1000年後のお話 お墓参り難易度【上】
【クレイバール島】
《クレイバール霊園 第三層 龍鳴の霊堂》
「玖穏!左から岩が転がって来ますわ!」
「えっちょっ右側に避けれる隙間とかないですよ!」
「こうなったら裏技しかありませんわね!」
ルミルチルは玖穏の両脇を掴みその場から翼を使い飛び立ち、左からの巨大な岩がゴロゴロと転がるのを飛んで避けた。
「ひっ…ホントに…もう。お墓参りするだけなのになんでこんなことをしなくちゃいけないんでしょうね?」
「霊園の一部をダンジョン化させた冥界の鬼人さんのせいですわ」
「この時期になると島の皆で冥界の鬼人さんの愚痴をラブナシカ校長先生に言いに行きますからね。
僕とルミルチルの共通の祖先である方の墓参りに行くだけなのに既にボロボロですからね」
「山本先生曰く、コレでも難易度がかなり下がってるらしいですものね。もう少しで休憩所に着くので頑張りますわよ」
「そうですね…ここまで来たのであれば頑張ることしかできませんからね」
「皮肉を言わないんですの」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
〜玖穏とルミルチルが墓参りに行く3時間前〜
《クレイバール寄合所の大広間》
「私たちの愛娘のルミルチルがどうして危険な墓参りに玖穏と一緒に行かなきゃならないっ」
「ヴィル君、子供達だけのお墓参りに関しては大昔から順番制なのはこの島に婿に来て知ってるでしょう?
わたしたちの娘に番が来ただけよ?」
「ベラリエル…だが」
「俺の息子も一緒だからな?」
「郁朔の所は頑丈だから大丈夫だろ」
「ルミルチルの方が丈夫ですヴィル君。玖穏君はミックスブラッドですが人間ですからね?それにこれ以上、過保護過ぎるようなら…」
「そっそれだけは止めてくれベラリエルっ私が悪かったから!私の最愛の天使である二人と居られなくなるのだけは嫌だ!」
「うふふ、わたしとルミルチルは天使ではありませんよ?有翼人です」
「賀実殿とラブナシカ殿に種族に関する講義を何度も受けさせられキツく言われ理解してる。
だが言葉の自由な表現であって…」
ルミルチルの母であるベラリエルは夫のヴィルに対して美しくも黒い笑顔で笑っていて、ヴィルはそんな妻にタジタジである。
そんな夫婦を少し離れたところから見守る夫婦がもう一組。
「ドイツ軍の大佐まで登り詰めた男がここまでタジタジになるとは…流石はベラリエル」
「諧音、玖穏の準備は…」
「大丈夫だ。3回ほど持ち物チェックしたからな」
「忙しくしてて準備を手伝えなかったからな…ありがとう」
「礼は良い…玖穏はアタシに似ず、お前に似てくれて嬉しいものだ」
「俺からしたら諧音にも似てるところはあると思うけどなぁ」
「そうか?」
「うん」
「……………(即答か…眩しいな…)」
すると寄合所の出入り口から玖穏とルミルチルが完全防具を身に着けて現れた。
「お母様、お父様、山本先生とマジェリルカちゃんに手伝ってもらって準備できましたわ」
「ルミルチル〜!」
「半径1メートルに入らないでくださいまし!」
「グハッ……反抗期はまだ早いよぉ」
ヴィルは娘の元へたどり着くことなくその場に倒れ込んだ。
「……ルミルチルの所は相変わらずですね」
「しつこいんですの。特に翼を触られるのが嫌ですわ。親しい人ですら触らせないというのに…」
「…玖穏、ルミルチルさんは忘れ物はないか?」
「大丈夫です。母さんと3回ほど厳重にチェックしましたから」
「わたくしも大丈夫ですわ。気遣いありがとうございますの郁朔さん」
「ヴィル君も少しは娘離れをしてくれれば良いのですが」
「ベラリエル、多分だが一生あのままな気もするが」
「諧音に言われるとそうなりそうで怖いです」
奥様たちがやれやれしていると賀実とミトミの母であるミミアがやって来た。
「あら準備出来てるわね」
「「ミミアさんこんにちは」ですわ」
「うふふ、ふたりとも挨拶できて偉いわね」
神主姿だが妖艶で偉いと言いながら微笑んだミミアを見て玖穏とルミルチルはモジモジしだした。
「ミミアは相変わらずの色気ですねー」
