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捕虜、ときどき聖女  作者: きなこもち
第1章
10/26

なな

魔王城に来てからひと月ほど経った。だが、相も変わらず捕虜というより貴賓のような高待遇を受けている。

あの1回目の浄化の成果を認められてか頻繁に浄化を依頼されている。もう少しで魔界の瘴気は祓いきれそうだ。


そんなこんなで仕事は少なく至れり尽くせりなんだけど……なんだけど……。


暇!もうとにかく暇!


浄化なんてぴゃってやれば終わるし、毎日じゃないし、本だって読み終わった。暇すぎて無駄に分厚い、なんなのか分からない参考書まで読破してしまった。

いや、言えば取り寄せてくれるとは思うんだけどね。新しい本とかさ。

でも、迷惑かけたい訳じゃないんだよ。


「うがーー暇だーー。」


「うるさいわねぇ。なんなのよ。」


叫ぶ私に呆れるグレースさん。隣でリテアちゃんがにこにこしている。


私はよくグレースさんとリテアちゃんとお茶を飲むようになった。ヴォークさんの前で暇だ暇だと騒いだら企画してくれたのだ。ありがとう。


2日に1回くらいのペースで行うようになり時々レッタリアさんが参加したり、稀に魔王様も参加している。

私はこのお茶会で色んなことを知った。

グレースさんとリテアちゃんが偉い人だったとか、リテアちゃんが実は一番年上とか、グレースさんとレッタリアさんは仲があんまりよろしくないということとか。

とにかく、魔界の常識とか様々なことを2人に教えてもらった。


「あんたそんなに暇なら街に行けば?」


街……?疑問に思っているとグレースさんはさらに言った。


「あんた、せっかく可愛いんだから化粧品のひとつやふたつ買えばいいじゃないの。」


か、可愛い……?

うーん確かに魔王城に来てからスキンケアには気を使ってたから肌はつるつるぴかぴかだけど……。


でも、街には行ってみたい気がする。みんなどんな暮らしをしてるのか気になるし。


「行ってみたいです!街!」


私がそう言うとリテアちゃんが身を乗り出した。


「だったらボクが案内するのよ。おすすめの場所がいっぱいあるのよ!」


その言葉に私はさらに楽しみになる。でも、外に出るには魔王様の許可が必要なんじゃなかったっけ?


「魔王様の許可どうしましょう?」


私がそう言うとグレースさんが呆れて言った。


「あんたそんなこと心配してたの?あの主様がダメって言うと思う?あんたに激甘よ。あの人。」


げ、激甘って……。

まぁ確かにいる物あるかとか欲しいのはないかとか結構聞かれるけどさ……。


リテアちゃんも続けて言う。


「大丈夫なのよ。もしダメって言ってもボクが許可をもぎとってくるから。」


何も大丈夫な気がしないんだけど……気のせいか?


「とりあえず聞いてみなさいよ。」


グレースさんにそう言われ、私はひとまず魔王様に聞いてみることにした。





「街に行きたいのか?」


昼下がり、仕事が一段落したらしい魔王様と一緒にお茶を飲んでいた。その時に午前中に2人と話したことを聞いてみる。

魔王様は飲みかけていた紅茶のカップを置いて言った。


「別に大丈夫だが。」


意外とあっさり許可が出た。少しびっくりだな。

魔王様はさらに続けた。


「誰と一緒に行くんだ?」


「リテアちゃんと多分グレースさんもいます。他の人たちは聞いてみないとなんとも……。」


多分みんな忙しいに違いない。リテアちゃんとグレースさんは一緒に行ってくれるみたいな反応だったけど。


「わかった。行っておいで。」


魔王様は微笑んで許可を出してくれた。




許可が取れたことを言うと、早速出かけることになった。

おしゃれしていきたいと思ったので着替えて、髪型を整える。

今日の服装は白いブラウスに黒のリボン、レースの着いたふんわりした茶色のスカート、靴は濃い茶色の編み上げブーツにした。だいぶ可愛らしい装いになった気がする。

それに合わせて髪型は編み込んでハーフアップにした。ちょうどこの格好似合うようなリボンを見つけたので髪飾りとして使う。


ドレッサーにあったメイク道具で軽くメイクをして、準備が出来た。

外に出てみると普段とは違う装いのリテアちゃんとグレースさんが立っていた。

リテアちゃんは可愛らしいピンク色のふんわりしたワンピースを来ており、同じ色のパンプスを合わせている。グレースさんはいつもよりもシャツにズボンといつもよりカジュアルな格好だ。スカーフも巻いて帽子も被っている。


