第1羽 出会いまでの軌跡
この結末は自分にとって幸せな結末であると彼は思うであろう。紆余曲折ありはしたが、結論として過去と向き合い今とぶつかり合い未来を切り開いた彼は彼女と共に歩んでいきたいと決心した。『敬愛』の感情に『言』葉が重なり合い作り上げた双翼なのだから・・・
「はぁ今日も疲れたな。明日は仕事休みだから帰ったら録画してるアニメを見漁ろう」
彼の名は有原翼ありはらつばさ。29歳・独身。地域課の巡査長として働いている警察官である。彼の容姿は可もなく不可もなくと言ったところで、趣味はアニメや漫画を見ることである。世間一般で言えば『オタク』に分類されるのかもしれない。
彼の今現在の状況を説明すると午前7時から午後10時までの勤務を終えて勤務先の交番から家まで徒歩で帰宅している途中である。普段は交番の最寄りの駅『ところだ』と自宅の最寄りの駅『かんてら』を利用し通勤している。交番から家までは徒歩30分とそれなりに距離はあるが、明日は一日中オフであり、明日一日中休めるならなんら支障はないと彼は判断した。たまには歩いて帰ってみようというささやかな衝動に駆られていた。
「警察官になってはや7年。なのに歩いて帰ったことって今まで一度もなかったよな。もし帰り道にしゃれた喫茶店でも見つけたら今度行ってみようかな」
彼は仕事終わりで疲れはあるが内心ウキウキしていた。ここは都内のはずれの場所であり、彼が歩いている帰り道は日中から人通りが少なく街灯すら少ない幽霊でも出そうな雰囲気が漂う薄暗い道である。だからこんなところにあるお店なんてむかーしからあるレトロチックな喫茶店くらいだろうと意気込んでいた。
彼は新しい『なにか』を求めていた。『現在』の彼のどことなく過ぎ去っていく人生に変化を与える『なにか』に無性に触れたかった。その在処を探しに彼は歩みを進めていた。この行為を当時の彼は吉か凶かと考えることになろうとは思いもしなかっただろう。なぜなら『過去』の彼にも触れていくことになるのだから・・・
次回 2羽 出会いとは遭遇である