【終末狂会】
【クレイバール島】
《カフェ・ド・ラブリー》
「ラブリーちゃんっ、お・久・し・ぶ・り♡」
「まぁ!メディシーじゃない!クレイバール島に戻って来るなんて珍しいわねっ」
「太古の勇者関連のその裏で活動してた輩が判から戻ってきたの」
「やっぱり大きな事を隠れ蓑にしてる裏では何か起きるのね……アナタが戻ってきたってことはよっぽどの事が起きてるのね?」
「【終末論】を始めて唱えた【終末狂会】が動き出したわ」
メディシーの放った言葉にラブナシカは目を見開いて動揺したが精神を落ち着かせた。
「【終末狂会】はそれこそ全世界の脅威として大昔に活躍した【太古の勇者】とその仲間たちと【神族】が介入して徹底的に潰した筈よ」
「ラブリーちゃんも神族の当事者として関わっていたものね」
「遺恨を残さぬように末端の血族まで徹底的に絶やしたわ…資料や石碑もね」
「信じられないって顔してるけど…コレを見たら流石に復活したと理解できるんじゃない?」
メディシーは胸元から旗を取り出し広げてみせた。
それを見たラブナシカは手に持っていたワインを落とした。
「対策しなきゃ確実にクレイバール島の子供たち巻き込まれるわよ。
当事者であるラブリーちゃんが居るんだから」
「そうね…さっそく今日、寄合所に島の子供を呼んでお話しないといけないわね。
それとさっき出した旗は燃やしてこの世から消しなさい…アレは不快な物よ」
「んもう…そこまで警戒しなくてもいいじゃない」
「そこまでしなきゃイケないくらいにヤバいのよ」
「…わかったわ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【クレイバール島】
《寄合所の大広間》
「ラブ先生から呼び出しって大抵ヤバ案件だから怖いんたが。
悠珂?どうしんたんだ?今朝から顔色悪かったが」
「気にしないでくれ(なぜに今メディシーが現れたんだ…)」
「…いつになったら来るんだろうね?カレコレ3時間経っても来ないわ…大人たちも遅いし」
「……アタシが様子見てこようカ?」
「いや、ラブ先生にココに居ろって言われてる時は大抵なにかある時だから居たほうがいいよ」
「イダダダダ!日葵!流石の俺でもこれ以上は曲がらねぇよ!」
日葵はラローネルと話しながらレンカをキャメル・クラッチしていた。
「レンカ、かなり痛がってるけど…大丈夫?」
「大丈夫。ちゃんと加減してるから」
「また負けた…相変わらず強いわね」
「莉糸は相変わらずブラック・ジャックとか苦手ね」
「カードゲームで勝ったことないわ…カードゲームもそろそろ飽きた」
「ならわたしの作ったポーションを飲む?」
「そんな得体の知れない液体は飲まないわ。
この間のホワイトデーを台無しにしたのにまだ懲りてないわけ?」
「えー…楽しかったよ〜…性別逆転したホワイトデー。女体化した男子たちがてんやわんやしてて、わたし達の男化したの見たラブ先生の興奮した表情はトラウマものだったし」
「クーナ、クート。小腹空いてない?」
「「少しだけ」」
「あーしが作ったモモ肉とチーズとトマトの黒パンのサンドウィッチ食べる?」
「「えっいいの?!」」
「まてくださいコナルヴィア。サンドウィッチの肉は魔物の肉ではありませんよね?」
「魔物肉だけど?」
「クーナ、クート食べてはいけません」
「えー!玖寿のケチ!」
「ぶーぶー!」
「ふたりにはまだ魔物の肉は早いんです」
「せっかくコナルヴィアが分けてくれるって言ってるのにー」
「それならワタシが貰うわ」
結構な速度でエトシェリカがヒョイッとコナルヴィアの手からサンドウィッチを取った。
「あー!エトシェずるい!」
「最近、よく食べるわね?」
「うふふ…ワタシを長年悩ませてた問題を解決できたら食欲とか出てきたの。
コナルヴィアも人に食料を渡すなんて進歩したわね」
「料理を覚えたらあーしでも食べ切れないくらい作りすぎちゃってね…食材はラブ先生や賀実や食料管理してる人に頼んだらこれでもかとアイテムボックスから分けてくれるから」
「何も育てなくても数十万年分は持つって言ってましたね…クーナ、クートはヤサグレないんですよ。
お腹空いてるなら僕の夜食を分けてあげますから」
「わーい!」
「ありがとう!」
ほのぼのしていた所に賀実の一言で静かになった。
