾走中だ。
アダマンタイト鉱があるヘビモスの寝ぐらがある雪山まで約200キロ。
時速145キロで走れる俺なら数時間で到着できる距離だ。
王女に雪山装備を用意して貰い王都を出発。
ヘビモス戦では役立たないと辞退するネレイを無理矢理担ぎ上げ連れ出した。
ギムリもまさか走って行くとは思わなかったようだ。
つか思う方が無理だろう。
ギムリの荷物もネレイの荷物もまとめてアイテムボックスに突っ込む。
そして、今の状態である。
[正面300メートル。スノーウルフ5]
雪山に入ってすぐに野獣とエンカウント。
「ネレイ。スノーウルフだ。倒せ!」
ネレイを降ろす。
「わ、私が!ですか!?」
もともとネレイは実力がある。
さらに俺のスパルタ教育で魔法の威力もAランク相当になっている。
いっぱしのアルケミストウイッチなのだ。
ただ性根がビビり屋で持っている実力が出せないだけだ。
「殺れ!」
「は、はひぃっ!」
「ネレイさんに」と王女から貰った杖…
ワンド・オブ・マレイフキュア(悪行の棒杖)をネレイに渡す。
殺傷魔法や妨害魔法に特化した禍々しい姿の杖だ。
ガウガウガウ!
獰猛な吠え声と共に向かって来る狼。
「ひ、ひぎっ…ひっ」
へっぴり腰で杖を突き出すネレイ。
「安心しろ、腕の2、3本噛み千切られてもくっつけてやる」
「そ、そんな!千切られる前に助けてください!」
実際、俺と毎晩エっな事をしているネレイの体内には俺の主成分であるナノマシンが溶け込んでいる。
それゆえ、腕や足ぐらいなら欠損してもネレイの体内のナノマシンが数週間で再生する。
「ひいいいいいい!!!」
悲鳴を上げたが一応無詠唱でサンダーボルトを放つネレイ。
4匹が感電死する。残り1匹は痙攣しているだけだ。
俺を見るネレイ。
俺は首掻っ切る仕草をする。
ビクッ!ビクッ!と痙攣するウルフ。
ガチガチ歯を震わせながら腰からナイフを抜く。
「え、えい!」
ガチッ
地面に刺さるナイフ。
「ううっ…」
グサッ
きゃいん!!!
ウルフの大腿部に刺さる。
「頭か心臓を狙え」
「ご、ごめんなさい!!」
グサッ!外れ!
グサッグサッ!!外れ外れ。
「敵対した者に情けは不要!殺れ」
「死んでぇぇ!!!」
グサッ…ようやく力尽きるウルフ。
「うむ、良くやった」
蒼ざめたネレイを回収し、ギムリを背負い再び全力疾走する。
2時間後…
途中、何度か野獣の襲撃があったがネレイに無理矢理対応させつつ、無事目的地に着いた。
「あれがヘビモスか…」
体長15メートルほどの巨大な獅子と言った感じの魔獣が山中の洞窟で寝ていた。
洞窟の入り口から中を伺う…
「チャンスじゃ、寝てるぞ」
戦斧を構えるギムリ。
「いや、起こしてからやる」
アイテムボックスから借りてきたハルバード出す。
全長3メートル。重さ15キロ。槍に巨大な斧を付けたような武器だ。
「なに!?わざわざ起こすのか!?」
「こう見えて騎士道精神あるんだぜ」
「嘘つけ!正面から戦って力試ししたいだけじゃろ」
ニヤリと笑う俺。
トコトコとヘビモスの顔の前まで歩く。
そこでふと気がつく。
ギムリ達の所に戻る。
「どうしたのじゃ?戻ってきて?」
「いや、アレ殺しちゃうと、誰でもアダマンタイト採掘できるようになるんじゃね?」
「そうじゃが…それが不味いのか?」
「いや、アダマンタイトの貴重性が失われて価値がなくなるかと思って」
「…たしかにそうじゃ…ならどうする?」
「殺さないで気絶させる。その間に採掘しよう」
「お、お主がそう言うならそうしよう」
再びヘビモスの前まで歩く。
「起きろ!!」
俺はヘビモスのヒゲを引き抜く。
ギャオオオオオン!!
「何でいちいち起こすんじゃ!!」
洞窟の入り口から顔を出し怒鳴るギムリ。
「寝込みを襲うなんてフェアじゃないだろ」
眠りを妨げられ、怒りに震えるヘビモス。
背中のたてがみから閃光がほとばしる。
「カミナリが来るぞ!」
さすがの俺も光より速くは動けない。
だが、落雷の位置は数秒前に分かる。
ヒョイ!
バリバリバリ!!
耳をつんざく落雷音。
「カミナリを避けるのか!!」
そのままヘビモスの、象の頭ぐらいありそうな鼻に鉄拳を撃ち込む。
その一撃で、ビクッと身体を震わせて気絶するヘビモス。
「今のうちに採掘しようぜ」
「お、おう…」
ギムリに指示された壁をハンマーで砕く。
粉砕され転げ出たアダマンタイトを回収していく。
「おおーこりゃ上質じゃぞ!」
「よっしゃージャンジャン回収しよう」
俺とギムリは採掘しまくる
「ネレイ!ヘビモスが起き始めたら教えろ!」
「は、はいぃ!!」
ビビりながらヘビモスの眼を観察するネレイ
ピクピクと瞼が動き始めるヘビモス
「せ、先生!!起きます!!!」
「おう!」
ガオオォ!!
俺に気がつき飛び起きるヘビモス。
バキッ!
ヘビモスの眉間にハンマーパンチをお見舞いする
ガクッ…崩れ落ちるヘビモス。
再び採掘に戻る。
「先生!!また起きます!!」
バキッ!
「先生!」
ゴスッ!
「せん…」
バキッ!
これを数回繰り返した所…
最後はずっと気絶したふりをするようになった。
ヘビモスの殴られ腫れ上がった顔を憐れむネレイ。
「もう十分じゃ、帰ろう!」
「オッケー!」
「ヘビモス、また俺が来るまでアダマンタイト守ってくれよ」
俺は尻尾を股の間に挟んで小さくなるヘビモスに別れを告げ、ギムリとネレイを担ぎ、王都に帰った。
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