いち
目を覚ますとふかふかのベッドの上にいた
ここはどこだ……?
全く見覚えがない場所だったのでゆっくりと体を起こして辺りを見渡す。
寝たからなのか体調は良くなっていた。
とりあえず状況を把握しようとベッドから降りるとジャラっと鎖が擦れるような音がした。下を見ると足首に黒い足枷がしてあった。よく見てみると複雑な魔術がかけられている。
うわぁ……解術がめんどくさそ……
幸い鎖は長く部屋の中なら自由に歩き回れそうだったのでふかふかの絨毯の上を裸足でうろうろする。
部屋の中には薄ピンク色のシーツがかけられたふかふかのベッドと白色の机とソファ、本がぎっしり詰まった本棚、ピンクと白のドレッサー、足元には薄ピンク色の絨毯が敷き詰められていた。
うん、シンプルだけど可愛い部屋だ。私好き。
ていうか、服もいつの間にかシンプルな白いワンピースになってるし。靴もどっか行ってるし。
というかワンピースより寝間着っぽいなこれ。
服を引っ張ってみる。
つやつやしてて触り心地がいいそれは見るからに高価だった。
ひとしきり服を堪能したあと、本棚に近づいてみる。
専門書から小説までなんでも揃っていた。
とりあえず適当に真ん中にある本を取ってみる。
題名は……
コンコン
ノックの音が響いたので驚いて反射で本を戻してしまった。
まだバクバクしてる心臓を抑えつつ恐る恐る返事をする。
「は、はーい……?」
なんかまるで自分の部屋かのような返事をしてしまった。
「元気かしら〜?捕虜ちゃん」
外から少し高い男性の声がした。そして直ぐに諌めるような低めの美声が聞こえる。
「グレース、やめろ。失礼だ。」
「あのぉ、私気にしてませんけど」
「ほらぁ〜あの子もそう言ってるじゃない。全く主様は頭が固いわねぇ」
「……グレース。」
しばらく扉越しで会話するという不思議な状況が続いた。
それに違和感を感じたらしい主様と呼ばれた方が咳払いをして艶っぽい声で言った。
「このままというのもあれだから、入ってもいいだろうか?」
「いいですよ。」
私は二つ返事で了承する。扉の向こうで驚いた気配がした。
でも、私も状況を把握したいしなぁ。
扉が開かれて2人の男が入ってきた。
1人目はクルクルと巻かれた髪を後ろでお洒落に編み込んだ、メイクバッチリの綺麗な男の人。
2人目は肩まである艶やかな黒髪を緩く結んでいる赤い目をした美青年。
そう、美青年なのだ。
2人が部屋に入ってきた瞬間、部屋が明るくなった気がするくらいに光り輝いており、危うく目を潰すところだった。
「すまない。急にこんなところに連れてきてしまって。」
美青年は形のいい眉を下げて申し訳なさそうに言った。
でも私はそれどころじゃない。
やべぇ……声がいい……
2人ともとてつもなく声がいい。男の人の方は色っぽく少し高めの声で、美青年のほうは低く艶っぽい声だ。
どちらも聞き心地がいい。
しばらく声に聞き惚れて会話を聞き逃してから質問する。
「あの、一体ここはどこですか?っていうかそもそもあなた達は誰ですか?」
すると美青年は少し微笑んで答える。その笑顔はあっこいつ話聞いてなかったなといわんばかりの笑顔だったので、多分なんの脈略もなかったのだろう。
「自己紹介が遅れてすまない。私は魔王のヴィアタリスだ。そしてこっちが」
「第四軍団団長のグレースよ。」
綺麗な男の人改めグレースさんがにっこり笑って言う。
「こんな形だけど男だからね〜」
あ、それは見た時から分かってました。
グレースさんが握手を求めてきたのでそれに応じる。
近くに来るとグレースさんがぼそっと呟いた。
「あら、この子肌の様子は酷いけど結構可愛い顔してるじゃない。磨いたら光りそう」
もしかしなくても褒められてる?
やった。ちなみに肌の様子が悪いのは王太子達の所為です。
握手し終わったのでひとまずソファに座る。
その様子を確認した魔王様が話し始めた。
「とりあえず状況を説明しよう。君はどれくらい把握している?」
「全くこれっぽっちも」
「でしょうねぇ〜」
「わかった。まず、君が倒れたあとの話からしよう。君の仲間にはひとまず帰ってもらった。」
魔王様の話を聞くに王太子たちは私が倒れたあと眠らされ転移魔術で強制帰宅したらしい。怪我は何もしてないそうだ。
どうせなら腕の1本や2本持って行って貰っても良かったんだけどねぇ。
「それで君なんだが、一応捕虜という立場になる。だから、その足首に着いている鎖はつけて貰うことになる。」
私は足元の枷を見る。
あぁ〜このやけに厳重そうな魔術がかけられてるやつね。
でも別に違和感は無いしこれくらいはいいけど。
「それと、基本的にはこの部屋で過ごしてもらうことになる。外出も私の許可が必要だ。」
それは捕虜として当たり前でしょ。
っていうか、許可があれば外出できるんかい。
「まぁ、勝手に魔王城をうろつかれても困るしねぇ〜。あ、安心して頂戴。お風呂は言ってくれれば何時でもはいれるから。」
グレースさんがにっこり笑って言う。
え、お風呂あんの!?
「お風呂入れるんですか!?」
びっくりして私が言うと魔王様はきょとんとした。
「まぁ捕虜と言っても聖女だからな。」
くそ、イケメンはどんな表情でも様になる。
魔王様は困惑した様子で尋ねてきた。
「君は……今までどんな扱いを受けてきたんだ……?」
「え?それは……」
ぐぅぅ〜
ここぞとばかりにあの王太子の愚痴をぶちまけようと話そうとしたそのとき、盛大にお腹がなった。
グレースさんはぷっと吹き出し、魔王様もクスッと笑った。
恥ずかしい……
真っ赤になってるであろう顔を押さえながら
「笑わないでください!!」
と声を荒らげる。
魔王様は微笑んで言った。
「まあ時間は沢山ある。話は後で聞くとしてまずは食事にしよう。」
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