寸胴型の被り物
【自宅】
《リビング》
「お紅茶、置いといたわよ」
「ありがと」
「キトリエス…なんでお前だけはここに残ってるんだ?」
「愛丸姉様にふたりが心配だからとフリルデーモンの中でも人間に混じって生活が出来るアタシがここに残されたの」
「たく…愛丸め」
「他のフリルちゃんたちは全員、確実に島に帰ったから寝ている子供たち共々安心なさいね」
「日常生活をサポート出来る裏方が居れば安心だからね、何も言わないよ」
「……まぁ…否定はしないな」
「うふふ…それで今読んでるのは何かしら?」
「高卒認定を受けるにしても勉強とかしないとだし…塾に通うの嫌だから自力で勉強中」
「あぁ…それでなのね」
「オレの方を見てもなにもないぞ」
「それで高卒認定取れるまで、ふたりは何かしたりしないの?」
「寝ている子供たちの呪を解くための魔術を漁る異世界への旅をしようと計画中なんだがなぁ…本格的に旅するのも久し振りになるから緊張しててな」
「悠珂の言う通り、私たちは魔王倒して不老不死、始めましたレベルのひよっこだから。
そこまで悪さした覚えはないけども知り合いとかに絡まれるの嫌なんだ」
「んもう…それじゃいつもと変わらないじゃない」
「神の呪を解くやらにかんしての世界は目星は付いてるから急ぐ必要は無いよ」
「あら」
「せめてコレが完成するまで待って」
賀実が勉強しながら制作していると言っていた寸胴をキトリエスと悠珂は見た。
「……なんなのソレ」
「キグルミとは別物の姿を見られないようにするための機械仕掛けの作りかけの奴」
「お前なぁ」
「見た目を特定されないようにしておくのも手だぞ」
「…まぁ確かにそう思うけど」
「それはどうやって被るんだ?」
「そんなの簡単だよ。こうやって持ち上げて装着するんだよ」
作りかけだがどっからどう見ても重たいであろう寸胴をヒョイッと持ち上げて頭から装着した。
賀実の体はほぼ寸胴の中に入りふくらはぎの部分まで体を隠した。
「寸胴を被ってるただの変人じゃねぇか」
「地球でこんなの被ってたらそうだけど、異世界では良いかなって…重さに関しては魔鋼鉄とか使えば軽量化出来そうだし、場合によって体を屈めば銃弾とか魔法とかの跳ね返せるんじゃないかなと。
外とか見えるように魔法の仕組みも作ればね」
賀実はその場で身体を屈めると寸胴の中に身体が全て隠れた。
「賀実ちゃん、ここまでだったかしら?」
「いや、キグルミだけだったが、何か思うところがあるんだろう。
もしかするとセクハラ対策なんじゃないか?賀実はスカート履かないから寸胴の隙間からカメラ仕掛けられても盗撮されないだろうし」
「相手が自分たちよりも強いならそういった事もあるのねぇ…異世界も世も末だわね」
「それならオレも手伝ってやるぞ。オレが完璧に仕上げてやる!」
「……アタシも手伝うわ」
寸胴型の被り物から賀実を追い出し、悠珂は学生でも使えるような工具を使いながら寸胴型の被り物の改造を始めた。
素材やらは賀実のアイテムボックスから必要な数を用意し足したり引いて納得いくまで改造しまくった。
最終的にはキトリエスも混じりヤバいことになり二つほど完成した。
一つは中から操縦出来るようにロボットアームが付いて軽量化にも成功したが、二つ目は悠珂とキトリエスの趣味をマシマシにしたことで完成する前からモザイク加工されてた。
そして二つ目に関しても中から操縦出来るが、中の人が思った以上の事、AIが搭載されている事で自動でやったりと問題が発生し、賀実が封印と書いた紙を貼り賀実のアイテムボックスの中に封じられた。
「誰があそこまでの物を作れと言った?言ってないよね?」
「楽しくなってつい…」
「キトリエスもだよ……AI搭載した被り物が動かしてる操縦士をの命令無視して自主的に男にセクハラって笑えない冗談なのだけれど?」
「いい男の股間をガッてしてサイズを確かめても良いじゃない…ケチ」
「ケチじゃない。逆セクハラかつ犯罪」
「えぇ…勿体ない」
「勿体なくないです。はい」
「それじゃコレどうするんだよ…」
「封印して私のアイテムボックスにしま……いや、君が持っておきなよ。
コレが正しく使うときが来てしまった時に使えるように封じておくから」
「そんな時が来たらヤバいぞ」
「そのヤバいのを作って私に装着させるつもりだった君に言われたくないです」
「スミマセンでした」
「キトリエスも少しは反省しなさい」
「はい…」
それだけ言うと賀実はアイテムボックスからモザイク加工されてる被り物を悠珂のアイテムボックスにしまわせたのだった。




