第二十話
誤字報告ありがとうございますm(_ _)m
これ、もはや定文化しつつありますね。何度も読み返しているんですけどなかなか…
続きです。
よろしくお願いします。
私の胸に顔を埋めて夏織が眠っている。埋めて…うふふ。決して押し付けているんじゃないの。埋めているの。私が実際にそう感じているんだから間違いないの。
すぴー
私の胸に埋もれているせいなのか押し付けているせいなのか夏織の寝息が少し苦しそう。たぶん鼻からだと思うけど不思議な音をさせている。
すぴぃぃ
「笛?」
夏織ったらもしかして、鼻の中に笛でも仕込んで私を笑わせようとでもしているのかしら。
いやいやまさかそんなことあるわけないでしょと、私はすぐその考えを否定した。
「あはは」
そんな音すら可愛くて、つい抱いている腕に力が入ってしまう。けどそれに抗議でもするように夏織はうーんと唸ってむずがった。
私が慌てて腕の力をゆるめると、夏織はすぐに大人しくなってまたすぴぴと笛を鳴らし始めた。
夏織がことの終わりに眠ってしまうのは初めてのことだった。
きっと、私の好きにさせてくれて、私がしちゃうあれやこれやの全てを受け止めてくれて疲れちゃったんだねと思って、ありがとうと夏織の背中を優しくあやすようにぽん、ぽんと叩く。
すぴゅぃー
「くくっ…やっぱり笛でしょう?くくく」
笛のような寝息はともかく夏織は今、むずがることもなく穏やかに眠っている。
交わすたびに少々無理をさせてしまう。けどそれは夏織の反応が可愛すぎるのがいけないんだから私はあんまり悪くない。
それに私は夏織の限界を知っている。それをちゃんと見極めている。私はそれを超えたり超えなかったりして夏織を愛しているんだから、決して酷使しているわけじゃないと思う。
夏織だって、なんだかんだと言いながらも、喜んでいる姿を見せてくれているからきっと大丈夫、な筈だ。
それに夏織はいつも、嬉しそうに笑って平気だとかどんとこいと言ってくれる。
それはまるで、幸の好きなようにしてね、幸の望みが私の望みだからねと、そんなことを言っているようで私は嬉々としてそれに甘えてしまう。そんな私を夏織は全身で受け止めてくれる。そしてまた、それが私の中の何かに触れる。
そうして夏織が私の中の何かに触れるたびに、じわりと湧いてくるなんとも言えないこの感情は、どうにも上手いこと言葉にできそうもない。
けどいつかは上手く言葉にしてこの感情を夏織に伝えたいと思う。
「ありがとう夏織、大好き」
いま私が言葉にできるのはこれが精一杯。けど、それで充分だからと夏織は笑って言うかもしれない。
私はもう一度、ほんの一瞬だけ夏織をぎゅっと抱き締めた。
「…うーん」
私の胸で眠る夏織の鼻は変わらずすぴすぴと笛を鳴らしている。私はぽん、ぽん、ぽんと笛に合わせてゆっくりしたリズムで夏織の背を叩きながら、その柔らかさとか体温とか腕にかかる重さとかを感じている。
私が動くと夏織が目を覚ましちゃうからこのままでじっとしている。そのうち腕が痺れて体も辛くなってしまうけど、そんなことでもきっと幸せなことなんだと思う。
いずれはこの関係にも慣れやダレがきて、重いなぁとか暑いから今はくっつかないでよね、なんてこと言い出したとしても、それだけ気の置けない本音で触れ合える遠慮のない相手になれるならそれもよし。
その反対に、慣れてもダレても互いに相手を思い遣って、文句も言わずそうしたいのならと受け入れ続けるのならそれもよし。
どちらにしても、私達が育んだ愛のかたちと言えると思うから。
まぁ、夏織は私に対しては付き合う前から遠慮がなくて、その癖、妙に私を思い遣るところがあった。
それは私達がこうなってからも全く変わらない。私には遠慮なく毒を吐いても我儘に振舞っても大丈夫だと思って甘えている。夏織は私にはいつも自然体なのだ。
