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woman  作者: しは かた
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第七十二話

続きです。


超長いですが分割していません。してはいけないぞと降りてきたからです。


どうぞよろしくお願いします。

 


 連休明けの週末の午後一時半まであと五分、私と幸は待ち合わせ場所に向かっているところ。皆さん連休疲れのせいなのか、いつもの休日より人出の少ない街をつかず離れず適度な距離を保ちつつ並んで歩いているところ。

 これで私達の仲を怪しむような人がいるのなら、正解だけれど穿ち過ぎというものだ。



「少ない」


「ね」


「つまんない」


「えぇ? あはは」


 あまり混んでないから肩や腕が触れるほど幸にくっ付けないのは少し残念。

 私がそれを口にすれば幸はあははと笑ってくれる。まぁいいじゃないの私は楽しいよと笑ってくれる。


 幸の言う通り、幸とお出掛けという事実だけに目を向けていれば、私も幸と街を歩くのは凄く楽しくてふへへとにやけてしまうし今もそう。


 私達は街を歩くのにも気を使わないといけないけれど、そんなことは基本も基本、最初に覚えるパパママみたいなものだから私はちゃんと我慢できる。ちゃいちゃいだ。

 思うことはある。不満もある。けれど、口に出してもいいことないし無駄に面倒なことになるのだから、私はいつものように心の内で少し騒いで終わりにする。


 幸せいっぱいの今、そんなことあまりしなくなったけれど、それでもイラつけばいまだにたまにやってしまう。

 つまりこれは、私がしなくなることなんてまずないだろう、顔で澄まして心は猛るという私の得意技。優雅で必死な白鳥みたいなもの。



 もやもやっとしながら少し離れた隣を見れば、天気もよくて気持ちいいねーと伸びをしている幸がいる。のんびりとしている姿が私の顔を綻ばせる。ほっとさせる。私に愛情を感じさせる。

 そうやってなんの気無しの思うままの幸でいてほしいと思う。抱える憂いなんか全て消え去って、幸の思うようにいられたらいいのになと思う。


 べつに私達に限らずとも、私と幸の時間も有限。長く思える私と幸の一生もあっと言う間に終わるのだ。

 だからこそ、出来ることなら幸とふたり、出来るうちに出来ることをいっぱいしておきたいと私は思うし、いずれ偲んで浸る時がくるたくさんの思い出でも、あの時は楽しかったなぁと自然と笑みが浮かぶヤツが多い方がいいと思うから、街にいる今だっていちゃいちゃというか、いま私たちの前を歩くストレートの恋人達と同じように幸の腕を抱えて寄り添いたいと思うけれど、この社会はそれを許さない。

 今そんなことをしたら、周りの人達にたちまち何か言いたげにちらちらと目線を送られてしまう。そこまで露骨じゃないにしても、私の一番大事で大切で愛しの女性がそれで傷付いてしまうかも。


 だから私達は本当はしなくてもいい筈の我慢をする。私はそれについて、くそうなんだかなぁと思う。もう我慢なんかしないで少しくらいしたいようにしちゃおうかなぁなんて、たまにそんなふうに思うこともあるし今もそう。

 限られた時間の中で、後悔なく愛しの幸としたいことをして生きて行くのもありなのかもなぁとちょっと思うのだ。


 けれどそれは、冷静になって振り返れば必ずやっちまったなと後悔する、自暴自棄とか気の迷いとか、とち狂っちゃったの大丈夫? と思えるヤツだから、その後のことを考えるとやっぱなしの方向でと、醒めた私が私を止めてくれる。だから私は諦めて我慢をする。知っての通り私は臆病者だから。


 結局のところ、何かをやってもやらなくても、私が人生を閉じる時にはああして置けばこうして置けばと何かしら必ず後悔するのは目に見えている。だって私は私だから、万が一、幸を残して先にいってしまうなんてことにでもなったなら、後悔が私を縛り付けて、私は成仏できないだろう。見えない私は幸を慰めることすらできないのだ。うぐ。


「なんかこわい」


「なにが?」


「お化け。こわくない?」


「…まぁ、こわいかな」


 愛しの幸が私を見ている。なんとなく、憐れみと哀しみを感じるソレ。私の心幸知らずと言うヤツ。親の気持ちがよく分かってしまう。


「なぁに」


「いや、なにも」


「ふーん」


 元気でいてくれればいいやと私は思った。




 とにかく、私は私の気の迷いに幸を巻き込むことなど絶対にするつもりはない。私は大事な幸と私を守らないとだからそんなことしない。だから私としては、同じ後悔をするにしても我慢をする方を選ぶ。

 なら、今日のところも大人しくして郷に従うことにする。私の暮らす郷はそういう所だから、そうしておかなければ郷から追い出されてしまうから。それも私の本意ではないから。

