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新たなドラゴン殺しを求めて

アリスはドラゴン殺しを失ってしまった。

「し、信じられん」

儂は闘技場で軽々とドラゴン殺しを振り回す幼い少女の姿に眼が釘付けになった。


儂の名はギムリ・アームストログ。

王都で一番の武器鍛冶屋だと自負しておる。


「な?言った通りじゃろ?」

ギルドマスターの我が兄ギム・アームストログに誘われて闘技場に来た。


兄の言う通り、少女の手には儂が打ったドラゴン殺しがあった。しかもスタンピードで出てきた巨大な竜の首をそのドラゴン殺しで刎ねたらしい。


もしそれが本当ならドラゴン殺しの製作者としてこんな嬉しい事はない。


しかし…

「重量軽減の魔法でもかかっているのか?」

少なくてもあんな幼女が片手で振り回せる重さ…いや人類全ての人間が片手で振り回せる重さではない。


「いや、儂も触らせて貰ったがそんな魔法かかってなかったぞ」


では本当にあの少女は腕力だけでアレを振り回しておるのか!?


ワーーーーー!

一際大きい歓声が上がる。


少女の対戦相手であるカイエン将軍が鎧を棄てたのだ。


「さすが将軍じゃな。ドラゴン殺しの前には鎧なぞ役立たないと分かっておるようじゃ」


「いや…ドラゴン殺しじゃなくて、あの幼女の腕力の前にはどんな鎧でも役に立たないだろう…」


あの少女ならその辺の棍棒でも鎧を叩き割りそうだ。



開始の合図をする国王。

残像を残す勢いでせまる将軍の猛攻を難なく交わす少女。


「な、なんつう速さじゃ!」

認識できない速度で殴りつける将軍の拳をさらに認識できない速さで交わす少女に眼を向く兄。


「なぜ、斬りつけない!?」

少女は将軍を挑発するだけで一切攻撃をしていない。


「多分、将軍を殺さないように王女に言われておるのじゃろう」


オオオオオ!!!

将軍を蹴り飛ばした少女に大歓声が上がる。


さらに将軍を挑発する少女。


呼吸を整え飛び込む将軍。


そして!!

バキンッ!!

「な!お、折れたぁ!!」

圧倒的有利に戦いを進めていた少女だが、一瞬の隙を突かれドラゴン殺しを折られてしまった。


「将軍のガントレットには天使の加護がかかっておるのじゃ」

兄がそっと教えてくれる


「アレがアーティファクトの力…」

噂には聞いていた…将軍のガントレットには不思議な力があるという事を。


「アーティファクトの力を前にしては、さすがにあの嬢ちゃんでもどうしようもな…なくもなかったわ」


ドラゴン殺しを失った少女は素手で将軍を殴り倒していた。


なんつー奴だ…


しかし、王女から近いうちにドラゴン殺しの修復、もしくは新調の依頼で登城を求められるかも知れんな。


その時は普通に修復なり同じ物を打って終わりにしよう。


だが、もしお嬢ちゃんが自らの足で儂の店に来たなら…アレを試してみるのも悪くない…


◇◇◇◇◇

アリス視点


「ぢぐじょぉぉぉ!!」

模擬試合を終えた俺は速攻で離宮に逃げ戻った。


そこで俺は、折れたドラゴン殺しを握りしめ、ベットの上をのたうち回っていた。


舐めプしてこのザマ!ちょーダサっ!

試合に勝って勝負に負けたとはまさにこの事だ。


(アイ!この記憶デリート!)

[出来ません]


