1000年後のお話 氷塊の部屋と踊るマンドラゴラ
【新クレイバール学校】
《校庭》
校庭の中心に巨大な氷塊が置いてあり、氷塊に穴を開けて中に入って過ごせるように賀実が作った。
「流石は【秘密基地職人】だよな。毎年、天然の氷の部屋を一度は作ってくれて過ごせるし」
「あ~涼しい…」
「逆に寒くない?ラークスなんて唇が紫色に…」
「外に出れば熱いし温まってこいよ」
「サウナじゃあるまいし嫌じゃ」
「無理するなよ?ラークス。……毎年の如く【踊るマンドラゴラ】たちも数体が寒いのに温室から氷塊の部屋が作られるとやってくるよねー」
「さっきからラークスの周りでラークスと同じように震えてるわ」
あつがりな子供達は氷塊の部屋が完成して直ぐに涼みに上がり込んでいるが、そのときには既に【踊るマンドラゴラ】たちが数体ほどこの部屋にいるのである。
毎年、居るとわかっていても氷塊の部屋に向かう子供達は【踊るマンドラゴ】たちを見て体をビクつかせるのである。
「体が冷えてきたな」
「氷塊の中は冷たいから…冷える」
「そうカ?」
「テティオはハイビーストだから温度調節が出来てるから寒くないんじゃない?」
「オイラだって寒い時は寒いヨ」
「てかハイビーストモード変化してくれよ。モフモフと冷たいのを同時に味わえるなら寒くないかも」
テティオに対して氷塊の部屋にいる子供達が手をワキワキさせてアピールした。
「ちょッ…皆やめろヨ…手をワキワキさせるノ…気持ち悪さが勝っちゃうヨ」
「そんなこと言わずに変化してくれよ〜」
「頼むよ〜」
手をワキワキさせている子供達がテティオに迫り始めた所に譜月がやって来た。
『お主ら何をしておる』
「あっ譜月が良いところに来たよ」
『良いところに来たじゃと?』
子供達は手をワキワキさせている理由を話した。
『ふむ…だが残念なことに賀実におつかいを頼まれていてなそっちを片付けなければ行けないのじゃ』
「そっか、残念ね」
『にしてもここにいないクラスメイトたちはどこにおるのだ?』
「玖穏たちは温室で踊るマンドラゴラたちのフェスティバルを見に行くと準備してたな」
『あぁ、だから賀実が我にサンバ用の衣装を作るための革を取ってきて欲しいと言ったのか』
「…………サンバか」
『特に今回は…300年に一度の踊るマンドラゴラの王の伴侶を決める戦いでもあるから凄いらしいのう』
「そういえばそんなこと言ってたな」
「…ここにいる踊るマンドラゴラたちは…出ないの?」
『小奴らは既に伴侶を決めておるから出場せんのよ』
「既に伴侶がいるのか」
すると踊るマンドラゴラたちはそれぞれがペアを組んで見せた。
「…おぉフ」
「おい、何組かハーレムいねえか?」
「両手に花ね」
「これぞリアルな両手に花…」
『それじゃ我はゆくぞ。届けてやらねばな』
「うん…」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【新クレイバール学校】
《家庭科室》
「踊るマンドラゴラたち物凄い器用過ぎて怖っ」
「猛スピードでサンバの衣装作っとる」
「踊るマンドラゴラ用のハサミとか針とか誰が…」
「踊るマンドラゴラたちから作ってほしいと要望があって鍛冶屋と魔法屋と協力して共同開発したんだよ。
元々は草から糸を紡いで布を作り編んでサンバの衣装とか作ってたんだけど、ここまで面白いことしてくれるし……それに共存共栄してるし、たまにはね」
「……薬の材料にされるのに(小声)」
「…夜な夜な薬の材料にされる踊るマンドラゴラのための送り出す儀式を踊るマンドラゴラたちはやってるよ」
「「「「「「え"っ」」」」」」
「はっ初耳なんですけど?!」
「ここまで知能持ってるとね」
「…………」
子供達は賀実と踊るマンドラゴラを交互に見た。
すると一体の踊るマンドラゴラが賀実の肩に乗り髪を一房つかみチョンチョンと引っ張った。
「どうしたんだい?」
「◇□△☆□◇□▽□◇?」
「そろそろ来ると思うよ」
「▽☆◇▽△△△□◇!」
「山本先生、なんて言ってるんだ?」
「頼んだ物は来るの?って聞いてきたんだよ」
「あぁ…」
ちょうど人に変化した譜月がやって来た。
「持ってきたぞ!」
「「「△△☆!」」」
踊るマンドラゴラたちは一斉に譜月に群がった。
「これっ群がるでないわ。そんなに急がなくてもかなりの量を持ってきたぞ」
譜月から踊るマンドラゴラたちは一斉に離れた。
「…この景色見るたびに末恐ろしいと思ってしまうわ」
譜月は家庭科室の中心の机に大量に革を置いた。
「ほれ好きなだけ使うが良い。だが無駄遣いするでないぞ?魔物であろうとも命をもらったのだからな」
「「△✩▽□◇!」」
踊るマンドラゴラたちは狂喜乱舞してから革を必要な分、切り取りそして各々のサンバの衣装を独特性の創り上げた。
「衣装が決まってますね」
「…凄いですわと思いますけど、【材料にされる踊るマンドラゴラを送りだす儀式】の言葉が強く耳に残っちゃってやばいですわ」
「それならボクもだ…」
「…山本先生、それでサンバはいつ開催されるの?」
「サンバの開催は1週間後だね。衣装を着ての踊りの練習とかするから」
「…それと【薬の材料にされる】踊るマンドラゴラの送別会は?」
「フェスティバルが終わらないと開催されないかな」
「そこは山本先生たちでも気を使うんだな」
「そりゃね…さてと今日はもう帰るぞ。踊るマンドラゴラたちの衣装作りを手伝ってくれてありがとう」
「いえ…コチラから頼んだ事なのでべつに…」
子供達が遠慮がちに言ったが踊るマンドラゴラたちは衣装作りを手伝った子供達に対して「ありがとよ。感謝するぜ」と言った感じで温室で取れた【黄金のリンゴ】をそれぞれに渡した。
「おっ黄金のリンゴ……ありがとうございます」
「不思議な味がして美味しいやつだ…ありがとな」
「収穫するの難しいやつ…あんがと」
「……ありがとうございますわ」
「さっサンキュー」
黄金のリンゴを渡した踊るマンドラゴラたちは頷いてから完成した衣装を装着したまま家庭科室のドアから出ていき温室へ戻っていった。
子供達も賀実が家まで送り届けてこの日を終え、氷塊の部屋で過ごしていた子供達と踊るマンドラゴラはラブナシカとフリルデーモン達によってそれぞれの場所へ帰された。