 もう既に、明にでも暗にでも社会の隅っこに追いやられているけれど、それもまた我慢のしどころだ。


「だなぁ」



 経験を積んできた私は中堅。生半可なことでは動じない。何かあってもあほくさいと鼻で笑うくらいはできる。けれど、そんなふうに達観しているようでもたまにはこう、沸々と湧き上がるものはある。それを口にしたくもなる。吐き出したくもなる。

 私は人間。それも出来た人間ではないのだから。つまり、かをり、ってこと。


「だな」


 こうして私が悩んだって怒ったって、誰にも聞こえないように小さな声で文句を言ったって、いつかそのうちと期待しているだけのほんの小さな私の囁き声は世間様に届くことはない。私の声は声無き声みたいなものだから聴こえないのは当たり前。拾われないのも当たり前。


 私の声はそれでいい。べつに聴こえていなくて全然構わない。だって私は私の精神衛生のためだけにぐちぐち愚痴って溜まったガスを抜いているだけだから。

 そうやって、たまに爆発しそうになる私を守る必要に駆られてやっているだけだから。私は私が大事だから壊れるなんてまじ御免だから。


 そしてそれは、今は私を深く愛してくれている幸の、私を失くすことを恐れている愛しの幸のため。だから私は感情に任せて自棄になっては絶対に駄目。それを肝に銘じて、冷たい世間様の風を柳の枝のように、それをさわさわと受け流すのだ。それでいいのだ。


「そうそう」



 と、こうやって愚痴ることを私は死ぬまで繰り返すのかと思うと自分のことながら馬鹿くさいなと笑ってしまうけれど、気楽に生きていたくても一生物の悩みに付き合っていくとはそういうもの。私には必要なことなのだから仕方ない。はい残念。


 とはいえ私は何かを変える努力を何もしていないし矢面に立つ気もないし、そこは頑張る人任せ。これも何度も言うけれど、私は臆病者の弱虫だから。


 兆が一にも私が腰が引けつつ涙目になりながらも、私達を嫌う意地悪な人達に立ち向かおうものなら、私はたちまちぐさぐさぐさって口撃されて最初にぷちぷちってミンチのように潰されてしまうモブもモブ、物語が進んでいくうちに忘れ去られる、まさにモブオブザ…ってどうでもいいけれどまぁそんな感じ。


 だから甘ったれの私の現状は人任せの何も変わらない現状。そして私はその現状を文句を言いつつ受け入れるだけ。私の言う、進んで行ける方へ進んで行くとはそういうこと。そうやって流れに身を任せて生きながら、いつか普通のみんなと同じ権利を認めてねと願うだけ。それくらいべつにいいじゃんまじ冷たいねと思うだけ。

 ならそれを伝えればいいと思うかもだけれど、さっきも言った通り、噛み付かれるし意地悪されるし虐められるし面倒くさいことになることが目に見えているからそれは嫌。愛と平和が一番なのだ。


「ラブアンドピース」


「今度はどうしたの?」


「ラブアンドピース。いいでしょ?」


「いいね。ピース。くくく」


 私は幸に向かってピースを作る。私に遅れること二秒。幸は私を心配しつつもピースを作って笑いかけてくれた。


 まぁ、つまるところ、現状維持なら幸のお陰で相対的には今は幸せ。だからそれでいいかなと私は頷いた。


「うん」


 私は頭から不愉快を追い出して、ちゃんと全てを察してくれて私を優しく見つめてくれる、ピースをしたままだから少し間抜けに見えなくもない幸に、今どきピースとか恥ずしなくないのかなぁと思いながらも微笑んだ。


「平気。ちゃいちゃい」


「そっか。ならいいかっ」


「うん。いいのいいの」



 これでお終い。私は意識を切り替える。今の私達には直近で気にすべきことがある。いつまでも憤ったり移ろっている場合じゃない。


「それより幸。急がないと遅れちゃうかも」


「夏織のせいでしょう」


 少し息の上がった声で早くしないとと幸を急かすと幸が私を責めてくる。けれど、それは大きな間違いの勘違い。だって待ち合わせに遅れそうなのは幸のせいだから。


「は? よく言う。幸のでしょ」


「それ全然面白くないよ」


「は? 笑わせてないし」


「はーはーはー」


 なんつって、掛け合いをしながら私達は先を急ぐ。待ち合わせの時間はもうすぐそこだから。

 今日、仕事柄、プライベートでも相手を待たせないように時間に気を使っちゃう私達は遅れないように余裕を持って家を出た、筈だった。


「おかしい」


「ねー」


「だから幸のせいだって」


「はーはーはー」


 それなのに、こうして時間が少し押しているのは私のせいでもあり幸のせいでもあるところ。

 なぜなら久しぶりに歩くこの街が、再開発なんかもあって前にも増して遊惑星で溢れかえっていたからだ。


「おっ。なんだアレ。美味そうなヤツ発見」


 言ってるそばからこの感じ。やはりこの街は遊惑星でいっぱいなのだ。


「もぉ。またぁ?」


「ちょっと見てくる」


「こらっ」


 幸が隣でいい加減にしなさいとか何とか言ったけれどそれどころではないから気にしない。私が憎っくき幸の手から首根っこを守りつつ、くるっと足の向きを変えたせいで、その声はすぐに私の後ろで小さくなっていく。私だってやるときはやるのだ。


