1000後のお話 世界や地域や時代が違えど女性は…
【エリア7 令嬢たちの修羅場ノ舞踏館】
パシーン!
ビシッ!
スパーン
「……」
「声を出すことすらしないなんて…ずいぶんとひ弱ですこと!」
「うふふ…マリー姉様の攻めは鋭く激しいですもの。外からのお客様に人気ですが…この者は違うようですわ」
マジェリルカに似た女性が黒いモヤが出ている紐で縛り上げられドレス姿の複数の女性にムチで打たれている場面を遠くからドレス姿になっている悠珂たちはビクビクしながら2時間ほど見ていた。
「マリー様…侵入者に付いてなのですが…ものの見事にこの場に溶け込み紛れ込まれ…見失いましたわ」
「あらまぁ……わたくしたちの園に溶け込むとは…かなりの手練と言うことですわね」
「マリー様、どうかわたくしめに処罰を…」
「うふふ、そんな事は致しません。ココに集められし者たちは大切だった者に裏切られ虐げられ傷ついた者ばかり…死してなお傷つく必要は無くてよ!」
「マリー様っ!」
ガシッと抱きしめ合いそれを見ている他の令嬢たちはパチパチと拍手喝采していた。
ドレス姿の二人は何見させられてるんだろうか?と思っていたが突如としてBGMが流れ始めた。
「マリー様、舞踏会の続きを致しましょう!侵入者に関してはここにいる全員で踊っていれば必ず見つかるでしょう」
「そうね…わたくしたちの動きは数百年と踊り続けた事で完璧に揃っておりますわ…必ずどこかで足並みを揃えるのに失敗し、ボロを出すでしょう」
「そうね」
するとリーダー格の令嬢が手拍子で合図するとそれぞれペアを組んで踊り始めた。
二人はまだ深窓の令嬢のように壁の花となっていた。
『まさかこんな直ぐにマジェリルカの姉を見つけるなんて思わなかったんだが』
『それはこちらも同じ気持ち』
『連絡…着いたか?』
『譜月からの合図が来てないから着いてないと思う』
数時間前の館に侵入した時はキグルミ姿であったが、ものの数時間でキグルミがビリビリイヤーンの爆散する事態となった。
館に住まう令嬢たちに軽装状態で見つかり、薄着の変態が現れたと騒がれながら追いかけ回された。
濃い呪いの瘴気に精神が疲弊していたが、薄着姿のままは嫌だとこの屋敷にあるドレスを見つけ、どっからどう見ても呪いのドレスであったがセットされてたカツラと共に身に纏った。
すると呪の瘴気などを跳ね除ける事に成功し、見事に館の令嬢たちに紛れ込んだ。
そして館の大広間にたどり着くとマジェリルカの姉らしき人がこの館に住まう令嬢たちからグチグチと小言を言われ精神を削がれ、縛り上げられムチで叩かれている場面を目撃したので譜月に通信機を持たせ館の外へ送り出した。
『おい、そろそろ踊らなければ行けないがレディたちの踊りの型が分からないからヤベーぞ』
『そこは観覧席から観て覚えるしかないでしょうに』
二人は念話で話しているところに貴族のご令嬢に話しかけられた。
「あら?見かけない顔ね。貴女たちもしかして新入りだったりしますの?」
「…はい、わたくしたちは…異世界から召喚された巫女に婚約者を奪われた後に国を守るための贄にされ…」
「死後の世界に向かったと思ったら何故かコチラに」
女装姿で声を高くして喋る悠珂と滅多に着ないドレス姿の賀実は自身の身の上話をしながらラブナシカに仕込まれた完璧なカーテシーをした。
「…そのカーテシーは…うふふ…ずいぶんと歴史のある世界のご令嬢なのですね」
「え」
「マリー様が使うカーテシーによく似ておりますわ」
「そう…なのですね」
「マリー様はとても歴史のある世界の生まれだと聞いておりま「そこまでだ!!」
突如として大広間に男の声が響いた。なんだ?なんだ?と話していたのを中断して声のする方を向いた。
「ようやく見つけたぞ!マヴィリアンネ!」
「?…どなた様かしら?」
「私を見てまだ抜かすか!」
突然と始まった修羅場のような男女の言い合い。
だがマリヴィリアンネと呼ばれた令嬢は男の相手をせず、戯言だとただ聞き流している。
そして暫くすると他の男性がゾロゾロとやってきてそれぞれの女性の元に向かっていって同じ様なやり取りが始まった。
「ようやく見つけた…チェカンリ」
「どなた?」
「……赤の他人のフリをするくらいには君は怒っているだろうな…君を失って始めて君に支えられていた事に気づくなんてね」
「………」
「君に謝り
身なりの良い男がいい終える前にチェカンリと呼ばれた令嬢がどこからともなく取り出した鞭でパシーンッと頬を思いっきり叩かれた。
