じゅうに
突然消してしまい申し訳ないです
最新話です
「うわぁぁぁ!!」
馬車から見える景色に思わず声が出る。空飛ぶ馬車の窓からは真っ青な海と白い砂浜が見えた。
海だーー!!
今までも海のある国には行ったことがあったがリュレット帝国のは段違いだ。
ため息が出るほどの絶景を魔王様とも共有したくて声をかける。
「魔王様、見てください。海、海ですよ!」
魔王様も窓を見て感嘆した。
「これは綺麗だな。絶景だ。」
「そうですよね!」
2人とも海を眺める。太陽の光を反射して水面がきらきらと輝いていた。
そうこうしているうちに馬車は街の上空に入った。街の人達は突然現れた空飛ぶ馬車を不思議そうに眺めている。
やっぱり不思議だよね。空飛ぶ馬車なんて。
街の人々の視線をものともせず馬車は進んでいく。しばらくするとお城が見えてきた。
これが、今回の依頼人の皇帝が住んでるところか。でかいな。
私の故郷のお城とは少しデザインが違い、真っ白な壁に金色の装飾など国が富んでいることを想起させるような豪華さだった。
この国に到着する少し前に魔王様からこの国のことについてある程度教えてもらっていた。
この国は海が近くにあることと一年中暖かいことから貿易や観光業が主な国の収入源になっている。それから領土が広く気候が比較的中央に近いところでは農業や酪農をしており、国は比較的豊かだ。
しかし、人口が多い分貧富の差が激しく、栄えてる街にはスラムと呼ばれる貧民街があるそうだ。
そして1番特徴的なのは帝国の世継ぎの決め方だ。この国は一夫多妻制でとにかく皇位継承権を持っているものが多い。だから長子継承ではなく継承権を持っているもの達が競い、国を治めるにふさわしいと皇帝が思い指名した人が次代の皇帝になる。
だから早期に決まることもあればなかなか決まらないこともあるのだ。
血が流れること以外は何でもありなので、皆虎視眈々と他者を蹴落す隙を狙っている。
聞けば聞くほど大変なところだな……。確か今代の皇太子は決まってなかったはず。ってことはどろどろのところに行くのか。ちょっと緊張。
これから行くところを想像して少しだけ不安になる。そんな私に気がついた魔王様が言った。
「大丈夫だ。フィリナさん。何かあっても私が何とかするから。」
そうだ、私には魔王様がついてるんだ。それじゃあ安心だね。
そんな話をしていると馬車がお城に着陸した。扉が開かれる。先に魔王様が降り、私に手を差し伸べてきた。
「ありがとうございます。」
お礼を言いつつ手を取って馬車をおりる。お城は近くで見ると思っている以上に大きく豪華絢爛だった。
なれないドレスで若干ふらつきながら廊下を進む。魔王様は時折私の方を見て、気遣ってくれた。
うぅ……今日は皇帝に会うからきちんとした格好していけってグレースさんに言われたけど……やっぱドレスなれないな……。
私がきているドレスはグレースさんが選んでくれたものだ。淡い水色でふんわりと広がったスカートが可愛い。リボンやフリルは控えめで胸元のレースが程よく高級感を与えている。髪はリテアちゃんが巻いて編み込んでくれ、それに合わせた髪飾りをつけた。胸にはもちろん魔王様から貰ったネックレスが光っている。
今日の私の格好を魔王様はすごく褒めてくれた。それだけでおしゃれした甲斐があったと思う。
でも、おしゃれの理由はどっかの知らん為政者に会うためなんだけどね。
魔王様もいつもよりかはきちっとした格好だ。緩く結んでいる髪も後ろできっちり結っている。私のあげた髪紐も使ってくれているみたいだ。
とてつもなく長い廊下を歩き、大きな扉の前に案内された。少し待たされ、扉が開かれる。中にいる人に促されそのまま玉座の方まで進んだ。
数段高い位置にある玉座には髭を蓄えた鋭い目の皇帝が座っていた。
魔王様と私はそれぞれ一礼し名乗る。
「魔王のヴィアタリスだ。」
「聖女のフィリナと申します。」
礼儀作法は元いた国で叩き込まれたので難なくこなす。魔王様のは気品のある優雅な礼だった。
おお……さすがだ……。
「そんなに畏まらずともよいよい。魔王殿に聖女殿。儂はリュレット帝国の皇帝、ウルディアドだ。今回は浄化の件よろしく頼む。」
「慎んでお受け致します。」
私はもう一度頭を下げる。魔王様は皇帝と話し始めた。
「浄化といってもこの国は広い。移動については私の転移魔術になるが、そちらから同行者はいるだろうか。」
「1人皇子を同行させたい。そなたの転移魔術は数人運べるのか?」
「もちろん。それと、浄化が終わったあと私と聖女のしばらくの滞在を許して欲しい。この国の魔物の様子を見ておきたい。」
魔王様の言葉に私は密かに魔王様が同行した理由を理解する。
そっか、魔王様もやる事あるよね。魔物は魔界以外にも生息してるけど魔王様はその子たちの王様でもあるもんね。
「それについては構わない。いくらでも滞在していってくれ。」
「ありがとう。最後に1番重要な事だ。」
重要な事?なんだろう?
