旧友
こんにちは!
邪祓第九話です
本編に戻りまして、少しややこしい話へと入ります
楽しんでいただければ幸いです
それでは本編どうぞ!
母親とみゆちゃんを和解させた。黒子ちゃんを巻き込んでしまったが、なんとかできた依頼で、私は私の弱さを痛感する。
電車に乗り、バスに乗り、一時間。いつもの薬蘑さんの病院に入る。
「九階客間……」
薬蘑さんと会う時はいつも、九階の客間だ、先に行けば、何故か来る。なので気にせずエレベーターに向かうと、キャーキャーと女の子達の甲高い声が聞こえた。
「うわっ」
「御影、今ここでうわって言っちゃダメ」
薬蘑さんがいるのはすぐにわかった、関わらない内に早く上がろう、取り巻きに目をつけられるのが一番嫌だ。名札を機器に押し当てる。エレベーターの扉が開き、いつものように足を踏み入れようとした時。
「あれっ、初めてそのエレベーター開いたとこ見た思ったら、未無じゃない!」
「え?」
話しかけられ、振り返る。そこには笑顔の女性。
「うわー懐かしい! あれ覚えてない? 小学校と中学校で一緒のクラスだった彩乃よ」
「彩乃……」
覚えてなくはない、小学、中学で一番話した人だ、覚えているからこそ嫌だ。なぜ彼女がここにいる? いや、元より頭がいい子だから医療関係に来たのかもしれない。
「えっと……」
「ミムくん、エレベーター閉まるよ? 君はもしかして、歌輪病院の子かな、それなら……」
薬蘑さんが割って入ってくれた。どうやら、彩乃はこの病院の関係者ではなく、別の病院の関係者らしい。
私は彼に頭を軽く下げると、エレベーターに乗り込む。彩乃は、何か言いたげだったが、話したくはない。
「貴様、苦手な人間多いだろ」
「うるさい」
まさか、私を知る人に出会うなんて思うわけない。思いたくもない。
「ただ、あの様子だと待ち伏せしてでも貴様に話しかけて来るぞ」
「うっ……否定できないのが悲しい」
九階につき、客間に入ると、はぁぁぁと深い溜息を吐いた。気が重い。
その後薬蘑さんが来て、先日の依頼料の確認を済ませる。正直早く帰りたいので手早く済ませた。そう、済ませたのだ。病院の出入口、自動ドアが開く。
「あっ! やっぱり来た! 未無もう待ったんだからー」
「……御影先に帰ってて」
「あ、おい」
頭を抱えたくなった。御影がいると面倒だから帰ってもらおう。そして彼女の用事は早く済ませよう、帰してくれる……よね? 重い足取りで彩乃の方へ行くとグイッと引っ張られる。
「ねぇ、誰よ」
「何が」
「いやねぇ、未無と一緒にいたイケメン! 薬蘑先生にだって負けない容姿じゃない」
私と一緒にいたイケメン? あぁ、御影のことか。御影がいた場所を見ると、まだいるようで説明に困る。
「彼氏? イケメン彼氏か!」
「いや違う、あんな奴が彼氏だったら疲れる」
あれが彼氏は絶対ない。確かに料理は美味しいけど、性格がアウト過ぎる。
「だったらなんなのよー」
「何って言われても……仕事上のパートナー?」
我ながら良い関係を思いついた。というか、嘘は言ってない。厄神は邪祓人の相棒だ、邪祓人の仕事は、邪祓、ならば仕事上のパートナーだ、うん、間違いない。
「ふぅーん、このこのぉ、羨ましい奴めぇー、あんなイケメンと仕事とか、しかも薬蘑先生とも知り合いみたいじゃない、人生の勝ち組じゃん」
肩をつつかれる。あぁー、早く帰って布団に入りたい。早く開放されたい。
彩乃は悪い子では無い、だが、この妙なノリが私は苦手で、できるだけ避けていた。一度捕まると中々離してもらえない、この日もズルズルと連れ回される事になった。
「この服屋がね!」
「このレストラン美味しいのよー」
「ここの紅茶が……」
連れ回されること、約五時間、疲れ果てた私とは打って変わって、彩乃はまだ元気らしい。
「未無疲れるの早すぎー」
「早いって、普段仕事以外で外に出ないし」
「もー、あっ、こっから私の家近いし寄っててよ」
「え、私はかえ……」
「ほら行く行く!」
引っ張られるまま、私は彩乃の家に連れて行かれる、待って私は帰りたい。
「おねえさまはいない?」
「おう、変なのに捕まった」
