そして150年後へ
【新クレイバール学校】
《高等科1ー1》
「ひゅーひゅー」
「島民同士の高校生カップルが誕生したのって何年振り??」
「200年とちょっと振り」
「そう言えば…ベジヴィヴァン夫妻と六月一日夫妻がそうだったわ」
「それにしてもまさか玖寿とコナルヴィアが交際することになるとは…」
「決めてはなんだ?」
「Win-Winな関係です」
「…玖寿は料理上手であーしが満足、玖寿はあーしの極上のモフモフを常に味わえるようになって満足」
「お互いに欲望の赴くままの交際か…ヴィレルドさん反対しそう」
「逆に褒められたわ。良く上玉を捕まえたと」
「褒めたんかい」
「僕の両親には特に言われなかったですね。父さんはなんか複雑そうにしてましたが」
「そらそうだワ。クートが既に婿に行キ、今度は長男坊が幼馴染みの嫁を連れてきたんだかラ」
「そもそもどうしてこんなに早くカップル成立したんだよ?」
「実はですね」
「玖寿、あーしが話すから大丈夫よ」
「そうですか?」
「えぇ。まず皆に言わなきゃ行けないことがあって。あーし、皆と一緒に長生きが出来ない身体になっちゃってるの」
皆と一緒に長生きが出来ないと聞いた子供たちは一斉にコナルヴィアの方を見た。
「もしかして護熊族DNAの件か?」
「うん」
「何も異常はないって行ってたんだよな?」
「身体は本当に異常はないの。ただ寿命が極端に短くなったの」
「それでどれくらいで寿命が尽きるの?」
「今から約10年後」
「短すぎ………そっか」
「カップル限定で使えるクレイバール島の秘術である【夫婦の命を分ける契り】を使い、僕の寿命を分けようとしたのですがコナルヴィアの寿命に僕の方が引っ張られたそうです」
「マジかよ…それでDNA保存機関への抗議とはしたのかい?」
「ラブ先生たち抗議しに行きたがってたけど、あーしが何がなんでもDNAを譲ったし、ラブ先生が証人になってやった事だから抗議できないんだって」
「マジかよ…」
「成人したら即結婚してあーしらの子供を残すからよろしく。年は約20歳しか変わらなそうだからよろしくね」
「軽いなぁ…」
「でもこれがコナルヴィアだよ」
「玖寿は…後悔ないの?」
「両親には迷惑をかけますが、僕が選んだ事を尊重すると言ってくれましたし…幼馴染みをひとりで先に行かせたくなかったので」
「…一緒に長生き出来るとおもってたんだがお前がそういうなら良いんじゃね?先生達はなんか納得してなさそうだけども」
「当たり前じゃない。生まれたときから知ってるし最低300年はアタシたちと過ごしてくれると思ってるんだから」
「…からかいがいのある遊び相手が減るとなぁ…」
「生まれもっての短命な子も居たけど今回はヒューマンエラーだからね…ラブが不老不死にしようとしてもそれが弾かれたのもあるし」
「その手があったのか。でも弾かれたって」
「普段ならラブ以上の古い神様から不老不死をそう簡単に増やすなと怒られるんだけど、今回はお叱りは来なかったよ。
今回の事情の事もあるし、数多の世界の神族が関わってる組織が起こした事でもあるからね」
「その組織も数多の世界の神族から相手にされなくなるし暫くは平穏な生活が出来るだろうよ」
「そろそろ話しはここまでにしましょう。
玖寿とコナルヴィアの残された時間をどう有限に共に過ごすか話し合いとかしたいから学校から出て【薔薇色のお宿】で大人を混ぜた話し合いをするから行くわよー」
ラブナシカの言葉に子供たちも戸惑いながらも立ち上がり教室から出て行ったがひとりだけ残った。
「…えっ…玖寿…えぇ…」
「鬼姫はこんなところに隠れていたのかい。カーウェンが何処にいる?と探していたのに」
「賀実…あの濃い人が話してたのは本当?」
「…本当。玖寿はコナルヴィアと成人したら即結婚するし、一緒に過ごせる時間は約10年しか残ってない」
「そんな…あの子たちの中でもワタシの面倒見てくれてたのに…まだ1ヶ月しか一緒に居れてない…全然知れてないよ…」
「実際、私も事が怒涛に起こりすぎて混乱してる。今朝コナルヴィアと玖寿の寿命が後10年と聞いて私も開いた口が塞がらなかったからね」
「……」
「鬼姫も混乱してるけど、いつかはっと気がついて落ち着く時が来るから今はまだ取り敢えず一緒に【薔薇色のお宿】へ行こうか」
「はい」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【賀実の家】
《リビング》
「お婆さん」
「己も地球に行けばお爺さんだが?」
「くっ…減らず口な婆さんです」
「さっさと朝ごはん食べたら六月一日家へ行って【錬金釜のカマリエール】を連れてきなさい。
独り立ちに失敗した腹いせを私でするな」
「仕方ないじゃないですか…キョウカさんの煉丹術の特訓…キツすぎません?」
「キョウカさんは本職だから生半可なのは許せないのだと思うし長生きして欲しいのだと思うんだけど。
それに今日は鬼姫たちとお月見の準備するんでしょう?さっさと用件を済ませてきなさい。
父方の祖父母から家を継ぐ許可が取れるまでこの家に居候になるんだから同居人の話を聞いてください。…【薔薇色のお宿】で暮らせるように手配しようか?」
「それだけは嫌なので行ってきます」
「それで良し」
「はぁ…日葵さんたちが居ない島は静かすぎて落ち着かないです…」
「独り立ちしたらまずは旅したいって言ってたからね。悠珂も同行してて居ないから余計に静かだよね」
「そうですね…山本先生はこれから何をするんですか?」
「皆無事に学校を卒業してくれたから溜まりにたまった趣味を消化していくよ。
天体観測と「賀実は武者修行をメインでおこなっていくわよ。体力増強とか避ける修行とか」
「ひっ!いつの間にっ」
「あらあら…寿瑶…ひどい言いぐさねぇ」
「酷くないです。普通に音もなく隣に座られ声をかけられたら怖いですからね!」
すると寿瑶は朝食を平らげ片付けて「ご馳走でした!」と言ってそそくさと賀実の家から出て行った。
「んもう…焦らなくても良いじゃない」
「……ご馳走でした」
賀実も食器を片付けてそそくさとでかけようとしたがラブナシカに肩を捕まれた。
「逃がさないわよ?」
「!」
「貴女はプロレス技とか出来るけど、すぐに戦闘の勘を忘れるのだから対人の研鑽を続けなきゃイケナイタイプなんだからヤるわよ?」
「訓練しなきゃダメ?」
「駄目~」
賀実はラブナシカに首根っこ掴まれ引きずられて訓練場に連れていかれた。




