王女の悪巧み
アリステルは王女と手を組む。
「ほう…あれが魔力渦か」
王都から南に30キロ。
王女専用の豪華な馬車の中からそれを確認する。
あたり一面麦畑の穀倉地帯にそれはあった。
[強大な特異点を感知]
俺たちは穴から500メートルほど離れた場所に陣地を敷く。
[直径50メートル完全球体の形状をしています]
見た目は完全な穴だ。
高さ10メートルの空間にぽっかりと穴が開いていた。
異次元に繋がっていそうだ。
「孵化が始まると、あの中から魔獣の群れが落ちてきます」
王女さまが説明してくれる。
「あんなのを討伐しろなんて…王女さまは嫌われてるね」
「私の死を望む人が大勢居ますから…」
なるほどね。だから王女自ら戦地に赴かされる訳だ。
「レステル様には大型魔獣を担当して頂きたい」
騎士団隊長が話しかけてくる。
その背後で用意してきた杭のバリケードを並べる騎士たち。
「小型魔獣は我らが引き受けます」
「いや、あんたらの出番はない」
「は?」
「開幕ぶっぱする!」
「ネレイは俺の背中につけ」
「はい!!」
「いえ、ネレイさんは私達が命に代えても守ります」
「大丈夫です。先生の側が一番安全ですから」
ときっぱり王女に断りを入れるネレイ。
「むむむむ!」
王女の心遣いを無下にされたと憤る女騎士。
「孵化が始まります!!!」
伝令が飛び込んでくる。
俺とネレイはバリケードの外に出る。
穴まで50メートルの位置に立つ。
そこから100メートルほど後ろに騎士団が陣取る。
穴から紫の稲妻がほとばしる!
ボトボトボトボトと雨粒のように体長1メートルぐらいの小型魔獣が落ちてくる。
その魔獣の姿はまるでラプトルのようだ。
俺はネットで見たアニメ…左腕にサ◯コ◯ンを持つ宇宙毒蛇のように左腕をナノマシンを使い変形させる。
その姿はガトリングガンだ。
「ストーンバレット!!」
小型魔獣の落下地点に発射速度 毎分3900発で石つぶてを撃ち込む
手元初速 1067m/s
その威力絶大。
これはネレイに教わったファイアーバレットの改良版だ。
落ちてくると同時に血煙に変わる小型魔獣。
ブドドドドドドドドドド
5分間撃ち続ける。
魔力と科学のハイブリッド魔法。
大気中に魔素がある限り無限に撃てる。
ピギャ!!
最後の1匹が血煙になる。
[殺害数6789匹]
棒立ちで呆然とする王女と騎士団。
グオォォオン!!!
穴から最後の巨大な魔獣が出てくる
お!T-REXか!
俺は背中のドラゴン殺しを抜き、T-REXの首めがけて跳躍する!
「まっ待ってください!!」
突然、叫ぶ王女。
「おっと!」
首を跳ねる寸前でドラゴン殺しを止める。
「お願いします!!もう少し時間をかけて倒してください!!」
「へ?」
王女の突然の待ったに素っ頓狂な声を上げる俺。
「先生!!危ない!!」
グオオオオオオオ!!!
バキッ!!
俺は後頭部にT-REXの強烈な鉤爪の一撃を受けた!
ギャオォォォォン!!
折れる鉤爪。
痛みで絶叫を上げるT-REX。
「ハゲたらどうする!!」
俺はT-REXの尻尾を掴み…背負い投げ!!
20メートル近いT-REXの体躯が宙に浮き、そして大地に叩きつけられる。
呆気なく失神するT-REX。
それを見て腰を抜かす騎士団。
「申し訳ありません…予想より遥かに早い討伐スピードだったもので…もう少し時間をかけて貰って…」
「何故だ?このT-RE…魔獣を倒せばスタンピードが終わるんだろう?」
「簡単に終わってしまうと…兄様達に被害が出ません…」
ん〜?こういう事か?
王選の邪魔になる第一、第二王子の陣営にスタンピードで被害を出してあわよくば殺害を目論んでいると…
「はい…最初は自身が生き延びる事に精一杯でしたが…レステル様のあまりのお強さに欲が出ました…」
テヘッと舌を出す王女。
腹黒!ますます気に入った!!
王女の作戦に乗る事にする。
とりあえずT-REXが暴れないように手足と尻尾。そして顎の骨を砕く。
そしてティータイムを過ごし…王子達の陣営に程良い被害が出た頃を狙ってT-REXの首を刎ねた。
巨大な魔力渦が消える。
騎士団達にこの事の箝口令を敷き、王女が頑張ったんだよーって証拠にT-REXの首を持ち王都に凱旋した。
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