表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

白百合いっぽん

作者: 秋本そら
掲載日:2019/11/21

 ——ねえねえ、こっち見てよ。

 君の気を引こうとして、話しかけてみる。

 つんつん、袖を引いてみる。

 髪の毛をわしゃわしゃ、乱してみる。

 なのに、君はわたしに気づかない。

 どうして?

 なんでわたしを見てくれないの?

 つまんない。

 つまんない。

 窓の方を見ると、日がこちらに射してきていた。

 眩しいなぁ、と手をかざしても。

 やっぱりお日様はギラギラしてた。


 ——ねえ、聡美。

 君が呟いた。

 やっと気づいたか。

 なあに、なあに。

 ——君はどこにいるの?

 やだなぁ、ここにいるよ。

 ずうっと、ずっと、ここにいるのに。

 無視してるのは、そっちだよ?

 諦めたような、ため息をひとつ。

 君がついたから、わたしもため息。

 まねっこ、まねっこ。


 黒いジーパン、白いシャツ。

 黒い上着に、白いハンカチ。

 黒靴下に、黒い靴履いて。

 君は出かける。わたしは追いかける。

 花屋に着いて、君は花を買う。

 喜んでくれる? そう訊いたから。

 もちろんだよと、うなづいた。

 その花言葉、知ってるよ。

 純粋っていうの。でも、それは。

 白百合いっぽんは、死者へ捧げる花。

 タクシー拾い、乗り込む君。

 わたしも飛び乗り、ついてった。

 どちらへ? と訊かれ、君は答える。

 ——市営墓地まで。

 お墓参りかな?


 水を汲んでから、君は歩いた。

 後を追いかけ、到着したら。

 そこには新しい、お墓が一つ。

 だれのお墓かな。ねえ、誰の?

 問いかけたって、答えてくれない。

 横に彫られた、名前を見たら。


 そこにあったのは、わたしの名前。


 墓を掃除して、花を供え。

 線香もやして、君は手を合わせる。

 ——どうだい、綺麗だろ?

 君は言った。

 ——聡美が好きだった、白百合だよ。

 滴を落として、泣いて、言った。

 どうして、どうして見えないの?

 なんでわたしに気づかないの?

 まさか死んでるとは思わなかったけど。

 でも、わたしは今、ここにいるのに。

 どうして、どうして分からないの?


 お願い、お願い。

 泣かないで。

 ずっとずっと、そばにいるから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