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窓から差し込む柔らかな日差しによって目が覚めた。
なんだこの優雅な目覚め。前まではこんなんじゃなかったよ。ちょっとでもうたた寝しようもんなら叩き起されたし。
伸びをしてベットをおりる。窓のそばにいきカーテンを開けた。
日差しが差し込んできて気持ちいい。
コンコン
ノックの音がしたので返事をする。
「なんですか?」
すると、外からリテアちゃんの声が聞こえた。
「フィリナ。起きてる?」
「起きてるよ。どうしたの?」
「ハーブティーを入れたから飲むかなって思ったの。」
ハーブティー?めっちゃ優雅じゃん。
「飲むよ。ありがとう。」
「どういたしまして。開けていい?」
「いいよ。」
リテアちゃんがドアを開けて入ってくる。横にはティーポットとティーカップがぷかぷかと浮いていた。
おお〜凄い。魔術かな?
「ここに置いておくのよ〜。朝ごはんはもうちょっとまっててね。」
「ありがとう。」
にこにこ笑って手を振りながらリテアちゃんは出ていった。私も手を振り返す。
そして、テーブルの上に置いていってくれたティーポットからハーブティーをいれた。部屋の中にハーブのいい香りが充満する。
一口飲んで見るとちょうどいい暖かさで美味しかった。
ソファに座る。ハーブティーを飲みながら昨日の夜読んでいた小説の続きを読み始めた。
しばらくしてノックの音が響き朝食が運ばれてきた。
昨日と同じふかふかのパンにミネストローネ、トロトロのオムレツにサラダ。
うん、美味しそう。
早速椅子に座って朝ごはんを食べ始める。
夕食と同じくらい美味しくてあっという間に食べ終わってしまった。
美味しかったな〜っと思いながらハーブティーの残りを飲んでいるとノックの音がして魔王様の声が聞こえた。
「フィリナさん、今いいか?」
「大丈夫ですよ。」
私が答えると魔王様が部屋に入ってくる。
いったい何の用だろう?
「フィリナさん、浄化の仕事を今から頼めるか?」
「今からですか?」
突然の申し出にびっくりする。
「急ですまない。だが、一刻も早く浄化をして欲しいんだ。」
別に急なのは構わないんだけど……慣れてるし。でも、私今パジャマだよ?
「あの、格好が……。」
「服ならこの部屋のクローゼットにある。着替えたら直ぐに出てきて欲しい。」
「分かりました。」
助かると言って魔王様は部屋から出ていった。
早く準備しなきゃ。
部屋のクローゼットを開ける。中には高そうなドレスから可愛らしいワンピースまで色々な服がぎっしり詰まっていた。
その中からシンプルで可愛い着やすそうな水色のワンピースの引っ張り出す。
急いで着替えて外へ出ると部屋の前で魔王様、リテアちゃん、グレースさん、ヴォークさんとあと2人知らない人がいた。
1人はスキンヘッドで傷だらけの屈強なおじいちゃんで、もう1人は透明感のある綺麗なお姉様だ。
私が2人のことをじっと見ているとそれに気がついた魔王様が私の疑問に答えてくれる。
「フィリナさん、こちらの彼はオルド。第1軍団団長だ。そして、あちらの彼女はレッタリア。第5軍団団長だ。」
「よろしく。」
「よろしくですわ。聖女さま。」
それぞれ挨拶してくれた。私もそれに返事をする。
「よろしくお願いします。」
私がぺこりと頭を下げると、レッタリアさんがふふっと上品に笑って言った。
「そんなにかしこまらなくていいんですのよ。わたくし、フィリナ様とお話できるのを楽しみにしていたの。」
次にオルド団長も言う。
「そうだ。聖女殿。我々の願いも叶えてくれると言うのだからな。感謝する。」
頭を下げられて少しあわあわする。
すると、リテアちゃんが呆れたように言った。
「ちょっと!フィリナが困ってるのよ!まったく……。」
リテアちゃんの言葉に2人もしょぼんとした顔で謝った。
「すみません。」
「すまない。」
だ、大丈夫なんだけどな……。てか、リテアちゃん強いな。
そんなやり取りが終わると魔王様が口を開いた。
「挨拶が終わったようだし、そろそろ行こうか。」
するとみんなが私の方に集まってくる。隣に来た魔王様が私をマントでくるんだ。何してるんだろうと疑問に思った瞬間身体が宙に浮くふわっとした感じがして思わずぎゅっと目をつぶる。
目を開けると魔王城ではなく、辺りが薄暗い瘴気に包まれた場所に立っていた。
転移魔術だ!凄い!