「えーと」


 私は素早くカフェの入り口にあった、特別感漂うショウケースの前まで行って、ふむ、本日のなんたら、さてコレは一体何だろうなぁと中を覗き込んだ。


 本日のおすすめ。バタークリームを使ったモカのケーキ。おいしいコーヒーのお供にどうぞ。だって。

 どっちがお供よ逆でしょうよと思うけれど美味そうだからまぁよしとする。


「幸。超美味そう。これ食べたい」


 私は幸に微笑みを向ける。遅れること五秒くらいで私の傍に来ていた幸の袖を摘んで、ねぇねぇ絶対美味いと思うからコレ食べていこうよぉねぇいいでしょう? と、誘ってみる。必殺の上目遣いも忘れていない。


「かは。だめよ」


「なんで? ほら見て。幸の好きそうな炭火で焼いたチキンのサンドもあるよ?」


「炭火…チキン…」


「炭火で焼いたハンバーグのサンドもあるね。手ごねだって」


「ハンバーグサンド…」


 なんか美味しそうだねと、一瞬だけ惚けた幸だけれど、いやいやだめよとすぐに頭を横に振った。いつでもはらぺこのくせに、生意気にも妄想を振り払って私の腕をぎゅと掴む幸。


 美味そうなヤツを前にして、何がそこまでさせるのか私には分からない。

 あ、いやまぁ、分かっているけれどそこは敢えて。


「いくよ」


「あ、ちょっ、引っ張るなって」


「いいからほらっ。時間ないでしょう」


 私を掴んだままの手で幸は器用に自分の手首を指した。なんでそんなことできるの不思議と愕然とする私を容赦なく連れて行こうとする幸。


「来い」


「ぐわ」


 なんだよいいじゃん、そこに甘くて美味そうなヤツがいるのにぃぃぃと、天候不順で登れない登山家のような台詞もむなしくお店の前から連れ去られていく。


「あ…」


「ん?」


 この目に見えたのは、じりじりと遠ざかる私を尻目に、ほらやっぱりここだよ、きょうちゃん見て、バタークリームのケーキだってと嬉しそうにお店に入っていく背の高い幸のようにかっこいい感じの女性とその連れの綺麗な女性の微笑みはなんとも優しげでまさにあの方のように慈愛に満ちている。私の幸とは大違い。くっ。


「なんだよっ。伝説のバタークリームだぞっ。あんま売ってないんだぞっ」


 私の思いの丈を伝えても幸からの返事はない。不思議に思ってその幸を見ると幸はそのふたりをじっと見ていたようだった。


「幸?」


「あ。はいはい」


「どうかしたの?」


「なにもないよ」


 幸は首を横に振って私の両肩を掴み、くるりとやって私の向きを変えた。


「いこう」


「わかった」


 私を掴んだ幸の手はすぐに離れてしまうけれど、それでもそんなふうにされればやっぱり嬉しくもなる。

 実は私が美味そうなヤツを見つけては立ち止まってちょろちょろするのは、それを食べたいだけじゃないの。そのたびにいちいち私に触れてくれる幸もそう、私と同じ。



 そして、いま歩くこの通りの二ブロック先の角を左に曲がれば待ち合わせ場所が目に見えてくる。それなのに、幸はすぐそこの角を右に曲がろうとしている。


「さてはあるのか? 凄いなこのぽんこつは」


 その先にあるのはたぶん肉か何か。幸の野生がそれに気づいたのだ。さすがはらぺこ。さすがの幸はそうやって野生の感を磨きながらこの殺伐としたジャングルーを生き延びてきたのだ。カッコいいなとちょっと思う。


「幸。そこを曲がるなって」


「うわぁ」


 今度は私が幸の腕を取った。

 遅めの朝食を食べて三時間と少し。ご飯は朝だけにしておいた方がいいよと言われているからそれ以降は何も食べていない幸はお腹が減ってしまったのだろうなと思いつつ、私は幸の曲がろうとした通りに視線を向けた。

