じじいのヤバい教えと村の様子
結構悩みましたが…後悔してませんよ?
「ねぇ…男ふたりで何してるの?」
ミストルが茂みの中から現れた。
「男と男の覚悟を」
「何か気持ち悪いよ、その格好」
ミストルに気持ち悪いと言われた…少しショックを受けた。
「ミストルに気持ち悪いと言われた!」
「なかなか参ったと言わないから【インディアン・デスロック】をかけていたんだが…」
「ふたりを写すには汚すぎてモザイク掛かってる…動きが重なるとさらにヤバイよ」
「……止めるかティルクス」
「…そうですね」
ミストルに何度も気持ち悪いと言われながら技を解いていった。
「始まるよ、帰還パーティー」
「もうそんな時間か…そろそろ戻らないとか」と言ったアルーヴさんが近付いてきた。
「ティルクスの実力を試して…もしミストルの了承を得たなら俺はギリギリしているだろうが許してやる…泣かせてたら許さないからな」
「はい…」
「さてと…俺は先に戻ってるから…お前達はゆっくり戻ってこい、ティルクスは本当に……俺がとやかく言うことじゃないな…」
アルーヴさんはそそくさと去って行った。
「テス大丈夫だった?」
「これくらいは平気だ」
「そう?」
「ミストル決めたか?」
「……正直に言うとまだ悩んでいるよ…百年経てば戻れるって言ってたけどね」
「ミストルが決めることだからな」
「「……………………」」
なんか気まずいな…雰囲気がこう……オレはばあちゃんとじいちゃんに叩き込まれた度胸がある
「単刀直入に聞きたい事がある」
「なっ何?」
「オレの事をどう思うか答えて欲しい」
「!…急に言われても」
「オレは独り立ちしようと思ってな」
「えっ!」
「ばあちゃんには話を通してある…じいちゃんに独り立ちすると言うと泣くから帰還パーティーの席で皆に話そうと思う」
「どの辺で暮らすの?」
「遠くはない自立と言えるかわからないが、ばあちゃんの家から徒歩で2時間ぐらいの場所だ」
「なんか微妙な距離だね…テスの歩きで2時間か…信用ならないよ」
「えぇー…まぁ確かにな」
「シルトフォレスト山からは出ないの?」
「あぁ、出ないぞこの山で暮らしていたほうが良いだろうし、何かあればじいちゃんとばあちゃんを頼れるしな」
「そうなるとクイントさんたちと同じ感じか」
「普段はのんびりまったりして時々ラセスに乗ってカリーナ姉さんたちみたいに行商しても良いなと思っている」
「食事には困らないし物々交換できるからね」
さっきからミストルにはぐらかされてるな…なら直球勝負だな。
「ミストル嫌だったら遮ってくれオレはミストルがー「僕は男「知ってる」
男の時からあんまり見た目変わってないからな?
「本来なら男だな、でも今は女性だ…もし嫌だったら否定してくれー「僕は男だった時からティルクスが好きだったけと嫌いだ!」
「えっ」
マジか!ミストルはオレの事が嫌いだと!
