異形の者
外に出るとなんかヤバい魔力を感じてミストルと恋人繋ぎをしている手にほぼ同時に力を入れていた。
「何このどす黒い魔力…気持ち悪くなってきた」
「やはりこの感じは「ワナス」ですね」
「厄介なのが来たね」
「ヒュース見えるか?」
「あぁ、こちらに真っ直ぐ向かってきてるよ」
「この時期に来るなんて…」
「ティルクスとミストルはけして結界の中から出てはいけませんよ?」
「ティルクスも冷や汗が止まらないみたいだね」
「こんなの初めてだよ」
「来るぞ!」
瞬間に結界目掛けて何かが来た、何だあれは!
「お久し振りですぅ…元気ですかぁ~!」
「来たねワナス…何しに来たんだい」
「魔神様からの伝言を届けにきましたぁ~!」
そこに現れたのは半分腐って骨が見えている元人だった!
「相変わらずだな、さらに進行したんじゃないか?」
「…おやぁ~ヒュースとシカナではありませんかぁ~相変わらず年を取ってませんねぇ~」
「ワナス!」
「怒ると勿体ないですよぉ~シカナぁ~」
「さっさと消えなさいワナス」
「バルセイルさん~酷いなぁ~」
「テメェの持っている物は何だ?話次第では殺すぞ!」
「母さん!」
ワナスと言う人物は銀色の髪の束を手に持っていた。
「怒りっぽいのは変わらないねぇ~アルーヴぅ!でも残念ぇん!ババアの犬とジジイの馬のせいで殺せなかったよぉ!」
「やはり聖獣が居ると何も出来ないみたいだね」
「ふぅ…お前さらに業を増やした様だな…愚か者が!!」
じいちゃんの魔力を込めた喝は恐ろしくビリビリと響いた。
「ぎゃあぁ!」
黒い魔力が吹き飛びワナスと呼ばれる人の全貌が現れた。
「ゾンビよりヤバいぞ」
「あんなのになっちゃうんだね…」
「やはりこのやり方でないと効かないか」
「アルーヴ、バルセイル、ミストル…手を出すな耐えろよ」
「耐えるよ…あんなの見たら余計にな」
「ヒュース!あれは」
「ここまで酷いとは思わなかったよ」
「…遂にこの段階まで行ってしまいましたか」
そこには数多の人の顔が身体中に現れうめき声を上げ血走った眼をこちらに向け恨めしそうにこちらを見ていた。
「見たねぇ~!」
「俺たちには効かねえぞ?呪いの魔眼ごときじゃな」
「これじゃラタンシアも報われないな」
「お前たちがその名を呼ぶなぁ!」
「ぼくの妻を見殺しにした野郎共がぁ!」
「見殺しにしただと?お前が言える口か!お前があんな場所に行かなければラタンシアさんは!」
「アルーヴ、その辺にしなさいな、ワナスもこれ以上の侮辱は許しませんよ」
シャンシャンと鈴をならしながら現れたのは桃色の髪を持つ少女だった。
「お久し振りです、ただいまルトラ父様、サニカ母様それにバル兄様も」
「元気そうで良かったです」
「はい、元気ですよ…わたしの愛しい娘たちと孫たちの顔を拝みに来たのですが…さらに禍々しい魔力を放つ様になりましたね」
「!」
「ルトラ父様とサニカ母様は今回は手を出さないでください」
ルーミリアと言う少女がワナスと言う人物に向き合った。
「ワナス…あなたもいい加減反省していると思っていましたが」
「ルー義母さんが来るなんてぇ…」
「あなたもさっさと迷いを捨てラタンシアの元に行きなさい。わたしの愛しい娘をひとりで待たせてなにがしたいのです」
「ラタンシアを蘇らせるから待っててくださぁいぃ!」
「ラタンシアはわたしの娘だけど人として生まれたの、そして寿命が来たのよ?いつまでも現実から眼を背けるのは止しなさいワナス」
「ルー義母さんも会いたくないのですか?最低な母親ですね」
「ワナス、俺の愛娘を侮辱するとはいい度胸だな?」
じいちゃんが魔力を練り始めた、なんか周囲が荒れてきたな。
「ルトラ父様…今は抑えてください…仕方ありませんね【セイクリット・アイスバインド】」
「おっと…甘いですよぉ~ルー義母さん…今回はルー義母さんの顔を立てて退きますよぉ…魔神様からの伝言ですぅ~「何度も何度も邪魔をしやがって…魔竜復活戦をゲリラ的に起こすから守りに入らないと数多の国が滅ぶぞ?」だそうだよぉ~…伝えるだけ伝えたから帰るぅ~!」
すると黒い靄がワナスを覆い隠し去っていった。
「助かったよルーミリア」
「サニカ母様が持つ物騒な刃物を引かせる訳には行きませんからね」
「帰ってくるなんてどうしたのですか?」
「イシェーラの無事とかわたしが直接伝えに来たの」
「無事なんですか!」
「えぇ…アネットちゃんが突然現れてワナスを追い返したの」
「母上が!…良かった…イシェーラ」
「良かった…母さん」
アルーヴさんとミストルがへなへなと倒れこんだ。
「アネットもまだ転生してないのですね」
「そのアネットちゃんからの伝言よ「ワナスのように堕ちたり早くにこちらに来たらシバくぞ…わたしの事は良いから再婚しろ」と言ってたわ」
「相変わらず最高の妻ですね…そんな事を言われてもアネット以上の最高の女性は現れませんよ」
「アネット姉様が羨ましいわ」
「何を言っているのですルー…あなたの夫であるヴィトもすぐ側に居るでしょう」
「ふふふ…そうね?」
「この人が…フェルチェさんのお母さんか…」
「あら、ティルクスとミストルね…ずいぶんと大きくなって」
…俺達が赤ん坊の頃にひょっこり村に現れ俺とミストルの顔を見に来た人か…幼い見た目なのに未亡人でカリーナ姉さんとミリア姉さんと村を出ていったフルーラ姉さんのばあちゃんか。