閑話 幸と花
閑話です。
よろしくお願いします。
週明けの月曜日、午後一時前。私はオフィスの入るビルの一階でお昼を終えた人達が続々と戻ってくる中を、ホールの端に突っ立って花ちゃんが来るのを待っている。
何となく周りを見渡せば、他にも待ち合わせをしている人達がいる。けど、私の周り、半径二メートル以内には誰もいない。最初は近くに立つんだけど気づくとその場からいなくなってしまうのだ。
それはたぶん、私の放つぴりぴりと肌を刺すような雰囲気がそうさせているのだと思う。
なぜなら私はこれから天敵、なんなら怪物と言ってもいい、花ちゃんとランチをするからだ。この前の緑と風の広場の戦いからというもの、花ちゃんの説教がトラウマになっちゃったんだから。花ちゃんは優しかったけど怖かったから。
だから私が緊張してぴりぴりしてしまうのは仕方のないことだ。
なんちゃって。あはは。
今日の午後の予定が急にキャンセルになって時間が空いてしまったから、私はダメもとで夏織と花ちゃんにご飯ご飯とお誘いのメッセージを送ってみたところ、花ちゃんは電話当番だったらしく、丁度よかった、一時でいいならと返事をくれた。けど、夏織の方は残念ながらやはり無理だった。
お腹減ったよ。ご飯まだ?
むり。出先。予定がある
あら残念
知ってたくせに。けどやめる。今から戻るから待ってて
あはは、馬鹿なこと言って。あの嫌味なおじさんでしょ? あとが面倒だよ。頑張って
そうだった。頑張る。実はもう食べたし
なにを?
甘くて美味いヤツじゃなかった、辛くて美味いヤツ、た、たぶんカレー的な
ほー
ほんとだからっ。超辛かったからっ
へー。まぁいいよ。じゃあね、頑張って
ᕦ(ò_óˇ)ᕤ がんばるんば。じゃあね
「かは」
がんばるんばはさておき、顔文字を見て私は軽くいってしまったけど、きっと夏織は夏織でさっきのメッセージのやり取りが終わったあと、なんだよくそう予定なんか有りやがってばーかばーかと悪態を吐いていたに違いない。夏織はぶれはしないから。いつだって夏織は夏織なんだから。
「くくく。夏織、さすがだな」
ということで、夏織は外に出たままオフィスには戻っていないからここにはこない。得意先と午後いちで会う予定だからやはり駄目だった。
相手は夏織をたぬき呼ばわりした例のおじさんだから、揉めたりしないかなと少し気になるけど、夏織がたぬきっぽいことに関してだけは間違っていないと私は思う。私もたまに間違えて呼んだり打ったりしまうし。あはは。
まぁ、夏織もすっかり大人の女性になって自重という言葉を覚えた筈だから絶対にあり得ないと思うけどと、おじさんとぽんぽこぽん合戦をしてしまう姿を想像してくすくす笑っていると、小さなバッグを持った花ちゃんが私を見つけて、よ、お待たせと手を上げながら近づいてくるのが見えて、私もすぐに手を振った。
私がとんちんかんな理由で噛み付いて、ぼこぼこに返り討ちにされながら諭されたあの日以来、花ちゃんは私にもフランクに接してくれるようになった。
私も花ちゃんに対してどこか構えていたものが取れてきて、今では夏織の先輩だからと遠慮することは殆どしなくなった。
遠慮はしなくはなったけど、私がいまだになんとなく苦手意識持っているのは、たまに思い出してしまうあのとんちんかんが凄く恥ずかしくもあるからだ。ご存知の通り、迫り来る黒いヤツは怖いから…
あ、ヤバい。思い出したらまた恥ずかしくなってきた。
「ぃゃぁ」
それでも普段は特に気にすることもなく花ちゃんとよく話をするようになったし、今日みたくランチに誘ったりするだけでなく、誘い誘われ二人だけで夜ご飯に行くようにもなったし、夏織の話を摘みに大笑いしながらお酒を呑んだりもする。夏織はとてもおかしいから。
「へー。ふたりして私を馬鹿にしてるのか」
「違うよ」
「まあね」
「ちょっと花ちゃんっ」
