アリスvsミノタウロス
ミノタウロス討伐の依頼を受けたアリス。
果たしてアリスはミノタウロスを生け捕りにする事は出来るのか?
「先生とこうして馬車で旅をしていると…新婚旅行みたいですね!」
レンタルした馬車でミノタウロス討伐に向かう俺たち。
御者席に座るのはネレイ。
一頭引きの馬車を巧みに操っている。
馬の扱い方など知らない俺は馬車の荷台の上でゴロゴロするしかない。
「夜になったらまた虐めてやるからな」
俺のその言葉に、顔を赤くして頷くネレイ。
「…でも…」
不満げな顔を見せるネレイ。
「なんで貴方も付いてきてるんです?」
と馬に乗り、後を付いてくるソーサレスのサラに噛み付くネレイ。
「別にいいじゃない!ミノタウロスとの戦闘になったら手伝うし、報酬も要求しないわよ!!」
横坐りで馬に乗るサラ。
上手いもんだと感心する。
「先生は貴方の手を借りなくても倒せます!!」
「貴方、本気でこんな小さな子に戦わせる気?」
睨み合う二人。
「サラ。付いてくるのは構わないが手出し無用だ」
俺の発言に驚くサラ。
「す、すごい自信ね…」
「背中のドラゴン殺しは飾りじゃない」
本当は飾りですけど。
「そう…分かったわ。でも危なくなったら手を出すわよ」
意外と本気で俺を心配してくれているのかも知れない。
◇◇◇◇◇
その日の夕方。
ミノタウロスが棲む廃墟まであと少しという所で一晩明かす事にする。
俺は小型テントを張り、その中にインフレーターを敷く。
基本、冒険者達はテントも張らず、そのまま空の下で毛布一枚で眠るらしい。
現代人の俺としてはもう少し文化的に過ごしたい。
さらに組み立て式のテーブルに、組み立て式のチェアーを2脚出す。
その間、ネレイはカマドを作り、俺が教えたカレーライスを作り始める。
テーブルの横にランタンをセットして…
まぁなんとなくキャンプしている雰囲気になる。
唖然とするサラ。
「天幕を張るなんて…貴族様みたいね…」
サラは毛布一枚で夜を過ごすらしい。
「先生!できましたよ!!」
「おう!今行く!!」
テーブルに並べられたカレーライス。
「いい匂いね…」
見た事もないカレーライスとその匂いに興味を惹かれるサラ。
「貴方の分はありません!」
「ネレイ…旅は道連れ。ケチな事言うなよ」
「すみません先生。」
サラの分も用意するネレイ。
「いいの?」
「あぁ、少し辛いが味は保証する。食ってくれ」
とりあえず椅子は2脚しかない。
サラは近くの倒木に座る。
「「「いただきます」」」
はじめてのカレーライスを緊張気味に食べるサラ。
「ん!!!!こんな美味しい料理初めて!」
目を輝かせるサラ。
カレーライスは異世界でも通用するようだ。
よほど気に入ったのだろう。ネレイにレシピを聞いていた。
とりあえず、レシピは金になりそうだから秘密にした
◇◇◇◇
次の日。ミノタウロスの住処である廃村に到着する。
苦い表情を見せるサラ。
ここで仲間を失ったのだろう。
「気をつけて、ミノタウロスは音に敏感に反応するわ」
なるほど音か。
「だから静かに移動して不意打ちを…」
「ミノタウロス!!出てこいやーー!」
俺は最大ボリュームで大声を出す。
「ば、バカ!な、なに考えてるのよ!!」
ウゴォォォォ!!!
俺の声に反応して、こっちに向かってくるミノタウロス。
牛の頭を持つ筋骨隆々なモンスターだ。
身長5メートル
体重320キロ
その手には2メートルを超える戦斧が握られていた。
俺は背中のドラゴン殺しを抜くと同時にミノタウロスに向かって飛び出す。
俺の頭めがけて振り落とされるミノタウロスの戦斧。
俺はストップモーションでその動きを見切る。
余裕を持ってギリギリで躱す。
外れた戦斧は地面に深々とめり込んだ。
俺は地面にめり込んだその戦斧を足で踏み押さえ込む。
グモモモモモモッ!!
戦斧を抜こうとするミノタウロス。
しかしピクリともしない。
アイがミノタウロスの戦闘力を分析する
[脅威レベル0です]
くそ、こいつもザコかよ!
