SS 未来図
【フォレスト霊峰山】
《シルト湖》
「くぁ…全然釣れないですね」
私はティルクスと今は亡き母イベリスの息子トウリです。
父に自分の一人称は私と言いなさいと言われ続け自分を表す一人称は私になってしまいました…。
「ねむそうやな坊主」
「なんだカッパですか」
「呼び捨てとはなんやトウリ」
「カッパが現れたってことは…アガーテ!そろそろ皆を呼んで村に帰りましょう」
「えぇ…もう少し泳いで居たいわ」
彼女はアガーテ、ハーフエルフのカリーナさんを母としマーメイドプリンセスと言う大変珍しい種族である父テムルさんの娘です。
そして水面に上がってきたのがもうふたり。
「トウリも泉に入って競争しようよ!」
「誰が深く潜れるかの競争を!」
「そんなことよりオーシェとアーリィとシオンはどこに行きました?ラカン、ネムリア」
ラカンとネムリアは魔族のカフェルネさんとハイエルフのミリアさんの息子と娘で双子の姉弟でアガーテとは従姉妹の関係になります。
「…川くだったんじゃないの?」
「それはありえへんで」
「カッパだ」
「お前もかラカン!」
「…どこに行ったんだろう?」
後ろから邪な感情を感じますね…私が取る行動は1つ。
「おら!」
「てい!」
「ふたりとも甘いですよ」
「「あっ」」
ドボンっ!
泉に落とそうとしてきたふたりの攻撃を避け逆に落とした。
「今回は引っ掛からなかったな!」
「同じ手に何度も掛かってたまるものですか」
「女の子を落とすなんてヒドーい」
「オーシェの方が怖いですよ…シオンはどこに行ったのです?」
アーリィが泉の中を指しました…。
「カナヅチだからなシオン平気か?」
「大丈夫~ボクはここだよぉ~」
泉の中からシオンは泉の守護者の背に乗って現れた。
「ズリーな」
「仕方ないじゃないか~!アーリィが泳げないボクを落としたんだから!」
「お前らどこで覚えたん?その怖い事を」
「カッパには教えませんわ!」
「カッパには教えないぜ!」
「お前たちもかいな!」
そして呼び戻すために現れたのが…。
「やっぱりここに居たのね!」
「うげっ!」
「うげっ!じゃないわ!冬なのに泉に潜るバカは居ないわ!」
私を含むお説教しているのは村長の息子であるカロルさんとラミーさんのご息女ローナです。
父カロルさんはおっとりしていて時々ぶっ飛んだ事をする面白い人なのですが…母ラミーさんも普段は常識人ですが面白い薬を作っては植物に投与し面白い事になるぶっ飛んだ人です。
「今は温泉になってるから寒くねぇーぞ?」
「今日は餅つき大会でしょうが!」
「大会まではまだ時間があるわよ?」
「アガーテもそちら側なのです…」
「真面目すぎるのも大変ね」
「不真面目なのが多いのです!」
「カッカしてると疲れない?」
「煩いです!」
「ホントにここに居たわ」
「あっパエールだ」
パエールはシカナさんとヒュースさんの長女で私たちより一歳年下です…年上の兄が居るらしいですね。
「どうしたの?」
「餅つき大会始まってるわよ」
「早くね?」
「不審者が侵入したから早く始めるんだって」
「あ~…」
「仕方ない帰るか」
皆で帰りの支度をして帰っていった…テムル流のカッパに向けて皆で【爆裂魔法】をついでに撃ってから帰った。
◇◇◇
村に帰ると既に餅は出来ていた。
「帰ってきたわね、いたずらっ子たち」
「大変でしたよお母」
「ご苦労だったね」
「もう餅が出来てる~」
「今回はお爺さんたちは咽に詰まらせてないみたい」
「既に集会所の縁側でお茶嗜んでるし…」