「市ノ瀬も馬鹿みたいだって言って笑ってただろう?」
「なっ、言ってないっ」
「わかってるから。幸がそんなこと言うわけないし。ていっ」
「あだっ」
それでも夏織は嬉しそうだった。私達のこうした変化を当の夏織はとても喜んでくれている。
私も花ちゃんと仲良くなれたことをとても嬉しく思うし、私を受け入れている花ちゃんもそう思っていると思う。
花ちゃんは夏織にとって良き理解者であるように、私にとってもそういう存在になりつつもある。
わちゃわちゃと過ごすうちに、花ちゃんは私にとっても頼れる先輩で友人、そして姉になった。
照れ臭いし恥ずかしいからそう思っていることはおくびにも出さないけど、花ちゃん、オブラートって知ってます? みんな結構包むんですよ? と言いたくなるくらいあけすけにものを言う、厳しくも優しい姉ということで私の中で落ち着いてる。環がいるから、私には二人の姉がいるというわけ。やったね。あはは。
と、色々と考えているうちに天敵で怪物で魔王、容赦のない断罪の鬼こと花ちゃんはもう私の目の前にいた。なんか増えたけど実際そうなんだから私は気にしない。
私は何も考えていませんでしたーと、そんなふうに平然を装って目の前の花ちゃんにしれっと挨拶をする。
「花ちゃんお疲れさま。いたっ」
側にきてすぐに、小さなバッグで私を叩く花ちゃん。目を細めてじっとというかじとっと私を見つめている。
「市ノ瀬、お前なぁ」
「な、なに。花ちゃんいきなり」
「はぁ。市ノ瀬は顔に出るから気をつけろって言ったでしょ。バレてるよ。まったく、失礼な奴だな」
「え」
「私は弄ったりからかったりするのが好きだからさ、市ノ瀬がそう思うのは勝手だけどね。けどいつか刺されるから気をつけなよ」
「えと、花ちゃんが刺すんじゃなくて?」
「私は魔王だからな。僕にやらせる。けど今日のランチを奢ってくれるなら手を出すなって言っておくよ」
うげ、バレた。また怒られてしまうと、うわぁ説教だよと思っていたら花ちゃんは顔をによによとさせていた。
今日のランチ。それで手を打つよ、どうよ? 優しいだろうと笑っている。
「今日のランチ」
「え」
「今日のランチ。奢って」
「…はい」
「やった。さすが市ノ瀬。いつもありがとう。ははははは」
「くっ。またかっ」
「ふはははは」
実は、花ちゃんとご飯を食べに行ったり呑みにも行ったりすると毎回のようにこんなことになってしまう。夜は全額というわけではないけど、なぜか私が多めに出す羽目になってしまう不思議。
「おかしいなぁ」
へー。結構高いんだねぇ。吹き抜けた天井を見上げながら、まじ気をつけようと私は思った。
「くっそう」
「ふはははは」
「で、市ノ瀬。なに食べようか」
「肉で」
「肉。肉ねぇ。さては夏織の回し者か?」
「へ?」
私の努力を無にしたいのかと花ちゃんは疑っている。嬉しそうだった顔を一転させて、ははーん、さては夏織に何か言われたなと私を見ている。肉と、タレの染みた白飯を食わせて太らせてしまえ的なことを吹き込まれたなと疑っているみたい。
もはや目くそは鼻くそを笑えないくらいに花ちゃんは痩せた。
何時ぞや、このままいけば気に入ったウェディングドレスを着ることができるよと花ちゃんは嬉しそうに笑っていた。
その眩しくて幸せそうな花ちゃんの様子に、私の胸がほんの少しだけちくっとしたけど、私達が結婚できないことや、女の子なら誰でも一度は憧れる素敵なウェディングドレスを諦めていることは、なにも幸せそうな顔を見せる花ちゃんが悪いわけじゃない。
花ちゃんは女性として当たり前の幸せを手に入れる。男性と結婚して子供を育て家族になる。確固たる拠り所を手に入れる。作り上げる。
花ちゃん達ストレートからすれば、それは極々自然で単純明快、まさに疑いのない真理と言えると思う。