「特に意識してないのだけれども…」
「女に対する耐性がなければ悩殺するものあり得ると思わせるな…男女共に魅了するとは」
「でも幼馴染たちには効かないわね」
「それは生まれた時から一緒なので」
「それもあるがミミアは島民の中でも常識人な幼馴染だからな失礼なことをしたくないと思わせるんだよ」
「うふふ」
「ホントに礼儀正しいし、立派で美しい女性に成長してくれた自慢の教え子だよ。郁朔やベラリエルもね」
「もうっ…山本先生も不意にそんなこと言わないでください。さて、安全祈願の祝詞をふたりに授けなければね」
大広間で娘に拒否され倒れ込んでいるヴィルを放置し、玖穏とルミルチルをクレイバール寄合所の神棚がある部屋に向かわせてそこで安全祈願の祝詞をして直ぐに【クレイバール霊園】に向かい霊園に行く玖穏とルミルチルを見送った。
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【クレイバール霊園】
《第五層 深水の霊園》
「ぷはっ…」
「落ち着いて息を深く吸うのですわ」
ルミルチルは物理的に泳げないので玖穏が謎解きするために深い水路に潜り仕掛けを解いて出てきた。
ルミルチルは水路に浮かぶ大きな浮きを掴んでいる玖穏を上空から引っ張り上げて石床に寝転がせた。
「泳ぐの疲れた…」
「ご苦労さまですわ」
少し休んでから玖穏は起き上がった。
「それじゃ次に行きましょうか」
「えぇ」
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【クレイバール霊園】
《やすらぎの丘》
「はぁ~…ようやく着いた…」
「玖穏」
「わかってます」
ふたりは賀実とそれぞれの両親から渡された花をリュック型のアイテムボックスから取り出し共通の祖先のお墓に手向けた。
「「ご先祖の方々、永い年月、見守り続けてくださりありがとうございます。
今日に繋がっている永きに渡る安寧の日々に感謝します」」
するとお墓の周辺にとても綺麗な【天の霊花】が咲き始め5分もすれば辺り一面が【天の霊花】が咲き誇る花畑になった。
「もの凄くキレイですわ〜」
「………見惚れてたいけども」
「頼まれた花を探さなくては…ですわね」
玖穏とルミルチルは咲き誇る花畑に足を踏み入れ賀実とジェサイアの母で今代のクレイバール島の魔女サフィアに頼まれた【天の霊花】の群生地に稀に咲く【蒼天の麗花】を探すように頼まれていたのであった。
「それにしても【蒼天の麗花】は子供じゃなければ見つけられないって不思議ですわよね」
「秘薬の材料になるそうですから…【天の霊花】は霊廟や霊園などにしか生えないというので毎回、時期が来ると選ばれるわけです」
「でも来年は選ばれないですもの…気楽に…あっありましたわ!」
「見つからない年もありますからね、良かったです」
「……玖穏の足元にも有りますわよ」
「え"」
玖穏はルミルチルに言われて足元をくまなく調べ上げると【蒼天の麗花】が3本咲いていた。
「ルミルチルは本当に目が良いですね」
「有翼人ですもの」
「ありがとうございます。指摘されなければ気付きませんでした」
「うふふ、お礼は良いので少しだけ探しましょう?」
「ですね」
今年は豊作で【蒼天の麗花】を15本も見つけ島の人達から大変、褒めちぎられた。
ふたりがボロボロ状態で帰ってきたときにルミルチルの父であるヴィルが「ウォォオ!霊園の鬼めぇぇ!」などと叫びながらクレイバール霊園に向かっていったが明朝になっても帰ってこなかったので譜月に捜索を頼みルミルチルたちよりもボロボロ状態で発見された。
【クレイバール神社】
《本堂》
「あっあの霊園やっヤバいでござる」
「ドイツ人の方がなぜにござる口調に」
「日本の鬼はヤバいでござる」
「………」
「あはは。この様子だと霊園に住まう霊園をダンジョン化させた鬼人にしてやられたわね」
「笑い事じゃ済まないのでは?」
「大丈夫よダーリン。コチラから仕掛けたりしなければ何もしないわ。そう言った約束を霊園に住まう鬼人の上司を通して話をしてあるそうだから」
「…えぇ」