がっかりする俺。
ブモッブモッブモッ…
息切れするミノタウロス。
戦斧を抜く事を諦め、かわりに俺に殴りかかるミノタウロス。
パシッ!
俺の顔より大きなミノタウロスの拳を手のひらで受け止める
そのまま背負い投げで投げ飛ばす。
20メートルぐらい飛んだ。
「うえ!?」
素っ頓狂な声を出すサラ。
「さすが先生!!!」
拳を突き上げ応援するネレイ。
グォォォォ!!
俺は地面に這いつくばるミノタウロスに戦斧を投げ渡す。
ブフフフフゥゥゥ!!
戦斧を拾うミノタウロス。
俺に舐められたと分かるのだろう。
眼を真っ赤にして怒りの表情を見せるミノタウロス。
フゴオオオオオオ!!
両手持ちに切り替え、全力で戦斧を俺目掛けて振りかざす。
どれチャンバラに付き合ってやるか。
ガキンンンッ!!
片手で持ったドラゴン殺しで戦斧を受け止める。
ブモッ!?
ここにきて、初めて怯えた眼を見せるミノタウロス。
さらに戦斧を振り回すミノタウロス。
ガキンンンッガキン!ガキィィィン!!!
ヘビー級の武器が激しくぶつかり合う。
ブモッブモッ!ブモモォォォ!!
必死に戦斧を振り回すミノタウロス。
「ふぁぁぁ…」
俺は欠伸を噛み殺しながらミノタウロスの攻撃全てをパリィする。
「うそでしょう…嘘よ…嘘よ…」
呆然とするサラ。
「飽きた」
ブンッ!
戦斧を振る事に夢中になっているミノタウロスの左足にローキックを放つ。
バキッ!
ブギャァォァァァ!!
ミノタウロスの左足がいとも容易く折れる。
そのままバランス崩して倒れる巨体。
ベキッ!
倒れたミノタウロスの右足も踏み折る。
ブギャァォォ!!
絶叫をあげるミノタウロス。
涙を流し這いつくばって逃げようとするミノタウロス
俺はそのミノタウロスの正面に回り、そして…
その牛ヅラにサッカーボールキックをお見舞いする。
呆気なく失神するミノタウロス。
決着はついた。
俺はアイテムボックスから太い鎖取り出し、ミノタウロスを縛り上げる。
そして馬車の荷台にミノタウロスを乗せる。
「さすが先生!!お見事です!!」
俺に抱きつくネレイ。
その唇にキスする。
ホワァと蕩け顔になるネレイ。
「サラ?」
ふと見るとサラは、ミノタウロスの寝床を漁っていた。
「あった…」
折れたバスタードソードと杖をそっと抱きしめるサラ
「ロバート…ネイ…」
死んだ仲間の物なんだろう。
「アリステルさん…ありがとう。仲間の仇をとってくれて…」
「あぁ、約束だ。街に戻ったらコイツを焼くなる煮るなり好きにしてくれ」
こくんと頷くサラ。
◇◇◇◇◇
王都。
「おおおおお!!」
「ミノタウロスだ!!」
「しかも生きてるぞ!!!」
ミノタウロスの姿に湧き上がる野次馬達。
生け捕りにしたミノタウロスを柱に縛り付け、晒し者にしながら凱旋する俺。
「な、なんであんな小さい子がミノタウロスを担いでいるんだ!?」
「ぬ、抜け殻なんだろ?あのミノタウロス…」
「あり得ないって…」
ミノタウロスを担ぐ俺の腕力で驚き騒ぎだす野次馬たち。
◇◇◇◇◇
ギルド内。
「ほ、本当にやりやがった…」
生きたミノタウロスに驚くギルドマスターと
開いた口が塞がらないモブ冒険者達。
ドサッ!
床にミノタウロスを落とす。
ブモォ…
すでにミノタウロスは半死半生だ。
サラにミノタウロスはどうするのか聞いた。
街の広場で生きたまま内臓を引き摺り出すそうだ。
なかなかグロいな。
このミノタウロスの処刑ショーはかなり金になるという事で商業ギルドが取り仕切る事になった。
ミノタウロスの処刑は1週間後、大々的に開かれるらしい。
それまでの間、俺にミノタウロスの警護をして欲しいと依頼があった。
1日20万。悪くない。
強敵はいなかったが、金は結構稼げた。
他国に行く旅費に当てるのも良いな。
ま、当面はギルドで強敵探ししながらネレイとイチャイチャしよう。
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