私が嬉しそうな花ちゃんに、言葉を選べとか私達に気を遣えとか羨ましいとか、そんなふうに何かを思うことはない。社会的な立場が違えば、選べる生き方も感じ方も抱く思いもそれぞれに違うのだから。ははは。
夏織が花ちゃんの結婚を心から祝福しているように、私だっておめでとうと心から思っているのだ。そこに少しの羨望はあっても、ちくちくする理由はただそれだけ。
その、ちくりとした小さな痛みは条件反射みたいなもの。無いものを、手に入らないものを羨ましいなと漠然と思ってしまうだけのこと。
私達にとっては、憧れはいつまでも憧れだ。憧れのままだ。
憧れのまま終わるんだと諦めていても、そんなことはちゃんと分かっていても、この胸に少しの痛みを感じてしまうのは仕方のないことだと私は思う。
私と夏織のこうした心情とかほんの少しの嫉妬を正確に読み取る花ちゃんは、私たちの前で無駄にはしゃぐこともなければ変に遠慮したりもしない。飄々として淡々としながらもたまに照れながら嬉しそうにするだけだ。その態度はたぶん、誰に対してもそうなんだと思う。
そのことでも分かるように、私と夏織は花ちゃんに信頼されている。私がお前達に遠慮する必要はないでしょうということだし、その代わりお前達も私に遠慮なんか絶対するなということだから。
結婚の話をするたびに嬉しそうにする花ちゃんもまた私や夏織と同じ、花ちゃんはいつだって花ちゃんだから。
私達ができないことを知っていてもなお、嫌味無く自分の感情のまま自然に振る舞うことのできる花ちゃんもまたさすがの花ちゃんなのだ。
本当にありがたいなと私は思う。
「どうなのよ?」
「ち、違いますって。私が食べたいだけですって」
私は慌てて否定する。敵に回すと花ちゃんは怖いから。ほら市ノ瀬、いつかの黒いヤツだよ怖いなーと、私をいじめるに決まっている。
「…まぁいいよ奢りだし。じゃ、行こうか」
「あ、はい」
私を先導するように歩き出して、花ちゃんはホールを横切って左手の出口に向かおうとする。
私はすぐに気がついた。そうはいかないいかせない。私は笑いそうになりながら声をかける。
「花ちゃん」
「なによ?」
「肉はあっち」
「ちっ…さすが市ノ瀬。夏織と違って鋭いね」
あはは。私は肉は勘弁と思っているっぽい花ちゃんに一矢報いてやったのだ。
そうそう好きにさせてなるものか。こうなったらたらふく肉を喰わせてしまおう。私は夏織を援護してあげちゃうことにした。
花ちゃんは立ち止まって、ちっと舌打ちをした。市ノ瀬が夏織だったら絶対に上手くいったのにと悔しそう。確かに甘くて美味いヤツがあるらしいよとでも言えば、夏織はまじかやったと喜んで必ずのこのこと後をついていった筈だ。
夏織は私がオフィスから居なくなったら悪い人に騙されちゃうんじゃないのかなと、私は少し心配になった。
「うーん」
けど、もしも夏織だったら聴こえない振りをしてとことこと歩いて行っただろうなとも思う。
それなら夏織は大丈夫かなと私は笑ってしまう。
「くくく」
「なによ市ノ瀬」
「いや、夏織なら知らんぷりして歩いていくかなと思って。くくく」
「ああ、なるほど。それもそうだね。ははははは」
やはり夏織は面白いし見ていて飽きもこないなぁと、私達はお互いにその姿を想像して暫く笑っていた。
「さてと。市ノ瀬いくよ」
「あ、はい」
いまだに、私からランチをせしめて上手くいったと気持ちよく高笑う花ちゃんは私と同じ量の肉を喰らっている。
正確には、赤身の肉を口に入れるたびにナイフとフォークを休ませて、もぐもぐとよく噛んで食べている。満腹中枢を刺激しているんだよとかなんとか言いながら。その姿はとても可愛らしい。
対して私はいつものように美味しい肉を口いっぱいに頬張っている。花ちゃんは呆れているけど、その姿はたぶんかっこいい筈だ。夏織はそう言ってくれるし、お弁当を付けて食べ散らかす幸はやっぱ可愛いなと、そうも言ってくれる。あはは。