魔王様のマントの中から出てくる。
なんか、凄いいい匂いした……。
私が今たっているのはどこを見ても瘴気が漂うそんな所だった。
うわぁ……凄い瘴気。
魔王様が私の隣に立って、辺りを見渡す。
「ここは、元々は水属性の魔物の住処だったんだ。だが、瘴気が濃くなりすぎて誰も住めなくなってしまった。」
瘴気が一段と濃いところに目を凝らすと、うっすらと湖らしきものが見えた。
「瘴気の発生源はあの湖ですか?」
瘴気には必ず発生源、言わば魔力が吹き出してる場所がある。そこを聖術で塞がなければ瘴気は祓えない。
「そうだ。あの湖の中から魔力が吹き出している。」
魔王様が頷く。
私は黙って湖に近づくとおもむろに履いていた靴を脱いだ。
リテアちゃんが心配そうにこちらを見る。
「大丈夫なの?」
私は大丈夫だと笑って答えると、靴を揃えて膝まであるスカートの裾を太もものところで結ぶ。そしてそのままさぶざぶと水の中に入った。
後ろで魔王様達の驚いた声が聞こえる。
水は思ったより冷たかった。
さ、寒い……。
瘴気の出処までそのまま歩いていく。いつの間にか水は胸のところまで来ていた。
うわぁ、ワンピースが……。
やっと瘴気の出処にたどり着く。むせ返るくらい瘴気が濃く息がしずらい。でも、制約魔法の拘束よりはましだった。
魔力が吹き出しぼこぼこと泡立っているところの上に聖術式をかく。聖力を込めてその穴に蓋をした。しばらく聖力を送り続けると泡がゆっくりと静まっていく。
完全に泡が収まると今度は瘴気が漂っている場所の上に大きな聖術式をかいた。そこにゆっくり聖力を流し込む。
すると、瘴気がゆっくりと晴れ、辺りの空気が綺麗になり、湖の水も澄み渡った。
瘴気が全部無くなったので岸の方へ歩き始める。
その時ふわっと身体が中に浮いた。そのまま、ふわふわと岸の方へ進んで行き、魔王様の隣でそっと下ろされる。後ろを振り向くと魔法陣が浮かんでいた。魔王様が魔術を使ってくれたみたいだ。
お礼を言おうと魔王様の方を見ると、魔王様は心配そうな顔をしていた。
「大丈夫か?寒くないか?」
また、魔法陣が頭の上に浮かび、ふわりと暖かい風が吹き抜ける。服と濡れていた髪の先が乾いていた。
魔王様は自分が来ていたマントを脱ぐと私に被せてくれる。
「あ、ありがとうございます……。」
戸惑いながらお礼を言う。ここまで心配されたのは初めてだ。正直どういう顔をすればいいのかわからない。
魔王様はまだ私の事を心配してくれていた。
「あんな冷たい湖の中に入って……。寒かっただろう。」
いよいよ炎まで出し始めたので、私は慌てて言った。
「もう大丈夫です。寒くないです。ありがとうございます。」
魔王様は炎を消したがまだ私の方を見つめていた。その時リテアちゃんが私の靴を持って来てくれた。
「もう、まおーさま。フィリナが困ってるのよ。フィリナ、靴どうぞ。」
リテアちゃんから靴を受け取って履いた。グレースさんが私の隣に来てため息を吐いた。
「まったく、びっくりしたわよ。あんた。迷わず湖の中に入っていくんだもの。」
すると、みんなも口々に言う。
「そうだ。相談もせずに何をするかと思ったら。」
「何か方法があったやもしれぬのにな。」
「そうですわね。わたくしたちの為にこれ程までしてくれるとは驚きましたわ。」
最後に魔王様が少し怒ったように言う。
「ここまでしてくれたのは凄くありがたい。だが、少しは相談をしてくれ。私たちにも出来ることがあるかもしれないからな。頼られるためにみんなここに来たんだ。」
魔王様の言葉に私は目を見開いた。まさか私の為にみんな来てたとは思わなかった。
なんか、ただの見学だと思ってた……。ごめん。
私はにっこり笑ってお礼を言う。
「ありがとうございます。」
「それを言うのはこちらだ。ありがとう。フィリナさん。」
魔王様にもう一度お礼を言われた。
そして、そのまま転移して魔王城に戻ってくる。
グレースさんにお風呂に入って身体を冷やさないようにしろと口酸っぱく言われたあと、みんなは解散した。
魔王様は最後まで私の心配をしていた。
私はそのままお風呂場に行って、お風呂に入った。
部屋に戻ってソファに座り、考える。
あれだけ心配されたのも、感謝されたのも初めてだ。いつもは当たり前のように流されていたから。
これが私の仕事だと分かっていても、やっぱり感謝されると嬉しいし、また頑張ろうという気持ちになる。
てか、なんか魔王様可愛かったな。ちょっとおろおろしてて。いつもは威厳のある表情をしてるけど、困ったら幼く見える。
魔王様のことを考えてふふっと笑う。
そしてその後の一日はゆっくりして過ごした。
魔王様やリテアちゃん、グレースさん、ヴォークさん、オルド団長、レッタリアさんが代わる代わる様子を見に来てくれて、楽しい1日だった。
特に魔王様は1時間に1回の頻度で来てくれて、リテアちゃんとグレースさんに怒られていた。
ご飯をお腹いっぱい食べて、本を読んで、みんなと話して充実した時間を送ったので、夜になると直ぐに眠くなった。
今日は早めに寝よう。
風邪を引かなきゃいいななんて考えながらベッドに入って目を閉じる。
うとうとしながらふと思った。
……魔王様にマント返すの忘れてた。
読んで頂きありがとうございました