おお〜2人ともおしゃれだ。


私が2人の格好を見つめていると、2人が私に気がついて声をかけてくれた。


「フィリナ〜とっても可愛いのよ〜。」


「似合ってるじゃないの。」


えへへ褒められた。


私が喜んでいるのを2人は少し不思議そうに見つめていた。





魔王城の空飛ぶ馬車に乗って街に向かう。空を飛ぶのは初めてだったので、ずっと窓に張り付いて景色を眺めていた。絶景だった。馬車は滅多に揺れずとっても快適な空の旅になった。


ついた街は魔界の中心地らしくとても賑わっていた。どこを見ても魔物たちがたくさんいる。


うわぁ〜すごい!!


キョロキョロしていると、リテアちゃんが私の手を取ってきた。


「ボクね、連れていきたいところがあるのよ。」


リテアちゃんはぐいぐいと私を引っ張って歩く。後ろでグレースさんが呆れながら


「転ばないようにしなさいよ〜。」


と言いながら着いてきた。

リテアちゃんが連れてきてくれたお店は可愛らしい服屋さんだった。

シンプルで甘いデザインの服が沢山ある。


「うわぁぁ〜可愛い〜。」


吸い込まれるように店内に入り服を見る。

どれも可愛い。クローゼットにある服も可愛くて好きだが、ここのお店の服は私に刺さりまくっている。


「リテアちゃん、ありがとう!」


リテアちゃんにお礼を言う。すると彼女はにっこり笑って


「フィリナが好きそうだと思ったのよ。ボクもここの服好きなのよ。」


と言った。その後2人で服を選ぶ。


どうしよっかな〜。スカートもブラウスも可愛いけどワンピースも欲しいな〜。


30分くらいリテアちゃんとあーだこーだ言いながら悩み、時々グレースさんのセンスのいいアドバイスを貰いながら選んだ結果、膝丈のグレーのワンピースに黒いパンプスに白い靴下に黒いリボンと一式揃えた。


いい買い物をしたなと考えている時ふと気がついた。


……私お金ない。

どうしよ。なんも考えてなかった。2人に払ってもらう訳にも行かないし。……諦めよ。


悲しげな表情を浮かべ、服を戻そうとすると、グレースさんが不思議そうに聞いてきた。


「あんた、何やってんのよ。」


「いや、そういえば私お金もってなかったなって……。」


しどろもどろに答えると、グレースさんが私の不安を吹き飛ばす言葉を口にした。


「大丈夫よ。あんたのためのお金は魔王様から預かってるから。」


「私用のお金?」


私の疑問に今度はリテアちゃんが答えてくれる。


「フィリナは浄化の仕事をしてくれてるでしょ?それのお給料なのよ。」


私の仕事に給料って発生したんだ……。

でもそれならなんですぐに渡さなかったんだろ?


「渡すのが遅れたのは謝るわ。あたしが渡し忘れてたの。」


グレースさんが謝りながらお金の入った封筒を手渡してきた。


「後にしようと思ったけど、また忘れたら困るから今渡しておくわね。」


グレースさんから封筒を受け取る。思ったより分厚くずっしりと重い。


たった数回の浄化でこんなに貰うなんてなんか申し訳ないな……。


封筒を持ったまましばらく立ちつくす。そういえば鞄もお財布も持ってなかった。

私が困ってるのに気が付いたのかリテアちゃんが助け舟を出してくれる。


「鞄も財布もここで買うといいのよ!」


その手があったか。リテアちゃんの助言に従って可愛らしいピンク色のお財布と黒色の鞄も購入することにした。






2時間ほど街を歩いてお買い物をした。最初に行ったお店で買った服の他に、メイク道具と部屋に置く可愛い置物と髪飾りを買った。


疲れたのでカフェに入って休憩する。私はパンケーキと紅茶、リテアちゃんはケーキとアップルジュース、グレースさんはコーヒーを頼んだ。


しばらくして、注文したものが届いた。みんなで舌鼓を打つ。

パンケーキは美味しかった。リテアちゃんからケーキを1口貰う。彼女が頼んだものはチョコレートケーキで程よい甘さで美味しかった。お返しに私もパンケーキを1口あげる。リテアちゃんは美味しそうに食べてくれた。




