500話記念【愛の伝道神】と【姫】の騒動
ここはとある時代の【クレイバール島】。
あのラブナシカに言葉の喧嘩を売り続けとある事で勝ち越した事で(ただの反抗期ともいう)伝説と化したとある一人の少女の話とその時の若い世代の話である。
【クレイバール島】
《クレイバール学校の中等部の教室》
「あ~あ…授業がつまらなすぎて…休み時間も退屈だわ」
「姫、暇つぶしの本を持ってきましたぞ」
「ん~それアタシ、合わなかったのよねー?」
「なんだ…と…?!」
「キルキス残念だったでござるな!我が用意した本を!」
「アンタの持ってる本も好みじゃないわ」
「なっ!」
「ふふ…ふたりして姫の好みを取り違えるとは…姫、コチラの【薔薇の織姫】というファッション雑誌はどうでしょうか?」
「あら良さそうじゃない…ヨアンはアタシの好みを心得てるわね」
「ご満悦いただけてボク、嬉しいです」
ヨアンと呼ばれた呉服屋の息子はフフンと好みを取り違えた男二人に対してニヤニヤした。
クギギギとハンカチを噛み締めている二人組はそれぞれ鍛冶屋の跡取り息子のガルラスと鮮魚店の跡取り息子キルキスであった。
「お前たち…」
「ルコウは姫を持ち上げないよなぁ…島唯一の若い女子なのにな」
「(コイツら…母や妙齢の女性たち(それぞれの母親たち)が怖くないのか)……俺はどの道、島の外から嫁をもらってこないといけないから守る力をつける事に集中しているだけだ。サニカ先生に「君とルランフェルの血筋だけはどんな事があろうとも絶えさせることは出来ない」って言われてるしな」
「ユレスの所もか…」
「祖先からの何らかの因縁があるんだっけか?」
「因縁というか…因果だよな?」
「そう、オレも聞いてる」
ルコウと呼ばれた時期アシュクラフト当主の少年とルランフェル家の末っ子ユレスはお互いに顔を見合ってため息をついた。
「長男坊と次男坊のやつ…この島から巣立って行きやがったからなぁ…おれも嫁探ししないと…じゃなければラブ先生かサニカ先生に見合いをさせられる…」
「大変だナ」
「ハルタもナシェンナの事を姫って推さないよな」
「幼馴染であろうも、姫姫言われて調子乗ってる小娘なんて好みじゃないからナ…オレとしては生意気より落ち着いた人が好きだかラ…工務店の跡取り娘のタミヤナ姉のが好みだゾ」
「聞こえてるわよ?ハルタ?」
キーンコーンカーンコーンと休み時間が終わるチャイムが響いた。
ガラガラと教室の扉が開くと勉強に使う本を持ったラブナシカが入ってきた。
「ゲッ」
「貴女は相変わらず何がゲッよ…授業が始まるから本とかしまいなさい」
「ラブ先生ってことは……保健体育すか?!」
「えぇ、サニカに野暮用が入ったからアタシね」
「えーアタシ、サニカ先生が良かったー」
(貴女はいい加減にしなさい。普段から宿屋の図書室で【大人の絵本】を読んでるのを男子たちにバラすわよ)
(なっ!!)