それこそ私の望むところ。付き合ったからといって、私の理想通りの恋人になってもらう必要なんてこれっぽっちもない。もっとこうしてほしいとか、こうだったらいいのになんて、私の理想に近づけようとする必要はない。
それは夏織も同じ。そんなことは望んでいないだろう。
「私も色々言われたなぁ」
昔付き合っていた恋人達に、もっと構ってとか私を優先してとか、また仕事なのとかプライベートがだらしないとか、まぁ、そんなようなこと。
私としては相手を蔑ろにしているつもりはなかったけど、そう思われたのならそうだったのかもしれない。
けどね、もしそうだったとしても、私にも付き合う前から私の世界があるわけだから、そこは分かってほしかった。私の世界も当然大事。蔑ろにはできないんだから。
「あはは」
相手に対する不満の中には、その相手の良いところを消してしまうものもある。そうとは気付かずに我慢させてしまうものもある。
若い頃は特に、自分の気持ちを優先して相手を思い遣ることを後回しにしていたように思う。
そうやって相手の良さを消しながら、自分の良さをも消されながら、変わっていく相手に満足しつつも変えられていく自分に不満を溜めて、結局は別れてしまう。
出逢った頃、付き合い始めた頃、傍で笑っていた筈の恋人がいつしか変わってしまう。あるいは自分が変えてしまう。
けど、自分が好きになった相手は、その当初、自分の手は全く付いていない真っさらな状態だった筈。付き合う前、好きになったその人に不満など抱くことなどありえなかった筈。
だから、いつだってそこを忘れずにいればいい。恋人にはのびのびとしていて、私の傍で笑っていてほしい。その姿を楽しく微笑ましく見ていればいい。
その花に手を加える必要はない。決して手折ってはいけない。大事に大切に、見て、触れて、その花の咲き誇る様を愛でるだけでいい。
これが正解かどうかは分からないけど、今の私はそう思う。
幸にも、私は夏織を好きな理由を知っている。それを大事にしていれば私達は大丈夫。
一癖も二癖もある夏織が自ら変わりたいと思うのなら変わってくれてもべつにいい。夏織は夏織。それを止めることなんて私はしない。
「うーん」
でもね、女も三十過ぎれば性格なんてそう簡単には変われやしない。徐々に変わっていくことは当たり前だけど、根っこの部分は変われない。
だから夏織はそのまんま。私の好きになった夏織のまま。それは私も同じこと。お互い好きになった時のまんまなら、お互いずっと好きでいられる。感情を抜きにすれば理論上はとても簡単なことだ。
感情は厄介だから、突き詰めて考えてはいけない。浮気しちゃったとか他に好きな人ができたとか、理屈では割り切れない感情にどうのこうのと言っても無駄なこと。
私と夏織にそんな日が来るとは全然全くこれっぽっちも思っていないけど、万が一、いや、兆が一その時が来たら、笑って泣いてさよならするしかない。
けど、私は優秀で聡明な女性でさすが幸だからそんなことにはなりはしないし絶対にさせない。そんなことは私にかかればちゃいちゃいなのだ。
だから私達は大丈夫。
「うんうん」
そんなことを考えていたら、夏織の下に潜り込ませていた左腕が辛くなってきてしまった。
「あたた」
腕を抜こうかどうしようかと悩むけど、すぴすぴと眠る夏織を起こすのは忍びないし、起きてしまった夏織に、まさか重いから腕を抜いちゃったとは言いづらい。夏織はえらく気にしてるみたいだし。
「そんなこと、気にしなくていいのにな」
私はそっと夏織のお腹に手を持っていく。そこで見つけてしまった重力に負けてほんの少しだけ下にした方に膨らんでいるお腹のぽよぽよしたナニを優しく摘んでみた。
「…んっ」
「おっと」
何かもの凄い殺気みたいなものを感じた私はすぐにナニから手を離した。
