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元勇者の転生人生記録  作者: 冬こもり
新生クレイバール島の暮らし
531/569

意思が宿る武器だって拗ねるのです

【クレイバール島】


【クレイバール訓練所】



賀実からのヘルプ要請に急いでやってきたラブナシカは訓練所の用品が切傷によりボロボロになり部屋もかなりの切傷だけの状態を見て物陰に隠れている賀実の元へ駆け寄った。



「賀実、どうしたら訓練所がここまで荒れてるの?」

「…久し振りに【四季シキ永劫回帰リンカーネーション】をアイテムボックスから出して鞘から抜いたら大暴れして地面に突き刺した」

「久し振りに訓練所のど真ん中の地面に刺さってる刀の名前を聞いた気がするわ」

「今の私だと制御しきれないから整備するためだけに出したんだけど…扱いやすい黒刀や戦斧ばっか出して使ってたら拗ねた」

「武器って拗ねるのねぇ…」



荒れた訓練所を見渡し賀実に刀を回収するのを手伝ってと呼ばれたラブナシカは地面に突き刺さっている【四季・永劫回帰】の間合いに入ると斬撃波が飛んできた。



「んもうっ!」



ラブナシカは自身の闘気で斬撃波を弾いた。



「…相変わらず君の闘気は末恐ろしい」

「褒め言葉かしら?受け取っておくわ。……それにしても斬撃波の威力が落ちてない?昔はもっと凶悪だったわよ?」

「おや…【四季・永劫回帰】も戦ってないから訛ったのかも知れない」



賀実の言葉に反応してか斬撃波が賀実の側に飛んできたがギリギリのところで避けた。



「あっぶない」

「ヤル気満々ね」

「悠珂の【天創の大魔剣】も意志を持ってるけどこんな事にならないけど何が違うんだろう」

「そりゃ…あの大魔剣がドMだからじゃないか?」

「ドM…」

「アイテムボックスの中に長い間しまい込まれているのを放置プレイだと思ってるのかもな。

雑に扱えば扱うほど光輝いて喜ぶぞ」

「ドMな大魔剣は何か嫌だな…どうしてココに?」

「そりゃ…訓練所が面白いことになってると玖寿たちから聞いてきたからな」

「外に影響は?」

「出てないから安心しろ」

「それは不幸中の幸いだ。刀を納刀しなきゃなんだけど…」

「取り敢えず考えつくやり方を実行すればいいんじゃないか?」

「ならまずは………」

 




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





【クレイバール島】


《第一クレイバール訓練所》



「キャー!ナニ?!あの刀!某ゲームに出てくるソードの斬撃波の如く飛んでくるんですけど?!」

「………かれこれ1000年もあの状態でして」

「1000年もあの状態なの?!」

「そっ結構、回収できなくて訓練所を急遽作ったんだよ。ココが使えなくなっちゃったから」

「それで第二訓練所があるんだ…」

「でも悪いことばかりじゃないんだけどもね」

「何でですか、山本先生」

「自分を抜こうとしてくる者に対して威嚇として斬撃波を飛ばしてくるけど1000もの間、【四季・永劫回帰】に傷を付けられた子は居ないからね」

「…はっ!確かに!オイラでもギリギリ避けられる斬撃波だ!」

「それに、モンスターが何処からともなく島に侵入した時なんてここから斬撃波を飛ばしてどんな距離があろうとも狩り取ってるんだよ」

「……」

「それに子供たちや島民に敵意を向ける者が現れても斬撃波をモンスターが攻めてくるよりも多く飛ばしてるし」

「山本先生、どうしてオイラだったんですか?」

「代々、身体能力が高い子に協力して貰って【四季・永劫回帰】を回収するのを手伝って貰ってる。

それで今日、テティオに同行してもらったんだけど」

「…オイラでもアレは無理っす。まだ本気モードじゃない状態であのスピードは流石に…前回は誰が来たんですか?」

「前回はアリアに来てもらった」

「アリア先生もオイラと同じ事やらされてた!アリア先生に無理ならオイラでも無理だよ!」

「……撤退しようか」

「したほうが良いっす!」



賀実は複数あるうちの抜け道を使いテティオと共に禁足地化しつつある【第一訓練所】から抜け出していった。

しばらくしたその後にふたりの少年が抜け道から【四季・永劫回帰】が突き刺さっている場所にやってきた。



「もう山本先生居ないよな…やっほー砥石もって来てやったぜ【四季・永劫回帰】!」

「いちいち僕も連れ出すのやめてくれません?」

『ふふふ…よく来たね。愛しき島の子供たち』


リマイスが玖穏を伴って数ある内の抜け道から【四季・永劫回帰】が地面に刺さっている場所に現れた。


「いい加減、山本先生を許してやれよ〜…1000年だぞ?1000年」

『………今はまだ触れさせる気はない。放置した件は力の差が有り仕方ないと思っているが……研ぐのを始めてもらいたい』

「はいはい」


手慣れた手つきで【四季・永劫回帰】を研ぎ始めた。


「スネちゃまするのも大概にしたほうが良いですよ」

『賀実が【金物念話術かなものねんわじゅつ】の能力を開花させたら考えなくもない』

「……【金物念話術】ねぇ…現代で生まれもってたのはオレと玖穏だけだもんな。【カマリエール二世】が300年振りと騒いでたし…今は念話せずに直接話しちゃってるけどな」

『…人間の話は時代、時代で違って面白いから騒ぎたくなるのもわかる気がする…我々金物同士は話せないからな』

「そういうもんなのか?」

『そういうものだ』



玖穏とリマイスが【四季・永劫回帰】を話しながら研いでいる姿を遠くから見ている者たちがいた。



「【金物念話術】の事をすっかり忘れてたよ」

「ここ最近は覚えられる子が少なかったからあえて言ってなかったのよね。覚えられる子限定でアタシ経緯でしか教えてなかったから」


賀実はラブナシカに呼び出されて現状の説明を受けていた。


「ありがとう、管理してくれてたんだね。こういう時に君がこの場所に居てくれて良かったと染み染みするよ」

「もっと褒めてくれても良いのよ?」

「…調子に乗るとろくな事が起きないぞ」

「うふふ……それで覚えられそう?」

「分からない。まだ【カマリエール二世】の声が聞こえないから……それよりも研ぐの上手いな…」

「そらそうよ。特にリマイスは5歳の頃からやってるもの」

「…そういえば1つ聞きたいことがある。玖穏やリマイスすらも無視してるけど悠珂の【天創の大魔剣】もなんか絶妙な場所に突き刺さったまま放置されてるんだけど?」

「悠珂が言うに放置プレイだそうよ」

「えぇ」

「玖穏やリマイスが無視してる理由は常にハァハァ言ってて気持ち悪いそうよ」

「(今もハァハァ言ってるのか)…時が来るまで待つしかなさそうだ」

「なるべくであれば平穏がいいわよねぇ」

「うん」

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