オルシェルア王国の内城
「まずは牢屋からだね」
「…ばあちゃんも気になってたんだ」
「ルフェール王が嫁に貰った人だからね」
「確かに…母か…」
「ティルクスをこの世に産み落とした人を見てみたいと言う願望もあるかな」
「だろうね、オレも見たいもん」
水晶が牢屋を写し出した。
「見えて来たよ……ぷっ…」
「実母よ…牢屋でなにやっているんだ…」
◇◇◇
「ふふふ…ティルクスと言うのですね…わたくしの理想通りに育ってくれたみたいですね」
「貴様!」
「くっ!あの方が居れば帝国は復活したのに!」
「世界を我が手に!」
「過去の栄光にすがる愚か者ども…かかってきたかったら来ればよろしくてよ、来れるならば」
カツン…カツンと降りてくる音が響いていた。
「お前たち…下がれ」
「ルフェール皇帝陛下!」
「あら?現れましたね」
「この者の相手はお前たちでは敵わぬ」
「くっ…皇帝陛下もお気を付けて…」
去っていく看守×3
「貴様も懲りぬな」
「牢屋を開けられるのはサニカ様かわたくしだけですわ…あなたがわたくしと知恵比べて勝てるとでも?」
ガンガンと皇帝が牢屋を開けようとしているが牢屋を開けられないように何ヵ所も南京錠を牢屋の住人が仕掛けていた。
「水攻めをしても貴様は効かぬからな」
「えぇ、わたくしは海泡の妖精を母に持っていますからね」
「あの時さっさと殺しておけば…!」
「この牢屋はサニカ様特注の牢屋ですから陛下でも壊せませんよ?」
「くっ!」
「帝国の栄光など棄ててしまいなさい!さもなくばランディ・フラクタルに滅ぼされますよ」
「何故その情報を知っている!」
「どうしてでしょうね?」
そしてしばらく沈黙が続いた後に。
「…………もう良いだろうか?」
「…そうですね…わたくしたちの話を隠れて聞いていた愚か者たちは去っていったみたいですね?」
「……我が愛しのスイセット…そなたともっと近くで愛を語り合いたい…!」
「突然戻らないでくださいまし」
スイセットは突っ込んだ。
◇◇◇
「ばあちゃん…」
「言うなティルクス」
「なんか急にピンクのオーラ出し始めたんだけど」
「ずいぶんと食わせ者夫婦だね」
「良かった…洗脳されてなかった…!」
「帝国の繁栄ねぇ…ランディ呼んで襲わせた方が良さそうだね」
「演技がバレるのも時間の問題だよ…あっ…イチャイチャしだした」
「新婚みたいだねぇ…」
「見てるこっちが恥ずかしくなってくる!」
◇◇◇
「ルフェール様」
しゅたっと一人の黒装束が現れた。
「…もう時間か」
「スイセット…コレを」
「まぁ…非常食ですね…これならもう少し持ちます」
「もうしばらくの辛抱だ」
「あまり無理をなさらないでくださいね…演技が下手なのですから」
「少しは上手くなってると思うが…」
「…ルフェール様早く!」
「!…すまぬドフェルト」
「ドフェルト…後は頼みましたよ」
「お嬢の命令なら」
「ふたりとも気を付けて…」
「気合い入れなければ…」
「陛下なら大丈夫です」
ふたりも去っていった。
「何だか寂しいですね…」
◇◇◇
「ばあちゃん…オレ」
「ランディ誘ってオルシェルア王国に向かおうかね」
「そうなるよな」
「ルトラウスたちに出掛けると言ってね」
「準備は」
「私のアイテムボックスに入っているので足りるよ」
「ランディさんか…」
「不安に思うことはないだろう」
「ランディさんは【救世の冒険者】ともうひとつ【国落とし】って言われてるから…」
「ランディはたった一人で何ヵ国も落としているが、人間を虐殺する馬鹿ではない」
「そうなんだよね…でも」
「……救護用の物も準備していこうかね」
「うん」