流石にラブナシカに本人にしか聞こえない小声で言われて本を渋々しまったのはオタサーの姫と化している神社の跡取り娘であるナシェンナである。
「ドミリクスは何時までも眠ってないで起きなさい」
「起きてるよぉ〜…オイラ、親の手伝いで疲れてるから勘弁してよぉ」
「親の手伝いに関してはここにいる子供たちしてるわよ、ドミリクスだけじゃあないわ。ほら起きなさい」
「…………」
「起きなきゃ口付けするわよ」
「はい、ごめんなさい。起きましたからチッスするのは止めてください」
「ラブ先生、流石にそれはセクハラかモラハラになるやつじゃない〜?」
するとラブナシカは「ここはアタシたちが作った世界だからアタシたちがルールよ」と決めポーズしながら言い放った。
それを聞いた子供たちは真顔になった。
「ラブナシカ先生、どうか青い果実の我らにご享受をお頼み申す」
「うふふ、流石にそこまで畏まらなくて良いわ。ならちゃんと授業を受けるのよ」
「「「「「「はい」」」」」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【無敵の宿屋】
《食堂》
「あぁ〜疲れたぁ」
「ご苦労さま。またラブナシカに喧嘩をふっかけたんだって?」
「ふっかけたと言うか…反抗しただけですぅ〜」
「そうか…何が原因とは聞かないけども男を侍らすのはそろそろやめなさい。黒歴史になるぞ」
「勝手に向こうが持ち上げてくるのよ。それに私以外に若い女子がいないのが悪いわ」
「まったく…宿屋の外で言うんじゃないよ?」
「わかってるわよ、そんなヘマしないわ。サニカ先生、図書室だけど…」
「大丈夫、誰も居ないよ。読み終えたらちゃんと元の場所に戻しておいてね。
この間、ルウカが18禁の大人の本を伝記が置いてある場所から見つけて表紙を見て悲鳴をあげてたから」
「たぶんそれアタシじゃないわ…流石にアタシでも18禁はまだ読まないわ」
※サニカはナシェンナが大人の本を夢魔の特性が早くに出てしまい発散させるために嗜んでいるのを知ってる。
「さてと…私は火天の宿屋の掃除に向かうけど、使い終えたら図書室の鍵をいつも通り元の場所に戻しておいてね」
「わかってるわ…サニカ先生には感謝してるもの」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【クレイバール島】
《クレイバール中央区》
「はぁ〜…読みすぎて少し暗くなっちゃったわ(いくつか本を借りてきたからカバンが重いわ…こんな時に限って居ないんだから)」
すると中央区の噴水広場でナシェンナが居ないと思っていた男子ルコウとユレスとハルタ以外を除く男子達が母親達によってお説教を食らわされていた。
(…………怒りのオーラが暗いのに見えてる…怖っ)
ナシェンナはスッと気配を消した。
「若い女子がナシェンナしか居ないですって?」
「サニカ先生たちも女子が1人という珍しい世代もあるものだねぇと言ってたけども…」
「流石にあたしらだって言われっぱなしは性に合わないのよ」
「うふふふふ…じっくりお話しましょうか?……外で悪い女性に騙されないように……ね?」
男子たちはそれぞれの母親達に凄まれ縮こまりガタガタ震わせていた。
ナシェンナはご愁傷さまと心の中で祈ってから自宅へ向かってその場から離れた。
【クレイバール神社】
《敷地内》
ナシェンナは家に帰る途中からなんだか視線を感じると思いながらも敷地内に戻ってきたが。
「いるんでしょ?出てきなさいよ」
すると敷地内の藪からラブナシカが現れ、それを見たナシェンナはうげぇという表情になった。
「なんでアタシに反抗されてるのについてきてるのよ。侵入者はここ最近、入ってきてないんだから大丈夫って言ってたわよ」
「つっけんどんな反応されても島で唯一の女の子だから心配なのよ」
「はぁ……いい加減、そういうの止めてって言ったわよね?シツコイのよ!ホウライ!イナ!そこの現人神を縛り付けちゃって!」
ナシェンナの合図に神社の本殿から二匹の巨大な蛇がやれやれといった雰囲気を出しながら現れ、ラブナシカを縛り上げた。
そしてナシェンナはラブナシカに向かって一冊の本を開いてから持ちラブナシカの顔面めがけて押しつけた。
「あらぁ…拘束からの涼凪蘭土先生のBがLの本ね…かなり際どい場面を押し付けるなんてやるじゃない……ってコレ18禁のっ…あっあぁ!」
「対ラブナシカ対策として持ち歩いてるのよ。一度18禁の本を持ち出すの失敗してルウカ先生に被害が行っちゃったみたいだけども!」
ラブナシカは際どい場面を見せつけられさらにかなり好みの場面だったらしく鼻血を垂らしながらその場に倒れ込んだ。
「ラブ先生の淫夢でリサーチ済みよ!コレに懲りたらアタシに対してストーカー行為をやめることね!
ホウライとイナはもう戻って良いわよ。ありがと」
巨大な蛇二匹はラブナシカの拘束を解いて本殿のお気に入りの場所に戻っていった。
そしてナシェンナも本殿から自宅の方に向かっていった。
この場面を目撃した者よって言葉の喧嘩で勝てなかったラブナシカを物理の一撃で沈めた伝説のオタサーの姫として語り継がれる事となった。
そしてナシェンナを姫と囲い込んでいた男子たちは母親たちの精神攻撃を受けてナシェンナを持ち上げることをしなくなりクレイバール島は段々と落ち着きを取り戻したのだった。