危なかった。眠っている筈なのに、この私に危険を感じさせるとはさすが夏織。
「…ちっ」
「えっ」
「すぴーぴー」
「セーフ、だよね?」
私は懲りずにそっと伸ばした指先で、再び下にした方に膨らんでいる夏織のナニをぽん…ぼよんぽよんと優しく叩きながら考える。
私としては女性はこのくらいの線の太…柔らかさというか、ふくよかはちょっと違うから、肉付きというか肉感的な方が女性は理想的だと思っている。
私のように細くて骨が浮いているような身体つきは服を着た時の見てくれはいいかもしれないけど、いざ服を脱いでしまうと色っぽさや艷っぽさがない気がするし、硬くって骨張っているから抱き心地はあまりいいとは思えない。当たって痛いと言われたこともあった……いや、べつに泣かないからね。
寧ろ夏織のようにほんのちょっとだけ、ほんとにちょっとだけ、全体的に脂肪がついている方がシルエット的にも丸みがあってより女性らしさを感じるし、抱かれていても抱いていてももちもちと柔らかくてすべすべしてとても気持ちがいい。
それはダイレクトな性感そのものとはまた違う、なんともいえない気持ちよさだ。例えるなら、ちょっと前に流行ったなんとか(ど忘れ)クッションに埋もれて抱かれているような感じ。動くたびに小さな波のようにリアクトされる脂…ナニが当たる感覚が本当に心地よかったりもするのだ。
だから私は、気にしている夏織には申し訳ないけど痩せないでほしいなと思っている。
すぴー
それにしてもと私は思う。
「くくく。絶対笛だよね」
夏織の笛の音に合わせて再びぽん、ぽんと夏織の背を叩いていると、笛の音がやんだ。
「ん?」
「あまくてうまいなこれまだまだいける。むにゃむにゃ」
「え」
私は驚いてちょっと固まった。
夏織は今、あの伝説の寝言、もう食べられないよとかいうヤツの、いけるバージョンを披露してくれたようなというか確実に披露してくれた。
「くくく、くくく、だめだ、あははははは」
私はつい、大きな声で笑ってしまう。夏織を起こしてしまうかもしれないけどこれには我慢はできなかった。
だって、もうお腹いっぱいじゃなくてまだまだいけるんだから。そんなの聞いたこともないんだから。全く、そんなもの、本当に夏織らしい寝言としか言いようがない。
「んー、幸?」
「あははははは、ごめんごめん。起こしちゃったねー」
「べつにいいけど。なに笑ってるの?」
「えっ。えっとね、な、なんでもないよ」
「ふうん。ま、いいけど」
夏織は私の胸にぐりぐりと顔を押し付けながら、自分から訊いておいて気の無い返事をした。
「くくく。ふー」
なんとか笑いを抑えた私は再び、ぽん、ぽんと背中を叩く。
「んー」
まだ寝惚けているのか、夏織は私が笑っていたことには特に興味を持たなかったようだ。
寝言のことを伝えたら、夏織は必ずそんなの言うわけないしとか言って、ムキになって否定しただろう。それがまた夏織らしくて可愛らしいんだけど、もったいないからそれを見るのはあとに取っておこうかな。あはは。
「あ、そうだ。幸、笛じゃないから」
夏織は慌てたように、私の胸に顔を押し付けたままいきなりそんなことを言い出した。
「へ?」
「笛じゃないし」
「いや、笛でしょ」
「いや、違うから」
そして夏織は今、私の胸でふんふんと鼻から空気を出して音の確認をしている。
「擽ったい」
「がまんして」
夏織の鼻からはふんふんと音がするだけで笛の音は確かにしなくなっている。そのやけに真剣な感じに私はくくくと笑ってしまう。
「ほら」
「ほらって言われてもねー」
「とにかく笛じゃないから」
「はいはいわかったわかった」
「そう。よかった」
それで満足したのか、私の胸に押し付け…埋もれさせていた顔を上げ、ありがと幸、眠ったらスッキリしたと、とても可愛く微笑みながら私の頬にキスをした。