 案の定、脇の換気扇からもくもく煙吐く焼肉屋さんがあったのだ。


「幸。そっちじゃないでしょ。私達はあっち」


「え? あ、あっちか」


「ったく。こんなことばっかしてるからなかなか先に進まないんだぞっ。遅れるぞっ」


 ふらふらするなと叱ってやる。私は美味そうな食べ物に釣られるはらぺこ幸に、私達には待ち人がいることを思い出させてやったのだ。


「あはは。夏織がそれを言うの?」


「なんのこと?」


 ここまで来るのに何度も立ち止まって涎を飲み込んでいたくせにと笑う幸の首根っこを行くぞと掴んで角を曲がるとライオンの像の側でスマホをいじる綺麗な女性を見つけた。

 その途端にふたりして、自然と早足になって側にまでいって、揃って声をかけた。


「「花ちゃんっ」」


「お。来たね。ふたりとも。時間ぴったりだね」


「まぁね。そこは計算通りだから」


「なに言ってんの。花ちゃん、久しぶり」


「おー。幸。久しぶり」


 ほぼ二月ぶりに幸に会って嬉しそうになったと思いきやすぐさま幸を下から上へとひと舐めするように視線を送り、花ちゃんは少し顔を悔しそうにする。


「ストレスで太っているかと思ったのに。幸は全然変わらないね」


「花ちゃんも痩せたままだね」


「まぁね」


「あ。ねぇ。じゃあ私は?」


 お互いに変わらない姿を確認して喜んでいるのか残念だったのか、あははふははと笑っている幸と花ちゃんに私はどうなのよと訊いてみる。


「変わらないでしょう」

「変わらないね」


 ふたりは優しい視線を私にくれてそれだけ言って笑ったまま、というか苦笑いっぽくなって、具体的には何も言ってくれなかった。


 むしろ、ねぇ、なんて仲良く顔を見合わせて呟く声が聴こえたような気もするけれど、私には最近、少しだけ体が締まった感覚が微かにあったのだ。

 ヨーグルトは欠かしていないし、ぶーってやるヤツはちゃんとやっているし家で食べる甘くて美味いヤツの量は謎の圧のせいで確実に減ったから。しかもいま着ている服もすんなり着れたし、今朝、というか三時間くらい前に食べただけだからお腹もあまり膨らんでいないというのにっ。


 だというのに。


「おかしいから。よく見てよ」


「変わらないってば」

「変わってないよ」


「そっぽ向くなってっ」


 まあ、私はふたりと毎日顔を合わせているのだから、変わらないように見えるのは仕方ないと私は思うことにした。変わらないというのなら太ってはいないということにしたのだ。

 私は甘くて美味いヤツに気を取られる以外は常に前向き。私が力尽きて倒れる時も、あの幕末の英雄のように前のめりに倒れることになるだろう。かっけー。


「くぅぅぅ…はっ」


 戻るとふたりは笑っている。なんとなく失笑のようにも見えてくるけれど、姉妹なこのふたりに限ってそんなつもりはない筈。

 そうだよねと、私はじっとふたりを見る。



「さてと。いこうか。こっちだよ」


「やったっ。お昼ご飯だっ」


「残念。それはあと。もう少し待って」


「なっ。なななっ」


 私を無視して話は進んでいくんだなぁとちょっと泣きそうになっていたら幸が固まった。さっそく花ちゃんにやられている。私を無視したバチが当たったのだ。


「なんだ幸。ソレ、面白いね」


 けど今は時間があまりないんだよと、花ちゃんはその幸を正気に戻そうと肩に手を置いた。


「ほら夏織も。よくわかんないけど睨んでないで」


「睨んでない」


「いいからいくよ」


「無視したくせに」


「あとで甘くて美味しいヤツ食べられるから」


「まじっ? 早くいこうっ。ほら幸も」


「ご、ごごご飯は?」


「ちゃんとあるから。すごく美味しいヤツ」


「いこう。すぐいこう。ほら、夏織もぼーっとしてないでさ」


「それは幸だから」


「夏織ですー」


 やいのやいのとやり合う私達。お前達は変わらないねと笑う花ちゃん。じゃあいくよと私達の間に入って右と左、それぞれの腕を取って歩き出す。私と幸をぐいぐいと引っ張っていく。


「うぉ?」


 そんな花ちゃんの態度に驚いて立ち止まる幸。それを気にもしない花ちゃんにぐいってやられてととととたたらを踏んだ。


 その感じがちょっと珍しいなと私も思ったけれど私達は仲良し三姉妹だからこれもありだと納得する。それに花ちゃんがあると言うのだから甘くて美味いヤツが必ずあって私を待っているのだ。


