あとがき
ここまで来てくれた超猛者の皆様、ありがとうございます。
いま喪失感とか寂寥感が半端ないしは かたです。うぐ。
さて。womanなんて大それた題名をつけて書き始めたこのお話。私のいつものテーマとともに、性格にやや難がある夏織としっかり者でもややぽんこつ幸が恋人になるまでの過程とか、なってからのいちゃいちゃなんかをとても楽しく書き進めていくことができました。いけたいけた。
ただ、ある女性のお話、物語という意味で、題名は a woman でもよかったかなぁと今は思っています。
抉った言い回しや、独りよがりの文章、よくわからないネタ、中弛みの話もありながらも、最後までお付き合いしてくれてあとがきまで来てくれた超猛者の皆様には厚くお礼を申し上げます。ありがとうございます。
私が書きたいと思って始めたお話だし、始めたからには読んでくれる皆様に対する責任とか主人公である夏織と幸に対する責任もありますから、きちんと最後まで書ききるつもりでいましたが、それでもこのお話を読んでくれる超猛者の皆様の存在が、書いていてもいいんだよ、その路線でいいんだよと伝えてくれているようで、本当に勇気づけられていました。ありがとうございます。
結局のところ私は、この二人を離れ離れにさせることは出来ず、このような形の終わり方を選択するに至りました。
本編には書きませんでしたが、いってしまったあと辿り着いた世界は、夏織と幸と同じように、花ちゃんは千春に会えるし、恵美さんは陽子さんと一緒。どこからか麗蘭さんが現れて、やっと来たのねこれあげると、夏織の手にお菓子を乗せてくれる、そんな優しい世界です。みんな頑張ったのだからそれくらい当たり前。取り巻く世界が、このくそ社会が変わるまでそこで仲良く過ごしているのです。
ですが、夏織と幸に甘々なこの終わり方でも、私はうぐうぐと泣きながら何度も何度も中断して、どうにかこうにかやっとの思いで最終話を書き終えたのです。
私は泣き虫で、別れに怯える臆病者だから私にはこれが精一杯。私に愛別離苦的なお話は書けそうもないことを知りました。
とは言え、物語を進めていく途中から、私の子供とも言える愛すべき夏織と幸にはこの先も離れることなく未来永劫続いてほしいと思いながら書いていたので、終わらせることについてとても寂しくありますけれど、この終わり方についてはこれでよかったと思っています。
だって、夏織と幸は今、今よりももっと優しい未来の世界で再び出会い、誰に憚ることなく恋をして、同性でありながらも結婚をして幸せに暮らすことになるのですから。まじよかったねと思います。
セクシャルマイノリティに関してなかなか先に進まない、進めようとしないこのくそ社会ですから、せめて私の創る世界ではと、私の生んだキャラであるこの二人が幸せになってもらう責任が私にはあると、この落とし所になったと言えるところもあります。私はこの二人も大好きだから。
そしてここだけの話、実は、この二人のパッピーなエンディングをどうしようかと悩む過程で、私はふたりの容姿、性格をそのままに、夏織は癒しの聖女、幸が戦女神と呼ばれる二つ名を持つ異世界転生珍道中、なんてことも考えたのですが、転生ファンタジー物は縛りがキツそうなので諦めました。はい残念。
「なんだよ残念だな。魔法とか使ってみたかったな。ウォーターっ、とか言ってさ」
「私も。燃え尽きろっ、メガファイアっ、てやりたかったなぁ」
「ははは…いやぁ。まあ、ね?」
「けど、幸が戦女神とか。寧ろ血塗れとか似合いそう。生肉を喰らう口もと血塗れ女とかさ」
「は? 夏織が癒しの聖女って方が無理があるよね? 夏織が聖女とか笑っちゃう」
「うーん。わたし、そこは否定できないな」
「ほんそれ。あたっ。ちょっ、無言で殴らないで」
「ふんっ」
「あはは」
こんな感じ。それはそれで楽しかったかもと思います。
ともあれ、夏織と幸の物語はこれでお終いです。ブックマークとか評価とか感想とか、誤字報告とか、長らくお付き合いくださいました超猛者の皆様には本当に感謝しております。
私は私なりに、書きたいことを楽しく書いてここまで来ましたが、やはり目に見えるレスポンスはもの凄く励みになるものでした。あらためて、ありがとうございました。
またいずれ超猛者の皆様にお会いできたらと思います。その時、また見つけてくれたら嬉しいです。
では、私はここで失礼をば。
