じゅうろく
あけましておめでとうございます。新年1発目の投稿です。
お城に帰ってきた私達はまず皇帝に浄化が全て終わった旨を報告した。皇帝から労いの言葉をもらいこれからの予定をたてる。一応滞在期間は2週間ほどを予定していた。あと3日ある。
うーん。どうするんだろ?帰るのかな?
魔王様に聞いてみる。
「これからどうするんですか?帰るんですか?」
「いや、少しやることがあって私は残るよ。フィリナさん、先に帰りたかったら馬車を呼ぶけれど……。」
「魔王様が残るなら残ります。」
私がそう答えると魔王様は嬉しそう笑った。
「そうか。では一緒に帰ろう。」
「はい!!」
こうしてあと数日このリュレット帝国に滞在することになったのだが、魔王様は忙しそうでなかなか会えていない。
何してるんだろう。気になるなぁ……。
「と、言うことでこっそり跡をつけようと思うんだけどどう?」
「やめといた方がいいんじゃない?」
シュレーヴァさんが面倒くさそうに答える。魔王様に会えず暇していたのでここ数日はシュレーヴァさんのところに入り浸っていた。最初に私が来た時は驚いて帰そうとしていたが、何だかんだ相手をしてくれるようになった。
お菓子やお茶を用意してるから嫌がってないのは分かるんだけどな。
私はこほんと咳払いをして、改めて言った。
「でも、そうまでしないと分からないじゃん。聞いてもはぐらかすし……。」
シュレーヴァさんは胡乱げな目をして言った。
「ねぇ、ずっと思ってたんだけどさ、なんで俺に敬語使わなくなったの?」
「え?ダメだったんですか。」
慌てて直す。シュレーヴァさんは顔の前で手を振った。
「いやいやダメって訳じゃないんだけどね。何でなのかなって思っただけ。」
「うーん。なんか親しみやすいからかな。」
そう答えるとシュレーヴァさんが嬉しそうな顔をした。
「そうかな……?」
シュレーヴァさんの顔が赤く染っている。
照れてるのか?
シュレーヴァさんの顔をじっと見つめているとさらに顔を赤くした。
なんか変な空気になった……って危ない、話が逸れてた。
「話を聞こうにも会えないならしょうがないし、渡すものもあるし。困ってるなら力になりたいもん。」
「……わかった。でも俺も行く。」
「え?何で?」
シュレーヴァさんはため息をついて背筋を正した。
「女の子ひとりで行かせるわけないでしょ?危ないかもしれないし。」
私の気を使ってくれるんだ……。嬉しいな。
私は思わずにこにこする。
「なに笑ってるの?」
「ううん。なんでもない。」
シュレーヴァさんにはそう言ったけれど嬉しさでしばらく口角が上がったままだった。
そして翌日、魔王様が出かけるのを跡をつけた。もちろんシュレーヴァさんと一緒に。
バレないように注意を払ってこっそりついて行く。
「ねぇこれほんとに意味あるの?」
「しっ!バレちゃうから静かに!」
シュレーヴァさんに小声で注意する。魔王様は気がついていないみたいだ。
お城を出た魔王様はまず首都のフルールで1番大きな街に来た。そしてあるお店に入っていく。どうやらそこは本屋らしい。
あそこに何かあるのかな?
中には入らず窓からそっと覗く。中で店主らしき人と魔王様が話をしていた。
ま、まさかなにかの取引を……?!
思わず前のめりになる。しかし私が危惧したようなことは起こらず、何分か談笑した後魔王様は店を後にした。
何も無かった……。
次に言ったところはレストラン。何か食べるのかと思ったらまたもや店主らしき人と話をして終わった。その次の雑貨屋もその次の靴屋も全部何も無かった。
あ、あれ?別に心配するようなことないんじゃ……?
そう思っている私にシュレーヴァさんが突っ込む。
「ねぇこれただ知り合いに会ってるだけじゃない?魔王様長く生きてるし積もる話もあるんだよ。」
そ、そうかな……。でもだとしたら私になにか一言ある気がする。
悩みまくってるといつの間にか魔王様を見失ってしまった。
「ど、どうしよう……。」
「尾行向いてないんじゃないの?まぁ探してみるしかないよね。」
私達は聞き込みをしながら魔王様を探す。途中、好奇心旺盛な子どもたちから話しかけられたりした。
「ねぇねぇ2人付き合ってるの?」
「付き合ってないよ。」
バッサリと切り捨てる。子どもたちはシュレーヴァさんの服の裾を引っ張ってほんとに?ほんとに?と聞いていた。
「付き合ってるって言えてたらよかったね……。」
という曖昧な返事を何故かしていた。
そうして魔王様を探して歩き回っていると何故か薄暗い路地裏に来ていた。
「ねぇどこをどう行ったらここにたどり着くの?」
シュレーヴァさんが呆れながら言う。
う、うーん。人通りの多い道歩いてた気がするんだけどな……。
「もしかしなくても方向音痴?魔王さんが過保護になる理由がわかる気がする……。」
シュレーヴァさんがため息をつく。私は何だか申し訳ない気持ちになってきた。
それにしても何なんだろここ。
たくさんのガラクタが積まれている。廃棄場みたいだ。私の疑問にシュレーヴァさんが答えてくれる。
「そっか、フィリナちゃんは見るの初めてか。ここはスラムの入口だよ。」
スラム?スラムってあの?