「幸。平気?」


「うん」


 私には分かる。花ちゃんはまた一歩私達の近くに立とうとしている。それなら嬉しい。私のマイペースな足も、今ばかりは弾むというものだ。


 幸も同じように感じたのだろう。


「なら嬉しいな」


 なんて言って、綺麗な顔を綻ばせていく。私の顔はとうに綻んでいる。それは心からの微笑み。


「ね」


「うん」


「なによ」


「「なんでもない」」


「ところで花ちゃん。今からどこいくの?」


「いいところだよ。まだ内緒」


「「いいところ?」」


 私と幸は揃って首を左に傾げた。それを見た花ちゃんはまじ仲良しだな羨ましいと笑っている。

 花ちゃんも一緒だからねと私は思った。




「離れろって。邪魔になってるでしょ」


「いいじゃんべつに」


「そうそう」


 いつの間にかぼんぼんと互いにぶつかって歩く私達はおしくらまんじゅうのようになっていた。疲れるし恥ずかしい。そして何よりぶつかるから歩くのに邪魔。


「いたた」

「あたた」

「ちょっ、離れて。真っ直ぐ歩けって。迷惑でしょ」


「「人いないよ?」」


 人少ないから大丈夫だよねー。なんて笑っている幸と花ちゃんの距離はまた一段と近くなった。

 私と幸は恋人で、私達と花ちゃんは仲のいい姉妹で先輩後輩で友達。きゃいきゃい騒いで周りに迷惑をかけてさえいなければなんかいいなと私は思った。


「うるさいなぁ。歩きづらいし」


「だね」

「だねっ」


「わかってんならやめろって」


 このふたりあほじゃないのと、やっぱり私が一番上の姉じゃんかと思った私も三人寄ればやっぱり楽しい。






 三日前、週の半ばの水曜日の午後遅く、例のスペースに私と花ちゃんはいた。甘くて美味しいヤツを手に入れたよと花ちゃんが私を誘ってくれたのだ。


 遠慮なくチョコ塗れのラスクをぼりぼり齧って、幸はどう? 異様に燃えてるよ、さすがだね、うん、なんて話をしたあと、また痩せたんだよどうしようとかふざけた話を自慢げに話す花ちゃんの横で私はぷるぷると震えていた。


「土曜日の予定? 特にないけど花ちゃん忙しくないの?」


「私はないよ。面倒なことはぐっさんに丸投げ。私は私のことだけすればいいからさ」


「可哀想に」


「ぐっさんは好きでしてるんだよ。あれはね、段取りとか好きなタイプ。段取りマン」


「なにそれ弱そう」


「ははは」


 アレとコレとソレと、あとアレもあったね、これこれこんな感じにしたいなってお願いするとね、やって置くから俺に任せろってなるんだよ。お陰ですごく楽なんだよと花ちゃんは笑う。ぐっさんへの愛しさが溢れていて溺れそうなくらい。


「そっか。ならこっちはたぶん平気。幸も週末は勉強だけだと思うし」


「そう。じゃあよろしく」


 土曜日、時間ある? そう訊いてきた花ちゃんは約ひと月後の結婚式に向けてばたばたと忙しい筈なのに、毎日のように、花ちゃんは元気? と私に訊いては会いたそうにしていた幸のために花ちゃんはわざわざ時間を作ってくれるのだと、私はそう思っていた。


「やっぱ美味いよねコレ」


 私は満面の笑みでラスクを食べる。ふざけた話はもうどこかへいってしまった。心の安寧ってまじ素晴らしいって思う。


「だよね。あとは全部食べていいよ。夏織にあげる」


「まじ? やった。持って帰って幸と食べようっと」


「相変わらず仲良いね」


「うんっ」


 あと五つもあるじゃんラッキーだなありがと花ちゃんと、やはり遠慮なく袋ごと私の前に残りのラスクを移動させた私を見て、花ちゃんは優しく笑っていた。


「あ」


「なに? どした」


「けどコレさ、チョコ溶けちゃうかな? やっぱ美味いうちに全部食べちゃった方がいいかな?」


「はぁ。もうさすがとしか言えないよ」


 溶けたら不味くなるよなぁ、どうすっかなぁと、うーんと唸って悩み始めた私を見て、花ちゃんは残念そうにでかいため息をついていた。


「うーん。悩む」


「はぁ」





 そして今、じゃあ行こうかと花ちゃんに連れらるままにやって来たそこはとあるホテル。というかそのホテルにある花ちゃんが結婚式を挙げる予定の式場。今も何やら挙がっている様子。何となく、おおー、幸せの瞬間じゃんと思って顔が綻んでしまう。


「よし。時間ぴったり。じゃこっち。来て」


 訳も分からずついていく私達に少しの遠慮もなく、ここで挙げるんだよいいだろうと嬉しそうにしている花ちゃんはその上の階の一室に、まぁどうぞ入ってと私達を中へ誘った。


 するとどうでしょう。入ってすぐに目についたのは壁一面のでかい鏡とそこかしこに掛かるウェデングドレスの数々。


「「うわぁ」」


 なにここ素敵と、私達には出来ないこともあり得ないことも忘れて私も幸も息を呑んで固まってしまった。


「実はね、今日が一応、最終フィッティングなんだよ」


「そ、そうなんだ」


「うん」


 でねと続ける花ちゃんの話は私の耳には殆ど入ってこない。幸もドレスに気を取られているけれど、幸はさすがの幸だからちゃんと返事をして花ちゃんの話を聞いている。少なくとも素振りはしている。

 えっ、ほんとに? ほんとだよ、と、話すふたりを他所に私は小さく呟いていた。


「…うそ」


 だって私はこれでもかってくらいあるドレスの中に見つけてしまったのだ。いつか夢で着たのと同じ、掛けられたままでも私が着ても超素敵だったクラシカルなAラインのヤツを。