ここは私のお気に入り。和牛の肉を相場より安く食べさせてくれる穴場的なお店だ。お昼期はさすがに混んでいるけど、一時を過ぎれば席は空いていて、私達はすんなりと席に着けた。
「美味しいねこれ」
「でしょう? ここ、お気に入りの店なんです」
「市ノ瀬の奢りだと思うと余計に美味しいよ」
「べつにいいけど花ちゃん、太りますよ」
「なんのこと?」
花ちゃんは痩せる宣言をしている通り、このままいけば来年の結婚式までには、花ちゃんはかなり細くなっていることだろう。私はつい舐めるように花ちゃんを見てしまう。
「なによ。じっと見て」
「かなり痩せましたよね」
「まあね。いまじゃEだよE」
E? 私には花ちゃんが主張するその変化というか違いというか、それが全然分からなかった。慎ましい私には大きさ自体を想像することすらできないのだから。
それに、私が今までに間近に見て直接触れた最大の胸はD。夏織の綺麗で形のいいそれだ。思えば今までの恋人の胸は当然わたしのよりも大きかったけど、所詮は類は友を呼ぶというヤツ、狢だ。
「嘘ですよね?」
私は気を取り直して花ちゃんの胸を凝視する。その変化を確認しようと頑張ったのだ。
大体において、その大きさで夏織のひとカップだけ上とかあり得ない。
「Eだよ」
「嘘だぁ」
「見てみてよ。ほら」
フォークとナイフを置いて、ほんとほんと、ね、まーた小さくなっちゃったんだよと胸に手を当てている花ちゃん。ここまで落ちるとは計算外だったなと笑っている。けどまぁ、見た目はあんまり変わらないけどねとそれを揺すっている。その動きに合わせて、モノがゆっさゆっさと揺れている。
「くっ」
私はそれに釘付けだ。それで小さくなったとか笑えないし寧ろ腹が立つ。
けど平気。よく考えてみれば、私だってここに来てなぜか成長していたのだ。少なくとも隙間が小さくなるほどには。私の違和感を夏織も肯定してくれた。だから大丈夫、私は泣かない怒らない。
べつに悔しくはないし悲しくもない。私の胸がAマイナスだったとしてもどうってことはない。抱えているモノと同じくらい、いや、それ以上の付き合いがあるんだから。それもまた私だからぁ…いや、なな泣いてないからっ。
そんな虚勢とともに私は敢えて胸を張る。すると花ちゃんがこの胸をガン見した。
「ほー」
私は慌ててちょっとは成長した胸を隠してしまう。
「な、なんですか?」
花ちゃんは微笑みを浮かべて私を優しく見つめたあと目を閉じてうんうんと頷いた。
それはまるで、オオキクナテルヨヨカタネと、ダイジョブヨシンパイナイヨと、なぜか片言で聴こえてくるような、思わず殴ってじゃなくて、縋ってしまいたくなるくらいの慈愛に満ちた仕草だった。
私はまたしても花ちゃんに負けたのだ。いや、これについてはとっくに負けているんだけど。
「くっそう」
「気にするなって市ノ瀬。ぷっ」
「は? いま笑いましたか?」
「は? 笑ってないね。この私が人の持って生まれたモノを笑うわけがない。ふふっ」
「花ちゃん」
「なによ」
「ほんとは?」
「笑っちゃう。ぷぷっ。ふはは、はははは」
花ちゃんは笑い出した。遠慮なく笑うとはさすが花ちゃん。楽しそうでよかったですねーと、私は思った。
笑いを収めた花ちゃんは、そのあとごめんごめんと私に肉を差し出してくれた。お詫びの印だよと申し訳なさそうにしつつもどこか楽しそうだった。
「たくさん食べて」
「いや、花ちゃん。払いは私でしょ。おかしいでしょ」
「さすが市ノ瀬、頭いいね」
「馬鹿にして」
「まあね。ははは」
「もう」
こんな過ごし方も来年四月からはそうそうできなくなってしまう。
高笑いする花ちゃんを見ていると少々寂しい気分になる。大事な何かを諦めるということは今までにもあったことだけど、今回はちょっとくるものがあるなと私はいま思っている。まるで中学とか高校の卒業式の時のように。