「シュレーヴァさんは来たことあるんですか?」
「何回かね。危ないから早く帰ろう。ここは違法な取引の現場とかになったりするし、治安が悪いから。」
シュレーヴァさんがそう言ったその時獣の唸り声のような音が聞こえてきた。シュレーヴァさんも私も黙って耳を澄ます。すると確かに聞こえてきた。
魔物の声だ……!
魔界で過ごすようになってたくさんの魔物の鳴き声を聞いてきた。そしていつの間にか聞き分けができるようになっていた。さっきの声は低級の狼の魔物の声だ。
なんでこんなところで?
私は辺りを見渡して音の元を探す。曲がり角を曲がってすぐに大量の檻が置いてあった。
そこにはたくさんの低級の魔物が囚われていた。
「な、なにこれ……。」
私を見つけた魔物たちが一気に騒ぎ始める。後から追いついたシュレーヴァさんが呆然としている私の肩を叩いた。
「これ、魔物の売買の現場じゃない?魔王さんに言った方がいいよね。」
「うん、でも先にこの子達を逃がさなきゃ。」
私は檻に近づいて鍵を調べた。檻には古い南京錠がついているだけだった。
これくらいなら開けられそう。
私は持っている鞄を探る。すると何か小さな箱に手が当たった。
やばい……持ってきちゃった。
それは魔王様へのプレゼントの箱だった。慌てて鞄の中に入れる。しばらく鞄を探っていると鞄の奥底にピンを見つけた。
よかった、あった。
私はそのピンを南京錠に差し込む。耳を澄まして鍵の音を聞きながら回すとカチャッと音を立てて南京錠が外れた。シュレーヴァさんはあんぐりと口を開けていた。
「え、何その技術……。」
「少し、ね。」
シュレーヴァさんは驚き半分呆れ半分と言う様子だった。王太子たちのところで培った技術が役に立ったみたいだ。
時間はかかったが全ての南京錠を外す。扉を開けると魔物たちが出てきて私の周りに集まってきた。
「いい?真っ直ぐ魔界に帰るんだよ。」
私は魔物たちに言い聞かせる。低級の魔物は言葉こそ喋れないが、言っていることは理解している。魔物たちはそれぞれ鳴いて返事をした。そして散り散りになっていく。
よかった……とりあえずこれで魔物たちは無事だ。
だが、異変に気がついたらしく数人の人がやってくる。私とシュレーヴァさんは物陰に隠れた。
「何だこれは!!」
来た人は3人でその中の一人が声を上げる。ほか2人も口々に言った。
「誰がやったんだ?」
「お前らが見張ってないからだろう。」
3人は次第に口論をし始めた。暫くは大丈夫だろうと判断した私達は小声でどうするかを話し始める。
「どうする?ここ突破する?」
「突破するしかないでしょ。3人くらいならいけると思うし。」
とりあえず3人をぶちのめして速やかに逃げることにした。私が1歩踏み出そうとした時ピョイと鳥の鳴き声がした。
しまった逃げ遅れた子がいたのか。
まだ子供の鳥の魔物がよちよちと男たちの方に歩いていく。するとそのうちの一人が鳥を見つけてつまみ上げた。
「なんだこれ?」
「売り物じゃねーか?」
男達が手で鳥をいたぶりながら会話する。飛び出していこうとする私をシュレーヴァさんが必死に止めていた。
「フィリナちゃん行っちゃダメだ!」
「でも……。」
「人が来てる。」
奥の方にたくさんの人影が見えた。
まずい。人が増えた。
鳥は弱々しい声を上げている。今にも握り潰されそうだ。
もう我慢できない。
私はシュレーヴァさんの制止を振り切って男達の前に走っていった。
「なんだお前。」
男達は睨みつけてくる。だがそんなのに怯むわけが無い。
「その子のこと話してください!」
男は手の中の鳥を一瞥して笑った。
「こいつか?これは売り物だ。俺達のものだ。」
「魔物の売買は犯罪ですよ。」
「犯罪?法なんて関係ねーよ。国は俺達のこと見捨ててんだから。」
「貴方の事情とその子は関係ないですよ。」
私の答えに男の顔が紅くなる。何か罵声を浴びせながら殴りかかってきた。だが、シュレーヴァさんが来て私をかばい、男の腹に1発蹴りを入れた。男はぐはっといって倒れる。
「大丈夫?」
「ありがとうございます。」
私はにこりと笑ってお礼を言う。シュレーヴァさんは何だかおかしな顔をした。
「怖くないの?」
「怖くないですよ。」
シュレーヴァさんは言葉に詰まったようだった。
男が倒れたのを見ておくの大勢の人がいっせいに襲いかかってきた。とっさに聖術で対抗する。すると誰かが叫んだ。
「お前!聖女か!」
途端たくさんの人が私に向かってきた。売れば金になると叫んでいる。シュレーヴァさんも戦ってくれているが、数が多すぎる。私の聖術も間に合わず、誰かの拳が目の前に迫ってきた。
殴られるな……。
やけに落ち着いてそう考える。全部ゆっくりに見えた。
すると突然周りが全員ばたりと倒れた。
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