「……なんか来そう」
「どうしたの賀実?」
「得体のしれない感じがした。君たちは感じない?」
「特には感じ……皆!」
一斉に賀実以外は立ち上がった。いつの間にか寄合所の大広間の背景が警戒モードに変わり何か外で起きたのだと理解した。
「もう!結界を新しくしたんじゃないの?!」
「なんか…学校がダンジョン化した時に味わった恐怖を感じます」
「確かにそうかもな…なんか肌がヒリヒリするぜ」
「どどどどうしっ」
子供達が焦っていると実体化したブラウニーが現れ子供達を押し入れに案内して詰め込んだが定員オーバーしてた。
押し入れの外に残ったのは賀実でキトリエスと悠珂との合作で創り出した特殊合金属の寸胴型の被り物を被り身体を屈めて畳の上に座り被り物の中に完全に入り込んだ。
それから少しして嫌な雰囲気を纏った何者かが遂に部屋に侵入した。
賀実は寸胴型の被り物の中からモニターを通して外を見ていた。
「島のガキはどこに行った?魔力を感じられなくなったんだが?」
「それならそこの寸胴の中に入り込んでいる方に聞けばいい」
「………不自然に置かれてるが大丈夫なのか?」
「たぶん平気じゃない?」
怪しい雰囲気を纏った者は寸胴の被り物の近くに向かおうとしたが畳が勝手に動き出すというブラウニーのイタズラにより近づけずにいた。
「この家、ブラウニーが住んでんぞ!」
「よりによってブラウニーか!」
「ウォオオオ!」
声が低音は力技で切り抜けようとしたが賀実が中に入り込んでいる寸胴型の被り物の畳も動きだして低音が近づく度に遠ざかっていくだけであった。
「こんの悪質ブラウニーめ!」
「ブラウニーが認めた住人を護るのにきまってるだろに…コレだから筋肉バカは…自身の身体かあの寸胴を浮かせばいいんだよ」
声の高音の方も事を動かそうとしたがブラウニーに魔法阻害された。
「ココのブラウニーは大変優秀なようで」
「お前だってしてやられてるじゃねえか……ならコレはどうだ!」
低音の方は近距離戦を止めて遠距離戦を始めることにして寸胴型の被り物にパチンコを使いダメージを与えようとしたが。
「痛え!なんだあの金属?!オレ特製の玉を跳ね返してきたぞ!」
「その世界オリジナルの合金でしょうね……あの【天災】が居る世界だからこその強度もあるかもな」
すると侵入者は小型の通信機を取り出した。
『……子供を確保できたか?』
「残念ながら大変優秀なブラウニーに邪魔されて確保どころではありません。
貴女の方はどうなんです?」
『ココの男たち凄いわ。ワタクシの魅了が一切合切きかないんだけど、とうなってるのかしら?
目が合ったとしても「はっ?何してんの?大丈夫?」って目で見てくるのよ?伴侶に先立たれた老人ですら』
「だとしたらもう一人の方も駄目か…」
『えぇ、女達も凄いわよ。「コイツないわ~」って目で見てくるから心折れたと言ってたわ…こんなの始めてとも言ってたし』
この会話を聞いた子供達はスゲーな自分たちの両親とご隠居たちと思った。
「どうするんだよ…【天災】を一人で相手してる奴からそろそろヤバいと連絡きてるが?」
『警戒していた【魔法使い】と【賢者】が一般人レベルまで弱くなったと聞いたから動いたのにどうなってるのよ。ココの住人たちは!』
「ココの住人が伴侶に一筋なのはかなり有名だ。ココの住人の伴侶も何故か伴侶に一筋で魅了が効かんのも有名だな」
『ふぐぐぐ!』
すると大きな爆発音が響いてボロボロの侵入者が吹き飛ばされてきた。
「この島の平穏を乱すのはダーレーだぁ〜」
「ひっ」
『あえ?』
「チェストォオ!」
「ギャー!いきなりかよっ!」
「キトリエス姉様っ助太刀するわ!」
「さらにゴッツイ、変なのが湧いたぞ!おい!協力し……?!」
高音の方は既に他のフリルデーモンさんたちによってモザイク規制と自主規制。
「なんなんだよぉ!」
『こっちも来たっ!通信切るわ!』
侵入者たちはフリルデーモンパニックに陥っていた。
「コッチくるなぁあ!!」
どんなに走って逃げようとしてもブラウニーのイタズラにより畳が動き先へ進めず、魔力をも封じられ窮地になったが、突如として物凄い地響き起きた。
寸胴型の被り物の中にいた賀実は突如として景色が閃光に包まれた瞬間を目にし、高濃度の魔力の衝撃波が寸胴型の被り物をすり抜けて自身に降りかかりそのまま意識を失った。