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天導の巫女  作者: Rさん
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邂逅と志



天草本家へと訪れ、母の墓石に手を合わせた紫苑は、突然形見として付けていたネックレスから淡い緑の光を放ち始めて驚く。



「えっ!?」



その光に包まれ、紫苑は眩しさに目を閉じた。


すると、遠くから優しい声が紫苑の耳に届く。



「――ん、 ――おん」



「この声……」



紫苑はゆっくりと目を開けると、周囲に墓地が並び、元々居た場所と変わりはないのだが、全てがセピア色の世界となっていたのだ。



「ここは!? 静世さん!!」



ハっと振り返り、静世が立っていた場所に視線を移すと、まるで時間が止まっているかのように同じくセピア色の静世が立っている。


当然、呼びかけても反応は無い。



「ここはどこなんだろう……何も感じない……タケヒコ」



「……」



同じくタケヒコも姿を見せない。


という事は、ここは別の世界なのかもしれない。


そう考えていると、再びどこからともなく優しい声が聞こえた。



「紫苑、大きくなったわね」



いつの間にか目の前、母叶恵の墓石の上に女性が座っていた。



「あっ……おかあ、さま?」



「そうよ。 紫苑、会いたかった……」



フワっと女性が浮かび上がると、紫苑を優しく抱きしめる。


覚えていないのに懐かしい感覚、優しい匂い。


すると、紫苑の中で沢山の感情が湧き上がり、気付けば涙を流して抱きしめる叶恵に顔を埋めていた。



「お、かあ、さま……わたし……わたし……」



「あらあら、泣き虫になっちゃったのかしら。 でもそうよね。 ごめんなさい。

でも、貴女一人でも助かってくれて良かった」



「屋敷の、お母様のメッセージ……」



「気付いてくれたのね。 ありがとう。

そう……影時様は主の手によって落とされてしまったの。

私がそれに気付いたのは穢れ落ちた影時様に刺された後だった……

別の気配を辿り、その事実に気付き、でも……動けなかった。

だから残したの」



「私、絶対に見つけ出します。 その為に今、清導廻て学んでます。

桔叶さんにお世話になってます」



「そう、桔叶が……良かった。 貴女にしか託せないのが心苦しいけど、お願いね。

緑狼狐(りょくろうこ)