「あぇ?」
「あぇ?じゃねぇーんだよ」
雰囲気が一気に変わったのを見て悠珂と賀実はささっと一歩引いた。
そして周りを見ると同じ様な事が起きていた。
「今更謝られてもおせーんだよ。何が支えられてただ。どれだけやってないとか証拠を出しても言っても聞いてくれなかったのに今更何をしに来たんだコラ」「ちっチェカン「オオン?名前を呼ぶんじゃねーよ気持ち悪い。テメーの以下規制
かなりの暴言を吐いた後にマジェリルカの姉と見られる者を縛り上げていた紐で男を縛り上げ、鞭での教育と言うわからせがそれぞれで始まった。
その直後にドレス姿の悠珂と賀実は体が引っ張られスッポーンとカツラが吹き飛びさらにドレスから抜け、またまた軽装状態で引っ張られSM会場と化した場所からズルズルと連れ出された。
【令嬢たちの修羅場ノ舞踏館】
《館前》
「先輩たち大丈夫ですか?!」
「譜月…間に合ったんだね」
『あぁ……ふむ…全身、呪われておるの』
「呪われているであろうドレスを着たからな」
『ゆっ悠珂…アナタ…女装したの』
館から出されるも呪いに侵されて体が動かせず、敷物の上に寝転されてるふたりの呪いの進行を抑えるために処置してくれているベルネクローネは少し驚いた感じで聞いていた。
「そうするしか方法はなかったな」
「レシェットが作ってくれたあのキグルミが爆散してね…やむを得ず」
「それで【自己愛の極み魔女】様は?」
『それなら大丈夫なの。ココに遺品がある令嬢に末代まで祟ってやると呪われた方の一族の末裔の方が呪いを解くための遺品回収するために二人一組で入って場を乱してくれたから賀実たちと共に回収できたの!』
「回収できたなら良し」
「あぁ、だからご令嬢たちは…どなた?と身なりの良い男に言ったのか」
「でもそれ…大丈夫なのか?ビシバシそのご令嬢たちに鞭で叩かれてたが」
悠珂の問いに呪物コレクターが答えた。
「それなら心配なく。
呪いをかけられた元凶の子孫の方に協力してもらい身代わり人形のモデルになってもらって型を作り、身代わりオート人形を製作しましてね。
ご令嬢たちが怨みつらみを発散してるオート人形には迷惑をかけられることになった子孫とご令嬢が怨霊化する原因を造った元凶の令息本人の魂を入れてその令嬢の元へ行くようにセットしておきましたから子孫には被害が行かないようになってます」
「恐ろしい因果応報を見た」
呪物コレクターと話し込んでると次々にその世界に見合った服を着た若い男性たちが一族を呪っていた令嬢の遺品らしき物を持って出てきた。
「呪物コレクター殿。コレでようやく我らの一族は短命の宿命から解放される」
「私も婚約者や母に顔向けできるっ」
「呪物コレクター殿とそのご友人方のおかげです!」
「ソウデスカ。ヨカッタデス」
「それではっ」
お礼を済ませると次々に呪物コレクターが開いた転移門を通ってそれぞれの世界へと帰っていった。
「呪われた物が無くなって大丈夫なのか?」
「大丈夫。どうせまたアレらの孫辺りがやらかすのが見えるから。
それにここまで呪いの力が強いからそう簡単になくならないし被害者って減るどころか増え続けてるし」
「…………」
「そういえば…マジェリルカの姉君は?」
「ミステレア殿は……その…………」
「マジェリルカが姉をアレ扱いしてる事から考えると結構な恨まれるような事してたり?」
呪物コレクターは目を逸らした。
「まぁ…ワタシも色々とワタシでも管理しきれない呪物を押し付けられますけども…」
ふと悠珂は呪物コレクターの目線がある場所に向けられていることに気が付いて悠珂はその方向に目線を向けた。
とてもお淑やかな雰囲気を纏った魔女の伝統衣装を着た女性が黒いモヤを纏う紐に縛られたままの状態であるマジェリルカに似た女性に対してニコニコ笑ったまま折檻しているのを見てしまった。
「ひっ」
『あ~…悠珂ちゃん…見ちゃったかー』
「何を見『賀実は見ちゃダメ〜』
蓬は賀実に対してアイマスクの様にペッタリとくっついて絶対に見せないようにした。
「もしかしてだけどマジェリルカが言ってた姪っ子さん来てる?」
「うん…マジェリルカ殿の姪っ子さん来てるよ。………ものすっごく溜め込んでたみたい」
賀実もなんとなくマジェリルカの姉がナニをされているのか大体察した。
「ここの呪いに当てられてるわけじゃないよな?」
「当てられてたらもっとえげつない事やってると思いますよ?」
「だよな…それで他のエリアはどうなってる?」