「あれ父ちゃんたち居なくね?」
「今は不審者追ってるわ」
「マジかよ、母ちゃん」
「複数居るみたいでね~あなたたちをサニカ婆の家に送ってからわたしたちも加わって来るわね~」
「お母さんたちもでなくちゃいけないの?」
「そうなの、森に変なの蒔いたらしくてその処理もしないとだからね…男たちに任せたら森が燃えるわ」
皆で餅をモチモチしてばあ様の家に送られた。
『ヤッホー子供たち』
「あっルノカだ」
「ルノカは追わないのか?」
『ボクの鼻でも追えないように仕掛けられていて小細工を覚えたみたいでね…森の生物たち影響が心配だけどその辺はカリーナたちに託した方が良いからね、子供たち何して遊ぼっか!』
「追いかけっこだと必ず負けるからなし」
「チェスと囲碁とオセロも勝てないし」
『ボクは遊びのプロだからね~』
「ばあ様の家の中の全ての部屋を使えば楽しくなるのでは?」
『さっすがトウリだね、サニカの家は特殊だからボクの鼻でも追えないんだよね~カリーナたちですら村の外に出ると言うことは時間が掛かる奴だからちょうど良いかもね』
「隠れんぼしよう!」
◇◇◇
数時間後…
「ルノカ卑怯だそ」
『えぇ~ラカンがわかりやすい場所に隠れてるからだよ』
「天井にくっついてれば見つかるわよ」
「アガーテだって風呂場に居て一番始めに見つかったくせに」
「そこ喧嘩しないのです!」
「くっそ~」
「アーリィと共にやられましたわ!」
「アーリィとオーシェは常に一緒に行動してるからバレるのよ」
「ネムリアもラカンと同じ部屋に居るからバレるんだよ」
「サニカ婆のお家広いからどこに隠れれば良いか分からなくなるわ…」
「パエールは結局隠れられなくて捕まったもんね」
「あとは…トウリとシオンだよな」
「アイツら隠れるの上手いよな」
『まぁ…ティルクスとトルヤにそれぞれ訓練させられてるからね』
「そろそろおやつの時間なんだけど…」
「ふたりは見つけるまで動かないからな…どうするか?」
「おや…今はどんな遊びをしてるんだい?」
「サニカ婆だ」
「いつも思うけどいつの間にか帰ってくるわよね」
「そうかい?」
「ところで何しに戻ってきたの?」
「山狩りしてる子供たちの食事を作りにね」
「そうなのね」
「サニカ婆?」
「どうしたんだ?オーシェ」
「今隠れんぼしてるんだけど…おやつの時間になってもトウリとシオン見つからないの」
「皆で食べようと思ってるから何時まで経っても食べられない」
「……ルノカ良いの?」
『うん、ここだとボクの自慢の鼻が効かないし…ボクもそろそろお腹減った』
「仕方ない…待ってなさい」
◇◇◇
「ぐすっ…怖いよ~…」
「サニカ婆何したの…」
「あのシオンが泣くなんて…」
「トウリなんてサニカ婆に抱えられてるぞ」
「今の君たちじゃ見付からない所に居たよ…だから少し変わったイタズラをね?」
「へぇーやっぱりそうだったんだ」
「どこに居たかはシークレットね?」
「へーい」⬅️残りの子供たちで
「おやつと食事作るかねぇ」
とんとんチーン!
「タンとお食べ」
『「いただきま~す!」』⬅️子供たち全員とルノカで
「ルノカ留守番頼んだよ」
『わかったよ~』
サニカは食事を届けに行った。
「ごちそうさまでした」
「ふぅ…食った食った!」
「アーリィ…その言い方駄目よ、アリン母様に怒られるわよ?」
「心配ないって」
「…父さんたちまだ来ないよね?」
「まだ掛かってんだろうね」
「あと何するか…」
『勉強すれば?』
「……するか勉強」
「そうですね」
数分後…
バンバンバン!
