薔薇園
【ブック・オブ・ラビリンス 最深部】
《セーフティゾーン》
『まさかアタシがお転婆してた頃の日記がそこに奉納されてるなんて思わなかったわ』
「あえて知りたくない者のアラレもない姿も工程とともに写っていたけれども」
「見知ったやつの顔も合ったな」
『あ~…アレねぇ…うふふふ♡』
「今ゾワって来たぞ…」
「そっちは特に異変はない?」
『無敵の宿屋シリーズがなくなったから弱体化してるだろうと襲撃が早速起きたわ』
「起きてんじゃねぇか!」
『大丈夫よ。み~んなアタシとフリルちゃんとで可愛がってあげたわ♡…宿屋シリーズがなくなったことで吸い取られてた分の力を振るえるようになったからスッキリね』
「お前も力吸われてたんか」
『えぇ、羽虫に血を吸われてる程度だったし、特に気にしてなかったから言わなかったわね』
「悠珂も力を吸われてるだろうと思っていたけど君もか。実際は私一人で管理しきれてなかったのか」
『そりゃそうよ。アレだけの代物なんだから。今、聖書の迷宮に居るのよね?』
「いるよ。最深部のセーフティゾーンに」
『最深部にいるならさらに都合がいいわ。アタシも探してほしい本があるのだけど良いかしら?』
「探すのは良いけど本は持って帰れないよ?」
『えっ…写本なら持って帰れるわよ?』
「写本も持って帰れないって…ルールブックに書いてあったけど」
『ルールブック?…その内容をアタシに教えなさいな』
賀実は取扱説明書その1の内容をラブナシカに伝えた。
『……そんなルールはなかったと思うけどまぁ…アタシの日記然り、他の神族のアラレもない日記が奉納されてるからどこかの神族が取扱説明書を作ってこの迷宮を改築するついでに組み込んだポイわね。
日記って当時を知るのに持って来いだったりするから保存したいらしいし奉納するのよねぇ…【時空図書館】に属してる【司書】が読んでから』
「図書館にあったらヤバい内容の日記は流石に【時空図書館】側も安置したくないか」
「『したくないでしょうねぇ』だろうね」
「それで愛丸が探してる本のタイトルは?」
『【愛は永久に不滅】という本よ』
「それならもう持ってる…原本」
『あら!原本を持ってるの?!』
「光る本を見つけたから確保しておいたんだ」
『ふたりに悪いけど朗読してくれないかしら。写本を取れないって言うなら朗読してもらうしかないじゃない?』
「愛丸、一つ聞きたいがこの本はオレでも読める本だよな?」
『……うふふふふふ♡』
「おい!間合いが怖いんだが!」
「その前に私が一旦読んで良い?」
『良いわよ』
賀実はペラペラと巡り読み進めたがとあるページでピタッと止まった。
「どうした?」
「…流石にコレは…朗読するのは無理ぃ」
「えっ」
「薔薇本の朗読は無理です」
「…おい愛丸」
『うふふふふふふ』
「確信犯か!」
『その本はアタシのお師匠様の日記を元に作られた本よ…あぁ…お師匠様っ!』
「お前のお師匠様と言ったら男色文化を作り上げ人間社会に説いて広めて男神族から今も恐れられてる【最古の薔薇神】じゃねえか!!
しかも数多の次元の男色神をまとめ上げて【薔薇園】と言う名の男色家の楽園を築き上げて籠もってるしな!」
「そこではナニが行われてるんだろうか」
「止めろ賀実っ!想像させないでくれ!」
『ひっど〜い!そこまで言わなくていいじゃないっ』
「それで愛丸。私、この本を読むの嫌なんだけど…どうする?」
「あら…賀実もギブアップなの?」
「流石にコレはちょっと」
『そうねぇもう少し待ってられる?』
「別に良いが……違法な事だけはやめてくれよ?」
『大丈夫よーお話し合いしてくるだけだから♡』
それだけ言うと愛丸からの通信がきられた。
「何をするつもりなんだ」
「いつもの事だよ…愛丸は欲しい望んだ物は手に入れてきてるし…話し合いをするって言ってたんだから信じてあげなよ」
「……どんな内容だった?」
「愛丸の日記よりはマイルドになってるように見えるけど実際は……後は察してください」
「今またゾワって来たぞ」
「私も思い出したらゾクゾクって来た」
「お前がそうなるなんてよっぽどだな」
ふたりは愛丸からの連絡を待つこと1時間後。
『ふたりとも【愛は永久に不滅】の写本を持って帰る許可を取ったわ!』
「……スゲーな」
「どう詰めたの?」
『詰めるなんてそんな事しないわ。ただ【時空図書館】の【司書】ちゃんにお願いしただけよ♡』
「そうか」
『目的のものを見つけたら速やかに戻ってきてね♡首を長くして待ってるわ』
それだけ言うと愛丸は通信を切った。




