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夜の女王様ノチェの贈り物

 遠い遠い世界に、『夜の女神ノチェ』『昼の女神ディア』『宵の女神アノチェセール』『暁の女神アマネセル』の四女神が治める星がありました。

 その星には四つの大陸があり、人々は一人の女神を信仰して暮らしています。

 西の大陸は夜の女神ノチェを『夜の女王様』と呼び、東の大陸は昼の女神ディアを『昼の王妃様』と呼び、北の大陸は宵の女神アノチェセールを『宵の姫君』と呼び、南の大陸は暁の女神アマネセルを『暁の王女』と呼び、それぞれの女神の恩恵(おんけい)を受け穏やかに暮らしていました。

 これはその中の一つ、『夜の女王様ノチェ』の恩恵を受けた国の物語。





 西の大陸は、『夜の女神ノチェ』に愛された地。人々は敬愛の念を込めて、ノチェのことを『夜の女王様』と呼んでいました。

『夜の女王様ノチェ』は、自分を信仰し慕ってくれる民達に “月の雫” を恩恵として与えたのです。

 “月の雫” は、その日の月の形や、雫を宿す植物や動物によって効能が変わる一滴(ひとしずく)の水のようなもの。これを薬草に混ぜて飲めば薬草の効能を高め、お守りを浸せばお守りの効果も上がる、人々にはなくてはならないものでした。

 しかし、この “月の雫” は誰でもが簡単に受け取れるものではありません。“月の雫” を受け取れるのは『夜の女王様ノチェ』が、使徒(しと)と決めた者のみ。

 ですが、使徒はいつの時代にも生まれるものではありませんでした。ですから人々は、その時代の使徒が集めた “月の雫” を大切に保管し取り扱っていたのです。

『夜の女王様ノチェ』が使徒を選んだ時、この西の大陸はおろかほかの大陸からも見える印がありました。それは、『夜の女王様ノチェ』が使徒を指名すると、その日の真夜中に空が流れ星で(いろど)られるのです。真夜中であるにもかかわらず使徒の上に降り注ぐ数多の流れ星の光で、まるで昼間のような明るさになるのだとか。

 つい数年前にも、西の大陸のある国の貧しい村の一角に流れ星が降り注ぎました。『夜の女王様ノチェ』に使徒として選ばれたのは、貧しい村の貧しい家の八歳の女の子。西の大陸の人々は真夜中の空を流れる数多の星を見て、それはそれは喜びました。

 使徒が現れた国の王様は賢王様、きっとこれからの時代は安泰(あんたい)に違いない。西の大陸の誰もがそう思い、疑いませんでした。

 ですが西の大陸の安泰は続かなったのです。『夜の女王様ノチェ』の最高の贈り物であるはずの “月の雫” を手に入れようとする者によって、小さな使徒が一生懸命集めた “月の雫” はすべて奪われてしまったのです。


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