突拍子のない緊急事態!
シュールストレミングの臭いにやられ倒れた子供たちは一斉に目を開け飛び上がった。
回りを見渡すと見知っているキャンピングカーの中であった。
「えっ、いっいつの間に」
「悪夢を見たゾ…」
「…ネフォイル、臭いの影響で叫んでた時の語尾がカタカタじゃなかったのに戻ってるな」
「変な所、気づくよなリュウラはよウ」
「そんなこと言ってる暇はなさそうよ」
「「「えッ」」」
先に目覚めていたヴィアンヌが窓からキャンピングカーの外を見て言ったことでミズキとネフォイルとリュウラは気になってヴィアンヌの側に寄って外を見た。
「………」
「何が...」
「………」
「なんか遠くでドンパッチやってるわね…めちゃくちゃ明るく見えるわ」
四人が起きたのに気づいた悠珂が運転席からやって来た。
「お前ら起きたか」
「鍛冶屋敷先生?外で何が起きてるの?」
「…お前たち以外が昼食を食べてるときにとある国が幾つかの国に宣戦布告して第三次世界大戦が始まったらしくてな。
帰る前にこちらの世界線の情報が欲しいと月見里先生が情報収集に出ている」
「情報収集か…我の家系やテティオの家系は地球に医師免許取るのに留学するからナ。
ちゃんと情報を持ってないと今みたいな世界線の地球に行っちゃったときの対策が取れなくなっちまうから時々こうやって集めてるんだナ。
月見里先生は大丈夫だよな…」
「鍛冶屋敷先生、わたしたちは帰るの?」
「オレらには関係のない世界線の地球だから帰るに決まってるだろう?
お前らにはまだこういう経験はして欲しくないからな」
「まだ経験して欲しくない…」
「お前たちが成人して異世界へ旅を始めると戦争してる世界に行き着く事もあるからな。
だからこそ今でも10歳を迎えた子供であるお前たちに戦闘訓練やサバイバル訓練やらを春夏秋冬やるだろう?」
「ソーデスネ…」
「鍛冶屋敷先生、糸羅と花恵とラークスは?」
「三人はマジェリルカを呼んでクレイバール島へ先に帰還させた。
お前らも帰るなら今からでも帰すぞ?」
「…姉ちゃんの無事を確認しなきゃ帰らない」
「リュウラ…」
「悠珂先生が待機組ということは…他に誰かクレイバール島から来てるの?」
「あぁ、地球史のパラレルワールドに興味があると言って付いてきたぞ。
地球史オタクのフリルデーモンがな」
「フリルさん…」
話しながらも悠珂は腕に付けている時計を見た。
「鍛冶屋敷先生?」
「後1時間後に戻らなければお前たちを帰還させてオレは月見里先生を探す約束をしてるんだ」
それからはキャンピングカーの中は静寂に包まれ残り時間5分をきった所でアリアは戻ってきたのであった。
「……」
「どうした?!ボロボロじゃねえか!」
「ねっ、姉ちゃん!」
「少しヤり合ってね。…悠珂たちに迫った影の招待がわかったけど…説明は事情を知る信頼できると私が認めたその人から受けてくれる?…少し休ませて」
するとアリアは信頼できると認めた人物を招き入れて軽く挨拶させてから一番後ろの広い席に座った。
リュウラとヴィアンヌとミズキとネフォイルは付き添う形でアリアの側に向かった。
「アリア殿から説明があった通り、わたくしは冥界の使者も魔と交流を持つ術師の家系の者です。
影を使い迫ったのは申し訳ない。名を名乗れないのはさまざまな制約などの理由としてお許しください」
「…冥界関連の話がこんなところに来てでも出てくるなんてどんな事情だ」
「あなた方の暮らす場所に冥界の由緒のある鬼人がおられますね?」
「あぁ黒鬼の家系と【霊園の管理者】がいる」
「この顔の鬼人も知り合いですか?」
顔写真を見せられたが知らない人物であった。
「……いや、知らないぞ。【紅凰】って鬼人なら知ってるがな」
「紅凰殿の知り合い!?」
「そんなに驚くことか?」
「………あなた方の所はギリギリの状態かも知れませんね。
ひとつとんでもない真実を伝えなければなりません…貴方の知っている紅凰殿は偽者です」
冥界の使者と関係を取り持つ一族の魔術師から言われた言葉に悠珂は???となった。
「理解不能だと思いますが…地獄の深階層の牢獄に【紅凰】殿が封じられているのが見つかりようやく回復し解放されたばかりなのです」
「は?」
「あなた方が会っていたのはこの写真に写る冥界から離反し手先を増やし冥界の秩序を乱そうとしている冥界の使者が追っている鬼人です!
黒鬼の一族は離反した鬼人の仲間になったから追放された一族なのです!」
「!?…ホントかどうかはクレイバール島に戻って確かめるしかねえな…またこの手か…オレらの懐にいれたとたんにこれか。
対策をいくら練ろうとも同じような手に引っ掛かりすぎだろオレらはよう。
警告、ありがとよ。悪いがお前をアリアみたいにすぐに信用とは行かねえからキャンピングカーの中に閉じ込めるがいいか?
お前には見届け人として立ち会ってもらうぞ」
「そのために来ました!」
「もしお前が嘘を付いてるようなら…」
「ケジメは着けさせてもらいますよ」
それを聞いた悠珂はニヤリと笑い、普段は制御して魔力を抑えそして溜め込んでいる魔力を少し解放してキャンピングカーごと一気にクレイバール島へ飛んでいった。