「えっと」


 その横、何着か視線をずらすとやはりあった幸が着ていたのと同じドレス。私のヤツの長袖バージョン。


「まじ、かぁ」


 私の目に涙が溜まる。ぐわわーって突き上げるように胸に込み上げるものがある私の心の内はぐちゃぐちゃになってしまった。


「やったっ」


「よかった。喜んでくれるんだね。余計なこかとも思ったんだけどね」


「そんなこと当たり前でしょう。本当にありがとう花ちゃん。すっごく嬉しい」


「そっか。よかった」


 ふたりの会話が耳に入る。

 私が呆然と立ち尽くすのは当然のこと。私は分かってしまったのだ。



「着ていい、の?」


「いいんだってっ。って、夏織? 大丈夫?」

「いいんだよ。って夏織。大丈夫?」


「大丈夫、くない、よ。むりだ、から」


 私は泣き出してしまった。子供の頃のように、誰に憚ることなくわんわんと。

 我慢とか溢さないようにとか、そんなの無理に決まっているから。どんな反応をするのか不安だったろう花ちゃんの優しい心遣いがこの胸に沁みているから。


「目が腫れるよ」


「む、り、だよ」


「よしよし」

「あららぁ」


 わんわんと泣くそのあいだ幸も花ちゃんも私に寄り添ってそっと肩を抱いてくれていた。





「花ちゃんに泣かされた。超恥ずい」


「あはは」


 私はそんな生暖かい目で私を見ないでくださいお願いしますと、事情は全て分かっていますからお心お安く私どもにお任せあれ的に微笑んで、いま私のお世話をしてくれている係の女性に念を送る。びろびろはしていない。動くとじっとしていてくださいねと怒られるのだ。


 サイズはー、ああ、たぶんぎりぎりいけそうですね、よかったですね、なんつって、ぎゅっぎゅってやられて、私もきゅっきゅってお腹を引っ込めて、私と係の人がどうにかして頑張っているところ。


「おい幸。笑うな。ていっ」


「あだっ」


「「動かないでくださいねー」」


「「すいません」」


 隣の幸は余裕でソレを着付けてもらっていて、細いですねー、モデルさんみたいですねー、羨ましい、ああこれサイズ、逆に大きいかなぁ、なんて会話が聴こえてくるのがちょっと不快だけれど、胸は、あ、これ、多めに詰めておきますね、とも聴こえてなんかすっきり。


「笑うなっ」


「あだっ」


「「動かないでっ」」


「「ごめんなさい」」


 確実に嬉しくて嬉しくて仕方ない私がいる。醒めた私は今は鳴りを潜めている。拗ねてしまったのか、もしかすると温かく見守ってくれているのかも。





「私これにする」


 私は例のドレスをチョイスする。誰にも渡すもんかと辺りを警戒しながら係の女性に早く取ってと圧をかける。


「おっ。いいねっ。絶対似合うよ」


「えへへ」


「じゃ、私はこれ」


 私は当然、幸は偶然、夢で着ていたドレスを選んだ。指を差しながら、びびって来たんだよねーと幸は嬉しそう。


「まじ?」


「えっ。変?」


「ううん。それがいいと思う。てか、それ以外にないと思う。凄くいける」


「おっ。そう思う?」


「うんっ」


 それがまた、私達の絆は永遠だと思わせてくれる。私は夢のことを幸に話したけれど、ドレスのことはそれほど詳しく話していなかったのだ。それでも幸が選んだドレスは夢で着ていた幸にとても似合っていたお揃いのドレス。


 私の感はまたしても極まってしまう。けれど私は頑張って食いしばって涙を堪える。今この時に泣き顔なんて、せっかく直した化粧とか、色々と残念の無念の台無しになってしまうから。


「同じだね。仲良いね」


「袖のとこが違うから」


 私のは袖なし。幸のはレースの袖があるでしょと、私はそこをアピールすると花ちゃんが即座に反応する。やはり花ちゃんは気が利いているとしか言えないソレ。


「逆の方がいいんじゃないの?」


 夏織と幸。見た目的に私はそう思うけどねとか言っている。腕とかさ、なんて余計なことを付け加える丁寧さをも併せ持つ花ちゃんはさすが。しゅっ、しゅしゅしゅって凄くエッジが効いているのだ。


「なぁんだとぉ?」


 だってさ、二の腕揺れない? 夏織は平気なのと、あとで黒いヤツ来ないのと花ちゃんが私をからかった。自分のヤツを揺らそうとしているけれどびくとしかしていない。確実にぷるぷるする私とは違う。


