時の掌握と対象外
夜の野外訓練(初級)としてクレイバール新学校の屋上で天体観測が行われていた。
【クレイバール新学校】
《屋上》
『コチラ、上空のレンカ。特に異常なし』
「コチラも特に異常なし…」
フェアリードラゴンに変身し上空を飛んでいるレンカから通信が来た事でエトシェリカが天体望遠鏡を覗いたまま小型の通信機から返答した。
『このまま上空から調査を続行する』
「了解」
「星の並列なども起きることないね」
「このまま何事もなければ良いわ」
「……日葵、そっちの天体望遠鏡は何か映った?」
「特に変哲もなし」
「地上の調査してるラローネルたちにも小型の通信機で状況確認しないとですね」
「そうね…」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
《カフェ・ド・ラブリー》
《カウンター席》
「明日から本格的な訓練を始めるって言ってたけど」
「やるわよ。【包雷の勇者】が警戒しろと言って回ってるんだからやって置くのに越したことはないわ」
「オレと賀実はこのまま地球に一端、帰らないとな」
「あら、何かあったの?」
「家の管理とか諸々。キトリエスを借りてく、私達の保護者になってるから」
「それならボクも君たちの地球に行きたい。地球の野菜の種とか買い足したいし、隆太郎君とハルディオラ君に家庭菜園を指導してもらう手筈になってるから。プランターとかは白虎君に作ってもらった」
「詩子は?」
「アタシはお師匠様から魔法陣の省略を習ってるから今は行けないわ。
あっそういえば唯糸と白虎からそちらの地球のお菓子を買ってきて欲しい、隆太郎からは花の種を買ってきて欲しいと伝言を頼まれてたわ」
「ココの手作りお菓子も美味しいけど市販のとか無性に食べたくなる時あるよね」
「わかった、一通り買ってこよう。他の島の子供達は何か言ってた?」
「ヒペリカの物々交換と頼んで入荷してる物で大丈夫だそうよ」
「よしそれじゃ言ってくるか」
悠珂と賀実はまつりを伴い、キトリエスを呼んだら紫蘭も付いてくと四人で悠珂と賀実が生まれた地球に戻っていった。
詩子はマジェリルカが現れカフェからそのまま異界へ旅立った。
「明日の準備してたらもうこんな時間……そろそろ寝ないとお肌に悪いわね………!」
島民達が寝静まった深夜に突如として【ワールド・アナウンス】が流れた。
【時の番人の代替わりが今しがた完遂した事により、先代の時の番人の時代に【永劫の時】を歪める原因となる時間を戻した数多の生命へ【時戻しの取り立て】を行います。
数多の世界線、どのような種族も関係なく今を持って徴収します】
「そんなの聞いたこと無いわ。アタシが生きてきた悠久の時間で一度も起きたこと無いじゃない…その間に時の番人の代替わりを何回も見たもの。
…それにアタシの周りの時が止まってる…コレはどういう事かしら」
「こういう事だよ【愛の伝道神】よ」
振り返る前に胸を素手で突かれたラブナシカは気合いで振り返ると思い出したくない、二度と会うことはない、絶対にと思っていた【終末狂会】の司祭の服を着た【ライニモルス】でラブナシカが神族として正式に罰を与えた【時の法を犯した者】が立っていたのを見て目を見開いた。
「くっ……何でっ!……」
「時間を掌握したんだ…悠久の時を掛けてゆっくりとね…この世界に生きる者たち凄いね?
時間を巻き戻した形跡が魂にあるのに【時戻しの取り立て】から除外されてるのだから」
「……時戻しが行われたのは…この世界ではないからよ……それに先代となった【時の番人】によって…【因果を克服した者】達への清算が…なされたから影響は受けないわ」
「それでかぁ……最近、襲撃があったでしょう?何でこの厳重な結界を通り抜けられたのかのネタバレしてあげる。1年前だっけ?に星間獣がこの地を襲った時に異界の強者が来ていたでしょう?その時に我が同胞も侵入してマーキングを施しておいたんだ」
「!」
「君の可愛いフリルデーモンとやらでも見抜けなかったくらいには巧妙だったでしょう?」
「えぇ…アタシも油断してこうなってるもの…」
「君は知らないだろうけど【終末狂会】の殲滅戦に参加したものは全員もれなく殲滅戦の指揮を執った【秩序の大神】によって【鍵の欠片】を埋め込まれてるからそれを貰いに来たんだ」
「…グッ……この世界の子供達に手を出したらただじゃ済ませないわよ…?」
「君も大切な物を奪われる苦しみを味わえば良い」
「何をふざけたこと…言ってる……のかしら……アンタ達だって【終末の神】…降臨させるため…と言ってアナタの世界の生命を殺し尽くし…たというのに……良く言うわ」
「彼らは【終末の神】の贄となった。それはとても素晴らしい事なのですよ…鍵の欠片は頂いていきます。
それではサヨウナラ」
ラブナシカの胸から取り出した鍵の欠片を持って【終末狂会】の【司祭】は指を鳴らしカフェを爆破して去っていった。
ラブナシカはフリルデーモンの中でも上位の者に爆発に巻き込まれる寸前の所で助けられ【ヴェルタリアスの秘密基地】へと運ばれた。
胸を貫かれ再生を阻害する魔法をかけられていることに気がついたが、島の子供達の生存確認して全員どうにかこうにか無事なのがわかり、フリルデーモンの秘書を呼び出した。
「ラブナシカ様、島の子供達は怪我もなく避難済みです」
「良かったわぁ…」
「この間の侵入者と似た服を着た連中に襲われてましたが避難訓練だけは続けて居たので抵抗できてました。
殺気だったフリルデーモン達が現れて直ぐにココへ避難させることができたのも良かったです」
「そうね……この身体を結晶に閉じ込めて…この身体に付けられてる魔術が消えるまで…眠りにつかせるわ。
心臓の再生を阻害する魔法も……かけられてるし…このままなら死を待つだけになるもの……今直ぐにでも…愛丸の身体に移るわ」
「了解しました。愛丸様になられるまでクレイバールの子供たち含め、我らフリルデーモンが全力でお守りいたします」
「頼んだわ」
「それと少し長くなりますがもう一つだけ。島長ポーリア様が決めた緊急事態が発令したので、しばらくは地上に建物を建てるのではなく【ヴェルタリアス秘密基地】に必要な施設をブラウニーと共に移しこの秘密基地を生活圏とします。ですがフリルデーモンたちによる地上の巡回は今も続けます」
「任せたわ」
それだけ言うとラブナシカは秘術を使い神族トシテのラブナシカの身体を結晶に包み込み封印し、愛丸の身体に魂を移した。