表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編小説どもの眠り場

小説家は我が儘なんです!

作者: 那須茄子

「新作書けました?」


 俺は、これで17度目となる台詞を使って問いただす。半分諦めモードに入っているが、こちとら仕事で来ている。明日の飯代まで、この仕事で食いつないでいくしかない身なのだ。

 諦めたいが、本当に諦める馬鹿はいないだろう。なにせ、仕事なんだから。


「いや! まだ全然だね」


 対する、小説家──行菜 秋吏(ゆきな ちゅうり)も、これまた17度目になる返答だった。しかも、煙草など吹かして、何やら澄ました顔である。

 まるで他人事のように。はぁ、呆れる。


「あのですね! ちょっとは真面目に取り組んで貰わないと困ります! 

こっちは責任背負ってるんですよ。編集長にまたとやかく言われたら、流石に言い訳とかもう効きませんからね」


 思わず、感極まり机を叩いたりしてしまう。

 うぁ、結構じんとくる。力入れすぎたな。


「お~~! 暴力は反対だよ! 私、暴力する男ムリなんだよね」


 なっ。いちいち癪に障る....。


「はいはい、そうですか。別に暴力ではないですよ。相手に危害は加えてませんし」

「いやいや。こんなか弱い女の子を、君は怖がらせたんだよ」

「怖がってないでしょ」

「ん、まぁ~ね! だって君、怒っても怖くないしさ」」


ぷーっと口に含んだ煙草の煙を、目の前で吐き出しやがる。ごほ。煙草独特のあの臭さが、鼻腔をやたらと刺激する。

 無邪気に、はにかむ悪い笑顔。人が煙草嫌いって言ってんのに! 


「....はぁあ。これ以上困らせないで下さい..」

「まぁ~さ。そんなに心配しないでくれよ。ちゃんと、新作は書き上げるから。だから、もうちょい待ってて。

絶対君を面白いって言わせる小説書き上げてみけるから!」


 はぁ。一体その自信はどこから出てきたのやら──でも、そんな事言われちゃ、何も文句なんて言えないよな。


「..分かった。じゃあ、飛びっきりの小説書いて下さいよっ!」

「うん!君の為にお姉さん頑張っちゃうぞ~」

「はいはい。で、どんな小説書くつもりですか?」

「ふふ。よくぞ聞いてた! 実はね、今度は路線を大きく変更して.....官能小説を書こうと思うんだぁ!!」

「....あー、却下です。うちは、そういうの扱ってないので」

「嘘でしょ! エロいの書かせろよ~~!」

「ホント、我が儘ですね」

「はぁ? 小説家ってのは我が儘なんですよぉ!」



 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