「ま、まぁアリスさま!ドラゴン殺しを新たに打ち直しましょ!この国には名工のドワーフがいますから」

一緒に離宮に戻ったアルフレアが慰めてくれる。


そう言えば、ギルマスの弟がこのドラゴン殺しを打ったとか言っていたな。


「そのドワーフを紹介してくれるか?」

「え、えぇ!今から其の者を離宮に呼びましょう」


メイドに指示を出すアルフレア。

「いや、こちらから出向く。」

「え!?」


貴族が物を買ったり作ったりする時は商人や職人を呼び出すのが普通らしいが…


「俺は職人には敬意を払う事にしている」



日本ではその道のプロである職人を下働き程度にしか見ていない財界人が多かった。


そんな職人達を上から目線で見るような人間に俺はなりたくない。


「せ、先生…」

俺の言葉に感動するネレイ。


「分かりました。なら私も同行しましょう」


パンパンと手を鳴らしメイドを集める王女。

あれよあれよと言う間に良い所の娘さん風の衣装に着せかえられるアルフレア。


「これなら職人街を歩いても目立たないでしょう」

「早着替え…スゲーな」


「んふふ」

小脇に手を当て偉そうに微笑む王女。

「いや、メイドさん達の技術を褒めただけだ」


ムっとする王女。

とりあえず地味な馬車で鍛冶屋に向かう。


俺とネレイ。そして王女とサイフ持ち兼護衛の女騎士レイチェルの四人で向かう。


◇◇◇◇

「ほぅ、ここか?」

レンガ造りのゴッツイ建物だった。


「邪魔するぜぇ〜」

俺は遠慮なく中に入る。


「おう、いらっしゃい!武器か?鎧か…って!?」

俺を見て驚くドワーフ。


「おま!?アリステルか!!!」

「俺を知っているのか?」


「知ってるも何も…さっきの将軍との試合見ておったぞ!」


ぐあっ!あんな恥晒しな所を見られていたか。

「まぁ、王城に呼ばれるかなと思っておったが…お前さんの方から来るとはな」



「見ていたなら話は早い…新しいドラゴン殺しを作ってくれ」

「ウーーム。同じのならすぐ作れるが…また折られるぞ?」


それは困るな。

「カイエン将軍のガントレットは加護持ちじゃからな。並大抵の金属では太刀打ち出来ん」


「加護?」

初めて聞く単語だ。


「あのガントレットは古代アーティファクトと言われる武装の一つじゃ。神代の時代に天使が使徒達に授けたとされる特殊能力を秘めた武器じゃ」


「チートアイテムって訳だな」

「チート?」

「いや、こっちの話だ」


ちと気になるな。あとで将軍を闇討ちしてガントレットを頂くとするか。


「なら加護に負けない金属で頼む」

「そうじゃの…エルフ鉄と呼ばれるミスリル鉱はどうじゃ?」


「どんな鉱物なんだ」

「軽く強靭で魔法耐性も強く、ある程度の加護に対しても耐性がある」


神秘的な緑碧なミスリル鉱をテーブルの上に広げるドワーフ。


触ってみる…恐ろしく羽根のように軽い。


「却下」

俺は無下なく却下する。


「ま、そうじゃろうな」

頷くドワーフ。


「え!?なんでですか?」

疑問を挟むネレイ。


「そうですよ!お金の事なら心配しないでください」

と王女。


「いや、軽いのが気にいらない」

俺の言葉に、うんうん頷くドワーフ。


「剣って言うのは刃が付いた鈍器なんだ。鈍器は重さで殴ってナンボだ」


うんうん頷くドワーフ。


腰にミスリル製ロングソードを指したレイチェルが複雑な顔をする。


「まぁ、それはアリス嬢ちゃんみたいな豪腕な人間の話はじゃ。普通の騎士にならミスリルは十分良い武器じゃぞ」


「で、俺にオススメの鉱物はなんだ?」

「コレじゃ」


ゴトッ。

消しゴムサイズの黒い鉱物をテーブルに置くドワーフ


「持ってみろ」

俺はその消しゴムサイズの石をつまみあげる。


「む?」

[重さ15.95kg 未知の鉱物です]


「このサイズで15kgか…」

俺の言葉に驚く王女達。


「ほほっ!それを小石のように摘み上げる嬢ちゃんの方が凄いぞ。一瞬、間違えてただの小石を出してしまったかと思ったわい」


「いいなコレ!コレで頼むよ」

「良しでは行こう嬢ちゃん。コイツはアダマンタイト鉱と言ってな、ヘビモスの寝床にあるんじゃ」


そう言うと戦斧を担ぐドワーフ。


「「「え?」」」

驚く王女達。

「なぁに、アリス嬢ちゃんならヘビモスなぞ物の数ではなかろう?」


「オッケー任せろ!」


こうして俺はアダマンタイト鉱を求めてドワーフと旅立つ事になった。



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― 新着の感想 ―
[一言] ギムリの名前にファンタジーへの本気度を感じました! 幼女が大剣をぶんまわすのもまたよし!(笑)
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