「…嘘だ」


 ちょっと貸してみろと花ちゃんに手を伸ばすと見事に避けられてしまった。痩せた花ちゃんは体の動きも軽快そのもの。


「残念だね。けどね、振らなければいいんだよ」


「そっか。なるほどねー。花ちゃんやっぱあったまいーなー。って、なんだとこらー」


「あはは」


 がんばれ夏織と私に向かって両手でぐーを作り、じゃあ私はあっちでフッティングだからまたあとでと、花ちゃんは歩いていく。

 私はその背に声をかけた。


「花ちゃん。まじでありがと」

「ありがとう花ちゃん」


 このサプライズ、フォトウェディング的なヤツをホテル側とどう話をつけたのか、このための費用は幾らなのかなんて私はそれを訊いたりしない。

 これは花ちゃんの心意気。人生にひと区切りつけた私達へのとても素敵な贈り物だから、私達は感謝の気持ちを胸にありがとうと受け取って置けばいいものだから。

 一緒にお礼を言った隣の幸もそう思っているからこそ、お礼だけを伝えて他は何も訊かずにいるのだ。


 そして私はこうも思う。

 同じく人生にひと区切りをつける花ちゃんは、私を介して自身の千春さんへの想いにひと区切りをつけるつもりなのだと。


 千春に贈る。私は進む。千春を送る。いずれ会える。それまでばいばい。またね。


 と、きっとそういうこと。


「べつにいいよ。可愛い妹達のためだからね。それにね、これは私のためでもあるんだよ」


「やっぱり」


「そうなの?」


「まぁね」


 じゃああとでと、納得した私とよく分かっていない幸に振り返った花ちゃんの笑顔は頗る素敵だった。たぶん、今までに見たことのないヤツ。





「どうかな?」

「どう?」


 そして私は頑張った。まぁ、実際にはそんなでもなく着ることができた例のドレスに身を包んだ姿を幸に見てもらった。似合っているのは分かっているから自信たっぷりに。


 私はそのとき誓いの言葉、この私を貰ってねと愛してると心の中で伝えていたのだ。

 その瞬間に幸が微笑んでくれたからきっと伝わったと思う。私達のご自慢の、以心伝心というヤツだ。


 私はずっと笑顔だった。そこに涙はもうなかった。私はただただ幸せだったから。


「幸。超素敵」


「夏織も。すごく綺麗」


 そして、綺麗だねと、可愛いねと、愛しているよと、口をぱくぱく動かしてくれた向かい合う幸もまた同じ。夢で見た時と同じように、いや、それ以上に綺麗で可愛くて少し照れた感じも乙女でとても堪らなかった。

 言葉では語れない、言い尽くせない想いが溢れてしまう。溢れている。


 私達はそれを笑顔に乗せて伝えあったのだ。


 今、私達が周りの目にどう映ろうがどう思われようが構わない。そんな心配は要らない。

 だってこの機会をくれたのは花ちゃんなのだから、いま遠慮なんて私はしない。必要ない。

 そう。つまりはそういうこと。


「幸」


「夏織」


 私達は手を伸ばし、互いのそれに触れた。これはそう、永遠。私と幸の中では。






「すごーい」

「きれーい」

「そう。ありがとう」


 そのあと花ちゃんが私を見てみろとやってきて、私と幸はその綺麗さに息を呑む。

 ストレートな女性の幸せを手に入れて、それをその手に大事に抱え、照れてはにかむ花ちゃんは本当に可愛かったから。

 私は花ちゃんに幸あれと、絶対絶対幸せになってねと心から願う。


「ま、ぐっさんだし。いけるよね」


「そうだよ。私の選んだ男だからね」


「くぅ。言うねー」


「幸。それは酷い」

「それなっ」


「なななっ」



 それから私達はお互いにお互いの姿を見せ合って魅せ合って、ふたりともまじ綺麗だねと魅せられ合った。


「花ちゃん。プリンセスとか」


「うるさいね」


「違うって。凄く似合ってる。素敵。ね、幸」


「だね。ほんと綺麗」


「そう。ふはははは」


 控えていたカメラウーマンさんに、メモリーごと全部買い取りますからと、一人ずつのと三人一緒のと、私と花ちゃんのと幸と花ちゃんのと、そして当然、私と幸のヤツの写真を時間とメモリーの許す限りいっぱい撮ってもらった。



「ふたりとも。そろそろ」


「うん」

「だね」


「なんかごめんね」


「謝らないでよ花ちゃん。花ちゃんは全然悪くないでしょ。私も幸もまじ嬉しかったから」

「そうよ花ちゃん。ほんとにありがとう」


 ねーなんっつて、私達は花ちゃんに微笑むと、ほっとしたような、納得したような、そんな表情がそこに浮かんだ。

 花ちゃんは、私達への贈り物が受け入れられたことはもちろん、千春さんのことについても、花ちゃんなりの踏ん切りがついたのだと私は分かった。


「よかった」


「ね」


「さすが」


 何も伝えていなくても優秀で聡明な幸も今はそれを察してどこかほっとした表情を浮かべて花ちゃんを見ている。さすが幸、凄いなとしか言えない。


「夏織も幸もありがとう」


「「いいのいいの。こっちこそだよ」」


 幸せ時間はいずれ終わる。そんなことは当たり前。だから私達は全然大丈夫。虚しくなんてなりはしない。

 私達は今日のことを忘れなければいいだけ。大切な思い出としてちゃんと心に残して置けば、思い出の中にはいつでも入っていけるし、それを取り出して笑って眺めることもできるのだ。