チャイムが鳴り、ドアを開けると小娘が来た。どうもミムに用があったようだが、彩乃とかいう、妙な奴に捕まりまだ帰ってきていない。
「薬蘑のとこで会ったんだが、どうも昔の知り合いみてぇだな、ミムは乗り気じゃなかったが」
「そう……ですのって、貴方おねえさまの厄神なのになんでそう、いつもいつもおねえさまを放置してるんですの!」
すごい剣幕で言われ、流石に引く。てか、こんな場所で騒がれると面倒だ。とりあえず、部屋に入れると、茶だけは出した。
机の前に座り、じっと俺を見られる。俺を見られても困るのだが。
「それで、未無様は大丈夫なのですか? 乗り気では無かったのでしょう?」
「俺様は帰れって言われただけだ」
二人が違うそうじゃないとでも言いたげにこっちを更に見る。それしか言えないのだから勘弁してくれ。
「薬蘑って、東西連合の最高幹部の方ですわよね、なんでおねえさまは、そんな人のところに?」
「なんでって、確かに東西連合には加入してねぇが、金払ってんのはあそこだからな、その確認だ、確認だけなら薬蘑が一番早いし近い、あいつはあの場所から離れんからな、まぁ、春水の邪祓人である、小娘にはあまり関係ねぇかもしれねぇが」
春水……東西連合ができる前に邪祓人をまとめていた家系。そこの邪祓人である小娘が東西連合と関わるわけがない。それだけ、春水と東西連合は【仲が悪い】。
「まぁ、それはいいですわ、で、もう夕方で、おねえさまは何時間帰ってきてないんですの?」
何時間……時計を見て数えてみる、捕まったのが大体十時前後で、今が十六時、六時間か。
「ろく……」
「じかん……御影さん、迎えに行ってください」
ずいっと、二人に迫られた、え、これ俺が悪いのか? 今にも攻撃してきそうな二人に押され、家を出される。
確かにいる場所はわかるが……。
「子供じゃねぇんだから帰ってこれんだろ」
心配する必要は無い、無いはずだ。
「あぁもう、早く帰ってこいよ!」
何かモヤモヤする、とにかく、小娘が心配するし、さっさと連れ戻すか。
家に連れられ、一時間。私はひたすら彩乃の愚痴を聞いていた。
「それでさー、医療関係に入ったはいいけど、患者も医師もー」
酒が入り、彩乃の語りはエスカレートする。私は帰るためにも、酒は却下し、お茶をすすっていた。私、いつになったら帰れるんだろ、今更後悔するのは遅いが、御影を連れてくるべきだったかもしれない、何となく助かりそう。
窓から見える外はもう暗く、帰ったら即寝だなと考える。
「ちょっと未無聞いてるー?」
「聞いてる聞いてる」
適当に相槌をうち、酒を飲ませていく。酔いつぶれてくれ。それから数十分、愚痴っていた彩乃だったが、唐突に立ち上がると、トイレーと呟き、席を外した。
「……はぁ」
「おい」
「うわぁっ!」
驚きで危うく茶を落とすとこだった、御影が目の前にいる、何故?
「どうしたのってか、どっから入ったの!」
「俺様は厄神だからどっからでも入れる、ほら帰るぞ、貴様いつまで捕まってる気だ」
あれ……御影がいつも以上に不機嫌だ、これならまだ薬蘑さんの話を出した方がマシなくらいである。
「未無ー? どうしたのー?」
「チッ」
トイレから彩乃が出てくると同時に、御影の姿が消える。あれ、どこ行った?
『心配すんな、居るには居る、白咲の奴が度々見えなくなってたろ、あれと同じだ、貴様とならこうやって話すこともできる』
出会った頃のような、違和感のある声。そういえば、最初も見えなかったし、白咲さんのような一般厄神が、見え方の調整はできるとは思っていたが、御影もできたのか。そして厄神ってこうやって連れて歩けると少し勉強になった。
その後、また数十分彩乃の愚痴が始まった。それを聞いていた御影が、薬蘑以上にダメな奴だなこいつと呆れている。私もそろそろ眠いし、正直解放して欲しい。
「彩乃、そろそろ帰り……」
『ミム?』
彩乃に、声をかけようとした時、急な睡魔に襲われ、私はそのまま意識を手放した。
読んでくださりありがとうございます。
今回は……とりあえず彩乃が出てきました
ハイ。
次はこの話の続きです
それでは第十話でお会いしましょう!
もう数字も二桁来ますね!