みんな食べ終わったのでこの後どうするかという話になった。何となく帰ろうという雰囲気が出てきている。

でも私はひとつ買いたいものがあった。


魔王様へのプレゼントだ。


このひと月ほどとてもお世話になった。衣食住から娯楽、他にも沢山色んなものをくれた。だからお礼になにか買いたいのだ。


「あの、私まだ買いたいものがあるんですけど……。」


「何かしら?」


グレースさんが聞いてくる。改めて言うのはちょっと恥ずかしい。

少し躊躇ってから口を開く。


「魔王様への……お礼を買いたくて……。」


私の言葉にリテアちゃんが満面の笑みになる。


「そういうことならぜひ協力させて欲しいのよ!」


グレースさんも了承してくれた。

カフェを出てお店を探しながら歩く。グレースさんが質問してきた。


「あんた、何あげるつもりなの?」


「それが迷ってるんですよね……。」


最初はなにか小物でもあげようかと思った。だけど実用性のあるものがいい気がしたので、アクセサリー類にすることにした。


でも、何がいいのかわかんないんだよね。魔王様の格好はセンスが良くてかっこいい。でもとってもシンプルなのだ。なにか装飾品をつけてる気配がない。


「それなら髪紐にしたら?」


リテアちゃんがそう言う。その言葉ではっと思った。


そうだ、髪紐だ。たしか魔王様は緩く髪を結んでいる。それ用の髪紐にしよう。


「そうする!ありがとうリテアちゃん。」


「どういたしまして。」


リテアちゃんが笑って言う。その後にグレースさんが


「そういうことならおすすめのお店があるわよ。」


と言ってくれた。

グレースさんの案内によっておしゃれなアクセサリー店に行き、そこで髪紐を買った。

魔王様は黒髪なので目立たずかつ上品な紫紺の髪紐にした。






また空飛ぶ馬車で魔王城へと戻る。時刻はもう夜になっていた。

部屋に帰ると夕食が用意してあったので、グレースさんとリテアちゃんと一緒に食べる。


食べ終わった後、魔王様に呼ばれたので執務室へと向かう。歩いている途中にレッタリアさんとオルド団長と出会ったので挨拶をして立ち話をする。

魔王様へプレゼントを渡したいと言ったら、異様なまでに応援された。


「頑張ってくださいまし。フィリナ様」


「ヴィアタリス殿は絶対お喜びになられますぞ。」


なんでこんなに励まされてるんだ?

疑問に思いながら2人と別れる。


執務室の扉の前に来たのでノックして声をかける。


「魔王様?フィリナです。」


「フィリナさんか。どうぞ入って。」


すぐに返事が聞こえる。私は扉を開けて入った。


部屋の中は相変わらずこざっぱりしている。

何回か入ったことがあるけど綺麗だな。


真ん中にある机で魔王様が作業をしていた。

入ってきた私に気がつくと手を止めてこちらを見る。


「おかえり。フィリナさん。」


「ただいまです。」


座ってと促されたのでソファに座る。すぐに目の前に紅茶が現れた。


相変わらず凄いな魔術。


出されたお茶を飲んでいると魔王様が迎えに座った。


「街はどうだったか?」


「すごく賑わっていて活気がありました。とても楽しかったです。」


私の答えに魔王様が微笑む。


「そうか。気に入って貰えたようでよかった。」


しばらく他愛のない話をする。話の間中私はずっとそわそわしていた。

それに気がついた魔王様が不思議そうに聞いてくる。


「どうしたんだ?何かあったのか?」


魔王様に言われて一気に恥ずかしくなる。もじもじしながら話し始める。


「あ、あの……。」


「?」


「そ、の……。」


やばい……なんか恥ずかしい。魔王様がめっちゃ不思議そうな顔してる。


勇気をだして持ってきたプレゼントを取り出す。


「これ、プレゼントです……。色々とありがとうございます。」


プレゼントを渡すと魔王様は驚きと嬉しさが入り交じったような表情を浮かべた。


「……ありがとう。」


嬉しさを噛み締めるように魔王様が言う。その反応に私も嬉しくなる。


魔王様は包みを開けて髪紐を取りだした。


「髪紐か。ありがとう、本当に嬉しい。」


魔王様はするっと髪をほどくと、私のあげた髪紐で括り直した。


「どうだ?似合っているか?」


「似合ってますよ。」


魔王様がはにかんだ笑みを浮かべるのでこっちまで照れてきた。


しばらくてれてれして、私は執務室を後にした。部屋に戻ったあとも時折魔王様の嬉しそうな顔を思い出す。

幸せな気分で私は眠りについた。







読んで頂きありがとうございました

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