隠し玉とホームグラウンドと現在へ
【秘都の隠れ里その1があった場所】
「本当に何もかもまっさらになってるわ……さてとアタシの隠し玉はバレなかったみたいね」
魔術師は自身が残しておいたサインを探し始めて2時間かけて見つけた。
「良かったわ…毒にも侵食されてないし、一部欠けたりもしてないから大丈夫そうね!
さてさて太古の勇者に持たされたの秘宝の力を発動させましょうか」
魔術師はカチャカチャと太古の勇者に持たされた【秘宝】を使用する直前に藪から魔術師を監視していた神の使いが飛び出してきたが止められることなく発動させた。
すると死んだはずの太古の勇者に派遣された強者の肉体が再生され魔術師の側に全裸で5体も現れた。
「うふふ…アタシ、真名が二つあるの。
辺境の魔法使いと賢者もまさか人間種に真名が二つあるなんて思わなかったでしょうね。
魔法使いに名乗った真名はもう使えないからすぐにでも消さないとね」
「なっ?!」
「この世界の神様もさっさとアタシと賢者たちを明日とか言わずに直ぐに戻してたらこんな事にならなかったのに」
神の使いたちは太古の勇者に派遣された強者を拘束しようとしたが魔術師に躱された。
「また一からやり直しましょうと賢者たちに伝えておいてね」
それだけ言って5体の全裸の強者ごと何処かへ転移していった。
「あぁ……なんてことでしょう………というわけないでしょうに!ここは我らの本場なんです!異界の者に好き勝手されてたまるものですか!我が同僚たちも頼みます!」
神の使いの言葉に何処からともなく神の使いの同僚たちが現れて逃げた魔術師を探すために散っていった。
「太古の勇者の作った道具はやはり規格外すぎですね。
……彼らもだいぶ衰えたようですね…前の規格外だったのを知っていると余計に」
「悪かったな衰えてて」
「えっ」
「真名契約が消えたから心配になってきたんだよ」
「神の使いに一目置かれてたなんて、アンタたちホントにどれだけヤバかったのよ…」
「そん時は確か人間辞めてたよな?」
「そうだね人間辞めてた」
「ボクとしては君たちと始めてあった時と同じ感覚だから今の方が良い」
「まつりが旅神になるきっかけの時か」
「そうだね~」
「人間辞めればすぐにでも規格外になれるぞ?」
「ならんでいいから。止めて」
「頭の中が軽そうなアナタでもそんな事を言うのね」
真顔のまつりを見た詩子は苦笑した。
「頭の中が軽そうって酷いなー」
「まっそういった話は後でだ、神の使いさんとしてはどうするんだ?」
「皆さんは役目を終えているので大人しくしていてください。こうなったのは我らの上司の責任なので我々がちゃんと後処理をします」
「後回しにした理由が私的なことなんだね」
「はい……」
「でもアレらがここまで仲間意識が強いとは思わなかったぞ」
「長く共に過ごせば情が湧くものさ…私や君と島の子供たちと同じように」
「そうだな」
「!…見つけたのでわたしは行きます」
それだけ言って神の使いは瞬間移動した。
「ホントに何もかもなくなったんだな」
「私が蓬に指示して一定の物以外は溶ける毒で溶かしたからね」
「ねぇ、ここに一本の木を植えない?殺風景すぎるわ。それも毒とかに強い木をね」
「えぇ…後でタイムパラドックスやバタフライエフェクトが起こらない?」
「それに関してはやることやった後に一応は報告に来るだろうからその時に神の使いに聞け」
「やっぱそうなるわよね…」
「ここはオレらが生まれた時代じゃないからな。触らぬ神に祟りなしだ」
「そういえば…毒で溶かしたとか言ってたけど汚染とか大丈夫なの?」
「大丈夫じゃなかったから私たちがここに入る以前に強者たちが溶けてるよ」
「確かに」
「キャンプ地をここへ移動する?」
「「しない」」
「ハモった…何もかも溶かしたと言っても、殺戮が起きて直ぐの場所をキャンプ地にするのは嫌だよねぇ」
「面白そうなことが起きそうで楽しそうなのに」
「サイコパスか己は」
「もし出てくるなら今度はあたしが直接、シバいてやると思ったんだけど」
「やめたげて、ちゃんと眠らせてあげて」
「ならキャンプ地に戻るか」
「うん」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【火天の宿屋】
《付近》
四人が火天の宿屋の近くまで戻ってくるとドアの前で土下座している神の使いがいた。
それを見た四人は「何かやらかしたか、捕縛に失敗したか」と察した。
「スミマセン、失敗しました」
「失敗の方か…早いな」
「本場なんじゃないのかよ」
「えぇ…」
「土下座してるってことは何かあるって事だよね」
「実は…カクカクシカジカで」
神の使いによると太古の勇者に派遣された者たちは自身で制約を解除し、力を取り戻して過去から現在に戻ったらしく今回の件の担当をしていた神の使いが仕えている【八百万の神の一柱】がした後回しやらの理由が理由らしく主神にめちゃくちゃ怒られているそう。
「向こうが力を取り戻したのなら今の私達では勝てない、理由は圧倒的な力の差が開いてるから。
私たちの方がこの時代の歴史を完璧とは言わないけど知ってて、お互いに身体能力が制限されてフェアだったから勝てた」
「向こうは人間やめてるみたいだからな」
「それでどうしたいの?」
「……皆さんも現在へ戻しますが、周りはほぼ敵だらけだと思ってください。
地球の神々でも我らの上司がやらかした事で介入できないそうなので」
「…あたしたちが殺戮もやらかしに入ってたり…?」
「それの心配は一切、ありません。
皆さんと5年間過ごした鎌倉武士たちは子を残すだけで早死予定でしたから」
「そうか」
「はい…皆さん、今からでも良ければ主神様から一部の力を一時的に使えるようにされておりますから現在へ帰しますがどうしますか?」
「思い立ったが吉日だな」
「そうね、あたしも悠珂の意見に賛成よ」
「ボクも良いよ」
「……頼むよ」
「わかりました、ではやっちゃいますね。
皆さんは宿屋の中に入ってください…そうしたら皆さんが過ごしている時代へ飛ばしますから」
四人は宿屋の中に入り、窓から神の使いの様子を見ていると神の使いは主神から一時的に託された力を解き放った。
すると火天の宿屋は時空ホールへと入っていったのを確認し、神の使いが安堵した表情をしていたのが見えたのだった。