「私の転職なんですけど」
「うん」
私達は場所を移動してお互いにコーヒーを啜っている。まだ少し早いけど、私は花ちゃんに伝えたかったことを伝えることにした。
いい機会だと思ったから。
「来年の四月からに決めました。先方にもそう伝えました」
「そう」
「はい。それで、」
「分かってるよ。夏織だね」
「はい。任せていいですよね」
「当たり前だよ。寂しい思いなんてさせないようにするから大丈夫。任せておきな」
花ちゃんは自分の胸をとんと胸を叩いた。またゆっさと揺れたけど事実は事実としてそれを見ただけで今は全く気にならなかった。
「市ノ瀬は…大丈夫か。暫くはばたばたと忙しいだろうから」
「はい」
「けどさ、それまでに家を決めるんでしょ。毎日顔を合わせるんだから、なら夏織だって大丈夫だよ」
「あはは。夏織もそう言っていました」
「でも、だよね」
「はい。それでもです」
「いいよ。じゃあ、夏織といっぱい遊んでやろう。ははは」
「あ、ずるいっ」
「またか。言ったでしょ。ちゃんと市ノ瀬も誘うから」
「わーい」
無邪気に喜んでるとこ悪いけどと、花ちゃんがさらっと私を落とす。その顔は真剣だった。
「私はね、じつは市ノ瀬のことあんま好きじゃなかったんだよね。仲良くなったお前たちを見ていたら、なんか夏織を盗られる感じがしちゃってさ」
私はそのことを分かっていた。それは今の話じゃなくて私が夏織と知り合って仲良くなった頃のことだ。
花ちゃんは可愛がっていた妹を盗られる感じがしてさと、自分に呆れたように笑っている。
「ああ。そんな感じはしてました」
「市ノ瀬だって同じでしょ?」
「まぁ、苦手ではありました」
「今は市ノ瀬のこと好きだけどね」
「私もですよ。花姉さん」
「っ…ま、まぁそれでいいか」
私達は笑った。私はもう一矢報いてやったことで気持ちよく高らかに。花ちゃんはしてやられたことを苦笑い。けどその顔はとても嬉しそう。
私も花ちゃんの大切な人の内の一人だと認めてくれているのだと私には思える。私はそれも分かっていたけど。
「寂しくなるね」
「そうですね」
出逢いがあれば必ず別れがある。要らないものなら捨てるのは楽勝だけど、花ちゃんはそうじゃない。
なんとなく絡みたくなったときに絡んでくれる、甘ったれても大丈夫で、数少ない私の先輩で、友人で、姉だ。きっとそうだ。花ちゃんはもう、私にとっても大事な人になっているのだ。
まぁ二度と会えないわけじゃないからねと花ちゃんは笑った。心からの優しくて最高のヤツ。そして私の涙に気づく。
「ほら幸。泣くなら私の胸で泣きなよ。小さくなったとはいえEだよE」
「うっ。な、泣きませんよ」
「いいから。ほら」
幸呼びの不意打ちは驚いたけど嬉しくもあるからいいとしても、ゆっさゆっさと胸を揺している花ちゃんはここをどこだと思っているのか。
「ほら。幸」
オフィスに近いカフェだから、誰かに見られでもしたらおかしな人だと笑われてしまうのに。
「ああ」
そして私は花ちゃんは絶対にそうだと確信してしまう。
「やっぱりあほですね。あはは」
「まあね。幸は鋭いな。ははは」
私が笑って花ちゃんも笑っている。このなかなかの女性とは、なかなか会えなくなるけど、この関係は変わらずにこれからも続いていくのだと思わせてくれる。
私が頼んでも頼まなくても夏織にはこれからも花ちゃんがいてくれるし、なら、それでいいかなと私は思った。
「ほら幸」
「まだ揺らしますか」
彼女たちは少しずつ動き出しました。これからどうなっていくのでしょう? なんつって。
私の目指すところはひとつ。いけるいける。ᕦ(ò_óˇ)ᕤ
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読んでくれてありがとうございます。