じゅうなな
その場にいる人たちは寝ているようだった。そしてその場にはほんのりと魔力が漂っている。
こ、これは……。
なんだかすごく嫌な予感がして振り向くとそこには魔王様が立っていた。やけににこやかな笑みを浮かべている。
「あ、あの……魔王様?」
私はそっと声をかける。だが、魔王様はただ微笑みながら近づいて来るだけだ。とっさに危機感を感じて脱兎のごとく逃げ出す。そんな抵抗も虚しくすぐに捕まってしまった。
「フィリナさん。何故君はここに居るんだ?」
魔王様は静かにそう聞いてくる。私は必死に目を合わせないようにしながらしどろもどろに答えた。
「い、いやたまたま〜みたいな?」
魔王様は何も言わない。その様子に何もかもバレていることを悟った。魔王様はため息をつく。
「とにかく無事でよかった。」
怒られるかと思って身構えていたら予想外の言葉で少し驚く。
私のこと心配してくれてたんだ……。
魔王様はシュレーヴァさんの方を向いて言った。
「フィリナさんのことを守ってくれてありがとう。何かあったのか話して貰えないかい?」
私はシュレーヴァさんに向かって必死に首を振る。だがその要求も虚しく跳ね除けられてしまった。シュレーヴァさんは順を追って説明する。全部聞き終わった魔王様は眉を吊り上げた。
「君は少し危機感というものを持ちなさい!」
「ごめんなさい。」
慌てて謝る。魔王様は額に手を当てて言った。
「今回は私が来たから良かったけれど、もし2人だけだったらどうするつもりだったんだ?」
「返す言葉もないです……。」
私はしょんぼりとお説教を聞く。一通り自分の安全性について叱られた後、魔王様は眉を下げて微笑んだ。
「とにかく怪我がなくてよかった……。」
その少し泣きそうな表情に魔王様にすごく心配をかけたのだと理解した。
「心配かけてごめんなさい。」
魔王様は私をぎゅっと抱きしめるともういいんだと言った。
しばらくしてそっと身体を離す。そして魔王様が今まで何をしていたかを聞いた。
魔王様は今まで魔物を奴隷として売買している組織を追っていたらしい。そして今日あと一歩の所まで情報を掴んで取引現場に行ったら私達がいたそうだ。私に話さなかったのは危険に巻き込みたくなかったからだと言っていた。そんな言葉に嬉しくなる。
取引現場にいた人達を縛り上げ衛兵に引き渡して私達は帰路に着いた。魔王様と私は隣同士で歩き、少し離れたところをゆっくりとシュレーヴァさんが歩いていた。
「わざわざ私の為に動いてくれたのはありがたいがもう尾行なんて真似はしないでくれ。危険だ。それに君は尾行は下手だ。」
最後の言葉にムッとする。
「分かってます。シュレーヴァさんにも言われました!でも、私魔王様が心配だったんですよ。」
「私が?」
「はい。だって誰にも頼らないし、全部一人で解決しようとするし。私も力になりたいんです。」
魔王様の目を見て言う。魔王様は面食らっていた。なんだがいい雰囲気だ。その時はっと思う。
今渡すべきだ……!
鞄に手を入れ中を探る。しかしいくら探しても目当ての物は出てこなかった。
やばい……落としてきちゃったかも……。
とっさにだっとかけ出す。魔王様とシュレーヴァさんは振り返って声をかけてきた。
「忘れ物です!すぐ戻るんで先に行っててください!」
2人の返事を待たずに走る。そしてあの路地裏に戻ってきた。
ここかな……?
しゃがみながら辺りを探す。幸い直ぐにそれは見つかった。
「あった!」
路地の隅に落ちていたそれは幸運にも大した傷は着いておらず、少し拭けばすぐに綺麗になった。
よし!帰ったら渡そう!
ルンルンな気持ちで歩き出す。するとがっと後ろから誰かが身体を掴んできた。もがいてみるが力が強く身動きが取れない。
やばい……。
声を上げようとすると口に布を押し当てられた。
「んーんー」
どうにか助けを呼ぼうとするが声にならない。徐々に目の前が薄くなっていく。ぷつんと記憶がそこで途切れた。
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