この作品を読んでくれてありがとうございました。
最後に小話を置いておきます。満を持して、変わった世界に生まれ変わる直前の夏織と幸としはかたです。
「ありがとうございましたっ」
「まじ感謝だなっ」
「ねー」
「おお? まだいたの? 筆、置けないじゃん」
「これが最後。もういくよ。ね、幸」
「そうだね。向こうで会おうね。夏織」
「うんっ」
「二人とも元気で。いつも見てるよ」
「うわぁ、超こわい」
「ねー」
「なっ。なんだとこらー」
「ふふふ」
「あはは」
「ったく」
「さてと。じゃあ、そろそろうちらも」
「そうだね。行こう」
「行っちゃうんだ。うぐ」
「泣くなしはかた。閉じたらまた戻ってくるんだから会えるじゃん」
「そうよ。じゃあ、よろしくっ」
「ぞうだげどざぁ」
私は二人に手をかざすと、泣きべそをかく私を笑いながら、寄り添う夏織と幸を光が包む。これからまた新しく二人の物語が始まるのだ。
私は段々と見えなくなっていく夏織と幸に声を掛ける。
「夏織。幸。次はもっと幸せになれるから。大丈夫だからっ」
「まじかっ。しはかたありがと」
「ありがとう」
「気をつけてっ。良い旅をっ」
「「うん、ばいばい」」
光はすぐに収まって、二人が消えて私はまた一人になった。けれど悲しんでなんかいられない。その必要もない。
私は今度もここで愛する二人を見守るのだから。
それにまたいずれ会えるのだ。繋がりは切れない。生みの親とそのキャラクター、私の大切な子供達として。それに、私の子供達とはいつでも遊べるから。
ま、今は泣くけどなっ。私は軟弱者で臆病者だから。
「うぐ」
ニュータイプか、ってツッコミと、あははと笑う声がしないことを寂しく思いつつ私は涙を浮かべつつ旅立った二人を見ている。目を離すとなにをやらかすか分からないから。特に夏織が。
その、件の二人といえば…
うぐ。やっぱ泣ける。
あらら、最後は泣かないって決めたでしょう? 私達みんな、いずれまた会えるんだよ。繋がってるの。もう分かってるでしょう?
ぞうだけとざぁ、悲しいものは悲しいし。幸は平気なの?
私は平気。夏織とはずっと一緒だもん。ほら、おいで。
さちー
よしよし
うぐうぐ
夏織を抱いて私は思う。この瞬間は永遠。姿かたちが変わっても、忘れても、魂は覚えている。ならやはり私達は永遠だから。
だから私は全然余裕。
さすが幸
まぁね
幸かちかち、私ここ好き。幸お願い。次もかちかちでいてね。
え? なぁに?
ううん。ありがとかち。もう平気。なんか私はこっちみたいだから先に行くね。
え? あ、うん。うん?
お。呼ばれた。じゃあ幸、向こうで会おうねっ。
ふふふ、どうやら私の方がまた少しお姉さんだなと、夏織は笑顔満タン手を振って、いそげいそげと先に行ってしまった。
かちってなに?
夏織の奴、向こうで出会ったときは覚えてなさいよと私は思った。
まっ、きっと忘れているけどねっ。なんちゃって、あはは
そして私は気づいてしまった。どうせならしはかたに、ばいんばいんにしてほしいとお願いしておけばよかったなと。
くっそう
あ、私はこっちね。
それっ。いそげいそげ。
あはは。
そしてほど無く、時と場所を同じくはしないけれど、割とそう遠くないところで二人の女の子が相次いで生まれましたとさ。
その風景がこちら。
「お父さんお水ちょうだい」
「おう。ウォーターっ」
「ばぶばぶっ?」
「あなた、明かりください」
「ああ。ライトっ」
「おぎゃおぎゃっ?」
なんつってなっ。はっはっはっ。
おしまい
最後に夏織と幸からご挨拶を。
「「ばいばい」」
「いやいや、幸は違うでしょ」
「え。なんで?」
「ばいんばいん、でしょ。ばいんばいん。ね」
「なななっ」
「ぷっ」
「はっ。そうだっ。思い出したっ。夏織っ。こんにゃろめっ」
「ひゃあ。ちょっ、だめっ、そこはやめろって」
「あはは。ここが弱いのは変わらないんだね」
「幸もな。あ、かちもな。ぷぷっ、ぐぇぇ、やめろー」
ははは。
楽しそうでなにより。お幸せに。
「幸」
「うんっ」
「「せーのっ」」
「「ラブアンドピース」」
「ばいばい」
「ばいんばいん」
「え。なんだよ幸。ふざけてないで最後くらいちゃんとしなよ」
「最後くらいって、夏織がやれって言ったんじゃない」
「なんのこと? あだあだあだ」
「ほれほれ、あはは」
なんとも締まらないことですがこの辺で。
そして今、やっぱり私は泣きそうです。
うぐうぐ。