叶恵の言葉にボンっと大きな緑色のエレメントが姿を見せた。



「お母様、これって」



「風のエレメント、緑狼狐よ」



よく見ればタケヒコと同じ緑色の体毛に狐の様な尻尾。


しかし、その大きさはまるで違う。


叶恵の後ろに座っている緑狼狐は大人三人なら背に乗せられる程の大きさなのだ。


何より、その尾が三本も生えていた。



「あれ、今なら……タケヒコ」



すると、ポンっとタケヒコが紫苑の肩に現れ、「キュル!」っと鳴く。



「ふふっ、緑狼狐の子ね。 姿を見せなくなって心配してたけど、紫苑の所に居たなんて」



「そうなのですか?」



「そうなのよ。 やんちゃな子だったからね。 それにタケヒコって言うのは武比古様から取ったのかしら?」



「はい、武爺が私をここまで育ててくれました。

武芸も教わりました。

でも、武爺は病を患っていて、去年に……」



「そう。 ではちゃんと挨拶しておかないといけないわね」



「お母様、緑狼狐とは何なのでしょうか? エレメントという事は分かるのですが……」



「この世界には具現化したエレメントが居ます。

それらは常闇の主を祓う為に、その才を持った者に力を貸すのです。

常闇の主とエレメントは言わば表裏一体。

エレメントが善であり、主等が悪。

それは覚えておきなさい」



「はい」



「では、そろそろ逝かなければなりません。 紫苑、一人にさせてしまって申し訳ありません。 でも、そのネックレスからずっと見守ってるわ」



「はい、お母様。 必ず父の真相を晴らします」



「お願いね。 紫苑、愛してるわ――」



そしてセピア色の世界が通常の世界へと戻って行った。



「紫苑さん……?」



「あっ、静世さん、戻ったんですね」



「えっと、戻ったとは……?」



「はい、戻りましょう。 お話ししたい事があります」



こうして紫苑は叶恵の墓を後にし、静世に起こった出来事を話していくのだった。









「――と、いう事がありました」



「静世さん、ありがとう。

これで天草の汚名を晴らす第一歩になったわ。


しかし……常闇の主よね……今、動物が穢れ化したり、先日には一つの部隊が一人の女に潰されたと聞いたし、もしかしたらその女が主の一人だった可能性は高いわね」



静世は夜、桔叶へ一日の報告を済ませていた。



「何より、紫苑さんが叶恵さんと邂逅したというのが驚きでした」



「そうね。 ただ、姉は元々そうした小細工が得意だったから、死に際に色々細工したのかもしれないわ。

いつかの時の為に」



「叶恵さんには頭が上がりませんね……」



「ホント、いつまで経っても姉を越えられないなんて……報告の内容はこちらで上に伝えるわ。 静世さん、ありがとう」



「はい」



その翌日、桔叶は東の都の大天導師である総葉(そうば) 偃月(えんげつ)の居る清導天廻へと訪れてた。



「お久しぶりですね、桔叶さん」



「なかなか時間を取れず申し訳ありません」



「構いませんよ。 それで、本日はどの様な用件で?」



「昨日、天草本家当主の娘、紫苑が天草本家を訪れました。

その際、当主の正妻、私の姉である叶恵が残したメッセージが確認されました」



「メッセージ……それは何と?」



〝穢れ無き人 呼び起こし 落とされる 闇の主を警戒せよ〟



「そう書かれていたとの事、現在天草宗家の者が確認しに行っております」



「そうですか……」



「また、墓石で紫苑が姉との邂逅を果たしたようで、具体的に話を聞いたそうです」



「邂逅……たまにいるのですよね。 成仏出来ない、またはその場で何かを待つ魂と交信を遂げる者が……天草紫苑、逸材かもしれません」



「はっ、ここ数日の穢れ人の出現、先日の謎の女、昨日の邂逅ヤメッセージ、全てが繋がっている様にも感じます」



桔叶が力強くそう告げると、偃月もそれに同意し、改めて調査を開始させた。


調べる対象は謎の女。


そして常闇。



「これまで平和だった日常に変化の兆しが視えますね……」



大天導師として、東の都を守らなければならない。


だからこそ、偃月は穢れ人の出現を抑え、再び安全な街作りを行なう事を心に強く刻み、報告内容を天導元帥へと伝えていった。










翌日――



紫苑は桜華と共に清導廻へと来ていた。


朝は相変わらずそれぞれがグループを作り、テレビやニュースの話題で盛り上がっている。



「おはよう」



「「「おはようございます」」」



いつも通り、水鏡導師がクラスに入り、挨拶をすると一斉に返された。



「今日は普段通り講義を始める。 先ずは天導の歴史からだ。

教科書の62ページを開け」



水鏡の号令で皆が一斉に教科書を広げ始める。



「では彪音、常闇について説明してみろ」



帝の第一皇女である彪音が水鏡に指されると、教科書を手に持ってその場に立ち、答えていく。



「現世の言わば裏の世界であり、穢れの根源とされる常闇の主達が住まう世界。

穢れは世に存在する全ての生き物に分け隔てなく備わっているものですが、その穢れの生まれる場所でもあると言われてます」



「宜しい」



彪音は答え終わると席に座り、水鏡がその内容に称賛する。



「穢れとは、誰もが持つものだ。 私もそう、お前達もそう。

だが、その穢れが膨らみ、爆発する事で穢れ人へと落ちる。

だからこそ、心は強く持たなければならない。 いいな?」



「「「はい」」」



「次に紫苑、エレメントについて答えてみろ」



紫苑は〝エレメントについて〟と水鏡に指されると、昨日に母叶恵から聞いた内容も含めたものを口にした。



「エレメントとはそれぞれが持つ性質であり、それらは陰と陽の二つに括られます。

また、陰は悪であり穢れ……つまりは常闇の主を表し、陽は善となり、私達が持つ性質を表しています。

故に穢れと相対関係にあり、祓う為に必要な力でもある」



紫苑はしっかりと答えると、何故だかクラスは静まり返ってしまっていた。



「あれ、水鏡導士? 合ってます、よね?」



「あ、ああ。 しかし、その知識をどこで覚えたんだ? それは教科書には書いてないものだぞ……」



「えっ!? あれ……えっと……」



「まあいい、座っていいぞ」



紫苑はホッとしてそのまま席に座る。



「今紫苑が答えた様に、エレメントと言うのは性質ではあるが、全てが穢れへと対抗する為の手段でもある。

教科書に書かれないのは未だ具体的に解明が出来ていないからだ。

一応、覚えておくように」



「「「はい」」」



そして講義を終えると、隣に座っていた桜華が紫苑に話し掛けた。



「紫苑、さっきのはどこで習ったの?」



「あっ、桜華ちゃんには話してなかったですね。

実は……」



紫苑は小さな声で昨日の出来事を桜華に伝えていく。


すると、桜華は驚いた表情を浮かべたが、天草の穢れ落ちの真相が分かった事で安堵もしていた。



「そうだったのね。 でも、叶恵様に会えて良かったわね」



「うん。 だから私はちゃんと真相を解明して天草の汚名を返上します!

桜華ちゃん、一緒に頑張りましょう!」



「え、ええ。 分かったわ」



偉く気合の入った紫苑の雰囲気に圧され、桜華は驚きつつも承諾した。


そして、午後はいつも通り実技演習を行ない、この日の科目は全て終了したのだった――



紫苑、桜華、真那、猫磨の四人はいつも通り玄関口で靴を履き替え、岐路に立とうとしていた。



「あっ、忘れ物! ごめんなさい、皆さん先に行ってて下さい!」



紫苑は忘れ物をしたようで、三人に声を掛けるといそいそとクラスへと戻っていった。


しかし、その途中で――



ドン!!



「きゃっ!?」



「わっ!?」



急いでいた事で走りながら勢いよく角を曲がると、突然視界が暗転して何かにぶつかってしまった――


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