「そう」


「「うんっ」」




 ドレスを脱いで着替えたあとも、みんなでカメラを覗き込んでいた。


「これいいね」


「これもいいよ」


「これもなかなか」


 と、わいわいしながらどれも笑顔で幸せそうで楽しそうにしている写真を見ていたら、いつの間にか幸も花ちゃんも台無しの無しになっていた。笑っていたのに鼻声になって泣いていたのだ。


「ふたりともなにその顔。酷いな。台無しじゃん」


「「うるさいっ」」


「痛いって」


 いまふたりには涙を流す理由がある。私はそれをちゃんと分かっている。私の理由と同じだから。

 それは愛するこの私の、頼りない妹としてのこの私のせいでもあり、それぞれ歩いて来た道であったことや、今も変わらず抱えているもの、モノや大事にしていた筈の妹の自死のせいでもある。私はそれをとても有り難く思うし、私達みんなよく頑張ったよねと、よくもまぁ挫けずにやってこれたよね偉いよねとも思う。心からそう思う。


「みんなよくやった」


「うっ」

「ううっ」


 幸と花ちゃんはついに声を上げて泣き出してしまった。

 私はふたりともなんか感極まっちゃったみたいですいませんと周りに頭を下げながら、ふたりの背にそっと手を置いてその背を摩っていた。

 私はもう平気。さっきいっぱい泣いたから。



 暫くそうしていると声はもう聴こえなくなった。

 ならばと私は気持ちを切り替える。いくら大切な想いやものだったとしても、過ぎたことに囚われ続けるだけでは駄目だから。たまに懐かしんで、泣いたり笑ったりするくらいが丁度いいと私は思うから。


 私や幸、もしかすると花ちゃんでさえも、これから先も手にした幸せと引き換えに、大なり小なり傷ついて、傷つけられて生きていくのだろう。

 それでも私達は進む。もち、私は幸と一緒に進んでいける方へ。私は時々は凄く頑張って、普段はのらりくらりと生きていく。だって私は私だから。ただ前だけはしっかりと向いてなっ。


「うん?」


 さっきもそんなこと思ったようなと首を傾げつつ私はそれを実践する。

 幸も花ちゃんも泣くだけ泣けばそれで充分だと分かっているだろうけれど、今はまだちょっと無理そうだから私が三姉妹の一の姉として実際にやって見せるのだ。やっぱり夏織がお姉さんだねとふたりに認めさせるのだ。それっ。


「ねぇ花ちゃん」


「なに、よ。うぐ」


「甘くて美味いヤツ」


「は?」

「ぐす。夏織ぃ…」


 なに言ってんのなんで今なの馬鹿じゃないのもうとふたりして私を責めるように痛い視線をくれたけれど私は気にしない。


「だって食べないと来た意味ないじゃん」


「「は?」」


 花ちゃんのお陰で諦めていた筈のウェディングドレスを着ることができた。私達みんなの大切な思い出、確実にこれからの力になるメモリーも手に入れた。それはそれ。終わり。

 だから次は甘くて美味いヤツを食べないとだから。花ちゃんがあるって言ったんだから。ソイツが私を待っているんだから。


「ねっ。だからさ、早くいこう」


「…もぉ」

「…ったく」


 私の意図を知ってか知らずか幸と花ちゃんがこれだよ的に私を苦く笑う。仕方のない奴だなぁと思われている気がする。


「ほらっ、はりはりはりー。売り切れちゃうからっ」


 けれどその顔を見ているとこれでいいんだと私は思う。ふたりが笑ってくれるのなら私はいくらでも馬鹿になれる。


「もう。台無しだよ夏織」


「ほんソレ。台無しだなぁ」


「いいのいいの」


 私は微笑んだ。飛び切りのヤツだ。





お疲れ様でございました。ありがとです。


こんな形ですが、夏織と幸にウェディングドレスを着てもらいました。

先ずはよかったよかった。


さて、バタークリームといえばあの人。ということで、ほんの一瞬だけ出てもらいました。ふたりとも元気そうでなにより。

幸のセンサーは鋭く反応しました。が、それに比べて夏織のヤツは…


「まじぽんこつだなっ」


「あはは」


読んでくれてありがとうございます。


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[一言] 感想というか気になるニュースがあったので一言 地裁の判決ですが、同性婚を認めないのは婚姻の自由に反する… なんと言えばいいのか、これがニュースになること自体が未だに受け入れられていないことを…
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