「それじゃベラリエルに頼まれたからヴィルに対しての祈祷しておきましょうか」
「…そうだな。8月の墓参りに関しては問題は起きないのにな」
「8月は忙しくなるから仕方ないわ。地球の日本では地獄の釜の蓋が開く時期になるからね」
「あぁ…お盆の時期だもんな」
六月一日 郁朔
種族 人間(ミックスブラッドの長命種)
性別 ♂
現在 37
職業 錬金術師
一人称 俺
家族構成 妻と息子
玖穏の父でクレイバール島の錬金術師。
カマリエール二世を白虎の時代から今日まで引き継いでいる。
妻の諧音との出会いは中学時代の日本散策で道を歩いてたら在日外国人に絡まれた所を諧音に助けられた。
そこから交流を持ち結婚に至った。
六月一日 諧音
種族 人間(地球人)
性別 ♀
現在 39
職業 クレイバール自警団の教官
一人称 アタシ
家族構成 夫と息子
玖穏の母でクレイバール島の自警団の教官さま。
夫の郁朔とは諧音が高校生2年生の時に在日外国人に絡まれてる郁朔を助けたことが出会いのきっかけ。
日本にいた時は自衛隊に所属しており【秘境の鬼姫】と呼ばれていた。
郁朔との結婚の決め手は【本気の勝負】で郁朔に負けたからだそうです。
ベラリエル・ルイゼントナー
種族 有翼人
性別 ♀
現在 36
職業 研究者
一人称 わたし
家族構成 夫と娘
ルミルチルの母でクレイバール島の研究者
キユクの研究所を子々孫々で引き継いでいる。
今現在やってる研究の内容は有翼人の羽の魔力にまつわる研究と踊るマンドラゴラの研究だそう。
夫のヴィルとの出会いは小学生時代にドイツ旅行で同じ歳のショタであったヴィルに一目惚れされた。
わたしと結婚したければわたしの幼馴染の1人でも倒せたなら結婚してあげると言った事で交流を持つことに。
ヴィルと結婚したということは…そういうことである。
ヴィクトール・アルフ・R・フォルゲン
種族 人間(地球人)
性別 ♂
現在 36
職業 クレイバール自警団の総長
一人称 私
家族構成 最愛の妻と最愛の娘
ルミルチルの父でクレイバール島の自警団の総長。
妻のルミルチルとの出会いはショタだった時にドイツの教会巡りしてたラブナシカに連れられていたルミルチルに一目惚れした。
わたしを妻にしたければ強くなれと言われ的な事を言われ武術を習い交流を持ち、ベラリエルの幼馴染たちに戦いを挑み、ことごとく負け続けたが地球では数ある武術大会を総なめにしてた。
そして月日が流れ遂に幼馴染の1人に勝ちベラリエルを地球圏で妻に出来ると思っていたが、ドイツ軍に所属し、しかも大佐まで登り詰めた事で両親や親族に【婚約者】さまを用意されていてなおかつ結婚を反対されて全てを捨てて婿に来た。
ミミア・イザワガワ
種族 夢魔
性別 ♀
現在 35
職業 神主
一人称 ワタシ
家族構成 夫と娘
ミトミの母でクレイバール島の神主。
夫の滉大との出会いは神主の資格を取るために地球に大学の留学中に出会った。
ミミアは男女構わず惹きつける美貌を持っていることで面倒事に巻き込まれていたが、とある大学の実習期間から神隠し事件などの世間で騒がれるような件が起きてミミアを中心として事件を解決していくうちに最後まで共に居られたのが滉大であった。
結婚の申し込みは少し離れていた時期があり再会した時にミミアさんの方からだそうです。
滉大・イザワガワ・寺田
種族 人間(地球人)
性別 ♂
現在 37
職業 クレイバール神社の管理人
一人称 おれ
家族構成 妻と娘
ミトミの父でクレイバール神社の管理人。
妻のミミアとの出会いは大学時代でミミアとは別の大学で、最初の神隠し事件が起きた時の被害者でミミアと怪異事件を担当している【怪異専門の探偵】さんに助け出された時から交流を持った。
事件解決に協力していくにつれて滉大は【怪異】に対する耐性が他の人よりもかなり高い素質を持っていたことが後々に判明し、大学卒業後は【怪異専門の探偵】さんの事務所にスカウトされて働いていたが怪異事件に巻き込まれてミミアと再会し解決した後に婿入り限定の逆プロポーズを受けて悩んだが【怪異専門の探偵】に後押しされて結婚するに至った。