疑問に思っていると魔王様が真剣な顔をして言った。
「私は常に聖女のそばにいられる訳では無い。その間の彼女の絶対の安全を保証して欲しい。」
重要なことって私の事なの?!
思わぬ魔王様の発言にびっくりする。まさか自分のことだとは思わなかった。
「うむ、それについては聖女殿に護衛をつけよう。」
「助かる。」
「聖女殿なにか要望はあるか?」
聞かれたので少し考える。そして、気になることがあったので口を開く。
「あの、同行者の人となるべく早く会いたいです。」
皇帝は少し驚いてそれだけか?と聞いてきたので頷く。皇帝はなんともいえない顔をして言った。
「わかった。今連れてこさせよう。」
皇帝が近くにいた城のものに指示を出す。少しして誰か男の人が連れられてきた。
背の高い褐色肌のその人は非常に整った顔をしていた。
でも、魔王様のほうが私はかっこいいと思う。身長も魔王様の方が高いし。
なんてナチュラルに比べてしまい、目の前の彼に少し申し訳なくなった。
皇子は少し高めのいい声で自己紹介をした。
「俺は第7皇子のシュレーヴァ。君がフィリナちゃん?」
シュレーヴァさんは私を上から下までじろじろみて
「結構可愛いじゃん。」
と言った。
なんだこいつ?馴なれしいし、失礼だな。
次に魔王様の方を見て
「あんたが魔王さん?意外と人間っぽいんだね。もっと化け物みたいだと思ってた。」
と言う。
うがーーもっと失礼だな!!
私は思わずきっと睨みつける。魔王様は苦笑して
「よろしく。シュレーヴァ殿。」
と手を差し出したが、シュレーヴァさんはパシッと手を振り払いため息をついた。
「はぁ〜俺男に馴れ馴れしくされんの嫌いなんだよね。」
皇帝がシュレーヴァさんに対して怒っていたが、気にせずに私の肩を抱いてきた。
「行こうか。フィリナちゃん。俺おすすめのとこあるんだよね。」
必死に手を振りほどこうとするが力が強くてビクともしない。
くそっこいつなかなか強いぞ。
すると誰かがシュレーヴァさんの手をガシッと掴んでそのまま捻った。
「いててて、何するんだよ。」
振り返るとなんだか黒い笑みを浮かべた魔王様がシュレーヴァさんの手を捻りながら立っていた。
「君、初対面の女性にそう迫るのはよくないと思う。」
なんだかすごい威圧感があり心無しか魔力も迸ってる気がする。
シュレーヴァさんの顔も引きつっていた。
「……怖。」
魔王様はパッと手を離すと、私とシュレーヴァさんの間に入って大丈夫かと聞いてきた。
「大丈夫ですよ。」
私も困っていたところだ。魔王様が助けてくれて嬉しい。
こうしてシュレーヴァさんとの顔合わせは良くない結果に終わったのだった。
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