「かはっ。ど、どういたしまして」
夏織のゆるふわな微笑みを見るたびに私の口から変な音が漏れてしまう。夏織が笛なら私の喉には一体何が入っているのかしら。
「なぞだ」
「ん?」
疑問を口にした私を首を傾げた夏織が私を見ている。その無垢で愛らしい表情に私の口がまた、かはっと音を立ててしまう。
「あー、なるほどね」
夏織は、ははんと何かを納得した様子。一瞬悪い顔をしてすぐにそれを引っ込めると、もうね、この世のものとは思えないほどの可憐で可愛らしくも愛らしい微笑みを浮かべて、す、き、と声を出さずに口だけを動かしてにっこりと微笑んだ。
それを目の当たりにしてしまった私の口から三度、今度はもの凄く変な音が漏れてしまった。
「ぐっはっ」
「変な音。ふふふ」
「ち、ちょっとやめてよ夏織。可愛すぎて我慢できなくなっちゃうから」
「え、それまじで?」
「ええ、まじですね」
両手をわきわきとやり出した私に夏織はかなり焦ったようにも見えたけど、もう、幸ったらしょうがないなぁと、そんな顔をしながら夏織は体を起こして私の耳元で囁いた。
「きて」
「ぐっはぁぁ」
あれからことを終えて、私達はのそのそとベッドから起き上がって一緒にシャワーを浴びた。
今は午後八時過ぎ。夏織はキッチンに立っている。私も当然立っている。
「さすが」
「ふふふ」
今更ながらその手際の良さに感心しているだけで特に何か役にたっているわけじゃないけど、夏織の傍にいたいと思ったから私はここにいるの。
夏織は邪魔とか退いてとか言わないし、私がすぐ横にいても特に気にしていないようだけど、体の一部が必ず私に触れているようにしているみたい。
それがまた可愛くて堪らなくなってしまう。私は背後に回って夏織を抱き締めた。
「ちょっと幸」
「いやよ」
「まったく…」
夏織はそんなふうに言うけど、私に顔を向けてキスをねだってきたりする。私の唇が夏織のそれに優しく触れると少しだけ戯れるようにして私達は互いを感じていた。離れたあとも見つめあっていると思わず笑みが溢れてくる。
「ふふふ」
「くくく」
そんなふうにいちゃいちゃしながら私は再び背後から夏織を抱いてその手際を見ている。夏織が右に左にキッチンを移動するのに合わせて私も抱きついたままその動きに付いていく。それはまるでダンスのよう。
「ちょっと幸」
「いやよ」
「はいはい」
だって、この部屋はいま私達だけの世界だから。この部屋にいる限り、世間にいるストレートの恋人達と同じように、私達はなんでもできる。離れるなんてもったいない。
「甘えてる」
「そうよ。嫌?」
「そんなわけないでしょ」
「それ知ってた」
「だろうね」
そんな会話のあと、微笑む夏織が寄せてくる唇にもう一度私のそれを合わせてお互いの中に深く潜って濃く交わった。
私達は幸せなの。何ものにも代え難いほどに。
「これ美味しい」
「でしょ」
晩御飯も片付けも終わって、私達は今お酒を飲みながらゆったりまったりと過ごしている。
「ふぉれでね」
夏織は片手にグラスを、もう片方の手に小さな焼き芋を持って、それをもぐもぐと食べながら話している。
「ほうほう。それで?」
私はなんとなく、夏織は欲張りさんなんだねー、なんて思ってつい顔が綻んでしまう。
「だからね」
「うんうん」
食べて飲んで話してと、忙しそうな夏織の前には、トースターの前から離れずにその中を嬉しそうにガン見しながら焼いていた小さな焼き芋があと三つ並んで置いてある。
「なんだってさ」
「そっかぁ」
「うん」
「私はねー」
「うん」
私は基本、摘みがなくても大丈夫だけど、ウイスキーに合うらしいよと、夏織が用意してくれたアンチョビと細く切って焼いたジャガイモと和えたヤツ、その横にクリームチーズと見た目はラスクのような、甘くはないけどサクサクのパンが六枚。
