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捕虜、ときどき聖女  作者: きなこもち
第1章
5/26

さん

私の住んでいたレイアルド王国は小さいが豊かな土地があり海に囲まれた国だ。

長年鎖国をしており他国との交流は最小限になっている。

帝国などの強国がある大陸とは海を隔てており、その海は年中荒れていて越えるのが困難なため、他国から責められることもなく、戦らしい戦のない平和な国だ。

だが、魔界の入口がすぐ近くにあり、魔力を多く含んだ瘴気が押し寄せてくることもある。


そんな国で私は5歳まではごく普通の町娘として暮らしていた。

だが、私が聖力をもち聖術が使える聖女だと言うことがわかると、神殿に連れていかれた。

まず初めに行ったのは制約魔術をかけること。

これは主の名に逆らわないようにするためのもので、聖術では解術出来ないものだ。

私はそれを王ではなく王太子との間に結んだ。

王太子が命令だと言えばその制約魔術が発動し私は息が出来なくなる。そして、命令を聞くまでそれは続く。

そのせいで私は毎日のように、回復や治療、瘴気の浄化などを休まずにやらされた。


食事は少なかった。神に仕えるものは少ない食事でうんぬんみたいなことを神官に言われたが、聖力の回復は食事と睡眠が必要なのだ。

ただでさえ睡眠が削られてるのに、食事まで削られたら聖力が無くなっていくのは当たり前のことだろう。

そう考えたらあの時まで聖力が残っていたのは奇跡に等しいのかもしれない。




ここまで話したら、魔王様もリテアちゃんも少し怒ったような顔をした。


「そんな扱いを聖女にしてたのか?」


「サイテーね。そいつら。」


まぁ、傍から見ても酷い扱いかもしれないな。

実際私も辛かったし。


だけど魔王様は私が思っているのとは少し違う反応をした。


「そんな扱いをされていたのか……。君は他国に行ったことは?」


突然の質問に少し戸惑う。


「他国ですか?行ったことはないですけど……。」


まぁ鎖国してたしな。

魔王様は少しだけ焦ったような表情をした。


「やはりか……。少しまずいな……。」


まずい?何が?

何かあるのかな……?


空気についていけずオロオロしてる私を見かねたリテアちゃんが口を開いた。


「フィリナは聖女についてどれぐらい知ってるの?」


聖女について?

聖力があって聖術が使えるくらいしか知らないけど。


「そんなには……。聖術が使える人くらいしか知らないかな。」


私の答えに魔王様は納得したような顔をした。


「なるほど、君の国では聖女についての正しい情報が伝わってなかったのか。これはあの人たちに言わなきゃいけないな。」


魔王様は私の方を向いて話し始めた。


「フィリナさん。本来聖女というものは瘴気を祓うための存在なんだ。決して回復要員という扱いをしてはならない。」


そうだったんだ。でも、瘴気を祓うくらいは仕事に入ってたけど……。


「君の存在は君が思ってるよりも世界にとって大事なんだ。それについて説明するにはまず、この世界の仕組みから話さなければならない。」


お、急に壮大だぞ。

魔王様は少し考えてから続きを話す。


「この世界は聖を司る神と魔を司る神の2柱の神によって創られたんだ。」


「そのことについては知っています。」


それは神殿で何度も聞かされた。だから聖力や魔力を持っている人は神に愛されているらしい。


「そのことについては知っているんだな。」


魔王様が頷く。そして再び口を開いた。


「その2柱の神がいることによって聖力と魔力はこの世界に絶えず生まれ続けている。でも、人や動植物などの聖獣や魔物と呼ばれているもの以外の生き物は聖力が濃くても魔力が濃くても生きていけず、唯一聖力と魔力が混ざりあった土地で文明を築いた。それを守るために2柱の神は聖力の広がりを防ぐ存在と瘴気を祓う存在を生み出した。」


ここでふと疑問に思い、口を挟む。


「聖力も魔力も元々あったなら、何で魔力を使える人間は多くいるのに、聖力を使える人は聖女しか居ないんですか?」


「それは、単純に人間たちにとって魔力の方が親和性が高かったからだ。」


魔王様はそう答えてくれる。そして続きを話し始めた。


「聖力を阻む結界をはるのが魔王である私の役目だ。そして瘴気を祓うのが聖女である君の役目だ。」


なるほど。ってことは瘴気が濃くなってるところは全部私が祓わなきゃいけないってことか。


「そういうことだ。君は理解が早いな。」


声に出てたらしい。


うーん。でも、それは世界各地を飛び回らなきゃ行けないってことでは?

だいぶ激務じゃん。


「それは大変な仕事ですね……。」


「その通りだ。だから、聖女は人の世界で確固たる地位と高待遇が約束されるんだ。なんて言ったって世界のための仕事だからな。幸い1度祓った瘴気は何百年かは濃くはならない。だから聖女は何百年かに1度しか現れないんだ。だが、現れたら人類総出で歓迎されるな。」


へぇ〜。っていうか魔王様って物知りだな。

ん、ちょっと待って。魔王様っていくつだ?

まるで見てきたかのように言ってるけど……。


「あの、魔王様ってもしかしなくとも長生き?」


「そうだな。私がっていうよりかは魔物は基本的に長生きだぞ。瘴気と違って結界は常にはり続けなければならないからな。」


え、それじゃあ魔王様の方が大変じゃん。


私はここでずっと疑問に思っていたことを口に出す。


「あの、聖獣とか魔物ってそもそもなんなんですか?」


私はそれらについてぼんやりとしか知らない。魔物は実際に見たことはあるけど、聖獣はそもそも存在自体今知ったところだ。


「聖獣は結界の外に住んでいる聖力に耐性のあるもののことだな。ほとんどが獣の姿をしている。滅多に結界を超えてこないが、稀に人の世界へ足を運んだりすることがある。魔力に耐性はないな。魔物は魔力に耐性があって魔界に住んでいる。姿は様々で、この魔王城にいるもののほとんどは魔物だ。」


「もちろんボクも魔物なのよ〜。」


今まで静かに話を聞いていたリテアちゃんが言った。


「そうだな。リテアも魔物だし、私も魔物だ。まぁ魔力に耐性があると言っても魔力がとても濃いところでは死んでしまうんだがな。聖獣もそうだ。聖力がとても濃いところでは生きてはいけない。」


そうなの?

てっきり瘴気がある場所でも大丈夫だと思ってた。

そうなのか。


魔王様があらたまって言う。


「そこでだ。フィリナさんにお願いがあってだな。」


「なんでしょう。」


「魔界の瘴気を祓って欲しい。」


「いいですよ。」


私は二つ返事で了承する。ここまで色々してくれたんだ。何でもしますよ。


魔王様は嬉しそうに


「助かる。」


と言ってくれた。

どうやら瘴気のせいで魔物の居住区域が狭まっていて困っていたらしい。魔物の健康被害も出ていたそうだ。それで、一刻も早く何とかしたかったらしい。


凄く魔物のことを大切に思っているんだな。


魔王様の笑顔を見て私はそう思った。








読んで頂きありがとうございました

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