特級呪物となったダンジョンコアの譲渡
【薔薇色の宿屋】
《食堂》
「悠珂たちがボロボロ…」
「拠点作りしてたんだけど………探索組が「まだまだ行けるんじゃね?」と奥に奥に進んで中盤くらいの拠点にラスダンにでてくようなモンスターを3人同時に引き連れて帰ってきてね」
「モンスターは対象できたが拠点がボロボロになったから呼び戻してもらってちょうどよかったな」
「良かったなじゃないからね?」
「面目ないわ」
「以下同文です」
四人のやり取りを見てアリュリスティアとシルベイルガーは乾いた笑いがでていた。
「お前は相変わらずだな」
「だ………あっ銀斗と蒼か!?久しぶりじゃないか!」
「あっもうその名前で呼ばなくて良いわ」
「えっ」
「もう愛丸ちゃんたちには話したのだけれども…」
悠珂たちにも情報共有された後に愛丸に言われて悠珂と賀実とアリュリステアとシルベイルガーの四人でテーブルを囲いながら話を始めた。
「俺たちはてっきり【太古の勇者】を崇拝してる連中とドンパッチやってると思ってたんだがな」
「そうはならなかったわね」
「何もかも巻き戻って俺はこんなカオスな場所で生活してたのかと、地球ではジェネレーションギャップって言うんだっけかになったぞ」
「それで自世界を飛び出したと」
「えぇ、自世界がどのような未来に進むのかも未知数となったので、わたくしも数多の世界を旅しながら見聞を広げ、故郷が恋しくなればわたくしを知らない未来を生きる者たちが暮らす場所に顔を出せば良いだろうと思いますもの」
「俺もアリュリステアもそう思えるのは数多の世界の存在を知ってるからだな」
「まぁ…外の魔術式や武術を知るためにと一人で旅してる物好きたちも居るからなぁ」
「それで、ふたりは自由に過ごせるような物が欲しいんだっけ?」
「そうです」
「私たち以外にも声をかけたの?」
「それが俺たちが声をかけた知り合い達も似たような事になっててな」
「……被害がそこまでない者は俺たちみたいに自世界を創って引きこもってる者が大半か」
「わたくし達みたいに知り合いの世界に一時避難したり駆け込んでますね」
「それでさっきアリュリステアたちの身に起きた話に出ていた【ダンジョン・コア】の話になってくるのか」
「えぇ、譲っては頂けないでしょうか?」
「この【ダンジョン・コア】で良ければ私は渡してもいいよ…中身の状況に関しては保証は出来ないけど」
「呆気ないな」
「君たちなら悪いようにしないだろうからね」
「悠珂、お前はどうだ?」
「ん?別に俺も構いはしない…さっき賀実も言ったが中身の状況に関しては保証しないぞ」
「貴方たちは何をしたのです」
「ダンジョンコアに住まう者と一悶着があってな」
「あらまぁ」
「それくらいなら大丈夫そうだな。モンスターとかは居るのか?」
「居るぞドラゴンとかな」
「それは楽しそうだな」
「…では本当にダンジョンコアをいただいて宜しいのですね?」
「うん」
賀実は【ダンジョンコア】の所有権をアリュリステアとシルベイルガーに譲った。
「これでもうアリュリステアたちの【ダンジョン・コア】になったよ」
「ありがとな」
「私たちには手に余ってたから」
譲渡した後は雑談していたが愛丸がやって来た。
「話し合いは終わったかしら?」
「ふたりにダンジョンコアを譲渡したよ」
「良かったわね、ふたりとも」
「それじゃそろそろお暇させてもらうか」
「ふたりとも、本当にありがとう」
「逆にこちらの方が引き取ってくれて感謝だよ」
「次はどこの世界に行くんだ?」
「秘密ですわ」とアリュリステア微笑んで薔薇色の宿屋から出て転移して行った。
「目的を達成したらさっさと行ったわね」
「あの二人から何か感じたの?愛丸」
「別にそういうのじゃないけどなんだか使われてるような…都合よすぎないかしら?」
「いや、コレで良い。貸し借りなしになったからな」
「無理やり転生させられたりの件の奴とかか」
「あらら?」
「……あいつらが今のオレらの状況とかを広告塔として宣伝してくれるだろう。
もうしばらく愛丸たちには迷惑をかける」
「別に構いはしないわ…宿屋を譲渡して狙ってた子たちとかがその後どうなるか面白そうじゃない♡」
愛丸が舌なめずりをしてから艶かしいくもニヤけた顔になった。
「その顔は子供たちにあんまり見せるなよ」
「わかってるわよ〜…うふふふ」
「君の瞳にいったい何が見えているのだろうか」
「コレだけは言えるわ。前よりも異世界を旅できるようにもなるし、本当の意味で自由を謳歌できて、とても明るい未来が来るわ」
「愛丸がここまで言うんだ…そうなるように子供たちを起こさないとね」
「そうだな」
「一つアタシから聞きたいことがあったのだけど」
「どうした」
「あのふたりにドス黒く染まったダンジョンコアを渡してたわよね?ふたりには【ダンジョン・コア】がドス黒いのが見えてたのかしら?」
「ドス黒いのは見えてなかったんじゃないか?」
「だから私たちの手に余ってたとちゃんと言って渡してたよ?」
「【ダンジョン・コア】内でいったいナニがあったの」
愛丸の言葉に賀実と悠珂は愛丸からスッと目を逸らした。
「コラ、目を逸らさないの」
「私と悠珂でも本当に原因がわからない」
「えぇ…」
「マジでわからないんだよ」
「…【ダンジョン・コア】は偶然にも作れちゃったアレだけしか無かったのよね?」
「アレだけしか無いよ。魔術を極めた人生の時だったらいくつも作れただろうけども」
「そうよねぇ」
「アイツらなら大丈夫だろう…自分たちでなんとかするだろうからな」
「返品不可の魔法も仕込んで置いたから送り返されることもない」
「ちゃっかりしてるわねぇ…覗き見の水晶で観察しておくからナニかあったら手伝いなさいね?」
愛丸は悠珂と賀実に笑顔で圧をかけた。
「「はい」」
「……コレでこの話はおしまい。貴方たちも少し休んだら貴方たちは地球に戻る準備をしなさいね」
こうして愛丸に言われた通り、悠珂と賀実は地球に…戻るための準備を始めたのだった。