「そんな感じ」
「なるほどね」
私達はそれらを適当に摘みつつ、お喋りをしているところだ。
「ところでさ」
「なぁに」
「はいこれ」
「なにこれ?」
「アヒル」
違う。ソファの下に手を入れて、少しニヤついた顔をした夏織が私の手に握らせたモノは、以前、私に物質とされていたこの部屋の合鍵。が、なぜかアヒルのおもちゃ的なヤツの首に括り付けられていた。
「いつでも使ってね」
「あ、ありがとう。でもこれは?」
「当然、アヒルは幸のお風呂で使って」
夏織がふふふと笑っている。アヒルはともかく、私は凄く嬉しくなった。本当はあのとき返したくなかったソレ。それが見事に私の元に戻ってきてくれたんだから。それを夏織自ら渡してくれたんだから嬉しくないわけがない。
「ほんとにありがとう、夏織」
そして私は感動していた。ちょっと泣きそうだからさり気なく顔を伏せた。
過去にも渡されたことは何度かあるけどその意味が違う。
これは私にとって特別な鍵。私は夏織が最後の恋人であってほしいと思っているというかそう決めている。夏織は私のよすが。その夏織が私を信頼してくれて受け入れてくれたのだから。
若い頃のノリとか勢いのような感じゃなくて、幸のことはそれだけ真剣なんだよと、夏織の想いがちゃんと伝わってくるんだから。
「幸は渡してくれなかったけど」
隣に座る夏織が意地の悪い顔をして私を覗き込んでくる。私は慌てて反論する。
「ち、違うでしょっ。探したけど見つからなかっただけでしょっ」
「えー、そうだったけ?」
「そうだよ。意地悪だなぁ」
「ふふふ」
そう。先週末、私は夏織に合鍵を渡そうとしたの。
けど、私はご存知の通り片付けたり整理するのが苦手というか興味がないというか、そんな人だから、しまっておいたと思っていたところに鍵が見当たらなかっただけなの。それだけなの。
私だって夏織に渡したいし受け取ってほしい。
まぁ、今もまだ見つけられずにいるんだけど。
「あはは、はぁ」
乾いた笑いとため息をついたあと、私は気を取り直して宣言をする。
「来週末、夏織がウチに来るまでには見つけておくよっ」
「どうかな。見つかるといいけど」
「楽勝」
「幸、べつに焦らなくていいから。期待しないで楽しみにしてるから」
夏織はご機嫌で楽しそうに笑っている。
夏織にとって私が渡そうとしてくれたことが全てであって、それがあってもなくてもそれ自体はもうべつにどうでもいいみたい。そんな口振りだ。
毎回扉を開けてもらうのもいいかもなんて言っている。
けど大丈夫。いざとなったら来週末までに合鍵を作ればいいだけだから。
「楽勝です」
「なら期待してる」
そして私はふと気づく。私達はいま来週末のデートの約束をしたようなものだと。
「ふふふふふ」
夏織のご機嫌な感じはそれもあるのだと思う。それは私も同じ。この歳でとかそんなことでとかは考えない。私は嬉しくなって綻んでいく顔を夏織に向けた。
「明日はなにする?」
「うーん。適当に、じゃ、だめ?」
「全然だめじゃない」
いま私達は夏織のベッドの上、同じ布団に包まっているところ。そろそろ夜も更け始めて、夏織と抱き合って眠るところ。
「好きだよ」
「私も大好き」
私達は軽くキスをするだけにして目を閉じる。すぐ傍でふわぁ、おやすみ幸と夏織の声がする。
私もまた、おやすみ夏織と返しながら夏織の髪をそっと撫でた。
私達は充分に愛し合った。だからというか、今夜はもう互いに盛ることはなく、こうして愛する女性とただ抱き合って一緒に眠る。
この、妙に充たされた気持ちをなんというべきか私にはまだ分からないけど、なんかとてもいいものだなと私は思っていた。
在宅ワーク継続中。
思ったほど時間が取れない不思議。
今日はいけたいけた。
読んでくれてありがとうございます。