「テスは…ティルクスは何でもかんでも完璧で、八歳なのにドラゴン狩ってくるし!村での勉強は直ぐに終わらせてさっさとどこかに行くし!それに僕は1度しか勝てなかった!しかも手加減されての勝利だった!」
まさか村を出る前日の狩り…手加減されていたと思っていたのか…あれはミストルが正真正銘勝ったんだけどな。
「前日の狩りは本当にミストルが勝っていたんだ、オレは手加減してない」
「そうやって君がー
何でオレをディスって居るのに泣いてるんだ…。
「テスよ聞いておけ、お前が本当に心の底から好きな子がもし意地っ張りか天の邪鬼な性格だったら…物理で攻略しろ」
「物理で攻略?」
「そうだ、意地っ張りな娘っ子だと素直に気持ちを吐けないのが多いだからヤってしまえ、お前は俺の女だと思い知らせろ。この世界なら強引なこのやり方でヤってもペナルティと好きな娘っ子の家族から袋叩きに遭うだろうがお前ならきっと大丈夫だろう!」
「わかったよじいちゃん!でも素直におれの事が好きだと言った子にはしちゃだめなんだろ?」
「あぁ!やってはダメだぞ?お前に好意を持つ意地っ張りか天の邪鬼の性格の娘っ子限定だ!…そのための魔法も教えておこう、サニカには内緒だぞ?」
「うん!」
と言うじいちゃんとの会話を思い出した。
「だからティルクスがきー!?」
オレはじいちゃんに習った魔法で魔法を使い隠れている人と周囲に誰も居ないか確認してからじいちゃん流の告白法で行くことにした。
「例えミストルに何と言われようがオレはお前が好きだ」
「何を!」
オレはミストルの唇を奪ってからこう宣言した。
「オレが写し身人形をパーティーにふたり分送ったから心配しなくていい、ある程度ヤってから戻っても良いよな?ミストル」
「ちょっ!」
「【異空間にある俺だけの部屋】でゆっくり話し合いをしようか?時間はたっぷりあるからな?」
「たすー
オレはミストルをオレの作った空間に引きずり込んだ。
◇◇◇
一方村では
「アルーヴ飲み過ぎてるよ」
「べしゅにいいじゃろう!しかにゃ!」
「帰ってきたと思ったら急に飲みだすなんて」
「まぁ、わからなくはない」
「確かになティルクスとミストルが帰ってきたと思ったらイチャついているしな」
「ようやく、くっついたわ」
「ボクはこのまま男として生きて行けそうで良かった~」
「シェリナ、名前はどうする?」
「…改名はしないよ父さんと母さんがつけてくれた唯一無二の名前だし、女性の名前でもボクは気にしないよ、ボクもミストル同様に性別言わなければバレないしね」
「村の夫婦の中にはミストルたち同様に性別逆転夫婦がなん組か居るから、そこまで気にすることないのにな」
「ホントだよね~まさかリシア姉さんも男と女性を行き来している体質だったなんて」
「ふふふ…なかなか気付かれないものだから~」
「リシアの先祖返りは花の妖精の血だもんな」
「花の妖精の血で男性は少ないから~花の妖精のお嬢さん達からモテるから~」
「リシアにはワイが居るだろうが」
「トルヤから告白は面白かったな~」
「そんなんだよね、既にリシア姉さんに相手が居たなんて…!」
「シェリナの反応が面白かったからね~ふたりには内緒よ?」
「わかってるよ」
「ワイはリシアが男だろうと女だろうとどちらも愛してるからな!」
「ひぃ!この村恐ろしいのだよ!」
「カフェルネちゃんもいずれ慣れるわ」
「慣れたくないわ!」
◇◇◇
「やっぱり良いわね、村での教育は外の学園より偏差値高いわ」
「お母様…少しは…」
「アスエルもたまには羽目を外しなさい、もう王族じゃないのだから」
「ですが!」
「お兄様がお母様の本性見て驚いてます」
「ユフィは知っていたの?」
「知ってるも何も、お父様はお母様の自分だけに見せる表の顔と裏の顔の二面性に惚れてたんだよ?」
「えっ知らなかったのは私だけ?」
「メイドさんたちも知ってたからね~」
「えっ」
◇◇◇
「ふふふ…アスエルのあんな顔初めてですね?」
「そうだな…エルヴァンは」
「私たちの息子は最後まで権力に屈せず戦い抜きました。だからハーシュちゃんは動けわたくしたちは逃げ切れました」
「失うばかりの王族の暮らしは懲り懲りだ…この生活は天国だよ」
「あなた様は昔から幼少期にしていた田舎暮らしがしたかったと言っておりましたからね」
「ホントにな?…よくぞここまで付き合ってくれたものだ」
「構いはしないわ、あなたとは田舎暮らしの頃からの付き合いなんですから」
「エラルちゃんとマックス君も食べてるぅ?」
賑やか老人Aが現れた。
「マノリさんも食べてますね」
「ここのご老人はよく食べる」
「ババア連中に付き合わせてごめんなさいね~」
「良いのです、ここなら演技をしなくても良いのですから」
「ホントの自分でいられるから、俺も楽しいよ」
「そう?良かったわ~私はまだまだ食べてくるぞ~」
賑やか老人Aは去っていった。
「本当に楽しいでしょう?」
「!…バルセイル殿」
「私の故郷は賑やかですからね」
「ふふふ…幼少期に戻った気分です」
「ぜひ今後ともよろしく頼む」
「そうですね、よろしくお願いします」
この出会いは後に魔神教がカウバルトル王国を早くに潰した事を後悔するハメになることが決まった決定的な瞬間である。




