変わらないご老人たち
「お孫様についてイシェーラさん特に何も言ってたかったが…」
『イシェーラ様はもしかしたら数年後に戦場でバッタリ何て事がある可能性があるので情は持たんと言ってました』
「あぁ…」
『それにシェリナがコレから儲けるであろうお孫様を甘やかすから良いそうです』
「…オレもじいちゃんたちの手伝いしてくるかな」
「ティルクスー!」
振り返るとシェリナがやって来た。
「ミリア姉さんがテムルを無理やり宿に連行したから挨拶しに来る?」
「うん、顔を出しておく…セルクシアまた」
『えぇ…また』
「セルクシアとラセスのお菓子ここに置いとくね」
『ありがとうございますシェリナ』
「またね」
◇◇◇
「久しぶり、テムル兄さん」
「……久しぶりだな」
「…特に変わってないのに何で引きこもってるの」
「…生暖かい視線が」
「恥じらいを乗り越えられないのよ…」
「ミリアにはわからないよ」
「わたしはお婆様と同じハイエルフだから…ふふふ…」
「くっ!」
「コレで後はご老人連中に挨拶すれば終わる」
「それなら終わったら俺と散歩行くか?」
…テムル兄さんの散歩って…アレなんだよね…。
「ティルクスがイヤそうな顔してるよ」
「テムルの散歩はろくでもないからね…」
「わかった行くよ…それじゃご老人たちに会ってくる」
「俺は村の入口で待ってるからな」
「待つのじゃティルクス」
「イシェーラさん?」
「ご老人衆のお茶うけを持っていくのじゃ」
「わかりました…カフェルネとシェザーナさんは?」
「あのふたりも石を投げに行ったぞ」
「あぁ…」
◇◇◇
ご老人連中は縁側でお茶を嗜んでいた。
「おや、この魔力は…新入りか?」
「マノリちゃん…違うよティルクスだよ」
「なんと!ティルクスか!」
「さすがはナシュタちゃん」
「ずいぶん…清らかな魔力を出すようになったのう」
「この村は本当に安泰じゃ~」
「マックスさんとエルラさんは…?」
「あのふたりは一番ヤバい戦場で鬼指揮官と鬼教官してるわ~」
「えっ」
「ホントに良いコンビよね」
「あのふたりはもっと長生きするじゃろう」
「これ、イシェーラさんから」
「おっようやく来たの!」
「楽しみにしてた奴が来たぞ!」
「ここは相変わらずで安心感あるや」
「ここは約2000年前から終わってないからの」
「……辛くなるとき無いの?」
「うーん…その辺は考えないようにしてるからの」
「同じことを繰り返すのに飽きたら時々遊びに行ってるからねぇ」
「(ピクニックかな?)…へぇ」
「でもこのゆっくりとした時間が愛おしい…」
「長生きな連中がたくさん居るから楽しいぞ」
「あと聞きたいことあったんだ」
「どんなことを知りたいんだ?」
「ルーミリアさんとミリア姉さんとアミリアさんとか似た名前がいるけど何でだろうって思ってたんだけど知ってる?」
「ご老人達と村長一家しか知らない事だからねぇ」
「ティルクスに言ったらルトラウス様たちに怒られるかのう?」
「言いにくかったら言わなくて良いよ…じいさんたち」
「そうか?」
「うん、テムル兄さんとの約束あるから、もう行くよ」
「あらそう?」
「気を付けてな」
「うん」
村の入口に向かって走った。
「この事は言っても怒られはしないだろうが…」
「コレは言わなくて良いじゃろ」
「…ティルクスは起きても忙しいのう」
「アミリアとミリアはワシらと共に青春した者の魂…ルーミリアの親友たちの生まれ変わりだからのう」
「ルーちゃんが「ふたりにわたしの名前を入れたい!」って騒いだのは驚いたねぇ」
「それで何となく悟った者も居るみたいだが」
「そこは誰も口にしなかったからね」
「ルーの親友たちは最悪の死に方を…したからのう」
「だからこそ今の生は幸せになって欲しいものだよ」
「そうじゃな」
誤字報告感謝します。
来年もよろしくお願いします。