「外煩いですね」
「誰か見に行ってこいよ」
「やだよ~」
「ぼくもやだから」
鳴り止まずバンバンバンと叩く音が…。
「…男子行きなさいよ」
「嫌です…ばあ様にされたコトの余韻が…」
「トウリに同じく~」
「おれは今問題解くのに手が離せない」
「情けないわね!男子達は!」
「仕方ないから行ってあげるわ!」
といきごむのはオーシェとアガーテである。
「女子全員で行けば怖くないのです!」
「「あたし・わたしも付いてくわ」」
と言って女子全員で向かっていった。
『行ってらっしゃい~』
更に数十分後…
「…女子たち遅くね?」
「そうですね…」
「様子見に行く?」
「…そうだね~…4人だと心細くなってきたよ~」
「おれたちの代も男が少ないもんな」
「賑やかなのは女子だ」
「…行きましょうか」
男子たちも重い腰を上げ鳴り止まぬ音がする方に向かっていった。
◇◇◇
「どうしたんだおー…えっ」
「ん?」
「はぁ?」
「……」
窓にはイケメン吸血鬼×2がいて窓を叩き女子たちが石になっていた。
「女子はなにしてたんだ?それにあの吸血鬼…村の手配書に載ってなかったか?」
「載ってたねぇ~」
「あれは父と因縁がある吸血鬼ですね」
「えっそうなの?」
「えぇ…」
『おや…裏切り者だね』
「ルノカ…」
『トウリたちは手を出しちゃダメだよ?…アレはボクが吹き飛ばすよ、捕まえて尋問する価値などないからね…【荒れ狂う突風】!』
イケメン吸血鬼は面白い表情をして窓を引っ掻きながらどこかに飛ばされていった。
『あースッキリした…不審者の正体は吸血鬼×2も含まれてたんだね…アガーテたちの石化は皆が帰ってきたら解こうね』
「今は戻せないんだな」
『呪い系は厄介だからね』
「さてと…勉強に戻りましょうか」
「図書室でやってたけど、女子がいる居間でやろうか」
「そうだな」
この後の話をしましょう…あれから30分後にそれぞれの父と母が戻ってきました。
石化の件はルノカが説明し私の父が「まだ懲りずに来るのかあの野郎ども」と不吉な事を言ってました、そしてイシェーラさんとシェリナさんが「どうしようもない野郎どもだ…次に子供たちを狙って来たら玉○もいでやる」と言ってました。
じい様が女子の石化を解きながら「コレだからイケメンは…」とじい様らしからぬ事を以下省略。
◇◇◇
「トウリは平気だったか?」
「はい、平気でしたよ」
「愛息は愛想がないな~昔はニコニコしてたのに…」
「悪かったですね?」
「そこもオレにとっては最高に可愛いんだけどな」
「息子に向かって可愛いはよしてください」
「………」
「どうしました?」
「抱き締めて良い?」
「止めてください………ジリジリ寄るのもダメです!」
「トウリ~!愛してる~!」
「父さん止めてください!」
「無理!トウリが可愛い過ぎて無理!」
「ぎゃあああ!皆さん!見てないで助けてください!」
「ティルクス義兄さんは相変わらずねー…サニカさんおかわりください」
「ハイ、魚の煮付け」
「コレコレ~美味しいんですよね~」
「サニカ師匠私には…」
「ユフィは肉じゃがでアスエルは唐揚げだよね?」
「仕事の後のご飯まじ旨いよ!」
「母さんとシェザーナさん今日はここで飲み食いしよう」
「そうじゃな」
「あたしも唐揚げ貰おうかしら?」
「ティルクスよ、その役目を代わってくれ」
「もう少しトウリを堪能したら」
「父さん!離してください!」
「やだ」
「もう!嫌いになりますよ!」
「トウリに嫌われても俺は止めない!…家出しても無駄だからな?」
「くっ!」
「ティルクスいい加減に離しなさいな…トウリは何食べる?」
こうして未来の麓の村の日常は過ぎていくのであった。