「先輩たちは直ぐに見つけてくださりましたけど、他のエリアはまだまだ掛かりそうです。
先輩方、このまま他のエリアに行きません?」
『『呪物コレクター?』さん?』
「冗談ですよう(賀実先輩の従魔2匹の圧が強いっ怖っ)」
『流石にアタシも同意見よ?体が動かなくなるくらいにはヤバい呪いに侵されてるもの』
「あっ…送還される前に呪物コレクターに渡したい物があるんだけど」
「えっ何ですか?」
「譜月、私の左足の靴の中に隠し持ってきた何かの結晶の欠片があるから悪いけど靴を脱がせて渡してあげてくれる?」
「賀実…お前…いつの間に」
「呪いの館に不都合なくらい神聖さを感じたから拾っておいたんだよ。君はドレスに着替えていたから気づかなかったみたいだけど…」
譜月は賀実の左の靴を脱がせて靴からキラキラと神聖さを感じる結晶を取り出して呪物コレクターに渡した。
「コレは!」
「どうした急に大きな声を出して」
「今回の件は人災だ!!」
「「えっ」」
「清浄の聖者さん、何者かに封じられてた!」
「「?!」」
「賀実先輩、ありがとう!先輩が拾った結晶の欠片は清浄の聖者さんが封じ込められてる結晶の一部だ!一番初めに帰ってこなくなった強者にも何かあったのかも知れない!こうなったら時空裁判の執行人達にも協力して貰わなきゃ!」
「おい呪物コレクター、マジェリルカの姉ちゃんとSM会場はどうするんだ」
「取り敢えず放置で!」
『えぇ!?』
「先輩たちに関してはラブナシカ様を呼んでおいたから安心してね!」
それだけ言うと呪物コレクターはさっさと時空裁判所に向かっていった。
ちょうどすれ違う形でラブナシカがやって来て呪いにより体が動かない悠珂と賀実を回収しにやってきた。
「あらまぁ…アタシが思っていた以上に呪いが根深そうねぇ」
「THE呪のドレスを着たからな」
「アナタたち……女装したの?!」
「なぜ私も女装したのに入ってるんだい」
「女装した姿を見たかったわぁ………………」
突如としてラブナシカが黙り込んだ。
「あの館、面白そうなことやってるじゃない♡」
「建物自体がヤバいから行くのはやめておけ」
「行かないわよ。それよりもミステレアたら娘に復讐されてるじゃないの」
「ラブも見たか」
「マジェリルカにもこの様子を写真に撮って送っておきましょう……………できたわ。
さて少し痛いけど我慢しなさいね?」
「痛いの勘弁なんだが」
「ワガママを言わないの」
ラブナシカは容赦なくふたりに対して聖なるパワーを使い呪いの一部を無理やり引き剥がした。
悠珂は痛えと言ったが賀実は歯を食いしばり耐えた。
「コレなら連れ帰っても大丈夫そうね」
ラブナシカはふたりを担いで呪物コレクターが開いた門を通ってクレイバール島へと戻って行った。
暫くしてひとりの魔女がこの地に足を踏み入れたのであった。
ミステレア・デイニシティー
種族 魔女
性別 ♀
現在 年齢不詳
職業 デイニシティー家の当主
一人称 アタシ
通り名 自己愛極みの魔女
家族構成 娘
マジェリルカの実姉で大昔にマジェリルカと当主の座を争ったが妹のマジェリルカが突然、飽きたと言って一方的に出ていき当主の座に座った。
かなり自己中で驕り高ぶっていて数多の世界に迷惑をかけまくったがデイニシティー家の祖先たちが行った偉業の数々により帳消しにされていた。
流石に世界一つを実験台にしたのは許されず罰として魔力を一部封切られていたが、アタシなら大丈夫よねと驕り、思った以上に強かった呪いに蝕まれて捕まっていたようである。
エドガー(家名は捨てた)
種族 人間(地球人)
性別 ♂
現在 年齢不詳
職業 呪物の収集家
一人称 ワタシ
通り名 呪物コレクター
家族構成 親兄弟は天寿をとっくの昔に全うしたよ
15世紀のイギリス生まれのイギリス人でとある貴族の次男坊だった。
異世界に召喚されたのは18歳の時で召喚された先で既に転生者の強者として活動していた悠珂と賀実と出会い自身が異世界へ転移させられたと知りふたりに異世界での過ごし方を教わった事で肉体的に年下であろうともふたりを先輩と呼んでいる。
彼が行った勇者活動は魔王討伐ではなく瘴気を生み出す人間が作った呪物を破壊する事で15年の時をかけて破壊し世界を救った神様のご褒美に不老不死を願い不老不死になった。
不老不死になったことでイギリスに戻るまでは良かったが、不老不死だとバレて狙われる羽目になり、16世紀初頭に異世界を行き来していたフランス人と出会い事なきを得たそうである。